ルボックス錠の効果と特徴

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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ルボックス錠は、1999年に日本で初めて発売されたSSRIです。共同開発していたMeiji Seikaファルマ社から、デプロメール錠としてまったく同じ成分で発売されています。

SSRIとは選択的セロトニン再取り込み阻害薬と呼ばれるお薬で、セロトニンだけを増加させるように作られたお薬になります。このため従来の抗うつ剤と比べて、副作用が大きく減りました。

それまでは三環系・四環系抗うつ薬といった副作用が多い抗うつ薬しかなかったので、とても画期的なお薬でした。現在でもルボックスは有効なお薬で、様々な疾患で使われています。

ルボックスにはどのような効果や特徴があるのでしょうか?
どんな方に向いているのでしょうか?

ここでは他の抗うつ剤とも比較しながら、お伝えしていきたいと思います。

 

1.ルボックスのメリットとデメリット

はじめに、ルボックスの特徴を簡単に紹介したいと思います。

  <メリット>

  • 効果がマイルド
  • 認知機能に影響しない
  • 用量を調整しやすい
  • ジェネリックが発売されている

  <デメリット>

  • 服薬回数が多い
  • 他の薬との相互作用が多い

ルボックスの特徴を簡単にいうと、「副作用も少なく、効果もマイルドなお薬」です。ルボックスをはじめとしたSSRIは、昔からある三環系抗うつ薬よりも副作用が少なくできています。

効果に関しては、他のSSRIと比較するとマイルドです。SSRIやSNRIは活動的にさせるお薬が多く、三環系・四環系抗うつ薬やNaSSAなどは落ち着かせるお薬が多いです。ルボックスは「ニュートラル」といった印象で、穏やかに効いていく印象があります。このためとても使いやすいお薬です。

不安を抑える効果もあるので、様々な不安障害に使われます。また、強迫性障害で使われることも多いです。抗コリン作用が認められないので、認知機能に影響を与えません。

また、ルボックスは薬の用量調整しやすいお薬です。最大容量は150mgとなっていますが、地域によっては300mgまで使えるところもあります。一番小さな錠剤は25mg錠剤なので、半分に割れば12.5mgずつ調整できます。少しずつ薬を調整できる抗うつ剤です。

発売から10年以上がたっているお薬ですので、ジェネリックも発売されています。「フルボキサミン」という名称で発売されていて、およそ先発品の半額で発売されています。お値段としても使いやすいお薬になっています。

 

デメリットとしては、服用回数が多くなってしまうことがあげられます。ルボックスを服用すると4~5時間で血中濃度がピークになります。そこから半分になるまでにかかる時間が8.9時間です。抗うつ剤としては効果の持続が短いお薬です。これですと1日1回の服薬では効果が安定しないので、2~3回の服薬が必要になります。

また、ルボックスは肝臓の分解酵素の邪魔をしてしまいます。他の薬と一緒に飲むと、この薬の分解を邪魔してしまって効果を増強してしまいます。睡眠薬のロゼレムや筋肉の緊張を和らげるテルネリンでは、急激に効果が強くなってしまうので併用が禁止となっています。

 

2.ルボックスの作用機序とは

セロトニンの再取り込みを阻害することで効果を発揮するSSRIです。

不安や落ち込みといった症状には「セロトニン」が関係しているといわれていて、意欲や気力は「ノルアドレナリン」、興味や楽しみは「ドパミン」が関係しているといわれています。

ルボックスは、脳内のセロトニンという神経伝達物質を増加させることで、抗うつ効果がもたらされるといわれています。どのようにセロトニンを増やすかというと、不要になったセロトニンの回収を邪魔しているのです。

セロトニンは、神経と神経の橋渡しを行う神経伝達物質です。分泌された神経伝達物質は、役割を果たすと回収されます。このことを再取り込みと呼びます。ルボックスは、この再取り込みを阻害することによって、セロトニンの量を増やします。回収されずに残ったセロトニンは残って作用し続けるので、効果が発揮されるのです。

このような働きをする薬を、SSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)といいます。日本で発売されているSSRIは、現時点で4種類あります。ルボックスの他、ジェイゾロフト、レクサプロ、パキシルです。

 

3.ルボックスと他の抗うつ剤との比較

SSRIの中ではマイルドにセロトニンに作用して、他の受容体への影響は少ないです。抗コリン作用がほとんど認められないのが特徴的です。

以下の表では、主な抗うつ薬の作用をまとめてみました。これを踏まえて、ルボックスの作用の特徴を考えてみましょう。

代表的な抗うつ剤について、作用を比較してまとめました。

SSRIは、セロトニンだけに作用するように工夫をしているお薬です。ですが、他の物質にも少しずつは作用してしまいます。ルボックスは、他の受容体に対してはほとんど作用しません。

それに対してパキシルは、抗コリン作用が比較的強くみられます。また、セロトニンだけでなくノルアドレナリンにも作用がみられます。ジェイゾロフトではドパミン作用が多少認められます。レクサプロは他の受容体にほとんど作用しません。

セロトニンを増加させる作用は、他のSSRIに比べるとマイルドです。SSRIの副作用にはセロトニン作用によるものが中心ですので、副作用が全体的に少ないです。

 

SNRIは、セロトニンとノルアドレナリンを増加させるお薬です。サインバルタとトレドミンですと、サインバルタの方が効果がしっかりとしています。

NaSSAも、セロトニンとノルアドレナリンを増加させる効果が強いです。抗ヒスタミン作用による眠気や食欲増加が目立つお薬ですが、うまくあえば効果が強いお薬です。

昔からある三環系抗うつ剤では、いろいろな受容体に作用してしまいます。ですから副作用が多いのですが、効果の面でも新しい抗うつ剤よりも強いです。

 

4.ルボックスの効き方

血中濃度は8.9時間で半減します。

抗うつ薬は、不安や不眠に関しては、効果がすぐに表れることもありますが、一般的には効果が出てくるには2週間程度かかります。

抗うつ薬が安定して効果を発揮するためには、常に身体の中に薬がある状態が必要です。薬を規則正しく服用していると、身体の中に少しずつ薬がたまっていきます。薬の服用を始めて4~5日ぐらいで薬の体内での濃度が安定します。

ルボックスを服用すると4~5時間ほどで血中濃度が最高値になります。そこから徐々に血中濃度が低下していき、8.9時間で血中濃度が半減します。抗うつ薬は1日中効果が続く必要がある薬ですので、抗うつ薬の中では身体から抜けていきやすいです。

ルボックスは、1日1回の服用では血中濃度が不安定になってしまいます。ルボックスを飲むと13~14時間で濃度が半分になってしまいます。ですから、少なくとも1日に2回以上は服用した方がよいです。3回にした方が濃度は安定します。

 

25mgを1日1~2錠からはじめて、問題がなければ少しずつ薬の量を増やしていきます。抗うつ剤は2週間くらいして効果がみられてくることが多いので、効果を見ながら少しずつ増量して有効な量を探っていきます。

最大容量の目安は150mgとなっていますが、地域によってはもう少し高用量で使うこともできます。200mgまでは大丈夫なことが多いかと思います。ルボックスの薬の説明書(インタビューフォーム)では、300mgまで使って効果を比較しています。それによると、200mgまでで十分有効性が確認されたとなっています。

 

5.ルボックスの相互作用の多さ

併用するお薬の効果を増強してしまいます。テルネリンとロゼレムは併用が禁止されています。

ルボックスには、他のお薬にはない特徴があります。相互作用がとても多い薬で、他の薬と一緒に飲むときは注意しなければいけません。他の薬の効果を増強してしまうのです。たいていのお薬は、肝臓で分解されて身体の外に出ていきます。

このお薬の分解には、肝臓のCYPという酵素が重要な働きをしています。ルボックスは、このCYPの働きを邪魔してしまうのです。ですから、なかなかお薬が分解されなくなって効果が増強されるのです。

CYPにも種類がたくさんありますが、フルボキサミンはCYP1A2、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、CYP3A4の阻害作用があります。特にCYP1A2、CYP2C19阻害活性が強いです。ですから、いろいろなお薬に影響してしまいます。

 

相互作用のために併用が禁止されているお薬の中でよく使われるものが2つあります。テルネリンという筋弛緩薬とロゼレムという睡眠薬です。

テルネリンは、CYP1A2で代謝されるので、併用すると血中濃度が12倍にもなります。この結果、血圧が急激に低下してしまうので禁止されています。ロゼレムもCYP1A2で代謝されるので、併用すると血中濃度が27倍に増加してしまいます。このため、併用が禁止されています。

 

6.ルボックスの副作用

副作用は全体的に少ないですが、吐き気と下痢が目立ちます。

ルボックスは、セロトニンを増やす効果にしぼったお薬です。ですから、セロトニンが過剰に働いてしまうことによる副作用が多いです。セロトニンが胃腸を刺激してしまうことで、吐き気や下痢がみられることがあります。ルボックスでは、SSRIの中でも特に多くみられます。

また、睡眠が浅くなって不眠傾向になる方もいます。反対に眠気が出てくる方もいらっしゃいます。多少の抗ヒスタミン作用などが関係しているのでしょうか。食事に関しては、代謝が悪くなることで太りやすい傾向になります。SSRIの中でも、ルボックスは性機能障害が少ないですが20~30%ほどの方に見られます。

代表的な抗うつ薬の副作用の比較を以下にまとめます。ルボックスは副作用が全体的に少ないお薬です。

代表的な抗うつ薬について、副作用を比較して表にまとめています。

ルボックスの副作用について詳しく知りたい方は、
ルボックスの副作用(対策と比較)
をお読みください。

 

7.ルボックスが向いている人とは?

ルボックスの適応を踏まえて、どのような方に向いているお薬なのかみていきましょう。

 

7-1.ルボックスの適応とは?

<適応>

  • うつ病・うつ状態
  • 強迫性障害
  • 社会不安障害

<適応外>

  • 不安障害

ルボックスは、うつ病以外の様々な不安の病気に対しても適応が認められています。保険では、強迫性障害や社会不安障害での適応が認められています。

特に強迫性障害では昔からよく使われていて、効果が不十分な時には三環系抗うつ薬のアナフラニールと組み合わせて使われます。適応に認められていない不安障害でも、表向きの病名を変えて使ったりすることがあります。

 

7-2.ルボックスが向いている人とは?

  • 仕事や家庭をこなしながら治療を進めていく方
  • 不安が強い方
  • 症状が軽い方
  • 若者
  • 薬をあまり併用していない高齢者

それではルボックスは、どのような人に向いているでしょうか?

ルボックスの特徴としては、SSRIの中ではマイルドな薬で副作用も少なく、比較的使いやすいお薬です。抗うつ薬は眠気が強いものも多く、薬を飲むと仕事にならなくなることもあります。ルボックスでも眠気が出てきてしまう方もいますが、他の薬に比べると眠気は少ないです。ですから、仕事や家庭をこなしながら治療をしていく方に向いています。

また、様々な不安障害でも適応が通っているように、不安への効果も期待できます。下痢や嘔吐などの副作用は多いものの、その他の副作用は少ないので様々な不安障害で使いやすいです。用量調整が細かくできるお薬でもありますので、若者や高齢者に使いやすいです。

若い方は思考が柔軟なので、精神療法を重ねていくと変わってくれます。薬に過度に頼らなくても大丈夫なことも多いです。ちょっとずつ薬を増やしていくことで、安心感から不安を克服できることもあります。私の患者さんの中には、長年の社会不安障害で悩んでいた方が、ルボックス50mgでNHKの取材を受けても動じずに受け答えができていました。

高齢者でも、ルボックスは認知機能への影響が少ないので使いやすい薬です。ですが、ルボックスを他の薬と併用すると効果を増強させてしまいます。ですから、血圧の薬やコレステロールの薬など、いろいろな薬を飲まれている方には使うことができません。

SSRIでは唯一、「運転をさせないように」と書いてあるお薬です。ですから、車の運転をされている方には使いにくいお薬です。

 

まとめ

セロトニンの再取り込みを阻害することで効果を発揮するSSRIです。

SSRIの中ではマイルドにセロトニンに作用して、他の受容体への影響は少ないです。抗コリン作用がほとんど認められないのが特徴的です。

血中濃度は8.9時間で半減します。

併用するお薬の効果を増強してしまいます。テルネリンとロゼレムは併用が禁止されています。

副作用は全体的に少ないですが、嘔吐下痢が目立ちます。仕事や家庭をこなしながら治療を進めていく方・不安が強い方・症状が軽い方・若者・薬をあまり併用していない高齢者に向いています。

販売者名 アッビィ合同会社
分類 SSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)
剤形 錠剤(25mg・50mg・75mg)
薬価 錠剤(36.1円・62.2円・85.7円)
ジェネリック フルボキサミン
成分(一般名) フルボキサミン
半減期  8.9時間
用法 1日2回~3回 最大150mgまで(200~300mgも可能なことあり)

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