レメロン錠の効果と特徴

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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レメロンは、2009年に発売された新しいお薬ですが、海外では1994年から使われています。新しいメカニズムでセロトニンとノルアドレナリンを増加させるお薬で、NaSSAと呼ばれています。

新しい抗うつ剤の中でも効果はしっかりとしているのですが、眠気と食欲が問題になってしまうことが多いお薬です。副作用も逆手にとれることもあるので、うまく使えると非常に有効なお薬です。

ここでは、レメロンの効果や特徴を中心に、他の抗うつ薬と比較しながらお伝えしていきたいと思います。

 

1.レメロンのメリットとデメリット

はじめに、レメロンの特徴を簡単に紹介したいと思います。

 

1-1.レメロンのメリット

  • 抗うつ効果・抗不安効果がしっかりしている
  • 意欲や気力を高める効果がある
  • 独自の作用メカニズムである
  • 不眠に有効
  • 食欲不振に有効
  • 吐き気や性機能障害が少ない

レメロンの特徴を簡単にいうと、「眠気や体重増加がネックになるが、慣れると効果がしっかり期待できる抗うつ剤」です。

レメロンはセロトニンのうちでも、抗うつ効果がある部分にしっかりと作用するようにできています。ですから、抗うつ効果や抗不安効果もしっかりとしたものが期待できます。ノルアドレナリンに関しても増加させる効果が期待できるので、意欲や気力を高める効果も期待できます。

新しい抗うつ剤を比較した有名な論文の中でも、レメロンの有効性は1位と評価されました。また、SSRIやSNRIでは効果が2週間以上たってからでてきますが、レメロンでは1週間くらいから効果がみられる方もいらっしゃいます。独自の作用メカニズムということもあり、他のお薬と併用で使われることもあります。

レメロンには眠気や体重増加の副作用があります。その副作用を逆手にとって、治療に使うこともあります。不眠がひどい方や食欲が落ちてしまっている方には、レメロンでうまく改善できることがあります。また、吐き気や性機能障害といったSSRIやSNRIに多い副作用は、レメロンでは比較的少ないです。

 

1-2.レメロンのデメリット

  • 眠気が出やすい
  • 太りやすい
  • 薬価が高い

レメロンの副作用は、眠気と体重増加になります。レメロンはセロトニンやノルアドレナリン以外の他の受容体への作用が大きいことが難点です。とくに抗ヒスタミン作用がとても強いので、これが眠気や食欲増加の副作用につながります。

眠気はしばらくしたら慣れる方も多いのですが、日中も続く眠気でお薬を続けられない方も少なくありません。そして食欲がとまらなくなってしまい、甘いものがやめられないといって体重増加のために中止せざるを得ないこともあります。

また、レメロンは新しいお薬ですので、薬価が高いです。最高用量の45mgを使っている場合、自己負担3割で計算すると月に4622円になります。けっこうな負担になってしまいます。2009年に発売されたお薬ですので、ジェネリックの発売も当分先と思われます。

 

2.レメロンの作用機序

セロトニンとノルアドレナリンの分泌を増加させて、セロトニンを効率的に働くようにするNaSSAです。

不安や落ち込みといった症状には「セロトニン」が関係しているといわれていて、意欲や気力は「ノルアドレナリン」、興味や楽しみは「ドパミン」が関係しているといわれています。

レメロンは、脳内のセロトニンとノルアドレナリンという神経伝達物質を増加させることで、抗うつ効果がもたらされるといわれています。ですが、他の新しい抗うつ剤であるSSRIやSNRIとは作用のメカニズムが違います。

SSRIやSNRIでは、セロトニンやノルアドレナリンの再取り込み(回収)を阻害することで効果につながりました。レメロンでは、セロトニンやノルアドレナリン自体の分泌を増やします。そしてセロトニンが、抗うつ効果を発揮する部分だけに働くようにできています。このような作用メカニズムをするお薬をNaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)といいます。

 

もう少し詳しくお話ししていきましょう。

レメロンには大きく2つの作用があります。これが組み合わされて効果が発揮されます。

セロトニンやノルアドレナリンは、神経と神経の橋渡しを行う神経伝達物質です。分泌する神経側には、分泌量を調整するための自己受容体というものがあります。セロトニンやノルアドレナリンが多すぎると、この部分が感知して分泌をストップさせます。

このような自己受容体として、セロトニンにはα2ヘテロ受容体、ノルアドレナリンにはα2受容体があります。レメロンはこの受容体にくっついてブロックしてしまいます。すると、分泌が足りていないと思って頑張って分泌をするようになります。このようにして、セロトニンとノルアドレナリンの分泌量が増加します。

また、セロトニンには多くの種類の受容体があります。その中で、抗うつ効果があるのはセロトニン1受容体です。レメロンは、セロトニン2・3受容体をブロックします。するとセロトニンは、セロトニン1受容体に集中的に作用するようになります。このようにしてレメロンでは、セロトニンが効率的に働くようにしているのです。

 

このようにして、レメロンはセロトニンやノルアドレナリンを増加させます。SSRIやSNRIは、セロトニンやノルアドレナリンの再取り込み(回収)を邪魔することで作用するお薬です。このため、分泌量を増やして回収もできなくしてしまえば、理論的に効果は増強されますね。このようにして、抗うつ剤を組み合わせて効果を期待することもあります。

SNRIのサインバルタ・イフェクサー+NaSSAのレメロンという組み合わせは、カルフォルニアロケットミサイルという呼び名があるほどです。SSRIとレメロンを組み合わせても相乗効果が期待できます。

 

3.レメロンと他の抗うつ剤との比較

不安や焦りだけでなく、意欲や気力を回復してくれます。新しい抗うつ剤の中では、効果がしっかりとしています。

以下の表では、主な抗うつ薬の作用をまとめてみました。これを踏まえて、レメロンの作用の特徴を考えてみましょう。

代表的な抗うつ剤について、作用を比較してまとめました。

NaSSAであるレメロンは、セロトニンだけでなくてノルアドレナリンも増加させます。このため、不安や焦りだけでなく、意欲や気力を回復させる効果もあります。

レメロンは、抗ヒスタミン作用が非常に強いです。抗ヒスタミン作用とは、花粉症のお薬や風邪薬に含まれている成分です。これらのお薬を飲んで眠くなったことはありませんか?この眠気は抗ヒスタミン作用によるものです。抗ヒスタミン作用は、眠気だけでなく食欲を増加させる作用があります。レメロンはこの2つが特徴的です。

 

SSRIは、セロトニンだけに作用するように作られているので、不安や焦りをとる効果はしっかりとしています。レクサプロは、SSRIの中でもセロトニンだけに特化したお薬です。パキシルはノルアドレナリン作用や抗コリン作用が強いので、効果がしっかりしていますが副作用も比較的多いです。ジェイゾロフトではドパミン作用がみられます。ルボックス/デプロメールは、SSRIの中では効果がマイルドです。

SNRIは、セロトニンとノルアドレナリンを増加させるお薬です。サインバルタとトレドミンですと、サインバルタの方が効果がしっかりとしています。

昔からある三環系抗うつ剤では、いろいろな受容体に作用してしまいます。ですから副作用も強いですが、新しい抗うつ剤に比べると効果は強いです。レメロンは、四環系抗うつ剤のテトラミドに似ている構造をしています。作用も共通する部分が多いですが、テトラミドではセロトニンを増やす効果が弱いので、落ち込みや不安を改善する効果が弱いです。

 

4.レメロンの強さ

新しい抗うつ剤の中では、もっとも有効性が高いと評価されています。

レメロンの抗うつ薬としての強さはどのくらいあるでしょうか?様々な新しい抗うつ薬12種類の効果と副作用を比較した報告をご紹介したいと思います。

抗うつ剤の効果と副作用の比較を図表でしめしました。(MANGAstudy)

MANGA studyといわれている新しい抗うつ剤を比較した論文をたくさん集めてきて分析したものです。2009年にランセットという超有名専門誌に発表されたものです。この結果をみると、レメロンの評価は非常に悪いものとなっています。

  • 有効性:①レメロン/レメロン ②レクサプロ ③ベンラファキシン ④ジェイゾロフト ⑤シタロプラム
  • 安全性:①レクサプロ ②ジェイゾロフト ③ブプロピオン ④シタロプラム ⑤フルオキセチン

この結果をみていただくと、新しい抗うつ剤の中で比べると、レメロンの有効性はもっとも高いと評価されています。安全性という意味では劣ってしまいますが、これは眠気や食欲増加が強いためです。ですが、副作用と上手く付き合えると、非常に有効なお薬であることがお分かりいただけると思います。

とはいっても、「効果がどれだけ強いのか?」という点だけをみると、古くからある三環系抗うつ薬の方が強いです。ですが副作用が強く出てしまうので、まずは新しい抗うつ薬から使っていくのが治療の主流となっています。新しい抗うつ薬の中で、レメロンはしっかりとした効果が期待できる薬になります。

 

5.レメロンの効き方

血中濃度は32時間で半減します。1日1回、寝る前に服用します。

抗うつ薬は、一般的には効果が出てくるには2週間程度かかります。ですが、レメロンは効果がみられるのが早いです。不安や不眠に関しては、飲んだ直後からの効果が期待できます。

抗うつ薬が安定して効果を発揮するためには、常に身体の中に薬がある状態が必要です。薬を規則正しく服用していると、身体の中に少しずつ薬がたまっていきます。およそ服用を始めて4~5日ぐらいで薬の体内での濃度が安定します。

レメロンを服用すると、すみやかに吸収されて1時間ほどで血中濃度が最高値になります。そこから徐々に血中濃度が低下していき、32時間で血中濃度が半減します。抗うつ剤の中で比較すると、薬が身体から抜けていくのはゆっくりです。このため、血中濃度は比較的安定しています。また、立ち上がりが早いお薬ですので、薬を飲んで効果が出てきた実感のある方もいらっしゃいます。

このような特徴があるため、1日1回の服用でも1日効果が持続します。眠気の強いお薬ですので、寝る前に服用していただくことが基本になります。睡眠導入剤のかわりにもなるお薬です。

 

レメロンは、15mg錠剤しかありません。いきなり1錠からはじめると眠気が強くてきついです。0.5錠(7.5mg)から始めることが多いです。場合によっては1/4錠(3.65mg)から始めることもあります。はじめの1~3日は、1日中眠気が強い方が多いです。ですがこの眠気は少しずつ慣れていきます。様子をみて眠気が薄れてくれば、少しずつ増量を検討していきます。5日~1週間たっても眠気が抜けない方は、場合によっては薬を中止します。

このようにして、少しずつ増量していき、45mgまで使うことができるお薬です。実際に薬を処方していると、増量していくと30mgまでは効果の変化が大きいです。ですが、30mg~45mgではそこまで変わらないように感じています。

 

6.レメロンの副作用

副作用は、眠気・体重増加・ふらつきがみられます。

レメロンは、SSRIやSNRIといった新しい抗うつ剤とは副作用が異なります。これらの薬で多かった吐き気・下痢・性機能障害・不眠といった副作用は、レメロンでは認められません。

これらの副作用はいずれも、セロトニンが過剰に作用してしまうことによる副作用です。レメロンもセロトニンを増やすお薬ですが、セロトニン作用の効率をあげるためにセロトニン2・3受容体をブロックします。抗うつ効果のあるセロトニン1受容体だけに作用します。このため、セロトニン過剰による副作用が軽減されます。

レメロンの副作用として問題になるのは、抗ヒスタミン作用によるものです。抗ヒスタミン作用は非常に強く、このため眠気や体重増加といった副作用がみられます。眠気は慣れていく方も多いですが、食欲があがってしまうのが続いてしまう方もいらっしゃいます。抗α1作用もわずかにありますので、抗ヒスタミン作用による眠気も加わって、ふらつきがみられる方も多いので注意が必要です。

代表的な抗うつ薬の副作用の比較を以下にまとめます。

代表的な抗うつ薬について、副作用を比較して表にまとめています。

レメロンの副作用について詳しく知りたい方は、
レメロンの副作用(対策と比較)
をお読みください。

 

7.レメロンが向いている人は?

抗うつ剤のレメロンには、どのような適応があるでしょうか?実際に、どのような患者さんに使われるお薬でしょうか?

レメロンの特徴を踏まえて、レメロンが実際にどのような方に使われているのかをみていきましょう。

 

7-1.レメロンの適応

<適応>

  • うつ病・うつ状態

<適応外>

  • 不安障害
  • 線維筋痛症
  • 慢性痒疹

レメロンはいまのところ、「うつ病・うつ状態」への適応のみとなっています。ですが、慢性的な痛みに対して効果があるので適応外で使われてきました。これをうけて製薬会社としても、線維筋痛症という痛みの病気に対しての適応を取得しようと研究を進めています。

不安や不眠に対する効果がしっかりしているので、いろいろな不安障害でも使われます。また、抗ヒスタミン作用が強いので、アレルギー反応のかゆみを抑える効果があります。慢性痒疹はストレスの影響も大きく、かゆみも強いので適応外で使われてきました。

 

7-2.レメロンが向いている人とは?

  • 不眠の方
  • 食欲が落ちてる方
  • 吐き気が怖い方
  • 痛みがある方
  • 休みがある方
  • 高齢者

レメロンの特徴は、抗ヒスタミン作用による眠気や食欲増加はあるものの、抗うつ・抗不安効果に優れたお薬です。また、意欲や気力を回復させる効果もあります。

眠気や食欲増加の副作用を逆手にとって、不眠や食欲不振がみられる方には向いています。上手く使えば、睡眠導入剤を使わなくて済むこともあります。

不安障害では、SSRIを使うことが多いです。ですが、SSRIには吐き気の副作用はよくみられます。不安が強い方では嘔吐恐怖を抱えている方もよくいらっしゃいます。このような方では、レメロンは向いています。

また、痛みに効果が期待できるのも特徴的です。うつ病の患者さんは、頭痛をはじめとした何らかの痛みを伴っていることが6~7割あります。うつ状態を脱しても、痛みが身体の症状として残ることもあります。このように症状が残る方では、再発率がかなり高くなることがわかっています。SNRIのサインバルタが使われることが多いですが、レメロンでも効果が期待できます。

レメロンの難点は、薬を開始した直後の眠気です。私も1錠だけ試しに服用したことがありますが、翌日は頭がぼーっとしました。とても仕事にならないです。全く問題がない方もいらっしゃいますが、薬を開始するときは眠気が出ても大丈夫な状況から始めましょう。会社勤めの方でしたら、3連休や週末を利用して薬を使っていきます。

いろいろひっくるめると、高齢者に向いているお薬といえます。自宅で生活されている方が多いので、眠気の問題がクリアできます。年を取ると眠りが浅くなって、食欲が落ちる方が多いです。また、高齢者の方では日中の眠気に慣れるのが早い印象があります。高齢者のうつ病には、レメロンはとても使いやすいです。

 

まとめ

セロトニンとノルアドレナリンの分泌を増加させて、セロトニンを効率的に働くようにするNaSSAです。

不安や焦りだけでなく、意欲や気力を回復してくれます。新しい抗うつ剤の中では、効果がしっかりとしています。

新しい抗うつ剤の中では、もっとも有効性が高いと評価されています。

血中濃度は32時間で半減します。1日1回、寝る前に服用します。

不眠の方・食欲が落ちてる方・吐き気が怖い方・痛みがある方・休みがある方・高齢者に向いているお薬です。

販売者名 MSD株式会社
分類 NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)
剤形 錠剤(15mg・30mg)
薬価 錠剤(171.2円・281円)
ジェネリック なし
成分(一般名) ミルタザピン
半減期  32時間
用法 1日1回 最大45mgまで

投稿者プロフィール

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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