SNRIの効果と特徴とは?SNRIの抗うつ剤での位置づけ

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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SNRI(セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬)は、よく使われている抗うつ剤です。

近年は痛みへの効果が注目されるようになり、慢性疼痛に対する治療薬としてもよく使われています。精神科や心療内科以外でもよく処方さえる抗うつ剤なのです。抗うつ剤としても、しっかりとした効果が期待できる一方で、副作用が少ないというバランスがとれた抗うつ剤です。

日本ではこれまで2種類のSNRIが発売されてきましたが、2015年12月にイフェクサーが発売されて3剤となりました。ここでは、SNRIの効果について、他の抗うつ剤とも比較しながらお伝えしていきたいと思います。

 

1.SNRIとはどのような抗うつ剤なの?(作用機序)

SNRIは、セロトニンとノルアドレナリンの再取り込みを選択的に阻害することで効果を発揮します。

SNRIは、セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬の英語を略した呼び方です。その作用機序はまさにこの訳通りなのですが、なんのことだかさっぱりわかりませんね。

まずはセロトニンとノルアドレナリンについてご説明していきましょう。どちらも、神経と神経の橋渡しを行う神経伝達物質です。

「セロトンン」は気持ちの安定に関係しているといわれていて、症状としては、不安や落ち込みと関係があるといわれています。ですから、セロトニンを増やせば抗うつ効果が期待できます。

「ノルアドレナリン」は、意欲に関係しているといわれていて、症状としては、意欲低下や気力低下といったものと関係があります。

 

これらの物質を増やすには2つの方法があります。

①分泌された神経伝達物質の回収を邪魔する(再取り込み阻害)
②神経伝達物質の分泌を増やす(自己受容体遮断)

分泌された神経伝達物質のセロトニンやノルアドレナリンは、役割を果たすと回収されます。このことを再取り込みと呼びます。この再取り込みを阻害すれば、セロトニンやノルアドレナリンの量が増えますね。回収されずに残ったセロトニンやノルアドレナリンは残って作用し続けるので、効果が発揮さ れるのです。

この作用機序で効果を発揮するのがSNRIです。SNRIでは、セロトニンとノルアドレナリンだけに作用するようにできていて、両方の物質を増加させる抗うつ剤なのです。

 

このように、不安や落ち込みといった症状には「セロトニン」が関係しているといわれています。意欲や気力は「ノルアドレナリン」、興味や楽しみは「ドパミン」が関係しているといわれています。

SNRIの効果は、セロトニンやノルアドレナリンが増加することによってもたらされることは間違いありません。ですが、厳密にはちゃんとわかっていません。もしもこれらの神経伝達物質が直接関係しているのならば、薬を飲んだ直後から効果がでてきそうなものです。ですがSNRIは、効果が出るまでに時間がかかることが多いです。

このタイムラグの原因は、「モノアミンの受け皿である受容体が変化することで効果が出て くる(受容体仮説)」などの仮説がありますが、はっきりとはわかっていません。

 

2.SNRIにはどのような種類があるの?

日本では、SNRIとしては2種類が発売されています。どれも、セロトニンとノルアドレナリンを増やすように作用する抗うつ剤です。もう時期発売されるであろうデスベンラファキシンも含めて、ひとつずつご紹介していきたいと思います。

 

2-1.サインバルタ(成分名:デュロキセチン

セロトニンとノルアドレナリンをしっかりと増加させる効果が強いSNRIです。

海外では2004年から使われていて、その効果と副作用のバランスの良さに定評がありました。日本でも2010年についに発売され、期待通りの効果がみられたため、たくさん処方されています。

サインバルタは、SNRIの中でもしっかりとした効果が期待できます。セロトニンとノルアドレナリンを両方とも増加させますが、低用量ではセロトニンを中心に増加させ、高用量ではノルアドレナリンの割合が増えていきます。サインバルタの効果の比率は、最強の抗うつ剤といわれている三環系抗うつ剤のトリプタノールと似ています。効果のバランスがよいのでしょう。

また、痛みにも効果があることがわかっています。痛みのコントロールにはセロトニンとノルアドレナリンが大きく関係しています。サインバルタは慢性疼痛によく使われますし、線維筋痛症という原因がはっきりしていない痛みの病気に適応が認められています。

現在発売されているもう1つのSNRIトレドミンと比較しても、効果は強いです。それでいて副作用は大きくかわりません。

 

2-2.トレドミン(成分名:ミルナシプラン

やさしいSNRIです。意欲がちょっと落ちている方に効果が期待できます。

トレドミンは、2000年に日本で始めて発売されたSNRIです。同時期に発売されはじめたSSRIと共に、三環系・四環系抗うつ剤から新しい抗うつ剤へと主役が変わっていきました。

トレドミンの効果の比率は、セロトニンよりもノルアドレナリンを増加させる作用が強いです。そして増加させる強さは、サインバルタよりもかなり劣ってしまいます。このため効果はマイルドですし、落ち込みを改善する抗うつ効果も強くはありません。

トレドミンはノルアドレナリンを増やす効果の方が強いので、セロトニンにしぼって増加させるSSRIの効果を補助する形で使うことが多いです。

 

2-3.イフェクサー(成分名:ベンラファキシン)

サインバルタよりも効果はゆっくりですが、同等以上の効果が期待されています。SNRIの新たな選択肢として期待されています。

ベンラファキシンは、海外ではエフェクサーという名前で発売されています。成分名はデスベンラファキシンといいます。日本では、ファイザーがイフェクサーとして承認を取りました。

ベンラファキシンは、海外ではエフェクサーという名前で発売されています。日本でも発売を目指して10年ほど前から治験がすすめられていましたが、うまく有効性が示せなくて一度断念しました。ファイザーが改めて治験をすすめ、今回2015年9月に製造販売承認されました。2015年12月8日に発売となりました。

デスベンラファキシンは、サインバルタと同等以上の効果があると期待されています。少し効きが遅いといわれていますが、SNRIに新たな選択肢ができることは大きな治療の広がりになります。セロトニンを増加させる効果が強く、ややSSRIよりのSNRIといえるでしょう。

 

2-4.プリスティーク(成分名:デスベンラファキシン)

将来的に発売が期待されます。

デスベンラファキシンは、海外ではプリスティークという名前で発売されています。成分名はデスベンラファキシンといいますが、この成分はベンラファキシンの有効成分だけ(主要活性代謝産物)を取り出したものです。

デスベンラファキシンもベンラファキシンと同等の効果が期待でき、副作用が軽減されています。今後の発売が待たれますが、ベンラファキシンの製造元と同じファイザーが開発したお薬です。日本ではベンラファキシンがこれから発売されるので、特許がきれる10年近くは発売されないかと思われます。

 

3.SNRIが使われる疾患とは?

SNRIは抗うつ剤に分類されるように、うつの治療のために開発されたお薬です。セロトニンとノルアドレナリンを増加させることで不安や意欲を改善するだけでなく、痛みにも効果があります。どのような疾患でつかわれるかみていきましょう。

 

3-1.うつ病

落ち込みや不安、意欲や気力を改善していきます。

実のところ、うつ病の原因はよくわかっていません。そして、うつ病の方の脳ではどのような異常が起こっているのかも、ハッキリとわかっていません。

色々な薬が開発されている中で、どうやら「モノアミン」と呼ばれる脳内の神経伝達物質が関係していることがわかってきました。モノアミンのうち、セロトニンを増やせば落ち込みや不安に、ノルアドレナリンを増やせば意欲や気力に効果があることがわかってきたのです。

ですが、脳内のセロトニンやノルアドレナリンを測るすべは今のところありません。これができれば、うつ病の科学的に診断ができたでしょう。うつ病の患者さんの脳内では、おそらくセロトニンやノルアドラナリンが欠乏していると考えられているのです。

SNRIは、これらの物質を補うことで抗うつ効果を発揮します。効果はちゃんとあるので、セロトニンやノルアドラナリンを増やすことが治療につながることはわかっているのです。

 

3-2.慢性疼痛・線維筋痛症

SNRIでは、痛みに対して効果が期待できます。

SNRIはセロトニンだけでなくノルアドレナリンも増加させるので、痛みに対する効果が期待できます。

セロトニンやノルアドレナリンは、どのようにして痛みに効果があるのでしょうか?痛みがどのようにして感じられているかを簡単にご説明すると、お分かりいただけると思います。

身体に何らかの痛み刺激が加わると、その情報が脳に届いてはじめて、痛みを感じます。身体が受けた痛みの情報は、まずは脊髄に伝えられます。そこから次の神経にバトンタッチして、一気に脳に伝えられます。ですが、状況によっては痛いなどと感じていられない場合もあります。このような時に備えて、ここのバトンタッチを調整する神経として下行疼痛抑制系という神経があります。

下行疼痛抑制系神経が働くと、このバトンタッチが抑えられるように働きます。この神経は、セロトニンとノルアドレナリンの2つの物質で痛みを和らげるように働きます。夢中で何かをしていたり、ピンチの時に痛みを感じない経験をされたことはありませんか?この時にはノルアドレナリンがドッと分泌されて、痛みを感じていないのです。我にかえってから急に痛みが襲ってきたりするのは、ノルアドレナリンがきれた証拠ですね。

SNRIはこの下行神経抑制系神経に働いて、痛みに効果を発揮するのです。

 

4.SNRIと他の抗うつ剤の効果を比較

SNRI以外にもいろいろな抗うつ剤が使われています。SNRIの特徴としては、

  • 効果と副作用のバランスがよいこと
  • セロトニンだけでなくノルアドレナリンも増加させること

になります。この特徴をふまえて、代表的な抗うつ剤と比較してみましょう。

 

4-1.三環系抗うつ薬

効果はSNRIよりも強いですが、副作用が全体的に多いです。

うつに効果のある薬として最初に開発されたのが、トフラニールです。その後、うつの薬物治療の歴史がはじまりました。

三環系抗うつ薬は昔からある薬ですが、今でもよく使われています。古い薬なので洗練されていないので副作用が多いのですが、そのかわりに効果も厚い薬なのです。一言で言えば、「ハイリスク・ハイリターン」な抗うつ剤といえます。

うつの治療としてまずはじめに使う薬は、SNRIをはじめとした新しい抗うつ剤です。副作用が少なく安全性が高い薬から使っていくのが鉄則だからです。新しい抗うつ剤は洗練された薬が多く、どうしても効果の面では三環系抗うつ薬よりも劣ってしまいます。SSRIやSNRIなどを使ってもどうしても改善しない時は、三環系抗うつ薬を使っていきます。

 

4-2.四環系抗うつ薬

SNRIよりも効果が弱いです。睡眠効果を期待して使われることがあります。

四環系抗うつ薬は、三環系抗うつ薬の副作用を軽減できないかと開発された抗うつ剤です。副作用は軽減されましたが、残念ながら効果も薄れてしまっています。

四環系抗うつ薬には、ノルアドレナリンだけを増やす効果しかありません。セロトニンに対する作用がないので、抗うつ効果は弱いですノルアドレナリンを増やす効果としても、SNRIにはかないません。眠気がある抗うつ剤なので、睡眠薬代わりに使われることが多いです。

 

4-3.SSRI(選択的セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬)

SNRIと効果は同等です。SSRIでは、不安や落ち込みが目立つ方に有効です。

SSRIはセロトニンだけにしぼって効果を発揮する抗うつ剤です。このため、不安や落ち込みには効果がより発揮されます。SSRIもSNRIと同様に、他の受容体には作用しないようにできています。このため、副作用はかなり軽減されています。

効果という意味では、総合的にはSNRIと同じくらいでしょうか。安全性も高いので、抗うつ剤として初めに使われることも多いです。SNRIはSSRIと違って、セロトニンだけでなくノルアドレナリンを増加させます。このため、意欲低下や気力低下目立つ方にはSNRIの方が効果が期待できます。患者さんの状態によって使い分けます。

SSRIは不安を和らげる効果が強いので、様々な不安障害、摂食障害や月経前緊張症(PMS)などに使われています。

 

4-4.NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動薬

SNRIよりも効果は強いです。良くも悪くも、眠気と食欲増加が目立ちます。

NaSSAは、セロトニンとノルアドレナリンの分泌を増やすとともに、セロトニンの作用を効率化することで効果を発揮する薬です。新しい抗うつ剤の中でも効果が強いお薬で、13種類の抗うつ剤を比較した研究では、もっとも効果が優れていたという結果がでています。SNRIよりも効果が強いです。

この抗うつ剤では、良くも悪くも眠気と食欲増加が特徴的です。いい面では働けば、不眠が改善し、食欲が戻ります。悪い面で働らけば、眠気が日中に及んでしまい、体重が増加してしまいます。とくに飲み始めに眠気が強くでてくるので、働いていたり家事をされている方では、使いにくいお薬になってしまいます。

不眠がある方などでは、うまくいけば睡眠薬を使わなくて済みます。また、SNRIとの愛称がよいといわれていて、SNRIのサインバルタとの併用は「カルフォルニアロケットミサイル」などとも呼ばれています。

 

4-5.抗うつ剤のタイプ別、効果の強さの比較

効果の強さだけをみれば、三環系抗うつ薬>NaSSA>SSRI=SNRI>四環系抗うつ薬となります。

このように、いろいろな抗うつ剤が発売されています。抗うつ剤の効果を比較して図にまとめたので参考にしてください。

代表的な抗うつ剤について、作用を比較してまとめました。

まとめ

SNRIは、セロトニンとノルアドレナリンの再取り込みを選択的に阻害することで効果を発揮します。

サインバルタ・トレドミン・イフェクサーの3種類が発売されています。

SNRIはうつ病・慢性疼痛・線維筋痛症などで使われます。

抗うつ剤のタイプごとに効果の強さを比較すると、三環系抗うつ薬>NaSSA>SSRI=SNRI>四環系抗うつ薬となります。

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