フリバス錠・OD錠の副作用と安全性について

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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フリバス錠(ナフトピジル)は、α1神経遮断薬に分類される「前立腺肥大」の治療薬です。尿道や前立腺の平滑筋に作用することで、尿の通り道を広げて正常に戻します。

フリバスは即効性はあるお薬ですが、前立腺肥大自体を改善するお薬ではないため毎日飲み続ける必要があるお薬です。

フリバスは、めまいや胃部不快感の副作用があります。そのため起立性低血圧症がある人は気を付ける必要があります。

またフリバスが女性なのに処方された人も稀にみかけます。女性なのになぜ前立腺肥大症の薬を?と思われる方もいるかもしれません。フリバスと女性に関してもここではみていきましょう。

1.フリバスの副作用について

フリバスはα1神経を遮断するため、めまいが起こることがあります。

フリバスの添付文章では、総症例22,013例中721例(3.28%)に副作用が認められました。その主な副作用は

  • めまい・ふらつき209件(0.95%)
  • 立ちくらみ93件(0.42%)
  • 低血圧(起立性低血圧を含む)44件(0.20%)
  • 胃部不快感43件(0.20%)

となっています。フリバスはα1神経を遮断することで、尿道の平滑筋を緩めて尿を出しやすくするお薬です。α1神経は交感神経の一つです。α1は、実は尿道だけではなく全身にある神経です。フリバスは選択的に尿道のα1を遮断するようになっていますが、100%ではありません。

そのため、ハルナールが他の神経に作用してしまうことで副作用が起こることがあります。一番あり得るのが血圧低下です。α1神経は全身の血管に受容体があり、刺激されると血管が収縮して血圧が上がる作用があります。

α1神経を遮断するということは、血圧の低下につながります。血圧が急激に低下することで、めまい、ふらつき、立ちくらみが出現します。

場合によっては、失神といって意識が遠のいて倒れてしまうこともあります。ただし、倒れるまで重篤な副作用が認めることはほとんどないので、過度に心配する必要はありません。ふらつきなどがあった方は、「ハルナールの副作用かも?」と意識する程度でよいと思います。

 

2.フリバスが内服できない人は?

フリバスが内服できない疾患はありません。起立低血圧がある人は注意が必要です。

フリバスは、絶対に内服できない病気はありません。添付文章にも、禁忌は「フリバスにアレルギーがある人のみ」と記載されています。この一文は全ての薬に記載されています。

そのため処方する医師側も、前立腺肥大症と診断するとフリバス錠をまず処方するという場合は多いです。ただし、

  1. 肝機能障害のある患者
  2. 重篤な心疾患のある患者
  3. 重篤な脳血管障害のある患者

の方は慎重投与になっています。ただし②、③の理由は使用経験がないと記載されているため、基本的に問題にはなりません。そもそも心臓や脳に重篤な状態があればまず入院で加療します。そのため多くの人は気にすることもありません。

また肝臓はお薬を解毒する臓器です。そのため肝臓が悪いと多くの薬が慎重投与になるためこれも過度に心配する必要はありません。

添付文章の記載疾患以外でフリバスを内服する方で特に気を付ける場合は、起立性低血圧がある人です。起立性低血圧がある人は、元々急に立ち上がるとふらつきがあります。そのため、フリバスを内服して頻度が増えても気が付かないことも多いです。

元々起立性低血圧がある人は、めまいやふらつきの頻度が増えていないか一度確認してみてください。

 

3.フリバスで飲み合わせを気を付けるお薬は?

フリバスは、降圧剤とホスホジエステラーゼ5阻害薬を内服している人は注意が必要です。

フリバスは、絶対に飲み合わせてはいけないお薬はありません。先ほどあげたような病気でも禁忌とされていないことからも、フリバスはどのような人にも内服させやすいお薬です。ただしフリバスと注意するお薬としては、

  • 血圧低下のお薬
  • ホスホジエステラーゼ5阻害薬

の二つは注意が必要となっています。最初の血圧低下は副作用でも説明したように、ハルナール自体が血圧を下げる作用を有するからです。高血圧も前立腺肥大症も高齢者がかかりやすい病気です。

高齢者になればなるほど、血圧や薬の作用も強くなります。特に体調が悪い時には、血圧が変動しやすいので注意してください。もう一つのホスホジラーゼ5阻害薬は、ED(勃起不全)の治療薬です。

  • バイアグラ
  • レビトア
  • シアリス

などの名前で発売されています。このホスホジラーゼ5阻害薬は、最近になり前立腺肥大症の治療にも使われるようになりました。ホスホジラーゼ5を阻害することで、局所のcGMPの分解を阻害し前立腺の平滑筋を弛緩させます。フリバスとは別の機序で尿道を広げる作用があることが分かっているのです。

  • ザルティア

という商品名で発売されています。ただしホスホジラーゼ5も、フリバス同様血圧を下げる作用があるため、副作用であるめまいの出現頻度が増える可能性があります。

基本的にザルティアは、フリバスの効果が不十分な時の第二選択薬として使用されます。フリバスにザルティアを加えてからふらつきが強まった方は、主治医に一度相談してみましょう。

 

4.フリバスはアルコールと一緒に内服して良いの?

フリバスは、アルコール自体で効果は減弱しません。しかしアルコール自体がAGAに良くないので、注意してください。

フリバスの添付文章では、アルコールと一緒にフリバスを内服して効果が減弱するという記載はありません。そのため、フリバスを内服中にアルコールを飲んでいけないわけではありません。

一方で、アルコールも飲みすぎには注意してください。アルコールを飲みすぎると、肝臓に負担をかけてしまいます。フリバスは肝臓で代謝されるお薬のため、アルコールを飲みすぎて

  • アルコール性肝硬変
  • 脂肪肝

など肝機能障害が出現すると、フリバス継続が難しくなる可能性があるかもしれません。またアルコール自体が利尿作用があるため、頻尿などの前立腺肥大の症状を悪化する恐れがあります。

また、アルコール自体が血液の流れを活発にする作用があります。前立腺は血の巡りが良い臓器なので、アルコールを飲みすぎると前立腺が充血することで肥大する可能性があります。

フリバスと一緒にアルコールを飲んでいけないわけではないですが、フリバスが適応となる前立腺肥大に対してアルコールは悪化する作用があります。くれぐれも飲みすぎには注意してください。

 

5.フリバスは女性にも処方されるの?

保険上は、フリバスは前立腺肥大症のみしか適応はありません。しかし作用機序的には、フリバスは神経因性膀胱の女性にも効果があるお薬です。

稀に女性でフリバスが処方される方を見かけます。処方された女性は調べたら、フリバスが男性の病気である前立腺肥大症のお薬と知って困惑する人もいるかもしれません。

「先生私のこと、男性と見間違ったのかしら?」というわけではなく、実はフリバス自体は女性の神経因性膀胱に効果があるお薬なのです。

フリバスは前立腺肥大症に対してのお薬ですが、前立腺自体に作用するというよりは前立腺が肥大して狭くなった尿道に作用するお薬です。そのため、女性でも尿道が狭くなった病気に対して使用すれば効果があることになります。その代表的な病気が、神経因性膀胱です。

神経因性膀胱とは、尿を溜めたり、排尿する神経伝達がうまく伝える事が出来なくなる病気です。神経伝達が上手くいかないことで、

  • 頻尿
  • 尿漏れ
  • 残尿感

などの前立腺肥大症と同じような症状が出現します。

特に尿道などの末梢の神経弛緩性神経因性膀胱はフリバスの適応となります。この状態は、膀尿道の平滑筋の緊張が強くなることで尿道が狭くなります。この状態は、フリバスがα1神経を遮断して尿道が広がり、症状が改善することにつながります。

ただし現在は、エブランチルが同じα1遮断薬でありながら、神経因性膀胱に伴う排尿困難にも適応が通っています。そのため女性の場合は、エブランチルを処方されることが近年では多くなってきています。

 

まとめ

  • フリバスは、めまい・胃部不快感などの副作用があります。
  • フリバスは、起立性低血圧がある人は注意が必要です。
  • フリバスは、血圧を下げるお薬、ホスホジラーゼ5阻害薬と併用する時は注意が必要です。
  • フリバスは、アルコールと一緒に接種しても問題はありません。ただしアルコールの大量摂取は、前立腺肥大症自体の悪化につながるため注意してください。
  • フリバスは女性の神経因性膀胱に効果があります。ただし適応外のため、エブランチルを処方することが最近では多くなってきました。

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