身体醜形障害(醜形恐怖症)の原因・診断から治療まで

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医3名、精神科医4名で協力して診療をしています。所属医師で協力して、記事を書いています。
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身体醜形障害(醜形恐怖症)とは、自分の容姿に対しての欠陥や欠点にとらわれてしまっている病気です。

自分の身体のことを醜いという考えにとらわれてしまい、容姿を整えるために様々な行動に追い込まれます。醜いアヒルの子が白鳥となることを期待して、皮膚科や美容外科などで治療を受ける方も多いです。

かつては身体表現性障害のひとつとして分類されていましたが、最近では強迫性障害の症状のひとつと考えられるようになってきています。日本では、対人恐怖症のひとつという考え方もされています。

身体醜形障害とはどのような病気なのでしょうか?ここでは、身体醜形障害(醜形恐怖症)について、その原因と診断から治療まで詳しくみていきたいと思います。

 

1.身体醜形障害(醜形恐怖症)とは?

身体醜形障害は身体症状に悩まされる病気として身体表現性障害に分類されていましたが、自分の身体の一部に対してとらわれる強迫性障害の関連した病気と考えられるようになってきています。

まずは身体醜形障害とはどのような病気なのか、お伝えしていきたいと思います。

身体醜形障害(醜形恐怖症)とは、自分の身体の外見に対してとらわれてしまっている病気です。「自分の身体が醜いのでは」と恐れ、人と何度も比較してしまったり、過剰に身なりを整えたりしてしまいます。皮膚科や美容外科で治療を受ける方も少なくありません。

身体醜形障害は、これまでは身体表現性障害のひとつとして分類されていました。身体表現性障害とは、身体に異常がないにもかかわらず精神症状として身体症状が生じる病気のことです。自分の身体の欠点を訴えるために、身体表現性障害に分類されていました。

しかしながら身体醜形障害の病気としての本質は、「自分の身体の欠陥や欠点に対するとらわれ」です。「自分は醜いのでは」という強迫観念があるのです。そしてその強迫行為として、繰り返し容姿を気にしてしまう行動をとるのです。

身体醜形障害はこのように考えると、強迫性障害に近い病気と考えられるようになりました。このため最新の国際的な診断基準のDSM-Ⅴでは、強迫性障害の関連疾患のひとつとされました。

日本では、従来から対人恐怖症のひとつのタイプとして身体醜形障害が分類されてきました。確かに人と接する場面で醜形恐怖が強まる患者さんもいらっしゃいます。

しかしながら身体醜形障害の患者さんは、他人の目を気にするというよりも、自分自身が納得できていないことが多いです。身体醜形障害の患者さんのうち、およそ1/3は妄想的に「自分は醜い」と確信してしまっています。

対人恐怖症と同じかどうかは議論があるところですが、身体醜形障害が対人関係に影を落とすこと病気には違いありません。

対人恐怖症について詳しく知りたい方は、「対人恐怖症の症状とは?どのような恐怖があるのか」をお読みください。

 

2.身体醜形障害(醜形恐怖症)の原因とは?

身体醜形障害の原因は、遺伝と環境要因が組み合わさって発症すると考えられています。明確なきっかけなしに思春期からはじまって、慢性的に経過していくことが多いです。

身体醜形障害の原因は、分かっていない部分もとても多いです。

病気の原因を考える時に、大きく分けると遺伝と環境の2つに分けて考えることができます。身体醜形障害は、遺伝的な要因もあることがわかってきていて、それに環境要因も加わって発症すると考えられています。

強迫性障害の患者さんの第一度親族(両親・子供・兄弟姉妹)に身体醜形障害の患者さんが多いことが分かっています。このことから、身体醜形障害には遺伝的な要因があることがわかります。

性格傾向としては、不安が強くて完璧主義な方に多いです。そして思い込みやこだわりが強く、自己愛の強い方が多いです。身体へのとらわれも、そのような過敏な自己愛から生まれてくることが多い印象です。

身体醜形障害では、ネグレクトや幼児期の虐待が発症リスクであることが分かっています。このような明らかなストレスだけでなく、様々なストレスの積み重ねで発症していきます。「友達からからかわれてから…」といった明確なきっかけがある方もいますが、多くの患者さんははっきりとしたきっかけはなく徐々に病気が発症していきます。

 

身体醜形障害の平均発症年齢は、16~17歳です。2/3が18歳までに発症していて、思春期に始まることが多いです。この頃は容姿に対して多感になる時期ですし、はじめは何となく気になった程度のことが徐々に発展していきます。

症状は男女で大きな変わりはありませんが、男性では性器に対するとらわれが強いと言われています。それに対して女性では、摂食障害との合併が多いとされています。

身体醜形障害は、欧米の調査では1.7~2.4%の有病率と報告されています。皮膚科受診患者さんの9~15%、美容外科の3~16%、口腔外科の10%の患者さんに認められると報告されています。これらの医者も、分かっていて高額自費治療をすすめたりしているのが実情です。

 

3.身体醜形障害(醜形恐怖症)の症状と診断とは?

身体醜形障害の診断は、診断基準に従いながら行っていきます。診断基準には主要な症状も含まれているので、身体醜形障害の診断基準から症状をみていきましょう。

アメリカ精神医学会(APA)のDSM-Ⅴという国際的な診断基準をもとに見ていきたいと思います。この診断基準では、AからDまでの4項目を上から順番にチェックしていくことで身体醜形障害と診断できるようになっています。

簡単にまとめると、

  1. 他人からは些細に感じられるような外見へのとらわれがある
  2. 外見の心配をなくすための行動をする
  3. 本人が苦しんでいるか、生活に大きな支障があること
  4. 摂食障害ではない

順番に、詳しくみていきましょう。

A.1つまたはそれ以上の知覚された身体上の外見の欠陥・欠点にとらわれているが、それは他人には認識できないか、できても些細なものに見える

身体醜形障害の本質的な症状は、身体上の外見の欠陥や欠点にとらわれてしまうことです。このとらわれは、思考の問題ではなく知覚の問題と考えられています。というのは、身体醜形障害の患者さんでは全体のイメージより部分に注目する傾向があったり、曖昧なことをネガティブにとらえる傾向があるためです。

心配する程度は様々で、「魅力的でない」から「化け物みたい」といったレベルまであります。身体のどこでもとらわれることがありますが、多いものとしては以下の3つです。

  • 皮膚
  • 髪の毛

このように身体のパーツにとらわれることだけでなく、顔全体や目鼻立ちといった方もいます。これらの心配ごとは、周りの人から見たら気にならないような些細なことにとらわれてしまいます。

B.外見上の心配に反応して、繰り返し行動または精神的行為を行う

外見へのとらわれはひとりでに頭の中に浮かんできて、その心配に多くの時間を費やしてしまいます。平均して3~8時間ともいわれています。この考えを頭の中で打ち消すのは困難で、心配を解消する行動をしたり、他人と心の中で比較したりすることで解消します。

繰り返し行動としては様々なものがあり、

  • 鏡で確認する
  • 過剰なまでに身づくろいをする
  • 化粧などで偽装する

などを繰り返し行います。美容品を衝動的に買ったり、真っ黒に日焼けをする人なども、その背景に身体醜形障害が隠れていることもあります。

身体醜形障害の患者さんでは、自分の外見に対して他人が注目していると過剰に思い込んでしまっている方も少なくありません。

C.その外見へのとらわれは、臨床的に意味のある苦痛、または社会的・職業的・他の重要な機能の障害をもたらしている

身体醜形障害はこのような病気なので、本人の苦悩が大きい病気です。醜いアヒルの子の世界にいて、白鳥になれないかと美容外科や皮膚科などを受診する方も少なくありません。高額の自費医療になるので、風俗店でお金をためて美容に費やす方もいらっしゃいました。

自分が醜いという思い込みから、仕事やプライベートで人と接する機会を避けてしまったりすることもあります。身体表現性障害は思春期に発症することが多いので、不登校や退学になって引きこもり生活になってしまうことも少なくありません。

D.その外見へのとらわれは、摂食障害の診断基準を満たしている人の、肥満や体重に関する心配ではうまく説明されない

外見上のとらわれが他の病気のせいで起こっている場合は、身体醜形障害とは分ける必要があります。摂食障害では「自分のボディイメージ」に対するとらわれがあり、太っていることに悩みます。太っているという全体のイメージに悩んでいるのなら、身体醜形障害とは診断しません。

しかしながら体重に対する悩みは、身体のパーツの悩みから生じることもあります。例えば鼻が大きくて醜いと悩んでいたら、体重に対して思い悩むこともあります。このように、身体醜形障害では、身体の一部に対する悩みの延長として体重のことを心配します。

 

それ以外にも考えていく必要がある病気としては、以下のようなものがあげられます。

  • 強迫性障害
  • うつ病
  • 社交不安障害
  • 妄想性障害

強迫性障害の患者さんでは、外見以外にも強迫観念や強迫行為が認められます。身体醜形障害では、あくまで自分の身体に対してのみ関心が向いています。その他の強迫性障害と関連のある皮膚むしり症や抜毛症などでは、その背景に自分の醜さを改善しようとするための行為であれば身体醜形障害と診断されます。

うつ病では、物事を悲観的にとらえてしまって微小妄想が出現することがあります。そのひとつとして醜形恐怖が強まることがあります。その場合は身体醜形障害とは診断しません。その一方で、醜形恐怖からうつ症状が強まることもあります。どちらが先かを考えていきます。

身体醜形障害の患者さんでは、外見のとらわれから人を避けるようになります。社交不安が認められて、その原因が外見に関する醜形恐怖であるときは身体醜形障害と診断します。社交不安障害の診断基準を満たせば、合併と考えていきます。

醜形恐怖が妄想的で、患者さんが確信していることもあります。このように自分の外見の欠陥に対する確信のときは、妄想性障害ではなく身体醜形障害と診断されます。

 

4.身体醜形障害(醜形恐怖症)の特殊なタイプ

筋肉醜形恐怖と代理醜形恐怖があります。醜形恐怖の確信の程度で、重症度を評価します。

身体醜形障害には、特殊なタイプが2つあります。

  • 筋肉醜形恐怖
  • 代理醜形恐怖

筋肉醜形恐怖とは、自分の身体が小さくて、筋肉の引き締まりやたくましさが足りないととらわれているタイプです。マッチョなのに自分は貧弱だと悩んでいたりします。よく食べて運動し、筋トレをするといった強迫行為をします。ときに危険なドーピングなどをすることもあります。

ほとんどが男性といわれていて、私はみたことがありませんが海外では多いのかもしれません。どうしてこのタイプだけを分けたのかはよくわかりませんが、筋トレをするのは健康的で好ましい行為に周囲から見えるからでしょうか。

代理醜形恐怖とは、他人の容姿の欠点に思い悩むタイプです。子供や配偶者の醜さを思い悩んでしまいます。勝手な話にも感じられますが、重要な存在だからこそだと思います。本人にとっては、自分の身体の一部のようなものなのかもしれません。

 

そして身体醜形障害では、その醜形恐怖の確信の程度を評価します。醜形恐怖を確信してしまっているほど、自分は病気であるという認識(病識)は乏しくなってしまいます。

  • 病識が十分・概ね十分:醜形恐怖が正しくないかもしれないと認識している
  • 病識が不十分:醜形恐怖がおそらく正しいと思っている
  • 病識が欠如・妄想的な信念:醜形恐怖が正しいと確信している

身体醜形障害の患者さんは病識が不十分な方が多く、1/3は妄想的な醜形恐怖症の信念をいだいています。病識がないほど、より重度の身体醜形障害と考えられます。

 

5.身体醜形障害の治療とは?

身体醜形障害の治療では、薬物療法と行動療法を行っていきます。薬物療法は抗うつ剤を中心とし、精神療法は暴露反応妨害法が一般的です。

身体醜形障害の患者さんは、自分が病気だという認識がない方も多いです。周囲から見たらナルシストと思われていても、本人の中では苦悩を抱えていることもあります。

このような病気なので、なかなか治療につながりにくいです。そして周りの方に相談しても理解されず、人の目を気にしながら生活されてきた方も多いので、一人で抱えていることも多いです。

このように身体醜形障害の患者さんは、この悩みで精神科や心療内科に自ら相談される方は少ないです。うつ病や社交不安障害などの合併症をきっかけにして受診につながることが多いです。

身体醜形障害では、自分の容姿に対する不安や不快感を打ち消そうと、何度も身づくろいをしたり、気になる部分を隠そうとします。これがさらなる悪循環を生んで、より醜形恐怖を強めてしまいます。

この悪循環を断ち切るために、薬物療法と精神療法を組み合わせて治療していきます。まずはお薬によって症状を和らげて、悪循環を断ち切っていきます。そして日常生活の中で、精神療法を積み重ねて治療していきます。

お薬の治療としては、強迫性障害と同じように薬物療法を行っていきます。セロトニンを増やすお薬を使っていきます。

強迫性障害の薬物療法について詳しく知りたい方は、「強迫性障害に有効な薬とは?強迫性障害の薬物療法」をお読みください。

精神療法としては、行動療法を中心としたアプローチとなります。身体醜形障害の患者さんは、醜形恐怖を確信してしまっていることもあります。そのような時には認知にアプローチは難しく、行動から少しずつ認知を変えていきます。一般的には、暴露反応妨害法という方法を行っていきます。

自分が醜いと感じてしまった時に、その不安や不快感を打ち消すための行動を我慢(反応妨害)します。そして次第に不安や不快感が慣れていくのを学習していきます。

暴露反応妨害法について詳しく知りたい方は、「暴露反応妨害法(エクスポージャー)とはどういう治療法なのか」をお読みください。

 

まとめ

身体醜形障害は身体症状に悩まされる病気として身体表現性障害に分類されていましたが、自分の身体の一部に対してとらわれる強迫性障害の関連した病気と考えられるようになってきています。

身体醜形障害の原因は、遺伝と環境要因が組み合わさって発症すると考えられています。明確なきっかけなしに思春期からはじまって、慢性的に経過していくことが多いです。

筋肉醜形恐怖と代理醜形恐怖があります。醜形恐怖の確信の程度で、重症度を評価します。

身体醜形障害の治療では、薬物療法と行動療法を行っていきます。薬物療法は抗うつ剤を中心とし、精神療法は暴露反応妨害法が一般的です。

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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医3名、精神科医4名で協力して診療をしています。所属医師で協力して、記事を書いています。
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