セルトラリン錠の効果と特徴

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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セルトラリンとは、SSRIのジェイゾロフトの一般名(成分名)です。

ジェイゾロフトは2006年に発売された新しいお薬ですが、イギリスで1990年から使われ始め、全世界に広まっていきました。海外ではすでに発売から年月がたっており、ジェネリックも発売されています。

ジェイゾロフトは、新しい抗うつ薬の中でも効果と安全性のバランスが非常によいと定評があります。副作用が少ないため、心療内科や精神科だけでなく内科などでも処方されることがあります。日本でも2015年12月11日にジェネリックのセルトラリン錠が発売されました。

ここでは、セルトラリン錠の効果を中心に、他の抗うつ薬と比較しながらお伝えしていきたいと思います。

 

1.セルトラリンのメリットとデメリット

はじめに、セルトラリンの特徴をメリットとデメリットにわけてご紹介していきたいと思います。

 

1-1.セルトラリンのメリット

  • 抗不安効果が強い
  • 副作用が少ない
  • 離脱症状が少ない
  • ジェネリックなので安い

セルトラリンの特徴を簡単にいうと、「効果と副作用のバランスがよい抗うつ剤」です。セルトラリンよりも効果がしっかりしている薬はあります。昔から使われている三環系抗うつ薬や新しい抗うつ薬であるNaSSA(リフレックス/レメロン)の方が効果は強いです。

ですが効果が強いお薬は副作用が多く、そのせいでお薬が飲めなくなってしまう方も多いです。セルトラリンは、副作用が全体的に少ないので、しっかりと治療に必要な量まで薬を使えます。

セルトラリンは、不安を落ち着ける効果もしっかりとしていて、様々な不安の病気にも効果がみとめられています。同じSSRIのレクサプロと共に、不安が強い方や副作用を気にされる方には使いやすいお薬です。

しばらくSSRIを服用してから中止すると、身体に慣れてしまって離脱症状が起こります。セルトラリンは、離脱症状が比較的少ないという特徴があります。このためSSRIの中では、お薬を止めやすいです。

ジェイゾロフトのジェネリック医薬品であるセルトラリン錠は、非常に多くの会社から発売されました。このため、およそ5割の薬価になっています。ジェイゾロフト錠は高いお薬なので、経済的にはかなり負担が減ります。

 

1-2.セルトラリンのデメリット

  • 欧米よりも使える量が少ない
  • 性機能障害が必発

セルトラリンの最大の弱点は、欧米よりも使える量が少ないことがあげられます。欧米では、セルトラリンは200mgまで使うことができます。それに対して日本では、100mgまでしか使うことができません。

これは日本人の臨床試験で、100mgまでしか有効性に差を示せなかったためです。患者さんの中には高用量が必要になる方もいます。特に強迫性障害では高用量が必要になるので、セルトラリンでは上限まで使っても量が不十分となってしまうことがあります。

副作用としては、胃腸障害が多いです。飲み始めに認められることがほとんどですが、吐き気や下痢などが認められます。その多くは、薬に身体が慣れていくことで落ち着いていきます。

また、性機能障害が必発といっていいお薬です。ほとんどの抗うつ剤でみられる副作用ですが、セルトラリンは特に多いです。およそ80%の方に性機能障害がみられると報告されているので、必発と考えた方がよいです。

セルトラリンの副作用について詳しく知りたい方は、「セルトラリンの副作用(対策と比較)」をお読みください。

 

2.セルトラリンの効果と抗うつ剤での比較

セルトラリンは、ドパミンを増やす効果が特徴的です。

以下の表では、主な抗うつ薬の作用をまとめてみました。これを踏まえて、セルトラリンの作用の特徴を考えてみましょう。

代表的な抗うつ剤について、作用を比較してまとめました。

SSRIは、セロトニンだけに作用するように工夫をしているお薬です。ですが、他の物質にも少しずつは作用してしまいます。古い三環系のお薬などと比較すると、セロトニンに作用が絞られていることがわかると思います。

セルトラリンの薬の作用としての特徴は、セロトニンだけでなくてドパミンにも作用することです。ドパミンは、興味や喜びに関係しています。抗うつ剤を使ってよくなってきても、「何だか興味が持てない」「楽しいと感じられない」「やりがいが出ない」とおっしゃる方が多いです。

ドパミンを増やすようなお薬が、このような症状を改善することはよく経験します。ですから、興味や喜びが落ちているような方には、ジェイゾロフトを使ってみても良いかも知れません。しかしながら、私の実感としては大きな差は感じていません。

他のSSRIとしては、パキシルはノルアドレナリン作用や抗コリン作用が認められ、レクサプロはセロトニンだけに特化しています。ルボックス/デプロメールは他の薬との相互作用が大きく、飲んでいる他の薬の効果を強くするという特徴があります。

 

SNRIは、セロトニンとノルアドレナリンを増加させるお薬です。サインバルタとトレドミンですと、サインバルタの方が効果がしっかりとしています。

NaSSAも、セロトニンとノルアドレナリンを増加させる効果が強いです。抗ヒスタミン作用による眠気や食欲増加が目立つお薬ですが、うまくあえば効果が強いお薬です。

昔からある三環系抗うつ剤では、いろいろな受容体に作用してしまいます。ですから副作用が多いのですが、効果の面でも新しい抗うつ剤よりも強いです。

 

3.セルトラリンの強さ

効果はしっかりとしていますが、副作用が少ない薬です。さまざまな抗うつ剤を比較すると、セルトラリン(ジェイゾロフト)とレクサプロのバランスがよいといわれています。

セルトラリン(ジェイゾロフト)の抗うつ剤としての強さはどのくらいあるでしょうか?様々な新しい抗うつ剤12種類の効果と副作用を比較した報告をご紹介したいと思います。

抗うつ剤の効果と副作用の比較を図表でしめしました。(MANGAstudy)

MANGA studyといわれている新しい抗うつ剤を比較した論文をたくさん集めてきて分析したものです。2009年にランセットという超有名専門誌に発表されたものです。この結果をみると、ジェイゾロフトはとてもよい評価になっています。

  • 有効性:①リフレックス/レメロン ②レクサプロ ③ベンラファキシン ④ジェイゾロフト ⑤シタロプラム
  • 安全性:①レクサプロ ②セルトラリン ③ブプロピオン ④シタロプラム ⑤フルオキセチン

セルトラリンは、有効性で4位、安全性で2位となっています。薬の金額なども含めて総合的に考えると、この研究ではセルトラリンが一番よいと結論づけています。この報告を細かくみると、この順位どおりとは限りませんが、セルトラリンが有効性と安全性のバランスがよいことは間違いがありません。

この比較にはありませんが、「効果がどれだけ強いのか?」という点だけをみると、古くからある三環系抗うつ薬の方が強いです。ですが副作用が強く出てしまうので、まずは新しい抗うつ薬から使っていくのが治療の主流となっています。新しい抗うつ薬の中でも、セルトラリンはしっかりと効果が期待できる薬になります。

 

4.セルトラリンの効き方

血中濃度は22~24時間で半減するので、1日1回の服用で効果が1日持続します。

抗うつ剤は、不安や不眠に関しては、効果がすぐに表れることもありますが、一般的には効果が出てくるには2週間程度かかります。

抗うつ剤が安定して効果を発揮するためには、常に身体の中に薬がある状態が必要です。薬を規則正しく服用していると、身体の中に少しずつ薬がたまっていきます。およそ服用を始めて4~5日ぐらいで薬の体内での濃度が安定します。

セルトラリンを服用すると、6.7時間で血中濃度が最高値になります。そこから徐々に血中濃度が低下していき、22~24時間で血中濃度が半減します。このように、セルトラリンは身体から抜けるのがゆっくりなお薬なので、1日1回の服用で効果が1日持続します。

夕方に1回服用とすることが多いでしょうか。1日のどこで服用してもかまいません。薬の説明書には、25mgを1日1錠からとなっています。副作用も少ないので、通常は1錠から始めていきます。薬の効果をみながら、25mgずつ調整していきます。100mgまで使う事ができます。

 

5.セルトラリンが向いている人は?

それではセルトラリンはどのような方に向いているのでしょうか?まずは、セルトラリンがどのような病気に使われているのか、適応をみてみましょう。そして、どのような方に効果的でしょうか?

 

5-1.セルトラリンの適応

<適応>

  • うつ病・うつ状態
  • パニック障害
  • PTSD

<適応外>

  • 全般性不安障害
  • 強迫性障害
  • 月経前緊張症(PMS)

保険上では、うつ病・パニック障害・PTSDの3つの適応があります。不安に対する効果もしっかりとしていて、パニック障害やPTSDでの有効性が確認されていますが、他の不安の病気に効果がないわけではありません。

国に適応を認めてもらうためには、日本で研究をして有効性を改めて示さなければいけません。そのコストが大きいと、正式に適応を申請されないのです。日本では、表向きは違う病名にして、適応外という形で薬が使われています。

セルトラリンは、海外では幅広く適応が認められていて、全般性不安障害や強迫性障害などの不安の病気に使われています。また、生理前に不安定になる月経前緊張症に対して使われることもあります。

 

5-2.セルトラリンが効果的な方

  • 仕事や家庭をこなしながら治療を進めていく方
  • 不安が強い方
  • 病状によっては中止する可能性がある方
  • 女性

それでは、セルトラリンはどのような人に向いているでしょうか?

セルトラリンの特徴は、効果と安全性のバランスがよく副作用が少ないことです。抗うつ薬は眠気が強いものも多く、薬を飲むと仕事にならなくなることもあります。セルトラリンでも全くないわけではありませんが、他の薬に比べると眠気は少ない印象です。ですから、仕事や家庭をこなしながら治療をしていく方に向いています。

またセルトラリンは、不安障害の方にも使いやすいお薬といえます。不安が強い方は、副作用にも敏感なことが多いです。副作用が出てくると、心配になってしまって続けられないことも多いです。

抗うつ剤を使っていく時には、病状によっては中止する可能性があることもあります。例えば双極性障害の可能性がある場合などです。双極性障害の診断が確定していなかったり、うつ状態を脱するためにやむなく使うこともあります。そのような場合は、セルトラリンは離脱症状が少ないので使いやすいです。

性別でいうとセルトラリンは、女性に向いています。男性と女性でのSSRIの効果の違いを比較して、セルトラリンとレクサプロは女性に効果的であったという報告があります。副作用の影響を受けやすい女性には優しい薬なのでしょう。

 

6.一般名と商品名とは?

一般名:セルトラリン 商品名:ジェイゾロフト・セルトラリン

まったく成分が同じものでも、発売する会社が異なればいろいろな商品があるかと思います。医薬品でも同じことがいえます。このためお薬には、一般名と商品名というものがあります。

一般名というのは、薬の成分の名前を意味しています。発売する会社によらずに、世界共通で伝わる薬物の名称です。「セルトラリン(sertraline)」に統一されています。主に論文や学会など、学術的な領域でこれまで使われてきました。

一方で商品名とは、医薬品を発売している会社が販売目的でつけた名称になります。「ジェイゾロフト(jzoloft )」は、製造元であるファイザーがつけた名前です。海外では、ゾロフトという名前で販売されていました。ジェイゾロフトはJapanのzoloftということで、Jzoloftとつけられました。

1990年にイギリスで発売されたので、海外ではすでに特許も切れていてジェネリック医薬品も発売されています。日本では2006年から発売されています。日本の特許も今年には切れて、2015年12月11日にセルトラリン錠が発売されました。薬価もおよそ5割となっています。

ジェネリック医薬品は、さまざまな会社から発売されています。紛らわしさを避けるために、名称をセルトラリン錠に統一されています。セルトラリン錠「〇〇」といった形で、〇〇に会社ごとの名称をつけての発売となっています。

ですから、セルトラリン錠「アメル」、セルトラリン錠「サワイ」、セルトラリン錠「トーワ」といった形になります。

 

まとめ

セロトニンの再取り込みを阻害することで効果を発揮するSSRIです。セルトラリンは、ドパミンを増やす効果が特徴的です。

効果はしっかりとしていますが、副作用が少ない薬です。さまざまな抗うつ薬を比較すると、セルトラリンとセルトラリンのバランスがよいといわれています。

副作用は全体的に少ないですが、嘔吐下痢・不眠・性機能障害がみられます。

セルトラリンが向いているのは、仕事や家庭をこなしながら治療を進めていく方・不安が強い方・病状によっては中止する可能性がある方・女性です。

先発品 ジェイゾロフト
分類 SSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)
剤形 錠剤(25mg・50mg・100mg)・OD錠(25mg・50mg・100mg)
薬価 錠剤(101.3円・175.9円・305.4円)
OD錠(101.3円・175.9円・305.4円)
ジェネリック なし
成分(一般名) セルトラリン
半減期  22~24時間
用法 1日1~2回 最大100mgまで

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