パニック障害で飛行機にのれない!パニック障害での飛行機対策

元住吉 こころみクリニック
元住吉 こころみクリニック
2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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パニック障害は、突然のパニック発作を繰り返してしまう病気です。急に動悸やめまい、息苦しさなどが生じてしまい、強烈な不安感や恐怖感に襲われます。

このパニック発作を恐れて、パニック障害の患者さんでは飛行機が乗れなくなってしまうことがとても多いです。「飛行機の中でパニック発作が起こってしまったらどうしよう」という恐怖にとりつかれてしまいます。

飛行機にのれなくなると生活が成り立たなくなる方はそこまで多くはありませんが、旅行にいけなくなったり、出張で遠回りしなければいけなくなったりしてしまうことがあります。

パニック障害の治療を考える時に、飛行機に乗ることはどのように考えるべきでしょうか?

ここでは、パニック障害で飛行機に乗れないと悩んでいる患者さんに対して、どのように飛行機を考えていけばよいのかをお伝えしたいと思います。どうしても飛行機に乗らなければいけない時に、パニック発作を起こしにくくする工夫もみていきましょう。

 

1.パニック障害が飛行機で起こりやすい原因

飛行機は、狭い機内という閉鎖的な環境に加えて、一度離陸すると自分ではどうすることもできなくなります。このような、広場恐怖の最たる状況が飛行機になります。

パニック障害の患者さんの多くは、飛行機を苦手とします。それはパニック発作を想像してみると、無理はないことでしょう。

パニック発作が起きると心臓がバクバクして息苦しくなり、異常に汗が出てきたりします。自分で不安の抑えが効かなくなり、「このまま死んでしまうのではないか」という死の恐怖すら出てくることもあります。

このようなパニック発作を経験したら、いつまたパニック発作がくるのかと怯え、少しでも不安な状況になると怖くなってしまいます。そんな状況では、飛行機にのるのは怖くなってしまいます。

飛行機は安全な乗り物とわかっていても、一度離陸してしまったら自分ではどうすることもできません。狭い機内の中で自由がきかず、不安が高まりやすくなってしまいます。

このようにパニック障害の患者さんは、「逃げ出せない状況」や「助けが得られない状況」になることを恐れます。ですから閉鎖的な環境が苦手で、自分のコントロールできない状況を苦手とします。飛行機はまさに、その最たるものなのです。

このことを、専門的には広場恐怖といいます。パニック障害の患者さんの多くは広場恐怖を伴います。「パニック発作が起きてしまったら逃げ出せない」「パニック発作が起きてしまったら誰も助けてくれない」という状況を苦手にしてしまうのです。

広場恐怖の「広場」は、ギリシャ語の「アゴラ」に由来しています。古代ギリシャでは、広場を集会の場としていました。非常に多くの人でごった返しており、当時のパニック発作がおこりやすい代表的な状況だったのです。

 

2.パニック障害の患者さんは飛行機をどう考えるべきか

飛行機は日常生活とは直接関係しないことが多いです。克服できれば理想ですが、やり過ごせれば十分と考えてもよいかも知れません。

パニック障害の患者さんは、閉鎖的環境やコントロールできない状況を苦手とする広場恐怖を合併することが多いです。具体的には、電車やバスといった公共機関、歯医者や美容院、トンネルやエレベーター、人込みや密室など様々です。

これらの多くは、日常生活に密接に関係しているものです。例えば電車にのれなければ、行動範囲は極端に狭くなってしまいます。歯医者に行けなければ、歯の治療やメンテナンスを満足にうけることができません。エレベーターにのれなければ、階段を使わなければならなくなります。

こういった生活が不自由になることは、少しずつでも改善していかなければいけません。恐怖を克服していくためには、少しずつチャレンジして成功体験を積んでいくことが大切です。

それでは飛行機はどうでしょうか?飛行機に乗れないことは、たしかに旅行を趣味として楽しんでいた方には苦痛になるでしょう。海外出張などにもいけなくて、仕事に支障がある方もいるかもしれません。

ですが飛行機で全国各地、世界各地を飛び回らなければ生活できない人はわずかだと思います。ほとんどの人は、飛行機は「たまにあるイベント」でしょう。

パニック障害を克服するという意味では、飛行機も克服できるのが理想です。ですが飛行機は、安全と分かっていてもハードルがとても高いです。私自身も飛行機が天候や気流で揺れたりすると、安全を信じていても不安が強くなります。

ですから飛行機に関しては、無理に克服をしなくてもよいかと思います。飛行機にどうしても乗らなければいけない時だけ、やり過ごすようにすればよいと思います。以下では、どのようにすればやり過ごせるかを考えていきたいと思います。

 

3.パニック発作を飛行機でやり過ごす5つの対処法

パニック発作を飛行機で起こさないために、お薬に頼ってやり過ごしている方は多いです。その他にも自分で落ち着けられるリラックス法、過呼吸の対処法などを知っておきましょう。

このように、飛行機に関してはやり過ごせることを目指していけばよいかと思います。その中で「少しずつ慣れていけば儲けもの」くらいの感覚でよいでしょう。

飛行機に乗ることは不安かもしれませんが、その不安をコントロールできる対処法を用意しておきましょう。ここでは、パニック発作を飛行機でやり過ごすための対処法をまとめていきたいと思います。

①頓服を十分に使う

パニック障害の方が飛行機に乗る時は、あらかじめ頓服薬をたくさん用意していくのがもっとも楽だと思います。

頓服薬は即効性のあるお薬で、パニック発作が起こりそうな時に服用すればすぐに効いてくれます。頓服として使われるお薬は、ベンゾジアゼピン系抗不安薬が中心です。ベンゾジアゼピン抗不安薬の中でも、効果の実感が大きいお薬を使っていきます。

具体的には、

このようなお薬です。

これらの頓服薬は、お守りとしてもっているだけでも安心感につながります。急に不安におそわれた場合は、お薬は噛んで服用しても問題ありません。むしろそちらの方が早く効きます。

ワイパックスでは噛んでも甘みがありますし、噛んだ時(舌下)の吸収効率もよいといわれています。このため私は、ワイパックスを処方することが多いです。

少しくらい多く飲んでも安全性は全く問題ありません。医師と相談した上で、頓服をどのように使っていくかを相談しておきましょう。

②睡眠薬で寝てやり過ごす

飛行機に乗っている時に睡眠薬を使ってしまって、眠ってしまうのも一つの方法です。離陸する前の段階で睡眠薬を服用してしまい、眠ってしまいます。数時間のフライトであれば、目が覚めたころには到着しているということもあります。

睡眠薬にはいろいろな種類のものがありますが、即効性がある睡眠薬のベンゾジアゼピン系睡眠薬が中心になります。抗不安作用もあるので、多少は気持ちも落ち着きます。

具体的には、

ここでひとつ注意なのが、ロヒプノール/サイレースです。非常に強力な睡眠薬なのですが、その効果の強さゆえに犯罪に使われることがありました。このこともあり、アメリカやカナダ、オーストラリアでは、販売だけでなく持ち込みも禁止されています。

医師と相談した上で、どのような睡眠薬をつかっていくか相談してください。

③パニック発作を正しく理解する

パニック発作が起こっている時は、強烈な恐怖に支配されてしまいます。「このまま死んでしまうのではないか」というほどまでの恐怖が襲ってきます。

しかしながら恐怖が過ぎ去ると、身体にあらわれていたさまざまな症状はすっかりと消えてなくなります。後遺症を残すようなものでもなければ、パニック発作によって本当に死んでしまうことはありません。

このことを理解して、不安が高まってきたら「大丈夫、大丈夫」と自分に言いきかせることで不安をコントロールできることもあります。(自己教示)

④薬を使わないリラックス法を身につける

薬を使わずにリラックスする方法もいくつかあります。練習して慣れていくことで、不安をコントロールすることが上手になっていきます。大きく分けて、3つの方法があります。

リラックスする呼吸法とは、吐く時間を意識した腹式呼吸法です。呼吸を整えることで、リラックス状態をつくれるようにしていきます。

漸進的筋弛緩法とは、リラクゼーションとも呼ばれている方法です。筋肉の緊張状態を知り、それを和らげていく練習をします。不安が高まって来たら、緊張をほぐすことで気持ちを落ち着かせられます。

自律訓練法とは、リラックス状態を自己暗示で作り上げていく方法です。リラックス状態をイメージして、それを身体にしみこませていきます。

いずれの方法も、繰り返し続けていくことで少しずつ上手になっていきます。いわば筋トレのようなもので、すぐには効果が出ないけれども継続していくことで少しずつ効果が出てきます。

⑤息苦しい時は息をはく

パニック発作では、息苦しさが出てくることが多いです。息苦しくなってくると、できるだけたくさん息を吸おうとします。

パニック発作での息苦しさは、酸素が不足しての息苦しさではありません。ですからいくら呼吸をたくさんしても、息苦しさは改善しません。むしろ呼吸回数が増えてくると、換気をし過ぎてしまって手足がしびれる過換気症候群に発展することがあります。

過換気症候群では、換気のしすぎて身体の中の二酸化炭素が外に出てしまって、血液のバランスがくずれてしまいます。これが引き金になって、手足のしびれが起こるのです。

この手足のしびれは一時的で、後遺症が残るものでもありません。ですが手足がしびれてくると、恐怖を一気に強める原因になります。

このようになる原因は呼吸回数が増えてしまうことですので、できるだけ時間をかけて呼吸をします。そのためには、吐く時間を長くする意識をすることが大切です。

詳しくは、「過呼吸・過換気症候群の正しい対処法とは?袋は使うべき?」をお読みください。

 

4.パニック発作を飛行機で起こさないための工夫

パニック発作を起こさないための工夫として、チェックインの時にスタッフに伝えたり、誰かに同行してもらうことなどがあります。予約の取り方として、空いている便にしたり、通路側にするなどの工夫ができます。

パニック障害の患者さんは、自分がコントロールできない状況を苦手とします。ですから少しでもパニック発作を起こりにくくするためには、

  • 閉鎖的な環境を避ける
  • 助けが得られる状況をつくる

この2つになります。

具体的に、飛行機ではどのようなことができるでしょうか。見ていきたいと思います。

①チェックインのときにパニック障害のことを伝える

客室乗務員が自分がパニック障害であることを知っていてくれたら、パニック発作が起きてもわかってもらえるという安心感が出てくるかと思います。

ですが飛行機に搭乗して、その時に伝えるのは勇気がいります。まわりの乗客の目もあるかと思います。ですからチェックインの際に、パニック障害や過呼吸のことを係員に伝えておきましょう。その情報はコンピューターを通して、客室乗務員に伝わります。

パニック障害の患者さんはとても多いので、飛行機にのっていて調子が悪くなってしまったり、過呼吸などのパニック発作までに発展してしまったお客さんはたくさんいます客室乗務員さんも教育をしっかり受けていますし、実際に調子をくずしてしまったお客さんを経験しています。ですから、そのときの対処法も熟知しているので心配ありません。

②友人や家族に付き添ってもらう

できるならば、理解してくれている友達や家族に付き添ってもらいましょう。隣の席に座ってもらえると心強いですよね。

もしパニック発作が起きても助けてもらえるという安心感から、パニック発作は起こりにくくなります。飛行機となるとお金も時間もかかりますが、できるならば付き添ってもらえると安心できます。

③空いている便を予約する

飛行機の機内では、満席となって混雑してくると圧迫感が強くなってきます。閉じ込められている感じが強くなってしまい、閉鎖的な環境に感じられてしまうのです。

ですから、なるべく空いている便の方がパニック発作は起こりにくくなります。連休や休日などは飛行機も混んでいることが多く、時間帯によっても混雑状況がかわります。

空いているのは、正午以降の午後便になります。昼過ぎに出発する便がもっとも空席が多くなります。というのも、到着してから時間を有効に使いたいので、午前便を選ぶことが多いからです。

座席に関しては、後部座席の方が空いています。これは、飛行機から出るのが最後になってしまうからです。パニック障害の患者さんにとっては、後部座席の方が落ち着くかもしれません。

④通路側の席を予約する

飛行機では窓側の席の方が一般的に人気です。窓際は外がみれるためですが、その一方でなかなか通路に出られなくなります。パニック障害の患者さんには閉鎖的な環境に感じられてしまいます。

ですから、パニック障害の患者さんは通路側の方が落ち着くことが多いです。通路側でしたら、調子が悪くなってしまったらトイレに駆け込むことだってできます。客室乗務員に伝えることもできます。

パニック障害の患者さんは、念のため通路側を予約した方が気持ちが楽かと思います。

⑤ビジネスクラスやプレミアムエコノミーを予約する

お金があればという条件付きですが、ビジネスクラスやプレミアムエコノミーを利用するのも方法です。

エコノミーよりも座席は広くてゆったりしています。客室乗務員の目も行き届きやすくなりますので、安心感がもてます。

ですがお金がかかってしまうことは避けられません。航空券の料金がグッとあがってしまいます。私の患者さんでは、クレジットカードでマイルをためて購入している方もいました。

 

まとめ

飛行機は、狭い機内という閉鎖的な環境に加えて、一度離陸すると自分ではどうすることもできなくなります。このような、広場恐怖の最たる状況が飛行機になります。

飛行機は日常生活とは直接関係しないことが多いです。克服できれば理想ですが、やり過ごせれば十分と考えてもよいかも知れません。

パニック発作を飛行機で起こさないために、お薬に頼ってやり過ごしている方は多いです。その他にも自分で落ち着けられるリラックス法、過呼吸の対処法などを知っておきましょう。

パニック発作を起こさないための工夫として、チェックインの時にスタッフに伝えたり、誰かに同行してもらうことなどがあります。予約の取り方として、空いている便にしたり、通路側にするなどの工夫ができます。

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