ドクターショッピングの原因?心気症の症状・原因・診断

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医3名、精神科医4名で協力して診療をしています。所属医師で協力して、記事を書いています。
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「自分は何か重たい病気にかかってしまっている」

このような恐怖にとらわれてしまう病気が心気症(心気障害)です。病院で検査をして異常が認められず、医者から問題ないと告げられても「なんだ、何ともなかったんだ」と安心できません。

このため安心を求めて、異なる病院に受診したりします。どの病院にかかっても、同じように「問題ありません」と診断されてしまいます。

このような心気症は、心の病気として治療をしていく必要があります。ここでは、心気症の症状と原因、診断についてみていきたいと思います。

 

1.心気症(心気障害)とは?

心気症とは、自分が重篤な病気にかかっているのではという恐怖にとらわれている病気です。自覚的な症状は認められますが、検査で大きな異常は認められません。

まずは心気症(hypochondriasis)とはどのような病気なのか、お伝えしていきたいと思います。

心気症は、「自分が何か重篤にかかってしまうに違いない」「自分は重篤な病気にかかっている」というとらえれが強い病気です。

患者さん自身には何らかの症状を感じていることが多く、それを訴えて病院に訪れます。しかしながら検査をしても大きな異常はなく、医者が問題ないといっても心配がとれません。

今度は他の病院にみてもらおうと、セカンドオピニオンを繰り返してしまいます。ドクターショッピングをする患者さんの中には、心気症の患者さんは少なくありません。

心気症の患者さんは、「絶対に何か重篤な病気が隠れている」とまで強くは思い込んでいません。どちらかというと、「怖い病気が隠れている気がするけれども大丈夫かな?」といった形が多いです。

周りも心配になって病院に付き添ったりしますが、心気症ではこれは逆効果になります。本人の心配が強まってしまい、症状が慢性化してしまうこともよくあります。

心気症は、うつ病や他の不安障害の患者さんに認められることもあります。反対に、心気症の患者さんがストレスにより抑うつ状態や不安障害を合併してしまうこともあります。

心気症とはこのように、自分は重病にかかっているというとらわれから、深い苦しみと生活への大きな支障を生じる病気です。

 

2.心気症の原因とは

心気症は、身体感覚の認知の問題や抑圧されたストレス、疾病利得などが原因となります。このため、性格傾向や日々のストレスなどが要因と考えられています。

心気症の原因としては、3つの側面から考えることができます。

  • 身体感覚の誤った解釈
  • 無意識に抑圧された葛藤によるもの
  • 疾病利得

心気症患者さんは、身体の感覚を誤って認知しているといわれています。心気症の患者さんは、身体の嫌な感覚に対して敏感なうえに、耐えることができません。このように身体感覚のとらえ方が歪んでいるため、身体の病気を過剰に心配してしまいます。

そして心気症は、自分の中に抱えている葛藤(ストレス)を無意識に抑え込み、その不安が症状に転換されて出てきているとも考えられています。

そして意識が症状に向くことは、自分の葛藤と向き合わなくて済みます。さらには病気であることから、周囲の人から配慮してもらえるという現実的なメリット(疾病利得)もあるのです。

心気症はこのような原因が考えられているため、性格などの本人要因も大きいと、ストレスなどの環境要因が重なって発症します。

①性格

性格は遺伝的な気質に加えて、育ってきた環境や生きていく上での経験から培われていきます。

心気症になりやすい性格としては、森田療法を生み出した森田正巳は神経質性格をあげています。いわゆる神経症になりやすいと言われている性格です。

神経質性格とは、

  • 内向的
  • 内省的
  • 心配性
  • 完全主義
  • 理想主義
  • 負けず嫌い

神経質性格は、心配性で内向的という弱気な側面もある一方で、完全主義で理想主義、負けず嫌いという強気な側面もある性格です。

このように共存しているため、弱気な部分を強きな部分が受け入れられなくてストレスを抱えやすい傾向にあります。

②ストレス

心気症では、ストレスを無意識に抑え込んでしまう抑圧が原因と考えられています。それが抑えきれなくなり、置き換えられて病気への不安となっているのです。

心気症は、ストレスがきっかけに悪化することがあります。

  • 避けたい出来事(学校や仕事に行くなど)
  • 感情的になる出来事(夫への怒りなど)

こういった出来事で心気症が悪化します。心気症は、身体の健康に関係する出来事でも症状が動揺することがあります。

  • 親しい人が亡くなったり、重篤な病気になってしまった
  • 自分が重篤な病気になって、何とか回復した

こういった出来事があると、一時的に心気状態になることがあります。

③年齢や性別

心気症の発症年齢はさまざまですが、20~30歳が最も多いです。年をとると健康面に不安を感じるのは当然とみなされるので、心気症と診断される患者さんが少ないこともあると思います。

実際には年配の方で心気症になる患者さんも少なくなく、若い人よりも当然の心配であることも重なって、治りにくい印象があります。

そして多くの不安の病気では女性の方が多い傾向にありますが、心気症では男女差は大きくありません。それでも私の印象では、やはり女性の方が多い印象をうけます。

ある研究では、内科の病院に受診した患者さんの4~6%は心気症患者さんだったという方向があります。

 

3.心気症の症状と診断とは?

心気症の診断をすすめていくには、診断基準を元に行っていきます。心気症の診断基準には、アメリカ精神医学会(APA)のDSMと世界保健機関(WHO)のICDがあります。

DSMでは心気症は身体表現性障害に分類されていましたが、最新のDSM‐Ⅴでは身体症状症と病気不安症にわけられています。かつて心気症と診断された患者さんの約75%が身体症状症、約25%が病気不安症に分類されます。ICDでは心気障害となっています。

ここでは、かつてのDSM‐Ⅳ‐TRに基づいて診断基準をご紹介していきます。AからFまでの6項目を上から順番にチェックしていくことで、心気症と診断できるようになっています。

簡単にまとめると、

  1. 重篤な病気への恐怖にとらわれていること
  2. 医学的に大丈夫と言われても続くこと
  3. 確信とまではいかず、外見の問題だけではないこと
  4. 本人が苦しんでいるか、生活に支障が大きいこと
  5. 6か月以上持続していること
  6. 他の精神疾患でないこと

順番に、詳しくみていきましょう。

A.身体症状に対するその人の誤った解釈に基づく、自分が重篤な病気にかかる恐怖、または病気にかかっているという観念へのとらわれ。

心気症の症状としては、腹部から胸にかけての症状が多いです。色々な症状であることがありますが、その症状はそこまで多岐にわたりません。

心気症では、「自分には何か重大な病気が隠されているかもしれない」という得体のしれない病気に対して心配が強いです。症状自体に対してはそこまで深く捉えていません。

身体化障害では、様々な症状を患者さんは訴えて、その症状について患者さんは訴えます。大きな病気がかくれているかもしれないという恐怖は、そこまで強くありません。

B.そのとらわれは、適切な医学的評価または保障にもかかわらず持続する。

心気症の患者さんは、医師が検査などを行ったうえで「大丈夫!」と保証しても、不安を拭い去ることができません。

このため、他の病院でセカンドオピニオンをうけるなどのドクターショッピングを繰り返してしまいます。

自分自身で身体の異常を繰り返し調べたり、インターネットで事細かに調べ上げたりします。健康への不安のために、周囲からは理解がしくい行動をとることもあります。

C.基準Aの確信は妄想的強固さがなく、外見についての限られた心配に限定されていない。

心気症は重大な病気にたいしてとらわれがありますが、それは「かもしれない」というレベルになります。「間違いない」というほどに確信してしまっている場合は、妄想性障害となります。

また、自分の外見が醜いといったとらわれに限られていない必要があります。自分の外見だけに限定されている場合は、身体醜形障害になります。

D.その症状または欠損は、臨床的に意味のある苦痛、または社会的・職業的・他の重要な機能の障害を引き起こしている。または医学的な評価が必要である。

E.障害の持続期間が少なくとも6か月である。

健康に対して心配するのは、誰にでもあることです。むしろ自分の健康を気遣うことは、大切なことともいえます。そのような正常な健康不安と心気症を分けるポイントとしては、

  • 本人が苦しむ
  • 生活に支障がある

この2つのどちらかがあることになります。つまり、病気として治療する意義があるかどうかです。

また心気症は、例えば親しい人の死などをきっかけにして、一時的に健康への不安が高まることもあります。このため、6か月以上持続している必要があります。

F.そのとらわれは、全般性不安障害、強迫性障害、パニック障害、大うつ病エピソード、分離不安、または他の身体表現性障害ではうまく説明されない。

心気症は、うつ病や様々な不安障害で合併することがあります。これらの病気の期間だけに心気症状が認められる場合は、心気症とは診断しません。

これらの病気の症状がよくなっても、なお心気症状が続いている場合は、心気症が合併していると考えます。

 

4.心気症と心身症の違いとは?

心気症は、重大な病気にかかっているのではというとらわれがあります。それに対して心身症は、心が原因となって身体に症状が表れる病気のこと全般を指します。

これまで、心気症とはどんな病気なのかみてきました。最後に、よく心気症と間違われることのある心身症との違いを整理したいと思います。

心気症と心身症というと「気」と「身」の違いしかないので、よく混同されています。しかしながらこの2つの病気は、全く異なるものになります。

心気症は、「私には何か重大な病気が隠されているかもしれない」という恐怖にとらわれてしまう病気でした。「心(こころ)」が、「身(からだ)」への心配を作り出してしまう病気でした。

それに対して心身症は、「ストレスが原因で身体症状を引き起こす病気」をひっくるめた考え方です。「心(こころ)」が原因となって、「身(からだ)」の症状を引き起こしている病気全般をさすのです。

その中には糖尿病や高血圧といった、まさに内科の病気といったものも含まれます。これらはストレスが発症要因や悪化要因となっているからです。そして広い意味では、心気症が含まれる身体表現性障害も心身症となるのです。

心気症と心身症にはこのような違いがあり、広い意味では心気症は心身症に含まれるといえるのです。

心身症について詳しく知りたい方は、「心身症とは?心気症と神経症の違いとは?」をお読みください。

 

まとめ

心気症とは、自分が重篤な病気にかかっているのではという恐怖にとらわれている病気です。自覚的な症状は認められますが、検査で大きな異常は認められません。

心気症は、身体感覚の認知の問題や抑圧されたストレス、疾病利得などが原因となります。このため、性格傾向や日々のストレスなどが要因と考えられています。

心気症は、重大な病気にかかっているのではというとらわれがあります。それに対して心身症は、心が原因となって身体に症状が表れる病気のこと全般を指します。

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