身体表現性障害に有効な薬と4つの治療法

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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身体表現性障害とは、心理的要因によるストレスによって身体症状があらわれる病気です。

さまざまな症状の表れ方があり、身体症状自体に悩まされることもあれば、病気や容姿にとらわれてしまうこともあります。

このような身体表現性障害は、身体症状が中心なので内科などの身体科に受診することが多いです。身体の問題に終始していては治療が進みません。身体と心の両面から治療を進めていく必要があります。

ここでは、身体表現性障害に有効な薬と治療法について詳しくお伝えしていきます。

 

1.身体表現性障害の治療で注意するポイント

身体表現性障害では、心身の両面から治療していくことが大切です。合併症があるときはその治療を行い、疾病利得などで症状が強化される要因があるときは環境を変えることも必要です。

身体表現性障害では、治療を進めていくにあたって注意するべきポイントがあります。

  • 心身の両面から治療をしていくこと
  • 気分障害や不安障害が合併時は、合併症治療を行うこと
  • 身体表現性障害を生じている環境を考えること

最も大切なのは、身体表現性障害は心と身体の両面から治療をすすめていくことです。心と身体は、自律神経系や内分泌系などを介して密接に関係しています。身体症状も治療をしていきながら、心の原因にも目を向けていく必要があります。

つぎに、身体表現性障害では慢性化してしまうことも多く、うつ病や不安障害などを合併することがあります。このようなときは、合併症の治療をしっかりと行っていくことが大切です。

身体表現性障害では、特有の心理的要因が働いていることが多いです。患者さんのなかには、疾病利得(病気であることで得られるメリット)が働くことがあります。

  • 避けたい出来事(学校や仕事に行くなど)
  • 感情的になる出来事(夫への怒りなど)
  • メリットが得られる出来事(傷病手当金など)

こういったときに身体表現性障害が悪化することがあります。現在の環境を振り返って、できるだけ症状を強めないように環境を整える必要があります。ときには家族の協力も含めて環境をと都の得る必要があることもあります。

 

2.身体表現性障害を克服するには心に目を向ける

身体表現性障害の患者さんは身体の心配が強いです。身体表現性障害を克服していくためには、ストレスの対処法も含めて、精神科や心療内科で心に目を向けた治療をしていくことが大切です。

身体表現性障害の患者さんは、内科などの身体疾患を疑って病院を受診します。このため、自ら精神科や心療内科に受診する患者さんは少ないです。

身体表現性障害を克服していくためには、心にも目を向けていく必要があります。何らかの身体の不調があるかもしれませんが、少なくともその心配が行き過ぎていることを認識してください。

一般的にストレスは、身体に悪影響を及ぼします。ですから、ストレスを緩和していくことを考えていく必要があります。

内科など身体を診ていく科では、身体所見や検査に異常が認められなければ、根本的な治療はできません。診察をするということで患者さんは安心感をえられるかもしれませんが、身体表現性障害の原因の本質は違うところにあります。心理的な原因としては、以下の3つが考えられています。

  • 身体感覚の誤った解釈
  • 無意識に抑圧された葛藤によるもの
  • 疾病利得

詳しくは、「身体表現性障害にはどのような原因があるのか」をお読みください。

精神科や心療内科では、ストレスへの対処法なども含めて、これらの心理的原因に目を向けて治療を行っていきます。身体表現性障害を克服していくためには、心に目を向けた治療をすすめていく必要があります。

 

3.身体表現性障害の2つのタイプと治療の違い

強迫・認知タイプと身体・感覚タイプに分けられます。前者では抗うつ剤を中心とした薬物療法と認知行動療法などを、後者では補助的な薬物療法となることが多いです。

身体表現性障害は、大まかに分けると2つのタイプに分けられます。

  • 身体の不快な症状があるという強迫的な考えと、「大丈夫」という確認を求めてしまう強迫・認知タイプ
  • 身体症状そのものが苦しくて不快に感じるという身体・感覚タイプ

強迫・認知タイプは、「とらわれ」のある心気症や身体醜形障害になります。身体・感覚タイプは、身体化障害や転換性障害、疼痛性障害などになります。

この2つのタイプで、心の治療方針は異なってきます。強迫・認知タイプでは、いわゆる神経症としての治療を行っていきます。慢性的に経過することも多く、SSRIなどの抗うつ剤を中心とした薬物療法と、認知行動療法などの精神療法を行っていきます。

それに対して身体・感覚タイプは、補助的な薬物療法を行っていくことが多いです。慢性的になりやすい疼痛性障害では、SNRIや三環系抗うつ薬などの痛みに有効な抗うつ剤を使っていきます。

身体表現性障害の個々のタイプでの治療法は、以下をご参照ください。

 

4.身体表現性障害の治療①-薬物療法

身体の治療薬と心の治療薬を合わせて使っていきます。とらわれが強い場合は、抗うつ剤を中心に治療をしていきます。

身体表現性障害は、ストレスから身体症状が実際に生じていることもあります。ですから身体表現性障害では、

  • 身体症状を抑えるための治療薬(内科などの薬)
  • ストレスや精神症状を和らげるための向精神薬(精神科の薬)

このように、心の薬と身体の薬をあわせて使っていきます。

明らかに身体に異常があれば、それを治療する身体の治療薬を使っていきます。身体症状がストレスとなり、身体表現性障害を悪化させていることもあるからです。

身体のお薬は、ターゲットの臓器や器官に働いて、その働きをピンポイントに整えてくれます。このようにして身体症状をコントロールしていくことも重要です。

 

身体表現性障害で心の治療薬が使われるのは、以下の2つのケースになります。

  • 症状を軽減するサポート
  • 合併した精神疾患の治療

ストレスをお薬でなくすことはできませんが、その影響をお薬で和らげる ことはできます。ストレスは自律神経のバランスを崩し、それによって身体症状を生じます。ですから、ストレスを和らげることで自律神経症状も改善していきます。

うつ状態や不安障害になってしまった場合は、そのせいで病気へのとらわれも強くなるという悪循環になります。しっかりと薬物療法を行うことで、この悪循環を断ち切る必要があります。

具体的には、SSRIを中心とした抗うつ剤が使われることが多いです。

<SSRI>

SSRIが合わない場合は、以下のような抗うつ剤を使っていきます。

疼痛性障害の場合は特に、以下の抗うつ剤を使っていきます。

抗うつ剤以外にも、抗不安薬や気分安定薬、抗精神病薬などを、患者さんの症状に合わせて使っていくことがあります。

 

5.身体表現性障害の治療②-精神療法

認知行動療法・森田療法などを行っていきます。疾病利得に注意して、患者さんが自分のストレスに向き合えるようにしていくことが大切です。

心気症の原因としては、3つの側面から考えることができます。

  • 身体感覚の誤った解釈
  • 無意識に抑圧された葛藤によるもの
  • 疾病利得

これらを意識して、精神療法をすすめていく必要があります。

身体感覚の誤った解釈という要因が強い患者さんは、認知行動療法森田療法などの精神療法が向いています。無意識の葛藤という要因が強い患者さんは、精神分析などの洞察療法を行っていきます。

そして身体表現性障害の患者さんで気をつける必要があるのが、疾病利得になります。疾病利得とは、病気になるということで自分のストレスに向き合わなくて済むというメリットのことです。

病気であるということに逃げてしまい、自分自身のストレスや困難な課題に目を向けるのを避けてしまうことがあります。こういったものに直面化し、向き合っていけるようにしていく必要があります。

 

6.身体表現性障害の治療③ー生活習慣とバイオフィードバック

疼痛性障害では、薬物療法だけでは克服できません。精神療法や生活習慣などの薬以外の治療も行っていくことが大切です。

非薬物療法としては、生活習慣も大切になります。具体的には、以下のようなものがあげられます。

  • 運動
  • 禁煙(受動喫煙も含む)
  • 減量
  • 人工甘味料(アスパルテーム)を避ける
  • カフェインを避ける
  • バイオフィードバック

などがあげられます。身体表現性障害で有効といわれているバイオフィードバック(生体自己制御)についてご説明していきましょう。

バイオフィードバックとは、自分の身体の状態をモニターで把握しながら正しく認知し、自分で身体の状態をコントロールできるようになるのを目指していきます。

例えば、筋電図を測りながら筋肉を緊張させることで、筋肉の緊張をモニターで確認しながらコントロールできます。認知行動療法としての側面もあり、筋肉の緊張を正しく認知できるようにしていきます。

バイオフィードバックは特に、頭痛(緊張型頭痛・片頭痛など)の治療に有効といわれています。

バイオフィードバックは長期的な効果が期待できるといわれていますが、残念ながら日本ではまだバイオフィードバックの治療を受けられる施設が少ないです。

 

7.身体表現性障害の治療④-薬を使わないリラックス法

呼吸法・漸進的筋弛緩法・自律訓練法など、自分自身をリラックスさせる方法も有効です。

自分自身でリラックスする方法もあります。その代表的な方法としては、以下の3つがあります。

リラックスする呼吸法とは、吐く時間を意識した腹式呼吸法です。上手になってくると、呼吸を整えることで不安や緊張を和らげることができます。苦手な社会的状況に直面した時に、呼吸法で乗り切れれば大きな自信になります。

漸進的筋弛緩法とは、リラクゼーションとも呼ばれている方法です。筋肉の緊張状態を知り、それを和らげていく練習をします。慣れてくると、自分自身の緊張状態に気づけるようになってきます。

自律訓練法とは、リラックス状態を自己暗示で作れるようになっていく方法です。リラックス状態をイメージして、それを身体にしみこませていきます。上手になってくると、リラックス状態をすぐに作れるようになっていきます。

いずれの方法も、繰り返し続けていくことで少しずつ上手になっていきます。いわば筋トレのようなもので、すぐには効果が出ないけれども継続していくことで少しずつ効果が出てきます。

詳しく知りたい方は、「薬に頼らずに不安を解消する4つの方法」をお読みください。

 

まとめ

身体表現性障害では、心身の両面から治療していくことが大切です。合併症があるときはその治療を行い、疾病利得などで症状が強化される要因があるときは環境を変えることも必要です。

身体表現性障害の患者さんは身体の心配が強いです。身体表現性障害を克服していくためには、ストレスの対処法も含めて、精神科や心療内科で心に目を向けた治療をしていくことが大切です。

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