エビリファイ錠の効果と特徴

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医3名、精神科医4名で協力して診療をしています。所属医師で協力して、記事を書いています。
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エビリファイ錠(一般名:アリピプラゾール)は、2006年に発売された第二世代の抗精神病薬(非定型抗精神病薬)です。

エビリファイ錠は、独特のメカニズムで作用するお薬です。ドパミンの分泌を適正な量に調整してくれるので、DSS(ドパミン・システム・スタビライザー)と呼ばれています。

統合失調症の治療薬としては、陰性症状や認知機能の改善効果に優れるお薬です。このため統合失調症だけでなく、双極性障害やうつ病などにも適応が認められているお薬です。

ここでは、エビリファイ錠の効果と特徴を詳しくお伝えしていきたいと思います。他の抗精神病薬とも比較しながら、どのような方に向いているのかを考えていきましょう。

 

1.エビリファイの作用の仕組み(作用機序)

ドパミンD受容体の部分作動薬として作用し、ドパミンのバランスを整えます。ドパミン過剰な時は抑制に働き、欠乏している時は促進に働きます。このため、幻覚や妄想などの「陽性症状」と、意欲減退や感情鈍麻などの「陰性症状」の両方改善していきます。

統合失調症では、脳内のドパミンに異常があることが分かっています。

ドパミンが過剰に分泌されると、陽性症状とよばれる幻覚や妄想などが起こります。脳の中でも「中脳辺縁系」と呼ばれる部分で、ドパミンが過剰になっています。

一方で「中脳皮質系」という脳の部分では、ドパミン分泌が落ちています。やる気が起こらない、集中できないなどの陰性症状は、このドパミンの減少が原因となって生じます。

 

統合失調症の目立つ症状は幻覚や妄想といった陽性症状ですから、ドパミンを抑え込む必要があります。ですが、ドパミンを抑え込み過ぎると、陰性症状には効果が期待できなくなってしまいます。

そこでエビリファイは、このジレンマを独自のアイデアで解決しました。エビリファイは、ドパミン受容体に強力にくっつくパーシャルアゴニスト(部分作動薬)として作用します。

エビリファイはドパミン受容体にガッチリとくっつきますが、フルには作用せず、ほどほどに作用します。(およそ17%の活性といわれています。)ドパミンが周囲にたくさんある状況では、そのドパミンが受容体に作用できなくなりますので、ドパミン作用が抑えられます。一方で、ドパミンが周りに全然ない状況では、エビリファイがドパミン受容体に作用してドパミンを増やします。

※専門的に知りたい方だけお読みください。厳密にいうとエビリファイは、ドパミン神経のシナプス前部の自己受容体に作用してドパミンの分泌を促し、シナプス後部のドパミン受容体をブロックします。エビリファイが低用量であれば、前者が優位となってドパミンが増加します。エビリファイが高用量であれば、後者が優位になってドパミンがブロックされます。

このようにしてエビリファイは、中脳辺縁系ではドパミンを抑制し、中脳皮質系ではドパミンを増加します。陽性症状と陰性症状の改善を両立させたお薬なのです。

エビリファイは、ドパミン分泌を適正な量に調整して安定化させます。このため、DSS(ドパミン・システム・スタビライザー)と呼ばれています。

 

2.エビリファイの効果と特徴

まずは、エビリファイの作用の特徴をまとめたいと思います。専門用語も出てきますが、後ほど詳しく説明していますので、わからないところは読み飛ばしてください。

エビリファイの統合失調症への効果は、ドパミンとセロトニンに対する作用によってもたらされます。

  • ドパミンD受容体 部分作動作用:⊕陽性症状の改善・陰性症状の改善・錐体外路症状の軽減
  • セロトニン2A受容体 遮断作用:⊕陰性症状の改善・錐体外路症状の改善・睡眠が深くなる
  • セロトニン1A受容体 部分作動作用:⊕抗うつ効果・抗不安効果

 

ドパミンとセロトニン以外の受容体には、エビリファイはほとんど作用しません。このため副作用が少ないのですが、気持ちを落ち着かせる鎮静効果が弱いという弱点にもなります。

  • セロトニン2C受容体遮断作用(中等度):体重増加
  • α1受容体遮断作用(弱い):ふらつき・立ちくらみ・射精障害
  • ヒスタミン1受容体遮断作用(弱い):体重増加・眠気
  • ムスカリン受容体遮断作用(わずか):口渇・便秘・排尿困難

これらをふまえて、エビリファイの特徴をメリットとデメリットに分けて整理してみましょう。

 

2-1.エビリファイのメリット

  • 陰性症状や認知機能の改善効果が大きい
  • ドパミン不足による副作用が少ない
  • 眠気や体重増加といった副作用が全体的に少ない
  • 抗うつ効果や抗躁効果が期待できる
  • 1日1回の服用で済む
  • 口の中で溶ける錠剤や内用液が発売されている
  • 持続性注射剤が発売されている

エビリファイの作用の特徴は、「ドパミンを完全にブロックするのではなく、適切な量に調整すること」です。このため、必要以上にドパミンをブロックしてしまうことが少ないです。中脳皮質でのドパミンの増加やセロトニンの作用によって、陰性症状や認知機能の改善効果に優れるお薬です。

また、ドパミンを過剰にブロックしてしまうことによる副作用が少ないです。錐体外路症状(ふるえ・筋肉のこわばり)や高プロラクチン血症(乳汁分泌・生理不順・性機能障害)は、あまり認められません。

さらにエビリファイは、ドパミンとセロトニン以外の受容体への作用が弱いため、副作用が全体的に少ないです。多くの抗精神病薬で問題となる、体重増加、眠気、ふらつき、性機能障害といった副作用が少ないです。

エビリファイが使われるのは、統合失調症だけではありません。抗うつ効果や抗躁効果が認められていて、双極性障害やうつ病(補助として)にも適応が認められています。

 

エビリファイは作用時間が長いお薬なので、1日1回の服用でも効果が持続するというメリットがあります。回数が少ない方がお薬の飲み忘れもなくなります。

また、さまざまな剤形が発売されており、口の中ですぐに溶けてしまう口腔内崩壊錠、内用液などが発売されています。2015年5月に、持続性注射剤も発売されています。1か月に1回の注射で、エビリファイの効果が持続します。

 

2-2.エビリファイのデメリット

  • 鎮静作用が弱い
  • 陽性症状を悪化させることがある
  • いきなり高用量を使わなければいけないことがある
  • アカシジアが多い
  • 薬価が高い

エビリファイの最大のデメリットは、鎮静作用の弱さです。

エビリファイはドパミンとセロトニンに選択的に作用するお薬なので、抗ヒスタミン作用や抗α1作用、抗コリン作用は少ないです。これはエビリファイの副作用の少なさにつながりますが、裏を返せば、気持ちを落ち着かせる鎮静作用が弱いということになります。興奮があまりに強い患者さんには向きません。

また、エビリファイは部分作動薬であるので完全にドパミンをブロックできないという欠点があります。このため、幻覚や妄想といった陽性症状を抑えられずに悪化してしまうこともあります。他の抗精神病薬からエビリファイに切り替える時には、ドパミンのブロックが甘くなってしまうこともあります。

エビリファイは、低用量と高用量では作用の方向性が異なるお薬です。統合失調症の症状が激しくて興奮が強かったり、躁症状のときは高用量で使う必要があります。少ない量ではむしろドパミンを増やしてしまい、気持ちをあおってしまうこともあるのです。ですから、高用量から使わなければいけないこともあります。

 

エビリファイの副作用としてアカシジアが目立ちます。アカシジアとは、身体がソワソワしてしまったり、ムズムズしてしまうことで落ち着かなる症状です。ドパミンによる錐体外路症状の一種といわれています。エビリファイを開始した直後に認められることが多く、量が少なくても認められることがあります。

さらにエビリファイは、薬価が高いお薬です。まだジェネリックも発売されておらず、薬価が高くなってしまいます。統合失調症や双極性障害ではエビリファイを高用量必要となることが多く、薬価が非常に高くなってしまいがちです。よくなったからといってすぐに減量していくのも難しいお薬なのです。

 

エビリファイの副作用について詳しく知りたい方は、
エビリファイの副作用(対策と比較)
をお読みください。

 

3.エビリファイの作用時間と使い方

エビリファイは最高血中濃度到達時間が3.6時間、半減期が61時間の非定型抗精神病薬です。統合失調症では6~12mgから開始してすぐに増量することが多いです。躁状態では12mgから、うつ状態では1.5~3mgから使われます。最大30mgまで使えます。

エビリファイを服用すると、4.8時間で血中濃度がピークになります。そこから少しずつ薬が身体から抜けていき、28.5時間ほどで血中濃度が半分になります。

この血中濃度がピークになるまでの時間を「最高血中濃度到達時間」、血中濃度が半分になるまでを「半減期」といいます。

 

このため、1日1回の服用でも効果がしっかりと持続するお薬です。一番服用しやすい時間帯を見つけて飲むようにしましょう。多くの場合が夕食後や就寝前になります。

エビリファイの添付文章では、統合失調症・躁症状・うつ病で用法が異なります。まとめると以下のようになります。

  • 統合失調症:6~12mgから開始して、1日6~24mgを維持量。1日1~2回投与で、最大量30mgまで。
  • 躁症状:24mgから開始して、1日12~24mgを維持量。1日1回投与で、最大量30mgまで。
  • うつ病:3mgから開始して、効果によって3mgずつ調整する。1日1回投与で、最大量15mgまで。

統合失調症では、多くの場合12mgから始めます。興奮や攻撃性が強い方では、すぐに24mgまで上げてしまいます。躁症状では、添付文章通り24mgから開始します。うつ病では、抗うつ剤で十分な効果がない時に使われます。少量で使うことで効果が増強されるので、1.5~3mgから使っていきます。

エビリファイは作用時間が長いので、効果が安定するまでには2週間ほどかかります。このため、じっくりと効果を見ていく必要があります。

エビリファイは副作用が全体的に少なく、量を増やしても大きく変わらない傾向にあります。このため、飲み始めに問題がなければ、思い切って量を増やすことが多いです。症状が落ち着いてきてから少しずつ減量していくことで、適切な量を見つけていくお薬です。

 

4.エビリファイとその他の抗精神病薬の比較

エビリファイは、ドパミンとセロトニンに選択的に作用します。このため、副作用が全体的に少なく、鎮静作用が弱いです。

抗精神病薬の作用を比較して一覧にしました。

代表的な抗精神病薬の作用を比較して、それぞれのお薬の位置づけを考えていきましょう。

統合失調症の治療薬としては、まずは第二世代の非定型抗精神病薬から処方されることが一般的になっています。陰性症状への効果も期待できますし、何よりも副作用が軽減されていて患者さんへの負担が少ないからです。

非定型抗精神病薬には、大きく3つのタイプが発売されています。それぞれの特徴をざっくりとお伝えしたいと思います。

  • SDA(セロトニン・ドパミン拮抗薬):ドパミンとセロトニン遮断作用が中心
    商品名:リスパダール・インヴェガ・ロナセン・ルーラン
    特徴:⊕幻覚や妄想などの陽性症状に効果的 ⊖錐体外路症状や高プロラクチン血症が多め
  • MARTA(多元受容体標的化抗精神病薬):いろいろな受容体に適度に作用
    商品名:ジプレキサ・セロクエル・シクレスト
    特徴:⊕鎮静作用や催眠作用が強い ⊖太りやすい・眠気が強い・糖尿病に使えない
  • DSS(ドパミン受容体部分作動薬):ドパミンの分泌量を調整
    商品名:エビリファイ
    特徴:⊕副作用が全体的に少ない ⊖アカシジア(ソワソワ)が多い・鎮静作用が弱い

非定型抗精神病薬がしっかりと効いてくれればよいのですが、効果が不十分となってしまうこともあります。急性期の激しい症状を抑えるためには、定型抗精神病薬の方が効果が優れています。また、代謝への影響は定型抗精神病薬の方が少ないです。

定型抗精神病薬は、セレネースの系統とコントミンの系統の2つに分けることができます。

  • セレネース系(ブチロフェロン系):ドパミン遮断作用が強い
    特徴⊕幻覚や妄想などの陽性症状に効果的 ⊖錐体外路症状や高プロラクチン血症が多い
  • コントミン系(フェノチアジン系):いろいろな受容体に全体的に作用する
    特徴⊕気持ちを落ち着ける鎮静作用が強い ⊖幻覚や妄想などの陽性症状には効果が乏しい

エビリファイは、非定型抗精神病薬のDSSに分類されます。セロトニンとドパミンに選択的に作用するので、副作用は全体的に少ないです。その一方で、鎮静作用が弱く、興奮や攻撃性が強い時には力不足となってしまいます。ただ、中長期的にみて副作用が少なく、飲み心地のよいお薬といえます。

 

5.エビリファイの適応疾患とは?

<適応>

  • 統合失調症
  • 双極性障害における躁症状の改善
  • うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)

<適応外>

  • 自閉症の易刺激性(現在適応申請中)
  • せん妄
  • 過食症状の軽減

エビリファイは統合失調症のお薬として発売されましたが、相次いで躁症状やうつ症状に対して適応が認められました。

実際の臨床の現場でも、この3つの病気で使われることがほとんどです。エビリファイは低用量ではドパミンを増加させ、高用量では減少させるお薬です。このため、ドパミンのバランスが崩れている病気で使われています。

統合失調症では、上述させていただいたように、ドパミンのバランスを整えることで効果が期待できます。躁症状でも、中脳辺縁系のドパミン過剰が原因の一つと考えられていますので、エビリファイを高用量使うことで効果が期待できます。

うつ病では、モノアミンと呼ばれるセロトニン・ノルアドレナリン・ドパミンが足りなくなっていると考えられています。エビリファイでは、低用量でドパミンを増やす作用があります。さらに、セロトニン1A受容体を少しだけ刺激する作用があります。このため、ドパミンだけでなくセロトニンの増加も期待できます。

ただし、うつ病では最初から使うことは適応とされていません。抗うつ剤を十分に使っても改善が不十分なときに、後押しとして使われます。増強療法(augmentation)という使い方で、適応が認められています。

 

エビリファイは、これ以外にも使われることがあります。アメリカでは、自閉症の易刺激性にも承認されています。自閉症の患者さんでは情緒が不安定となり、パニックやカンシャク、興奮したり怒りっぽくなったり、攻撃性や自傷行為などが認められることがあります。このような時に情緒の不安定さを軽減させてくれる効果が期待できます。

エビリファイは、せん妄という急激な意識障害にも効果が期待できます。せん妄になると、急にぼけてしまって、今どこで何をしているのかがわからなくなってしまいます。このため周りの言葉も入らなくなってしまい、興奮したり暴力的になってしまうこともあります。エビリファイによって改善が期待できます。

また、過食症状の軽減に役立つこともあります。エビリファイはどちらかというと食欲が減少する方が多いお薬です。過食症状はいろいろな原因で認められることがあるので、一概にエビリファイが効果があるとは言えませんが、ひとつの治療の選択肢となっています。エビリファイを低用量で使うと、過食衝動が落ち着く方がいらっしゃいます。

 

6.エビリファイが向いている人とは?

  • 興奮や攻撃性がそこまで強くない方
  • 他の抗精神病薬では効果が乏しかった方
  • 副作用を減らしたい方
  • 錐体外路症状を和らげたい方
  • 1日1回の服用がよい方

エビリファイの特徴は、「副作用が全体的に少なく、鎮静作用も弱いお薬」でした。この特徴を踏まえて、どのような方に向いているのかを考えていきましょう。

エビリファイは鎮静作用が弱いお薬です。このため、興奮や攻撃性があまりに強い患者さんには向いていません。鎮静作用のある他のお薬と併用して使うこともありますが、このような時は鎮静作用の強いジプレキサやセロクエル、リスパダールなどが使われることが多いです。

エビリファイは、鎮静作用が弱いというデメリットはありますが、うまく身体にあうと飲み心地のよいお薬といえます。眠気やふらつきが少ないので、生活への支障が少ないです。また、陰性症状や認知機能を改善する効果も高く、人間らしさが戻ってくるような印象のあるお薬です。

 

エビリファイは他の抗精神病薬とは全く異なる作用機序なので、他の抗精神病薬で効果が乏しかった方は試してみる価値があります。また、副作用が全体的に少ないので、他の抗精神病薬から切り替えることもあります。

他の抗精神病薬で錐体外路症状がみられたときは、エビリファイ少量を併用することで、緩和できることがあります。エビリファイがドパミン受容体に少しだけ作用することにより、他のお薬によるドパミン遮断作用を和らげてくれます。

また、エビリファイは1日に1回の服薬で効果が持続するので、服薬がシンプルになります。1日に2~3回の服薬にすると飲み忘れてしまう方は、エビリファイにして飲み方をシンプルにすることもあります。

 

まとめ

エビリファイの特徴は、「副作用が全体的に少なく、鎮静作用も弱いお薬」です。

エビリファイのメリットとしては、

  • 陰性症状や認知機能の改善効果が大きい
  • ドパミン不足による副作用が少ない
  • 眠気や体重増加といった副作用が全体的に少ない
  • 抗うつ効果や抗躁効果が期待できる
  • 1日1回の服用で済む
  • 口の中で溶ける錠剤や内用液が発売されている
  • 持続性注射剤が発売されている

エビリファイのデメリットとしては、

  • 鎮静作用が弱い
  • 陽性症状を悪化させることがある
  • いきなり高用量を使わなければいけないことがある
  • アカシジアが多い
  • 薬価が高い

エビリファイが向いている方は、

  • 興奮や攻撃性がそこまで強くない方
  • 他の抗精神病薬では効果が乏しかった方
  • 副作用を減らしたい方
  • 錐体外路症状を和らげたい方
  • 1日1回の服用がよい方

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