桂枝加竜骨牡蛎湯【26番】の効果と副作用

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医3名、精神科医4名で協力して診療をしています。所属医師で協力して、記事を書いています。
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桂枝加竜骨牡蛎湯は、イライラしたり興奮したりする方にも、疲弊して倦怠感や意欲低下が目立つ方にも使われる漢方薬になります。

桂枝加竜骨牡蛎湯は、ストレスなどによって神経が高ぶっている状態を改善してくれます。ストレスによって消耗している状態を神経衰弱といったりしますが、そのような時にも桂枝加竜骨牡蛎湯がよく使われます。

このような漢方薬なので、やせ気味で体力が衰えており、顔色が悪くて心身が繊細で、体質が虚弱な人に処方される漢方薬です。

このような精神症状以外でよく使われるケースとしては、心身の疲労から精力減退している場合です。男性だけでなく女性でも、腹部のドキドキや生理不順があるときに使われます。

漢方薬にはそれぞれ番号がついていて、桂枝加竜骨牡蛎湯は「ツムラの26番」などとも呼ばれます。ここでは、病院で処方される桂枝加竜骨牡蛎湯の効果と副作用について、詳しくみていきたいと思います。

 

1.桂枝加竜骨牡蛎湯【26番】の生薬成分の効能

桂枝加竜骨牡蛎湯は、風邪の引きはじめの頭痛や微熱、悪寒といった症状がある時によく処方される桂枝湯に、精神安定・鎮静作用のある竜骨と牡蠣が加わってできています。

漢方は、何種類かの生薬を合わせて作られています。生薬は自然界にある天然のものが由来です。天然のものといっても、生薬それぞれに作用が認められます。ですから、漢方薬は生薬の合剤といえるのです。

桂枝加竜骨牡蛎湯は、7種類の生薬から有効成分を抽出して作られています。まずはそれぞれの生薬成分の作用をみていきましょう。

  • 桂皮(4.0g):発汗作用・解熱作用・鎮静作用・健胃作用・理気作用
  • 竜骨(3.0g):鎮静作用・血管収縮作用
  • 牡蛎(3.0g):鎮静作用・制酸作用
  • 芍薬(4.0g):鎮痛作用・抗痙攣作用・血管拡張作用
  • 生姜(1.5g):発汗作用・制吐作用・健胃作用・鎮咳作用
  • 大棗(4.0g):健胃作用・強壮作用・利尿作用・鎮静作用
  • 甘草(2.0g):鎮痛作用・抗痙攣作用・鎮咳作用

※カッコ内は、ツムラの製剤1日量7.5gに含まれる生薬の乾燥エキスの混合割合です。

桂枝加竜骨牡蛎湯は7種類の生薬からできています。桂枝加竜骨牡蛎湯は、桂枝湯をベースにして、竜骨や牡蠣といった神経の高ぶりをおさえて精神を落ち着かせる効果がある生薬を加えたものです。

桂枝湯という漢方薬は、頭痛や微熱、悪寒など風邪の引きはじめに利用されることが多い漢方薬です。

桂皮はニッキやシナモンとしてよく知られています。身体をあたためながら発汗させ、気をめぐらせる作用があります。

生姜は冷えた身体を温め、消化機能を整える作用があります。大棗は料理にもつかわれているナツメのことですが、胃腸の機能を整えたり、精神を安定させたり筋肉の緊張による痛みを取り除いたりしてくれます。

芍薬は血管を拡張させて血のめぐりを改善させます。甘草は、痛みを取り除いたり筋肉の緊張を緩める作用があります。

 

桂枝湯はこのような生薬成分でできていて、消化機能が低下していて体力が落ちている方に使われます。身体を温めて穏やかに発汗させることで、身体の表面にある病気を改善させます。桂枝加竜骨牡蛎湯は、これに竜骨と牡蛎が加わっています。

竜骨と牡蛎は、どちらも主成分は炭酸カルシウムです。竜骨は以前はマンモスなどの化石を使用していましたが、現在ではゾウやサイ、ウマなど大型の哺乳類の骨を使用しています。牡蛎は私たちが食べる身ではなく、貝殻をすりつぶしたものです。

これらの鉱石類に含まれる炭酸カルシウムが神経の高揚を鎮めてくれます。気分を落ち着かせて、精神を安定させる効果が期待できます。

このようにみてみると、桂枝加竜骨牡蛎湯は気持ちを安定させつつ、穏やかに作用して新陳代謝をよくする漢方薬といえそうです。

桂枝加竜骨牡蛎湯の生薬の由来についてまとめました。

 

2.桂枝加竜骨牡蛎湯の証

陰陽(陰)・虚実(虚)・寒熱(中)・気血水(気逆)

漢方では、患者さん一人ひとりの身体の状態をあらわした「証」を考えながら薬を選んでいきます。証には色々な考え方があり、その奥はとても深いです。

漢方薬を選ぶに当たって、患者さんの体格や体質、身体の抵抗力やバランスの崩れ方などにあわせて「証」をあわせていく必要があります。証を見定めていくには四診という伝統的な診察方法を行っていくのですが、そこまでは保険診療の病院では行わないことがほとんどです。

病院では、患者さんの全体像から「証」を推測して判断していきます。漢方の代表的な証には、「陰陽」「虚実」「寒熱」「表裏」の4つがあります。

このうち医者が参考にする薬の本には、たいてい「陰陽」と「虚実」しかのっていません。陰陽は身体全体の反応が活動的かどうかをみて、虚実は身体の抵抗力や病気の勢いをみます。つまり病院では、以下の2点をみています。

  • 体質が強いかどうか
  • 病気への反応が強いかどうか

さらに漢方では、「気血水」という3つの要素にわけて病気の原因を考えていきます。身体のバランスの崩れ方をみていくのです。漢方の証について詳しく知りたい方は、「漢方の証とは?」をお読みください。

桂枝加竜骨牡蛎湯が合っている方は、以下のような証になります。

  • 陰陽:陰症
  • 虚実:虚証
  • 寒熱:中等症
  • 気血水:気逆(のぼせ・イライラ・緊張・不安)

 

3.桂枝加竜骨牡蛎湯の効果と適応

  • イライラや精神不安が強いストレス性障害
  • 疲労感の強いうつ病や不安障害
  • 神経が過敏で疲労の目立つ不眠症
  • 夜尿症(おねしょ)
  • 眼精疲労や脱毛症
  • 性的神経衰弱、陰萎(ED)

桂枝加竜骨牡蛎湯は、「金匱要略」という漢時代の古典書に紹介されています。7種類それぞれの生薬成分の効果があわさって、ひとつの漢方薬としての効果がみられます。

桂枝加竜骨牡蛎湯に含まれている7種類の生薬のうち、特に竜骨や牡蠣は鎮静効果があり、神経の興奮を鎮める作用が期待できます。このため、神経が過敏になりすぎて生じる不眠やイライラなどに効果があります。

うつ病や不安障害、ストレス性障害などの患者さんで、ストレスから消耗して疲労感の目立つ患者さんに使われることが多いです。

それ以外にも、子どもの夜尿症に使われることがあります。いわゆるおねしょですが、夜尿症は神経の高ぶりが原因となることがあります。桂枝加竜骨牡蛎湯は神経の高まりを鎮める作用がありますので、夜尿症の治療にも用いられます。

また、神経が衰弱すると性機能の低下にもつながることもあり、インポテンス(ED)などはストレスなどが原因で引き起こされることも多いです。桂枝加竜骨牡蛎湯を服用することで精神的に安定し、性機能の回復につながると考えられています。

桂枝加竜骨牡蛎湯は、体力のない、虚弱な方に適した漢方です。桂枝加竜骨牡蛎湯がよく効く方としては、腹直筋が緊張しており、お腹の動脈(腹部大動脈)が拍動していることがあげられます。

なお、添付文章に記載されている桂枝加竜骨牡蛎湯の適応は以下のようになっています。

体質の虚弱な人で疲れやすく、興奮しやすいものの次の諸症
:神経質、不眠症、小児夜泣き、小児夜尿症、眼精疲労

 

4.桂枝加竜骨牡蛎湯の使い方

1日2~3回に分けて、空腹時(食前・食間)が基本です。飲み忘れが多くなる方は食後でも構いません。

桂枝加竜骨牡蛎湯は、ツムラ・コタロー・テイコク・オオスギ・クラシエなどから発売されています。生薬成分の含まれる量は同じなのですが、会社によって漢方薬の1日量が異なります。桂枝加竜骨牡蛎湯では、ツムラ、コタロー、テイコク、オオスギは7.5g、クラシエは6.0gになっています。

桂枝加竜骨牡蛎湯は、1日2~3回に分けて服用します。漢方薬は空腹時に服用することを想定して配合されています。ですから、食前(食事の30分前)または食間(食事の2時間後)に服用します。量については、年齢や体重、症状によって適宜調整します。

漢方薬を空腹時に服用することで、麻黄や附子などの効果の強い生薬は胃酸によって効果をおだやかになり、その他の生薬は早く腸に到達して吸収がよくなります。桂枝加竜骨牡蛎湯では、空腹時の方が吸収はよくなります。

とはいっても、空腹時はどうしても飲み忘れてしまいますよね。現実的には食後に服用しても問題はありません。ただし、保険適応は用法が食前のみなので、形式上は変更できません。

 

5.桂枝加竜骨牡蛎湯の効き目とは?

効果は少なくとも2週間以上かけて、ゆっくりと認められることが多いです。数か月かけてじっくりと使っていきます。

それでは、桂枝加竜骨牡蛎湯の効き目はどのような形でしょうか。

桂枝加竜骨牡蛎湯の効果は、人それぞれです。証がぴったりと合う方には、効果テキメンなこともあります。いままで様々な身体の症状で悩まされていた方が、ビックリするくらいに穏やかになることもあります。その一方で、まったく効果の実感がない方もいらっしゃいます。

桂枝加竜骨牡蛎湯は、一般的には効き目はゆっくりです。とくに病気で悩まされていた期間が長い患者さんほど、そのバランスを整えるには時間がかかります。 効果が表れてくるまでに、少なくとも2週間くらいはかかります。じっくりと時間をかけて効果が認められることもあるので、焦らず使い続けていくことが大切です。

このような効き目なので、抗不安薬のようにすぐに不安を取り除いてくれるような即効性はありません。ですから、不安発作に頓服として使っても効果は期待しにくいです。

漢方薬の効果について詳しく知りたい方は、「病院で処方される漢方薬の効果とは?」をお読みください。

 

6.桂枝加竜骨牡蛎湯の副作用

桂枝加竜骨牡蛎湯では、生薬固有の副作用として偽アルドステロン症に注意が必要です。

漢方薬は一般的に安全性が高いと思われています。しかしながら、生薬は自然のものだから副作用は全くないというのは間違いです。

漢方薬の副作用としては、大きくわけて3つのものがあります。

  • 誤治
  • アレルギー反応
  • 生薬固有の副作用

漢方薬の副作用として最も多いのが誤治です。漢方では、その人の状態に対して「漢方薬」が処方されます。ですから状態を見誤って処方してしまうと、調子が悪くなってしまったり、効果が期待できません。このことを誤治といいます。

誤治では、さまざまな症状が認められます。これを副作用といえばそうなるのですが、その原因は証の見定めを間違えたことにあります。あらためて証を見直して、適切な漢方薬をみつけていきます。

また、食べ物でもアレルギーがあるように、生薬にもアレルギーがあります。アレルギーはどんな生薬にでも起こりえるもので、体質に合わないとアレル ギー反応が生じることがあります。鼻炎や咳といった上気道症状や薬疹や口内炎といった皮膚症状、下痢などの消化器症状などが見られることがあります。飲み始めに明らかにアレルギー症状が出ていたら、服用を中止してください。

そして、生薬自体の作用による副作用も認められます。生薬の中には、その作用が悪い方に転じて「副作用」となってしまうものもあります。

桂枝加竜骨牡蛎湯の生薬成分の甘草は、大量に服用すると生薬としての副作用が懸念されます。「偽アルドステロン症」と呼ばれ、高血圧やむくみ、低カリウム血症などが認められることがあります。

低カリウム血症になると、筋肉のけいれんや麻痺が起こることがあります。甘草の入っている他の製剤やグリチルリチンとの飲み合わせには、十分な注意が必要です。また、長期間にわたって複数の漢方薬を服用するときは念のために注意してください。

漢方薬の副作用について詳しく知りたい方は、「漢方薬で見られる副作用とは?」をお読みください。

 

7.桂枝加竜骨牡蛎湯の効果が期待できる人とは?

桂枝加竜骨牡蛎湯は効果があると信じ込める人の方が、効果が期待できます。

昔から「良薬は口に苦し」といわれてきたように、独特の苦みが漢方の効能を引き立たせてくれることがあります。このような思い込みの効果ともいえるプラセボ効果(偽薬効果)は、心の病気では非常に大きいのです。

一般的に精神科のお薬は、30%ほどのプラセボ効果があるといわれています。臨床試験などを行うと、ダミーの薬でも3割くらいの人には効果が認められるのです。漢方薬のプラセボ効果は、西洋薬よりも大きいという報告もあります。

ですから、桂枝加竜骨牡蛎湯は効くと思い込んで服用した方がよいのです。そういう意味では、信じ込める人の方が効きやすいです。せっかく服用するのですから、「こんなに苦いのだから桂枝加竜骨牡蛎湯は効くんだ!」を思いながら服用してください。

桂枝加竜骨牡蛎湯を心の治療に使う時は、現実的には以下のケースがあります。

  1. 桂枝加竜骨牡蛎湯自体の効果を本当に期待する場合
  2. 副作用で抗うつ剤や抗不安薬が使えない場合
  3. 抗うつ剤や抗不安薬を使うこと対する不安が大きい場合
  4. 薬の量を減らしていく時に不安が強い場合

病気や症状という面で見れば、桂枝加竜骨牡蛎湯は上述してきたような方に向いているといえます。しかしながら、桂枝加竜骨牡蛎湯の効果だけを本当に期待して使うケースばかりではありません。

実際の現場では、さまざまなケースで桂枝加竜骨牡蛎湯が使われています。なにも効能ばかりが大切ではありません。せっかく服用されるのでしたら、しっかり効くと言い聞かせながら服用してみてください。

 

まとめ

桂枝加竜骨牡蛎湯は、風邪の引きはじめの頭痛や微熱、悪寒といった症状がある時によく処方される桂枝湯に、精神安定・鎮静作用のある竜骨と牡蠣が加わってできています。

陰陽(陰)・虚実(虚)・寒熱(中)・気血水(気逆)

桂枝加竜骨牡蛎湯は、以下のような方に使われます。

  • イライラや精神不安が強いストレス性障害
  • 疲労感の強いうつ病や不安障害
  • 神経が過敏で疲労の目立つ不眠症
  • 夜尿症(おねしょ)
  • 眼精疲労や脱毛症
  • 性的神経衰弱、陰萎(ED)

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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医3名、精神科医4名で協力して診療をしています。所属医師で協力して、記事を書いています。
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