ストレスが症状となる転換性障害とは?転換性障害の症状と治療

元住吉 こころみクリニック
元住吉 こころみクリニック
2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医3名、精神科医4名で協力して診療をしています。所属医師で協力して、記事を書いています。
元住吉こころみクリニック

転換性障害とは、無意識にストレスが身体に転換されてしまう病気です。身体に異常があるわけではないのですが、転換性障害の患者さんにとっては本当に症状があります。

その症状の表れ方は様々で、

  • 「喉に違和感がある」「吐き気がする」といった臓器症状
  • 「手の感覚がない」「耳が聞こえない」といった感覚欠落症状
  • 「声が出ない」「痙攣してしまった」といった運動症状

人によっても異なります。そしてこれらの症状は、医学的に説明がつけられません。

転換性障害は、ごく軽いものは3人に1人くらいは経験しています。多くの方が繰り返しませんが、ストレスがかかるたびに繰り返す方もいます。

ここでは、転換性障害について詳しくお伝えしていきたいと思います。

 

1.転換性障害とは?

転換性障害とは、無意識にストレスが身体症状に転換されてしまう病気です。かつてヒステリーと呼ばれていた病気で、新しい診断基準では変換症という病名になっています。

まずは転換性障害(conversion disorder)とはどのような病気なのか、お伝えしていきたいと思います。

転換性障害では確かに患者さんには症状が認められるのですが、身体の検査をしても異常がなかったり、医学的に説明がつけられません。

転換性障害は、軽症まで含めると様々な人に認められます。ストレスがかかった時に、「吐き気がする」「喉が締め付けられる」「頭痛がする」といった経験をしたことがある方は少なくないでしょう。このような軽度のものでしたら、3人に1人は経験したことがあると言われています。

多くの人がすぐによくなり、そのうちの4人に3人は一過性のもので終わりますが、1人はストレスのある時期に繰り返してしまいます。症状が重たくなると、転換症状が続いてしまいます。

転換性障害は、古代ギリシャ時代から認められていました。女性の子宮を意味するヒステリーと呼ばれていて、女性特有の病気と考えられていました。子宮が体内を移動するために、多彩な症状が認められるとされていました。

このヒステリーは、現在では身体症状が中心の転換性障害と精神症状が中心の解離性障害に分けられています。そしてその原因は、無意識に抑圧したストレスにあると考えられています。転換性障害では、それが身体症状に表れたと考えられるのです。

新しい診断基準のDSM‐Ⅴでは、訳し方の変更によって、転換性障害から変換症(機能性神経症状症)という病名に変わっています。

 

2.転換性障害の原因とは

転換症状は抑圧されたストレスの表れであり、子供のころから学習されたストレスコーピングでもあります。このため、性格傾向や養育環境も含めた日々のストレスなどが原因と考えられています。

転換性障害の原因としては、2つの側面から考えることができます。

  • 無意識に抑圧された葛藤によるもの(精神分析)
  • 子供のころに学習したストレスコーピング(学習理論)

転換性障害は、自分の中に抱えている葛藤(ストレス)を無意識に抑え込み、その不安が身体症状に出てきたことが原因と考えられています。

身体症状となることで意識が症状に向き、自分の葛藤と向き合わなくて済みます。さらには病気であることから、周囲の人から配慮してもらえるという現実的なメリット(疾病利得)もあるのです。

そしてこのような転換症状は、子供の頃から学習されてきたストレス対処法でもあります。ストレスを上手く解消できない時に、症状に転換することで疾病利得を得るのです。

転換性障害はこのような原因が考えられているため、遺伝的な要因も大きいと思われますが環境要因が大きいと考えられます。

①性格

性格は遺伝的な気質に加えて、育ってきた環境や生きていく上での経験から培われていきます。

転換性障害では、いわゆるパーソナリティ障害といわれるような、うまく社会で適応できない性格傾向の方で起こりやすいことが分かっています。このような性格傾向の方では、ストレスの対処が苦手です。その結果として、ストレスを身体症状に転換してしまいます。

とくに関連が大きいと言われているのが、

  • 演技性パーソナリティ傾向
  • 依存型パーソナリティ傾向
  • 境界性パーソナリティ傾向

これらの患者さんでは上手くストレスに対処できず、周囲に身体症状という形で非言語的なSOSを発しているのです。

これらの患者さんを含めて転換性障害の患者さんは、アレキシサイミア傾向があることがよくあります。アレキシサイミアとは、自分自身の感情に気づくのが苦手で、それを表現することが苦手な性格傾向です。

このため、自分自身のストレスに気づけず、対処も苦手になってしまうのです。詳しく知りたい方は、「心身症や気分変調症の原因、アレキシサイミア(失感情症)とは?」をお読みください。

②ストレス

転換性障害では、ストレスを無意識に抑え込んでしまう抑圧が原因と考えられています。それが抑えきれなくなり、身体症状に表れています。

実際に転換症状は、ストレスがきっかけに悪化することがあります。

  • 避けたい出来事(学校や仕事に行くなど)
  • 感情的になる出来事(夫への怒りなど)

こういった出来事で転換症状が悪化します。虐待をうけていたなどの過去のストレスも、転換しやすい要因となります。教育の乏しい人や貧しい人に多いともいわれています。

また、同じような症状をひきおこす身体疾患のある患者さんでは、転換症状も起こりやすいことが分かっています。例えば、てんかんの患者さんは偽発作とよばれる転換症状による発作を起こしやすいです。

③年齢や性別

転換性障害は10代~20代の青年から成人前期が最も多く、子供から大人まで様々な年代で認められます。子供の方が一過性でおさまることが多く、予後は良好といわれています。

上でお話しましたが、転換性障害はもともとはヒステリーと呼ばれ、女性特有の病気と考えられていました。それくらいですので、女性の方が男性よりも2~3倍多いといわれています。

 

3.転換性障害の症状と診断とは?

転換性障害の診断をすすめていくには、診断基準を元に行っていきます。転換性障害の診断基準には、アメリカ精神医学会(APA)のDSMと世界保健機関(WHO)のICDがあります。

転換性障害のDSMとICDでの大きな違いは、DSMが身体表現性障害(身体症状症)と解離性障害に分けているのに対し、ICDでは同じカテゴリーにまとめています。

身体表現性障害は身体症状、解離障害は精神症状に表れるという違いは本質的ではなく、両方が合併することもよくあります。ですが、この2つを分けた方がより病気の特徴がハッキリするため、ここではDSMに基づいて診断基準をご紹介していきます。

DSMの最新の診断基準であるDSM‐Ⅴでは、AからDまでの4項目を上から順番にチェックしていくことで、転換性障害と診断できるようになっています。

簡単にまとめると、

  1. 何らかの運動症状か感覚症状が認められること
  2. 医学的に説明がつかないこと
  3. 他の病気では上手く説明できないこと
  4. 本人が苦しんでいるか、生活に支障が大きいこと

順番に、詳しくみていきましょう。

A.1つ以上の随意運動、感覚機能の変化の症状。

転換性障害の症状として、何らかの運動症状と感覚症状が認められます。

運動症状としては、異常な動きや歩行障害、筋力低下や麻痺などがあります。それ以外にも、チックや眼瞼痙攣、筋肉のけいれんなどもみられ、意識すればするほど悪化します。声が出なくなる失声やけいれん発作認められることもあります。

感覚症状としては、知覚異常が多いです。四肢の感覚がなくなり、手足の感覚がなくなる靴下手袋型無感覚症や、身体の半分の感覚がなくなる半側無感覚症がみられたりします。耳が聴こえなくなることもあれば、管状視野やらせん状視野と呼ばれる視野障害、目が見えなくなることもあります。

その他にも、臓器症状として様々なものが認められます。心因性嘔吐、ヒステリー球、尿閉、下痢などがあげられます。想像妊娠も転換症状のひとつです。

B.その症状と、認められる神経疾患又は医学的疾患とが、適合しないことを裏付ける臨床的所見がある。

これらの症状が、「何だか変だ」というだけでは診断はつけられません。神経学的にみたときに、その症状を病気で説明できない症状でなくてはなりません。

例えば先ほどの靴下手袋型無感覚症は典型的です。手足の神経支配は、親指側・真ん中・小指側といったようになっています。手だけや足だけといったような神経障害はないのです。

喉に違和感のあるヒステリー球では、確かに患者さんは喉に違和感があります。しかしながら喉頭ファイバーなどでのぞいてみると、なんの異常も認められません。医学的な異常が認められないことを裏付ける必要があります。

C.その症状または欠損は、他の医学的疾患や精神疾患ではうまく説明できない。

転換性障害の症状が、他の病気では説明できないことが必要です。転換性障害の患者さんの25~50%は、後になって神経障害や身体疾患が認められるといわれています。

脳の変性疾患や脳腫瘍、ギランバレー症候群などの神経疾患などに注意が必要です。また、統合失調症やうつ病、不安障害の身体症状として、転換症状が認められることもあります。

D.その症状または欠損は、臨床的に意味のある苦痛、または社会的・職業的・他の重要な機能の障害を引き起こしている。または医学的な評価が必要である。

転換性障害は、ごくごく軽症の方も含めると非常に多い病気です。このため、病気と診断する線引きが必要です。

転換性障害では、

  • 本人が苦しむ
  • 生活に支障がある

このどちらかがある時に、転換性障害という病気として診断することになります。

 

4.転換性障害の治療とは?

まずは身体の病気がないことをしっかり確認することが大切です。転換性障害であれば、精神科のお薬はサポートとして精神療法を中心に行っていきます。

転換性障害の患者さんでは、まずは本当に身体の病気がないのかをしっかりと確かめる必要があります。後になって神経障害や身体疾患が認められる患者さんが、25~50%にものぼります。内科的、神経学的評価をしっかりと行う必要があります。

転換性障害の症状は、ストレスが解消されていくと自然と落ち着いていくことがほとんどです。ストレスの原因を探り、対処法を探っていきます。一時的なストレスであれば、そのことを意識するだけで症状の改善につながります。

過去に心的外傷ともいうほどの深い傷を受けていたり、家族間の葛藤など容易に解決できない問題を抱えている場合は、カウンセリングによって紐解いていく必要があります。時間をかけて少しずつ改善していきます。

転換性障害の症状は、心が作りだしている症状です。しかしながらそれを意識して気にしないようにすると、ますます症状が悪化してしまいます。それよりもまず、自分のストレスに目を向けていくようにしましょう。

こうした精神療法を中心に治療をすすめていくのですが、転換性障害でも精神科のお薬(向精神薬)は使っていきます。転換性障害での向精神薬の役割は、

  • 症状を軽減するサポート
  • 合併した精神疾患の治療

この2つの目的で使っていきます。

ストレスによって身体症状が強まっている場合は、緊張や不安を和らげることで症状が軽減します。うつ状態や不安障害になってしまった場合は、そのせいで身体症状が強くなるという悪循環になります。しっかりと薬物療法を行うことで、これを断ち切る必要があります。

SSRIをはじめとした抗うつ剤を中心に、抗不安薬を補助的に使っていくことが多いです。患者さんの状態によって、気分安定薬や抗精神病薬を使っていくこともあります。

転換性障害では、薬を使わずにリラックスしていく方法も有効です。詳しく知りたい方は、「薬に頼らずに不安を解消する4つの方法」をお読みください。

 

まとめ

転換性障害とは、無意識にストレスが身体症状に転換されてしまう病気です。かつてヒステリーと呼ばれていた病気で、新しい診断基準では変換症という病名になっています。

転換症状は抑圧されたストレスの表れであり、子供のころから学習されたストレスコーピングでもあります。このため、性格傾向や養育環境も含めた日々のストレスなどが原因と考えられています。

まずは身体の病気がないことをしっかり診断することが大切です。転換性障害であれば、精神科のお薬はサポートとして精神療法を中心に行っていきます。

投稿者プロフィール

元住吉 こころみクリニック
元住吉 こころみクリニック
2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医3名、精神科医4名で協力して診療をしています。所属医師で協力して、記事を書いています。
元住吉こころみクリニック