柴胡桂枝乾姜湯【11番】の効果と副作用

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医3名、精神科医4名で協力して診療をしています。所属医師で協力して、記事を書いています。
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柴胡桂枝乾姜湯は、神経が過敏になってしまって身体症状や精神症状がみられている方に使われる漢方薬です。

心身がストレスを受けたり不安定な精神状態が長引いたりすると、身体の中の「気」の流れが滞ります。「気」の流れが滞ると、のどが詰まったり胸が張ったり、眠れなくなったりといった症状があらわれます。

柴胡桂枝乾姜湯には、炎症を鎮めながら気の流れをよくする働きがありますので、神経過敏による症状を改善させていくのです。

漢方薬にはそれぞれ番号がついていて、柴胡桂枝乾姜湯は「ツムラの11番」などとも呼ばれます。ここでは、病院で処方される柴胡桂枝乾姜湯の効果と副作用についてお伝えしていきます。

 

1.柴胡桂枝乾姜湯【11番】の生薬成分の効能

柴胡桂枝乾姜湯は、精神安定作用と自律神経を整える作用が中心と言えます。体を温めるため、冷え症などの改善にも効果が期待できます。

漢方は、何種類かの生薬を合わせて作られています。生薬は自然界にある天然のものが由来です。天然のものといっても、生薬それぞれに作用が認められます。ですから、漢方薬は生薬の合剤といえるのです。

柴胡桂枝乾姜湯は、7種類の生薬から有効成分を抽出して作られています。まずはそれぞれの生薬成分の作用をみていきましょう。

  • 柴胡(6.0g):解熱作用・消炎作用・鎮痛作用・鎮静作用・抗ストレス作用
  • 黄芩(3.0g):解熱作用・消炎作用・止血作用
  • 括楼根・瓜呂根(3.0g):消炎作用・抗利尿作用
  • 桂皮(3.0g):発汗作用・解熱作用・鎮静作用・健胃作用・理気作用
  • 牡蠣(3.0g):鎮静作用・制酸作用
  • 甘草(2.0g):鎮痛作用・抗痙攣作用・鎮咳作用
  • 乾姜(2.0g):強壮作用・健胃作用

※カッコ内は、1日量7.5gに含まれる生薬の乾燥エキスの混合割合です。

柴胡桂枝乾姜湯は7種類の生薬からできており、主な生薬は柴胡と黄芩になります。柴胡はよく黄芩と一緒に使われて「柴胡剤」と呼ばれ、消炎作用や鎮静作用があります。これによって自律神経を調整する働きをします。

括楼根は身体を潤す働きをし、脱水を防ぐことで水分調節をします。桂皮と乾姜には、血の巡りをよくする作用があります。

桂皮は皆さんもお馴染みのシナモンやニッキのことです。身体をあたためながら発汗させ、気をめぐらせる作用があります。乾姜は生姜を乾燥させたものなので、身体をあたためる作用があります。血の巡りをよくして、手足の冷えを改善することで体力を補う作用があります。

そのほかに牡蛎は、主成分の炭酸カルシウムに気分を落ち着ける作用があります。また、甘草には穏やかな筋弛緩作用があり、緊張を和らげます。これらの生薬がいっしょに働くことで、よりよい効果を発揮します。

このようにみると柴胡桂枝乾姜湯は、体力が弱くて冷え症で、疲労や貧血の方に対して処方されるお薬です。

柴胡桂枝乾姜湯の生薬の由来をまとめました。

 

2.柴胡桂枝乾姜湯の証

陰陽(陰)・虚実(虚)・寒熱(寒)・気血水(気うつ・気逆)

漢方では、患者さん一人ひとりの身体の状態をあらわした「証」を考えながら薬を選んでいきます。証には色々な考え方があり、その奥はとても深いです。

漢方薬を選ぶに当たって、患者さんの体格や体質、身体の抵抗力やバランスの崩れ方などを見極めて「証」をあわせていく必要があります。証を見定めていくには四診という伝統的な診察方法を行っていくのですが、そこまでは保険診療の病院では行わないことがほとんどです。

病院では、患者さんの全体像から「証」を推測して判断していきます。漢方の代表的な証には、「陰陽」「虚実」「寒熱」「表裏」の4つがあります。

このうち医者が参考にする薬の本には、たいてい「陰陽」と「虚実」しかのっていません。陰陽は身体全体の反応が活動的かどうかをみて、虚実は身体の抵抗力や病気の勢いをみます。つまり病院では、以下の2点をみています。

  • 体質が強いかどうか
  • 病気への反応が強いかどうか

さらに漢方では、「気血水」という3つの要素にわけて病気の原因を考えていきます。身体のバランスの崩れ方をみていくのです。漢方の証について詳しく知りたい方は、「漢方の証とは?」をお読みください。

柴胡桂枝乾姜湯が合っている方は、以下のような証になります。

  • 陰陽:陰証
  • 虚実:虚証
  • 寒熱:寒証
  • 気血水:気滞・気逆(のぼせ・イライラ・緊張・不安)

 

3.柴胡桂枝乾姜湯の効果と適応

  • 体力が低下していて虚弱な軽症うつ病・不安障害・ストレス性障害・不眠症
  • 更年期障害の自律神経症状
  • 冷え性や貧血
  • 慢性的な風邪
  • 慢性肝炎や肝機能障害(胸脇苦満)

柴胡桂枝乾姜湯は、「傷寒論」および「金匱要略」という漢時代の古典書に紹介されています。7種類それぞれの生薬成分の効果があわさって、ひとつの漢方薬としての効果がみられます。

柴胡桂枝乾姜湯には、心身の疲れを取って心を鎮める作用があるので、神経過敏の状態を改善させます。イライラしたり不安になったり、そのために動悸などの自律神経症状や不眠が認められるときには、鎮静作用のある柴胡桂枝乾姜湯が使われます。

柴胡桂枝乾姜湯は、体力のない方に適した漢方です。軽症のうつ病や不安障害、ストレス性障害などの患者さんに使われます。

ストレスが長く続くと交感神経が優位になります。交感神経が優位になると脈が速くなり、身体は過緊張状態になります。このような状態が続くと、肋骨の下から脇腹にかけての腹筋の緊張が強まります。これが胸脇苦満といわれる状態です。ですから、みぞおちあたりに軽い抵抗と押したときに痛みを感じる胸脇苦満という状態の方に向いているといわれています。

女性の冷え性や、いわゆる「血の道症」とよばれる月経不順や月経困難などの生理トラブルなどの症状、更年期障害に伴う諸症状(不安・不眠・動悸・のぼせ)にも柴胡桂枝乾姜湯が効果的とされています。

風邪が長引いて冷えや微熱、倦怠感が続くような時には、柴胡桂枝乾姜湯が使われることもあります。柴胡剤は、慢性肝炎をはじめとした肝機能障害にも効果が認められます。

なお、添付文章に記載されている柴胡桂枝乾姜湯の適応は以下のようになっています。

体力が弱く、冷え症、貧血気味で、動悸、息切れがあり、神経過敏のものの次の諸症:更年期障害、血の道症、不眠症、神経症

 

4.柴胡桂枝乾姜湯の使い方

1日2~3回に分けて、空腹時(食前・食間)が基本です。飲み忘れが多くなる方は食後でも構いません。

柴胡桂枝乾姜湯は、ツムラ・コタロー・テイコク・クラシエなどから発売されています。生薬成分の含まれる量は同じなのですが、会社によって漢方薬の1日量が異なります。柴胡桂枝乾姜湯では、ツムラとテイコク、クラシエは7.5g、コタローは6.0gになっています。

柴胡桂枝乾姜湯は、1日2~3回に分けて服用します。漢方薬は空腹時に服用することを想定して配合されています。ですから、食前(食事の30分前)または食間(食事の2時間後)に服用します。量については、年齢や体重、症状によって適宜調整します。

漢方薬を空腹時に服用することで、麻黄や附子などの効果の強い生薬は胃酸によって効果をおだやかになり、その他の生薬は早く腸に到達して吸収がよくなります。柴胡桂枝乾姜湯では、空腹時の方が吸収はよくなります。

とはいっても、空腹時はどうしても飲み忘れてしまいますよね。現実的には食後に服用しても問題はありません。ただし、保険適応は用法が食前のみなので、形式上は変更できません。

 

5.柴胡桂枝乾姜湯の効き目とは?

効果は2週間以上かけてゆっくりと認められることが多いです。

それでは、柴胡桂枝乾姜湯の効き目はどのような形でしょうか。

柴胡桂枝乾姜湯の効果は、人それぞれです。証がぴったりと合う方には、効果テキメンなこともあります。いままで様々な身体の症状で悩まされていた方が、ビックリするくらいに穏やかになることもあります。その一方で、まったく効果の実感がない方もいらっしゃいます。

柴胡桂枝乾姜湯は、一般的には効き目はゆっくりです。とくに病気で悩まされていた期間が長い患者さんほど、そのバランスを整えるには時間がかかります。 効果は2週間くらいから認められることがあります。じっくりと時間をかけて効果が認められることもあるので、焦らず使い続けていくことが大切です。

このような効き目なので、抗不安薬のようにすぐに不安を取り除いてくれるような即効性はありません。ですから、調子が悪いときに頓服として使っても効果は期待しにくいです。

漢方薬の効果について詳しく知りたい方は、「病院で処方される漢方薬の効果とは?」をお読みください。

 

6.柴胡桂枝乾姜湯の副作用

柴胡桂枝乾姜湯では、生薬固有の副作用として偽アルドステロン症に注意が必要です。非常にまれですが、間質性肺炎にも注意が必要です。

漢方薬は一般的に安全性が高いと思われています。しかしながら、生薬は自然のものだから副作用は全くないというのは間違いです。

漢方薬の副作用としては、大きくわけて3つのものがあります。

  • 誤治
  • アレルギー反応
  • 生薬固有の副作用

漢方薬の副作用として最も多いのが誤治です。漢方では、その人の状態に対して「漢方薬」が処方されます。ですから状態を見誤って処方してしまうと、調子が悪くなってしまったり、効果が期待できません。このことを誤治といいます。

誤治では、さまざまな症状が認められます。これを副作用といえばそうなるのですが、その原因は証の見定めを間違えたことにあります。あらためて証を見直して、適切な漢方薬をみつけていきます。

また、食べ物でもアレルギーがあるように、生薬にもアレルギーがあります。アレルギーはどんな生薬にでも起こりえるもので、体質に合わないとアレル ギー反応が生じることがあります。鼻炎や咳といった上気道症状や薬疹や口内炎といった皮膚症状、下痢などの消化器症状などが見られることがあります。飲み始めに明らかにアレルギー症状が出ていたら、服用を中止してください。

そして、生薬自体の作用による副作用も認められます。生薬の中には、その作用が悪い方に転じて「副作用」となってしまうものもあります。

柴胡桂枝乾姜湯の生薬成分の甘草は、大量に服用すると生薬としての副作用が懸念されます。「偽アルドステロン症」と呼ばれる機能異常によって、高血圧やむくみ、低カリウム血症などが認められることがあります。

低カリウム血症になってしまうと、筋肉のけいれんや麻痺が起こることがあります。甘草の入っている他の製剤やグリチルリチンとの飲み合わせには十分な注意が必要です。また、長期間にわたって複数の漢方薬を服用するときは注意してください。

また、まれにですが間質性肺炎や肝機能障害が起こることもあります。息切れや咳がひどく呼吸困難になる、発熱、重度の倦怠感、黄疸などの症状が出た場合はすぐに医師に相談するようにしてください。

漢方薬の副作用について詳しく知りたい方は、「漢方薬で見られる副作用とは?」をお読みください。

 

7.柴胡桂枝乾姜湯の効果が期待できる人とは?

柴胡桂枝乾姜湯は効果があると信じ込める人の方が、効果が期待できます。

昔から「良薬は口に苦し」といわれてきたように、独特の苦みが漢方の効能を引き立たせてくれることがあります。このような思い込みの効果ともいえるプラセボ効果(偽薬効果)は、心の病気では非常に大きいのです。

一般的に精神科のお薬は、30%ほどのプラセボ効果があるといわれています。臨床試験などを行うと、ダミーの薬でも3割くらいの人には効果が認められるのです。漢方薬のプラセボ効果は、西洋薬よりも大きいという報告もあります。

ですから、柴胡桂枝乾姜湯は効くと思い込んで服用した方がよいのです。そういう意味では、信じ込める人の方が効きやすいのです。せっかく服用するのですから、「こんなに苦いのだから柴胡桂枝乾姜湯は効くんだ!」を思いながら服用してください。

柴胡桂枝乾姜湯を心の治療に使う時は、現実的には以下のケースがあります。

  1. 柴胡桂枝乾姜湯自体の効果を本当に期待する場合
  2. 副作用で抗うつ剤や抗不安薬が使えない場合
  3. 抗うつ剤や抗不安薬を使うこと対する不安が大きい場合
  4. 薬の量を減らしていく時に不安が強い場合

病気や症状という面で見れば、柴胡桂枝乾姜湯は上述してきたような方に向いているといえます。しかしながら、柴胡桂枝乾姜湯の効果だけを本当に期待して使うケースばかりではありません。

実際の現場では、さまざまなケースで柴胡桂枝乾姜湯が使われています。なにも効能ばかりが大切ではありません。せっかく服用されるのでしたら、しっかり効くと言い聞かせながら服用してください。

 

まとめ

柴胡桂枝乾姜湯は、精神安定作用と自律神経を整える作用が中心と言えます。疲労倦怠感、不眠、動悸など、自律神経失調症に対しての効果や更年期障害の諸症状の緩和が期待できます。

陰陽(陰)・虚実(虚)・寒熱(寒)・気血水(気うつ・気逆)

柴胡桂枝乾姜湯は、以下のような方に使われます。

  • 体力が低下していて虚弱な軽症うつ病・不安障害・ストレス性障害・不眠症
  • 更年期障害の自律神経症状
  • 冷え性や貧血
  • 慢性的な風邪
  • 慢性肝炎や肝機能障害(胸脇苦満)

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