強迫性障害に有効な薬とは?強迫性障害の薬物療法
強迫性障害とは、強迫観念(ある考えやイメージにとらわれてしまうこと)と強迫行為(繰り返し行為)を特徴とする病気です。
「自分が汚れているのでは」と考えて「何度も手を洗ってしまう」
「自分が誰かを傷つけてしまうのでは」と考えて「大丈夫か確認してしまう」
「何だかピッタリしない」と感じて「何度も整理してしまう」
などといった症状を特徴とする病気です。以前は治療が困難な病気とされてきましたが、お薬の進歩によって強迫性障害も改善できる病気となりました。
強迫性障害の治療は、非常に根気が必要になります。薬物療法だけでなく、精神療法も積み重ねていく必要があります。ですが少しずつ治療を積み重ねていけば、よくなっていく病気です。
精神科のお薬というと抵抗のある患者さんも多いかと思います。治療をはじめたものの、途中で断念してしまう患者さんも少なくありません。強迫性障害の薬物療法についてしっかりと理解して、覚悟と希望をもって治療に取り組むことが大切です。
ここでは、強迫性障害の薬物療法について詳しくお伝えしていきます。
1.強迫性障害の薬物療法の考え方
- お薬の効きに時間がかかる
- お薬の量が必要
- 精神療法と組み合わせることが必要
- 抗不安薬は最小限にすること
まずは強迫性障害ではどのようにしてお薬をつかっていくのか、その概要をお伝えしたいと思います。
強迫性障害の薬物療法の最も基本となるお薬は、セロトニンを増加させる効果の強い抗うつ剤になります。しかしながら強迫性障害では、抗うつ剤の効果が認められるまでに時間がかかり、さらには他の病気と比べて高用量が必要となります。
そして抗うつ剤を適切に十分に使っても、その効果は60%ほどになります。40%の患者さんでは、抗うつ剤だけでは効果が不十分となってしまいます。
このような患者さんに対しては、ドパミンをブロックする抗精神病薬を追加していくと有効なことがあります。その効果は30%~70%と幅広い報告がありますが、50%と考えると5人に1人はお薬があまり効かないという結果になってしまいます。
このため強迫性障害では、認知行動療法を中心とした精神療法を合わせて行っていく必要があります。
そして少しでも強迫症状による不安を和らげるために、抗不安薬を使っていくことが多いです。抗不安薬は即効性があってとても良いお薬なのですが、大きな問題が2つあります。
- 耐性(少しずつ効かなくなっていくこと)
- 依存性(やめられなくなること)
になります。そして抗不安薬ですぐに不安が楽になるというのに慣れてしまうと、認知行動療法が進まなくなってしまいます。
このように強迫性障害の治療は、とても根気が必要になります。お薬に関しても、「しっかりと使わなければいけない」と覚悟を決めて治療に臨んでほしいのです。
2.強迫性障害の第一選択薬―抗うつ剤
SSRIを中心とした抗うつ剤が、強迫性障害治療の中心です。三環系抗うつ薬のアナフラニールが使われることもあります。
強迫性障害の薬物療法としては、抗うつ剤が中心になります。強迫性障害での抗うつ剤についてご紹介していきます。
①強迫性障害に使われる抗うつ剤とは?
抗うつ剤の中でもセロトニンを増加させる作用が強い「SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)」を中心に使っていきます。
現在日本で発売されているSSRIとしては、以下の4種類があります。
この中で正式に強迫性障害に対しての適応が認められているのは、パキシルとルボックス/デプロメールの2つになります。
実際にはこれ以外の抗うつ剤でも、患者さんに向いている場合は使われています。その場合は適応外という形になりますが、海外では適応となっており、同等の効果が期待できます。
SSRIで効果が不十分な場合は、三環系抗うつ薬が使われることもあります。三環系抗うつ薬の中でも、セロトニン増加作用の強いアナフラニール(一般名:クロミプラミン)がよく使われます。ルボックス/デプロメールと併用して使われることもあります。
②強迫性障害での抗うつ剤の注意点
強迫性障害の抗うつ剤での注意点として、以下の2つがあげられます。
- 薬の効果が出てくるまでに時間がかかる
- うつ病や他の不安障害よりも高用量の薬が必要
うつ病やその他の患者さんでは、抗うつ剤の効果は2~4週間ほどで認められることが多いです。これに対して強迫性障害では、効果がみられるまでに6~8週間ほどかかり、効果を評価するまでには8~12週間ほどかかります。
このように、抗うつ剤の効果が認められるまでに時間がかかるのです。抗うつ剤を飲みはじめたものの、なかなか効かないと思われる患者さんも多いかと思いますが、じっくりと効果が出てくるのを待った方がよいです。
そして、強迫性障害では薬も高用量が必要になります。用量を上げていくと効果が上がっていくという用量―反応関係が認められていて、効果が不十分な時には積極的に増量していくことが勧められています。
海外と日本での抗うつ剤の用量を比較してみます。
商品名 | 日本の用量 | 欧米の用量 |
パキシル | 50mg | 60mg |
ルボックス/デプロメール | 150mg~300mg | 300mg |
レクサプロ | 20mg | 30mg |
ジェイゾロフト | 100mg | 200mg |
強迫性障害の治療では、高用量が必要になります。ジェイゾロフトは日本で使える用量が少ないため、私はあまり使っていません。
強迫性障害のこのような特徴のため、副作用を確認しながら、ある程度まではスピーディーに増量していきます。
3.強迫性障害での補助薬-抗不安薬
抗不安薬は即効性が期待でき、不安や緊張を和らげてくれます。うまく治療に使うと有効ですが、耐性と依存に気をつける必要があります。
強迫性障害の治療のサポートとしてよく使われるのが「抗不安薬」です。強迫性障害での抗不安薬についてご紹介していきます。
①強迫性障害で使われる抗不安薬とは?
抗不安薬は、主にベンゾジアゼピン系抗不安薬を使います。抗不安薬はGABAの働きを強めることで、脳の活動を抑制します。このようにして、不安や緊張を和らげる作用があります。
抗不安薬の最大のメリットは、即効性があることです。このため、飲み始めてすぐに効果が実感でき、頓服としても有効なお薬なのです。
強迫性障害では、抗うつ剤の効果が発揮されるまでには時間がかかります。このため、症状を緩和することで治療に対して希望をもってもらうことはとても重要です。不安や緊張が和らげば、病気に対する考え方が前向きになり、治療に向けたエネルギーも産まれます。
強迫性障害に使われる抗不安薬(精神安定剤)としては、以下のようなものがあげられます。
- リボトリール/ランドセン(一般名:クロナゼパム)
- レキソタン(一般名:ブロマゼパム)
- ワイパックス(一般名:ロラゼパム)
- ソラナックス/コンスタン(一般名:アルプラゾラム)
- デパス(一般名:エチゾラム)
- セルシン/ホリゾン(一般名:ジアゼパム)
- リーゼ(一般名:クロナゼパム)
- メイラックス(一般名:ロフラゼプ酸エチル)
強迫性障害は非常に強い不安を認め、また強迫行為によって緊張が強い方が多いです。このため、抗不安作用と筋弛緩作用が強いレキソタンを使うことが私は多いです。
②強迫性障害での抗不安薬の注意点
しかしながら抗不安薬は、あくまで一時的なサポートにすぎません。確かに不安や緊張は和らぎます。
しかしながら安易に薬に頼ってしまうと、それ自体が回避行動になってしまいます。不安や恐怖に対してチャレンジし、物事のとらえ方を変えていくことができなくなってしまいます。精神療法の妨げになってしまうことがあるのです。
さらに抗不安薬は、薬の特性として注意しなければいけない点があります。
- 耐性
- 依存性
になります。
耐性とは、お薬を使い続けていくうちに身体が慣れてしまって、次第に薬が効かなくなってしまうことです。依存性とは、薬がなくなってしまうことで身体に不調がみられたり、精神的に落ち着かなくなってしまうことです。
抗不安薬は即効性があり効果の実感もあるのですが、そのかわりに耐性も依存性もつきやすいお薬になります。このため抗不安薬は、注意して使っていく必要があります。
- できるだけ頓服で使う
- 抗うつ剤と併用する
- 漫然と使わずにできるだけ減量する
この3点を意識して使っていきます。具体的な使い方は、後述させていただきます。
4.強迫性障害での増強薬-抗精神病薬
強迫性障害を抗うつ剤で治療しても効果が不十分な場合、抗精神病薬を追加することで改善効果が期待できます。
強迫性障害の治療では、まずはひとつの抗うつ剤を十分に使って治療していくのが定石です。それでも効果が不十分な場合、3つの選択肢があります。
- 他の抗うつ剤を上乗せする
- 他の抗うつ剤に変更する
- 抗精神病薬による増強療法を行う
日本では欧米に比べて量が使えないため、ひとつの抗うつ剤の量が十分でない場合は抗うつ剤を上乗せすることもあります。ある程度使っても効果がみられない場合は、他の抗うつ剤に変更していきます。
複数の抗うつ剤を試しても効果が十分でない場合は、抗精神病薬を少量ずつ追加していきます。ここでは、強迫性障害での抗精神病薬についてご紹介していきます。
①強迫性障害に使われる抗精神病薬とは?
強迫性障害に対しては、増強療法として抗精神病薬が使われます。
抗精神病薬とは、ドパミンをブロックする作用のあるお薬のことです。強迫性障害ではセロトニンだけでなく、ドパミンの機能異常があることも示唆されています。
抗精神病薬の中では、副作用が軽減されている非定型抗精神病薬が使われることが多くなっています。
- リスパダール(一般名:リスペリドン)
- ロナセン(一般名:ブロナンセリン)
- ルーラン(一般名:ペロスピロン)
- インヴェガ(一般名:パリペリドン)
- ジプレキサ(一般名:オランザピン)
- セロクエル(一般名:クエチアピン)
- シクレスト(一般名:アセナピン)
- エビリファイ(一般名:アリピプラゾール)
大きく分類して、
- SDA(リスパダール・ロナセン・ルーラン・インヴェガ)
- MARTA(ジプレキサ・セロクエル・シクレスト)
- DSS(エビリファイ)
この3つに分けられます。このうちSDAとDSSの有効性はほぼ間違いありませんが、MARTAでは有効性に関してははっきりしていません。ですが、MARTAで改善する患者さんもいます。
②強迫性障害での抗精神病薬の使い方
強迫性障害では、あくまで抗精神病薬は抗うつ剤の増強療法として使っていきます。少量から始めていき、少しずつ効果をみながら増量していきます。具体的には、以下の用量で開始していきます。
- リスパダール:0.5mg
- ジプレキサ:2.5mg
- セロクエル:25mg
- エビリファイ:3mg
基本的に強迫性障害の患者さんのすべてで、抗精神病薬の追加の効果が期待できます。なかでも、
- チック障害が合併している患者さん
- 強迫観念が妄想的内容の患者さん
には効果が期待できるのではと考えられています。
5.強迫性障害では漢方薬は有効か?
お薬がどうしても使えない時に、治療の選択肢にはなります。漢方薬だけでなく、精神療法を組み合わせて治療していきます。
強迫性障害では、抗うつ剤や抗不安薬の効果が期待できます。強迫性障害の治療は漢方薬では効果が期待しづらいため、お薬での治療をしっかりと行った方がよい病気です。
強迫症状が重いときには、精神療法をすすめていくだけの心の余裕がもてません。考え方も悲観的になってしまい、なかなか悪循環から抜け出せなくなってしまいます。
ですからお薬を使った治療を進めていく方が効果的なのですが、どうしてもお薬を使えないこともあるでしょう。そのような時は、漢方薬と精神療法を組み合わせて治療していくこともあります。
漢方には即効性を期待しにくく、じっくりと使いながら効果をみていきます。2週間~1ヶ月かけて効果をみていきます。頓服としては、漢方薬はあまり適していません。筋弛緩作用が比較的早く期待できる漢方薬を、頓服として使っていきます。
強迫性障害で使われることがある漢方薬をご紹介します。
- 柴胡加竜骨牡蛎湯:比較的体力があって、不安やイライラが強い方
- 柴胡桂枝乾姜湯:体力が低下していて、不安やイライラが強い方
- 桂枝加竜骨牡蛎湯:緊張が強く、体力が低下している方
- 半夏厚朴湯:のどや胸に違和感があり、スッキリしない詰まった感じがある方
- 加味逍遥散:女性で血のめぐりが悪く、不安が強い方
- 加味帰脾湯:疲れや食欲不振などが目立つ、不安の強い方
- 抑肝散:神経が高ぶり、イライラの強い方
- 甘麦大棗湯:不安が強い方の頓服として
6.強迫性障害の新薬?グルタミン酸関連薬
強迫性障害の治療薬として、グルタミン酸関連薬が注目されています。グルタミン受容体拮抗薬のメマリー・ケタミン、グルタミン酸部分作動薬のD-サイクロセリンが注目されています。
強迫性障害の治療薬のターゲットとして近年注目されているのが、グルタミン酸機能異常です。グルタミン酸と聞くと「味の素」を思い浮かべてしまうかもしれませんが、脳内では神経伝達物質として働いています。
強迫性障害の患者さんでは、グルタミン酸が過剰なことがわかってきています。ですから、グルタミン酸の働きを抑えるようなお薬があれば、強迫性障害の治療薬になるのではと期待されています。
その一方で、グルタミン酸受容体の中でもNMDA型が刺激されると、学習や記憶が促進されることがわかってきています。このため、恐怖を消去して新しい学習をしていくためには、このグルタミン酸受容体を刺激するようなお薬が有効なのではと期待されています。
このように、グルタミン酸は非常に複雑でまだまだ未知の世界が多いです。現在治療薬としての研究が勧められているお薬について、いくつかご紹介していきます。
強迫性障害への有効性が期待できるグルタミン酸の働きを抑えるお薬には以下の3つがあります。
- メマリー(認知症治療薬)
- ケタミン(麻酔薬)
- リルゾール(筋委縮性側索硬化症治療薬)
メマリーとケタミンはグルタミン酸受容体遮断作用があるお薬です。リルゾールは、グルタミン酸による神経毒性を抑えるお薬です。
NMDA受容体を刺激することで新しい学習をすすめるお薬としては、
- D-サイクロセリン(結核治療薬)
このお薬はNMDA受容体の部分作動薬になります。効果を期待するには、少量で使っていく必要があります。
新しい記憶や学習を促すお薬なので、強迫観念の強いタイプの方に向いていると言えます。認知行動療法を行う前に服用し、治療効果が高まることが期待されています。
7.強迫性障害のお薬はどれくらいの期間使うの?
少なくとも1年間は薬を使っていった方がよいです。強迫性障害では、薬は長く使う傾向にあります。
強迫性障害で治療を開始すると、果たしてどれくらいの期間お薬を使っていく必要があるのでしょうか?よく患者さんから質問されることです。
強迫性障害の治療の進み方にも個人差があるので、決められた期間があるわけではありません。しかしながら、少なくとも1年ほどは治療を続けた方がよいと思います。そして少しずつ減量して経過を見ていくのが一般的です。
発症してから時間がたっている方は、もっとじっくりと治療を続けていった方がよいでしょう。強迫観念のとらわれは、時間がたつにつれてこびりついてしまいます。
薬を使いながら、認知行動療法などの精神療法を日々積み重ねていきます。その中で少しずつ、強迫観念が和らいでくるのです。薬物療法だけでなく精神療法を併用した方が、再発率は明らかに低くなります。
このように強迫性障害は、年単位にわたってじっくりと治療をしていくことが必要です。このようにじっくりと治療をしても、再発率の高い病気です。少しでも強迫症状が認められたら、すぐに受診することが大切です。
8.強迫性障害での薬物療法の流れ
最後に、薬物療法の流れを具体的にお伝えして、治療のイメージが伝えられたらと思います。強迫性障害だけでなく他の病気を合併していれば治療の流れも変わってきますし、医師によっても治療のステップが変わってきます。
ここでは、強迫性障害だけの患者さんの治療について流れを見ていきたいと思います。
①SSRIと抗不安薬を併用する
強迫性障害の治療では、抗うつ剤のSSRIを中心にして治療していきます。そのサポートとして抗不安薬を使っていきます。
SSRIには即効性がありませんが、強迫性障害では特に効果が認められるまでに時間がかかります。これに対して抗不安薬は、服用した直後から効果が認められます。
強迫性障害の治療では、不安や緊張が楽になったという実感をもつことも大切です。使っていても一向によくならないのであれば、治療をしていく希望がもてなくなってしまいます。
ですから即効性のある抗不安薬を併用することで、効果の実感をもちながら治療をすすめていくことができます。もちろん耐性や依存性に注意した上で、私は併用して治療していきます。なかにはSSRIだけで始めていく先生もいらっしゃいます。
SSRIを始めていく時は、できるだけ少量から始めていきます。少量から始めていくことで、副作用を軽減することができます。SSRIでは吐き気や下痢などの胃腸障害がよく認められます。慣れていく方が多いですが、胃薬などを併用することでしのいでいきます。
基本的には安全性の高いお薬ですが、何か副作用が出た場合は主治医と相談してください。
②SSRIを少量からスピーディーに増量する
SSRIを開始したら、必要な量まで増量していきます。
多くの病気では、SSRIの効果をみながら少しずつ増量していきます。しかしながら強迫性障害では、薬が高用量必要となり、効果が発揮されるのも遅いです。このため、効果を待っていると時間の無駄になってしまうことが多いです。ですから副作用が問題ない範囲で、スピーディに増量していくことが理想です。
患者さんも理解していただける場合は、最大量まで増量してしまいます。適応が通っているパキシルとルボックス/デプロメールでみてみましょう。
- パキシル:開始10mg、2週間ごとに10mgずつ増量、50mgまで
- ルボックス/デプロメール:開始50mg、2週間ごとに50mgずつ増量、150mgまで※ルボックス/デプロメールは地域によっては300mgまで使えるところもあります。
このように、ひとつの抗うつ剤をしっかりと使って効果をみていきます。十分に使っても抗うつ剤の反応がみられない時には、以下の2つを考えます。
- 抗うつ剤の効果が不十分
- 診断の見直し
診断の見直しをすると、薬が変わることもあります。抗うつ剤の効果が不十分である場合は、3つの選択肢があります。
- 他の抗うつ剤を上乗せする
- 他の抗うつ剤に変更する
- 抗精神病薬を追加することで増強療法を行う
欧米ではもう少し抗うつ剤を使えるため、多少上乗せするのも方法です。それでも効果が不十分であれば、他の抗うつ剤に変更します。複数の抗うつ剤で効果が不十分ならば、抗精神病薬を追加して増強療法を行います。
③抗不安薬を少しずつ減量する
SSRIの効果が十分にみられて安定してきたら、抗不安薬を少しずつ減量していきます。これは、抗不安薬への依存を防ぐためです。抗不安薬のところでご説明しましたが、抗不安薬には耐性と依存性があって、漫然と使っていると止められなくなってしまいます。
このため、抗不安薬は必要最小限で使っていった方がよいのです。抗不安薬を常用している場合は、少しずつ減量していきます。
抗不安薬をしばらく使っていると、薬があることに身体が慣れてしまいます。すると、減量するときに離脱症状が認められることもあります。どうしても減量ができない場合は、半減期の長い抗不安薬に切り替えていきます。
頓服として抗不安薬を使っている場合は、無理に減量しなくても大丈夫です。常に身体に薬があるわけではないので、依存にはなりにくいからです。ただ、安易に薬を使って恐怖から目をそらさないようにしましょう。不安を軽減していき、少しずつ減量しいくことが大切です。
④SSRIをしばらく続ける
薬を服用していれば日常をかわりなく過ごせるようになってきたら、しばらくはその感覚での生活を続けた方がよいです。不安の病気は根が深いので、経験的には1~2年間はSSRIを続けた方がよいです。
この間に少しずつ精神療法を積み重ねていくことが大切です。
- 認知行動療法
- 暴露反応妨害法
といった精神療法を積み重ねていきましょう。精神療法を積み重ねていくことで、強迫性障害の再発率も低下します。
⑤SSRIを少しずつ減量する
しばらくの期間お薬を続けていて、「これからも何とかなる」と患者さんが思えていれば減量を検討していきます。
できるだけ生活の変化がない時期が良いでしょう。薬を減量していく時も、少しずつ行っていきます。これには2つの理由があります。
- SSRIでも離脱症状が起こること
- 少ない薬の量にゆっくりと慣れていくため
SSRIでも離脱症状が起こります。身体が薬に慣れてしまい、急になくなると身体に症状があらわれるのです。とくにパキシルでは離脱症状に注意が必要です。詳しく知りたい方は、「抗うつ剤の離脱症状と5つの対策」をお読みください。
また、治療の面でもゆっくりと減らしていく方がよいです。薬が減っていくことは、心の中で不安に思っている部分が少なからずあります。少しずつ減量して問題ないことを確認していきます。めんどうに思うかもしれませんが、急がばまわれです。
まとめ
強迫性障害の薬物療法についてみてきました。
強迫性障害の治療の基本は、SSRIをはじめとした抗うつ剤になります。抗うつ剤で十分な効果がみられない時に、抗精神病薬を追加することがあります。
強迫性障害では、薬物療法と心理療法を組み合わせて治療していきます。薬物療法をしっかりと行っていくことも、強迫性障害の克服にとても重要です。
強迫性障害の全体的な治療の流れについて詳しく知りたい方は、「強迫性障害を克服するには?強迫性障害の治療法」をお読みください。
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