スピリーバハンディヘラーの効果と特徴

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医3名、精神科医4名で協力して診療をしています。所属医師で協力して、記事を書いています。
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スピリーバ(一般名:チオトロピウム)ハンディヘラーは、2004年にベーリンガー製薬会社より発売された抗コリン薬の吸入薬になります。

「コリン」とはアセチルコリンのことを意味していますが、アセチルコリンは身体の様々なところで副交感神経を興奮させます。副交感神経が気管支で興奮すると、気道が狭くなるという作用が生じます。スピリーバはこの反応を抑制することで気道を広げ、主にCOPD(肺気腫)の第一選択薬として活躍しています。

2010年はスプレータイプのスピリーバレスピマットが新たに発売されました。スピリーバは、COPDの多くの方の治療に使われているお薬です。

ここでは、スピリーバハンディヘラーの効果と特徴についてまとめていきましょう。

1.スピリーバハンディヘラーのメリットとデメリット

<メリット>

  • ドライパウダーのお薬を自分のタイミングで吸える
  • 1日1回の吸入で対応できる
  • 吸った感じがある

<デメリット>

  • 前立腺肥大、緑内障の人には使用できない
  • 毎回カプセルをセットする必要がある。
  • 吸入力がないとうまく吸えない

スピリーバハンディヘラーは、1日1回主に朝に吸入する長期作用型抗コリン薬になります。コリンとはアセチルコリンのことです。このアセチルコリンの作用を阻害することで、スピリーバは気管支を広げる作用があります。主にCOPD(肺気腫)に対して使用するお薬になります。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは、慢性の咳、痰、呼吸困難を主訴とし、日常生活が制限されるだけでなく、長期の経過をたどる進行性疾患です。スピリーバが登場する前の抗コリン薬(アトロベント、テルシガン)などは短期作用型の抗コリン薬であったため1日の吸入回数が3~4回に及びました。

このような背景の中、長期間作用する抗コリン薬として初めて登場したのがスピリーバハンディヘラーになります。1991年から欧州を中心に臨床試験が開始され、欧州では2001年10月に承認されました。

本邦においては海外で実施された試験成績をもとに、2004年10月に承認を得ました。現在でもCOPDで最も使用される抗コリン薬として、大勢の人に処方されています。

抗コリン薬の禁忌(処方してはいけない患者)として、

  1. 閉塞隅角緑内障の患者
  2. 前立腺肥大症による排尿障害のある患者

これらがあげられています。緑内障は閉塞隅角のパターンのみ禁忌ですが、ご自身が緑内障のどのパターンか認識している人は少ないです。緑内障が悪化すると失明につながることから、一般的には緑内障の方にはスピリーバは使用しないことが多いです。

また前立腺肥大は、高齢男性の多くに認められる疾患です。病院で診断されていなくても、

  • 残尿感がある
  • トイレが近い
  • 尿がスムーズに出せない

などの症状が高齢の男性にあれば前立腺肥大の可能性があるため、スピリーバは処方しない方が無難かもしれません。

スピリーバハンディヘラーは、カプセルを充填部に吸うたびにセットしてから吸うお薬です。薬を毎回セットしなければならないため、手間に感じる人もいるかもしれません。

スピリーバハンディヘラーは、薬をセットしたら吸入口から自分のタイミングで吸います。ゆっくり深く吸うことでカプセル内に入っていた粉を吸うため、吸った感じがあるのが特徴です。

ゆっくり深く自分の吸入力で薬を吸うのがスピリーバハンディヘラーのお薬の特徴ですが、吸入力が弱いとうまく薬が吸いきれません。その場合は、スピリーバレスピマットというスプレー式のお薬を使用します。

スピリーバレスピマットの特徴としては、スプレータイプのため吸入力が弱くても薬が吸えることです。特にCOPDは、タバコで肺がボロボロになってしまった病気です。肺がボロボロになることで気管支が狭まり、息が思いっきり吐けなくなります。息が吐けなくなるということは吸う力も弱くなります。

そのため高齢者のCOPDの方の大部分は、吸入力はかなり低下していることが多いです。そういった方には、スピリーバレスピマットを優先的に処方します。ただし、スプレーはボタンを押すタイミングと吸うタイミングを合わせる必要があるので注意が必要です。

 

2.スピリーバの剤形の種類・用法・薬価とは?

スピリーバハンディヘラーは、COPDに適応があるドライパウダー式の吸入薬です。1日1回吸入することで効果を発揮します。

スピリーバは、

  • 吸入用カプセルを吸入器にセットして吸うハンディヘラー
  • 容器に吸入液が入っていてスプレーとして吸うレスピマット

2種類の製剤があります。スピリーバハンディヘラーは、チオトロピウム粉末吸入剤18μgのカプセルをハンディヘラーの吸入器にセットしてカプセルに穴をあけた後、その粉末を吸入します。スピリーバハンディヘラーは、1日1回このカプセルを毎日吸入します。

スピリーバハンディヘラーの適応は、

慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎、肺気腫)の気道閉塞性障害 に基づく諸症状の緩解

に対して適応があります。COPD急性増悪に対して効果があるわけではなく、毎日吸入することでCOPDの進行を抑えるのです。

一方のスピリーバレスピマットは、2.5μgのスプレーを2回、計5μgを吸入します。スプレーで効率よく肺へ到達させるため、スピリーバ吸入用カプセル18μgの約1/4の投与量(5μg)で臨床的に同等の治療効果が得られています。こうした流れからも、スピリーバレスピマットの方が現在は主流になりつつあります。

しかし、スピリーバハンディヘラーが決して劣っているわけではないので安心してください。今でも長年スピリーバハンディヘラーで加療している人は大勢います。

スピリーバの薬価ですが、スピリーバハンディヘラーは、

商品名 剤形 薬価 1日薬価
(3割負担)
スピリーバ
ハンディヘラー
カプセル 204.8円 61.2円

となってます。一方で、スピリーバレスピマットの薬価は以下の通りです。

商品名 吸入回数 薬価 1日薬価 1日薬価
(3割負担)
スピリーバレスピマット 60 6879.1円 229.3円 68.7円

※2016年8月14日時点の薬価です。

スピリーバレスピマットを1日1度に2回吸入するため、60吸入は30日分(1か月分)の量になります。1日薬価は、わずかにスピリーバハンディヘラーの方が安いです。

 

3.スピリーバハンディヘラーのCOPDに対しての効果

スピリーバハンディヘラーは、毎日カプセルを吸入することで効果を徐々に発揮します。即効性がないので注意が必要です。

スピリーバハンディヘラーは、毎日カプセルをセットして吸い続けることで気管支を広げ続けることで、徐々に効果を発揮します。注意しなければならないのは、1~2回吸ったぐらいでは効果が感じづらいという点です。

COPDはそもそも、タバコで肺がボロボロになった病気です。この病気は実は治すことができません。むしろ年を取るにつれて、徐々に弱ってくる病気です。スピリーバハンディヘラーは、この低下するのを抑えるお薬です。実際にスピリーバハンディヘラーを吸い続けてどれくらい効果があるのか示したのが下の図になります。

スピリーバ呼吸機能

この図は、一秒間に息がどれくらい吐けるか見た試験です。ピークとトラフは測定方法の違いです。緑がスピリーバを吸入した群、灰色が吸っていない群です。ピーク・トラフどちらの呼吸機能の測定方法でも、常にスピリーバハンディヘラーを吸った群の方がスピリーバを吸ってない群よりも上にあります。

つまりスピリーバを吸い続けた方が、呼吸機能が保たれることを示しているのです。一方でスピリーバを吸入し続けている緑の群でも、ゆっくりとですが下に傾いているのがわかるでしょうか?

つまりスピリーバを吸い続けることで、どんどん呼吸機能が良くなるというよりは、スピリーバを吸い続けることで急激に悪くなるのを防ぐ意味合いが強くなります。

この呼吸機能の悪化を防ぐことが、効果の改善にもつながります。それを示したのが下の図です。

スピリーバのTDIスコア

こちらはTDIスコアといい、患者様自身の症状(痰、咳息切れ等の諸症状等)を数字化し、1点以上であれば優位に改善したことになります。

スピリーバハンディヘラーを吸い続けた群が緑で、スピリーバを吸ってない群が灰色です。スピリーバハンディヘラーの緑の群が灰色の吸っていない群より常に上にあることは、スピリーバを吸い続けたことで症状が改善したことを示しているのです。

一方で大切なのは、スピリーバを吸って50日後からようやく吸ってない群より差が出てきたということです。つまり最低2か月は吸ってみないと、なかなか実感がないかもしれないです。スピリーバハンディヘラーを1~2回吸ってみて咳が変わらない、息切れが続くという方もいらっしゃいますが、もう少し長い目で見てあげてください。

 

4.スピリーバハンディヘラーが向いてる人は?

  • 前立腺肥大や緑内障がない方
  • スピリーバハンディヘラーでCOPDがコントロールできている方

スピリーバが登場する前の抗コリン薬は、1日に3~4回服用する薬でした。

これに対してスピリーバは、チオトロピウムを使用することによって1日1回で気管支拡張作用を得ることができるようになりました。このように、長期に渡ってCOPDを調節し、1日1回の服用で持続的に気管支を拡張できる薬がスピリーバハインディヘラーです。

このため現在では、肺気腫や慢性気管支炎などCOPDの患者さんに第一選択肢としてスピリーバが処方されています。

スピリーバなどの抗コリン薬を使用する時に気を付けなければいけないのが、前立腺肥大や緑内障がある人です。この場合は、スピリーバは避けた方が無難かもしれません。

一方でスピリーバは、ハンディヘラーの後スピリーバレスピマットというスプレー式のお薬が発売されています。現在は、このスピリーバレスピマットの方が主流になっています。特にCOPDは、年を取るにつれて吸入力が低下していく病気です。そのため、どうしてもハンディヘラーの粉薬が吸いづらくなってくる人が出てきてしまいます。

そのため喘息では、スピリーバレスピマットのみ適応が通っています。これは喘息に対してスピリーバハンディヘラーが効果がないわけではなく、現在ほとんどスピリーバレスピマットで加療している実情から、あえてハンディヘラーもテストする必要はないと発売元が判断したためです。

しかしスピリーバハンディヘラーでうまく吸えている人が、あえてレスピマットに変える必要もありません。ハンディヘラーもレスピマットも、効果は同等だからです。

そのためスピリーバハンディヘラーが向いてる人は、ハンディヘラーの吸入器でもしっかりと薬が吸える人となると思います。

 

5.スピリーバの作用メカニズム

抗コリンとして副交感神経の働きを遮断することで気管支を広げます。

私たちが運動を行っているとき、よりたくさん空気を取り入れるために気管支が拡張します。この時に働く神経系を交感神経と呼びます。「交感神経は運動時に働く神経系である」と認識できれば良いです。

そして、この交感神経の反対の働きをする神経系として副交感神経があります。運動時とは異なり、「体を休めている時に働く神経系」が副交感神経になります。

先ほど、「交感神経が活発になると、空気を取り入れるために気管支を拡張させる」とお伝えしました。それでは、この反対の作用をする副交感神経が働けば気管支は収縮します。つまり、気道が狭くなっていきます。

副交感神経が興奮すると、気道が狭くなるという作用が起こります。そしてこの副交感神経の興奮に関与している物質として、アセチルコリンがあります。アセチルコリンが作用することによって副交感神経が活発となり、結果として気管支が収縮します。

ですからアセチルコリンの働きを抑えてしまえば、「気管支収縮の逆」として気管支を拡張できることが分かります。より正確に言えば、「気管支収縮の抑制」となります。

「アセチルコリンが受容体に作用する過程を抑制する薬」を、総称して抗コリン薬と呼びます。抗コリン薬によってアセチルコリンの働きを抑え、気管支を拡張させることができるようになります。

このようにアセチルコリンの働きを抑えることによってCOPDを治療する薬として、スピリーバ(一般名:チオトロピウム)があるのです。

抗コリンの働きついて詳しく知りたい方は、「抗コリン作用とは?抗コリン薬・コリン作動薬のすべて」をお読みください。

 

まとめ

  • スピリーバレハンディヘラーは1日1回する長時間作用型の抗コリン薬になります。
  • スピリーバハンディヘラーはカプセルをセットすることで吸入するドライパウダーのお薬になります。
  • スピリーバハンディヘラーはCOPDに適応があります。
  • スピリーバハンディヘラーは前立腺肥大と緑内障がある方には使用することができません。

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