パニック障害を完治させるには?パニック障害が治るための考え方

元住吉 こころみクリニック
元住吉 こころみクリニック

2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医3名、精神科医4名で協力して診療をしています。所属医師で協力して、記事を書いています。
元住吉こころみクリニック

パニック障害は、突然のパニック発作を繰り返す病気です。現在では治療法も確立されてきていて、薬物療法と精神療法を組み合わせることによって完治もできる病気になっています。

パニック障害は、お薬が効くことも多いです。しかしながら長い目で見ると、再発も少なくない病気です。「パニック障害が完治した」とおもっていたら、ふとした拍子に再発してしまうこともあります。

パニック障害がしっかりと完治する方と、なかなか治らずに長引く方にはどのような違いがあるのでしょうか?パニック障害が再発しやすいのは、どのような患者さんでしょうか?

これらをみていくと、パニック障害が治るための考え方も見えてきます。ここでは、パニック障害を完治させるために、患者さんがパニック障害の治療で大事にしてほしい考え方をお伝えしていきたいと思います。

 

1.パニック障害がどういう経過をたどる病気なのか

パニック障害はお薬が効きやすい病気ですが、他の病気が合併していると症状がとり切れないことが多いです。パニック障害が一度良くなったと思っても、不安体質をかえていかないと再発しやすい病気です。

心の病気の治療は、じっくりと時間をかけていくことがほとんどです。パニック障害も例外ではなく、不安の病気はとくに時間がかかります。

ですからパニック障害を治療するに当たって、病気のことを正しく理解することはとても重要です。十分に相手を知らないと、長い治療の中で道を間違えてしまうこともあります。

パニック障害は、お薬がしっかりと効きやすい病気です。適切なお薬をしっかりと使えば、多くの患者さんで症状が改善します。しかしながらパニック症状がすべては取り切れないこともあります。

その違いは、大きく2つの要因があります。

  • 広場恐怖症を合併しているのか
  • 不安障害・うつ病・パーソナリティ障害の合併をしているのか

パニック障害だけでなく他の病気も合併している患者さんでは、パニック症状がすっきりとはよくなりにくいのです。合併している病気の治療もあわせて行っていく必要があります。

またパニック障害は、10年という経過でみると、およそ半数の患者さんが再発するといわれています。特に女性では、再発が多いと言われています。

「パニック障害が完治した」と思っていても、半数の患者さんがある時突然にパニック症状が再発してしまうのです。何らかの予兆やきっかけはないことが多く、突然にパニック症状に襲われる患者さんが多いです。

パニック障害が再発しやすい患者さんでは、不安になりやすい状態が続いていることが多いです。パニック障害が治ったと思っても、不安体質を変えていく必要があるのです。

 

2.パニック障害を完治させるためにはお薬が有効

パニック障害を完治させるためには、薬物療法がとても有効です。漢方やカウンセリングだけでは、上手くいかないことも多いです。

パニック障害という病気の経過をお伝えしてきました。パニック障害を完治するために最も重要なことは、お薬をしっかりと使うことになります。

実際に診察をしていると、精神科のお薬を使うことに抵抗がある患者さんも少なくありません。「カウンセリングを中心にした治療ができませんか?」「漢方薬で治療はできませんか?」といった形で希望される患者さんもいらっしゃいます。

カウンセリング(精神療法)や漢方薬も、パニック障害の治療法のひとつではあります。しかしながら、上手くいかないことも多いです。

カウンセリングは、あまりに調子が悪いときに行っても効果が乏しいです。不安が強い時に柔軟な考え方はできませんし、不安に立ち向かっていくエネルギーも作れません。無理をしてしまうと、パニック障害が悪化してしまうこともあります。

漢方薬も効果がないわけではありませんが、お薬に比べるとマイルドなものがほとんどです。パニック症状を抑えるには不十分となってしまうことが多いです。症状をコントロールできていない状態では、精神療法もうまくすすめていけなくなってしまいます。

 

パニック障害では、セロトニンを増加させるSSRIなどの抗うつ剤が効果的です。他の不安障害に比べても、比較的少ない量でしっかりとした効果が期待できます。

パニック障害は、脳の偏桃体という部分が過活動状態になっていることが分かっています。つまり、「脳の病気」なのです。このような脳の機能異常を改善するために、セロトニンの働きを強めることが重要と考えられているのです。

パニック障害を完治させるためには、お薬をしっかりと使って症状をコントロールすることがとても大切です。薬物療法を継続的に行っていくと、再発率は明らかに低下することが分かっています。

詳しくは、「パニック障害は遺伝なの?パニック障害の症状の原因とは?」「パニック障害に効く薬とは?パニック障害の薬物療法の効果と副作用」をお読みください。

 

3.パニック障害が完治しにくい要因①―広場恐怖

広場恐怖は、回避行動により悪循環を招くことと、広場恐怖自体の治療に時間がかかるために完治しにくいです。

それでは、パニック障害が完治しにくい要因についてみていきましょう。パニック障害を完治させにくくする要因として、「広場恐怖」という症状があります。

広場恐怖とは、「逃げ場がない状況」や「助けが得られない状況」に対して恐怖を感じる症状のことです。パニック障害の患者さんの7~8割は合併しています。

パニック障害は突然のパニック発作に襲われる病気です。パニック発作となると、激しい動悸やめまいといった身体の症状とともに、「死んでしまうのではないか」「発狂してしまうのではないか」といったほどの恐怖を感じます。

パニック発作を経験すると、「いつまた発作が起こるかわからない」という考えにとらわれてしまいます。これを予期不安といいます。

このような予期不安にとらわれて生活をしていると、電車や雑踏などの「逃げ出せない」という状況に対して恐怖を感じるようになります。こうして広場恐怖が芽生えていきます。

パニック障害の症状

この広場恐怖が、パニック障害を2つの理由で治りにくくさせます。

  • パニック発作・予期不安・広場恐怖が悪循環する
  • 広場恐怖そのものを克服していくのに時間がかかる

図で示しましたが、パニック発作と予期不安、広場恐怖が悪循環を起こします。広場恐怖があるので、苦手な状況を避けるようになります。するとますます予期不安が強まって、パニック発作が起こりやすくなります。その結果、行動範囲がさらに狭くなってしまいます。

もうひとつは、広場恐怖自体の治療に時間がかかることです。恐怖は一度ついてしまうとなかなか抜けません。恐怖心は無意識にも芽生えてしまい、克服できたと思ってもふとした時に舞い戻ってきます。

このように、広場恐怖がある患者さんは抗うつ剤をしっかりと使っても完治しにくいです。10年間を追った研究では、広場恐怖がない患者さんでは82%が回復したのに対して、広場恐怖がある患者さんは42%の回復と報告されています。

このようにみると10年たっても半数もよくならないのかと落胆されてしまうかもしれませんが、あくまで完全に回復した患者さんの割合です。多くの患者さんは症状は残るものの、良くなることが多いです。

 

4.パニック障害が完治しにくい要因②-合併症

合併症によって、患者さんの治療へのエネルギーが失われていきます。治療としても、何を重視して治療していくべきかが難しくなります。

パニック障害を完治しにくくさせるもうひとつの要因は、合併症にあります。

パニック障害は、非常に強い恐怖に襲われる病気です。これによって今まで当たり前のことができなくなってしまい、行動範囲が狭まってしまう病気です。これらのストレスで、様々な病気を合併します。

パニック障害では、不安障害やうつ病を合併することがとても多いです。つらい闘病生活の中で、考え方や行動パターンの偏りが固定してしまって、パーソナリティ障害となってしまう患者さんもいます。

このような合併症は、パニック障害の症状を複雑にします。パニック発作だけでなく怒り発作や抑うつ・不安発作などに襲われることもあります。このように情緒不安定な状態になると、パニック障害の治療も難しくなります。

  • 患者さんのストレス耐性が弱まる
  • 何を重視して治療していくかが難しくなる

さまざまな症状に悩まされることが続くと、ストレス耐性が低くなってしまうことはやむを得ません。パニック障害ではお薬だけで良くなる病気ではなく、考え方を見つめたり、苦手なことにチャレンジする必要があります。自分の内面を見つめたり、不安や恐怖に立ち向かうのはエネルギーがいるので、前向きに治療が進まなくなってしまいます。

それだけでなく、治療も難しくなります。情緒不安定な患者さんには、抗うつ剤は使いにくくなります。ときに不安や焦燥感をあおってしまったり、活動的になり過ぎてしまうこともあります。いろいろな症状で何を重視して治療すべきかが難しくなります。症状に振り回された挙句、多剤処方になってしまうケースもあります。

 

5.パニック障害が再発しやすい要因-不安体質

パニック障害がよくなった患者さんの多くが、症状はなくても不安になりやすい状態が続いています。このような不安体質は、パニック障害の再発の要因となります。

パニック障害が一度しっかりとよくなった患者さんでも、突然に再発してしまうことも少なくありません。

パニック障害の再発は、治療終了後1~2年が最も多いです。先ほどの10年間をおった研究では、広場恐怖症がある患者さんは30~40%、広場恐怖症のない患者さんは20%ほどとなっています。しかしながら10年でみると、どちらも同じくらいになります。(なし:あり=54%:55%)

パニック障害の患者さんで再発しやすい方は、一度良くなっても常に不安が高く、不安になりやすい体質があることが報告されています。とくに身体に対する不安が強い方が多いと言われています。

パニック障害がよくなったら、私は心理検査のSTAIを実施してみることが多いです。不安の程度を点数にして、高い患者さんにはマインドフルネスや自律訓練法をすすめています。

パニック障害は薬の反応もよく、完治したと思って治療を自己中断してしまう患者さんも少なくありません。パニック障害は治る病気ですが、再発も多い病気ということを忘れないでください。

 

6.パニック障害が治るための考え方

パニック障害に関して、治療の経過をご紹介してきました。パニック障害が完治できるかを左右する要因として、

  • 薬をしっかりと服用するかどうか
  • 広場恐怖があるかどうか
  • 合併症があるかどうか
  • 不安になりやすいかどうか

この4点が重要です。パニック障害を完治させていくために、これらを踏まえてどのように考えていけばよいでしょうか?パニック障害の患者さんにもっていただきたい考え方をまとめたいと思います。

 

6-1.お薬を十分に使うこと

パニック障害を完治させるためには、お薬をしっかりと服用することはとても重要です。インターネットをみると、お薬を使わないでパニック障害を克服したというエピソードがたくさんあります。

多くのエピソードは、本当かどうかは定かではないです。パニック障害の患者さんを治療していく中で、どうしてもお薬が抵抗あったり、妊娠などのために漢方薬や精神療法だけで治療をすすめたこともあります。

私の未熟さを差し引いても、パニック障害を完治させることの困難さを感じさせられました。

「脳に作用するお薬は怖い」「精神科のお薬を服用すると止められなくなる」といった心配をされる患者さんも少なくありません。ですが現在のお薬は、安全性の高いものになっています。ちゃんと出口を見据えれば、お薬はやめることができます。

パニック障害はお薬がしっかりと効きやすい病気なので、ぜひお薬を使ってください。

お薬が不安な方は、「精神科・心療内科にいくと薬づけにされるって本当?」をお読みください。

 

6-2.パニック障害という「脳の病気」だからと割り切る

パニック障害の患者さんの中には、いままで当たり前のことができなくなっていくことで罪悪感や喪失感を感じている方が少なくありません。

「自分は周りの人に迷惑をかけてしまっている」「こんなこともできなくなってしまった」などという自分を責める気持ちが、症状をさらに悪くしてしまうことがあります。

パニック障害は、明らかな脳の機能異常が見つかっている病気です。「脳の病気」といえるのです。「病気だから仕方がない」「よくなったら周りに恩返ししよう」といったように、自分を追い込むのはやめて周りに頼るようにしましょう。

そして、「病気がよくなれば元の生活に少しずつ戻れる」という希望をもって治療をしていくことが大切です。パニック障害は、じっくりと治療をしていけば完治できる病気です。

 

6-3.落ち着いてきたら少しずつチャレンジ

症状が落ち着いてきたら、少しずつ行動をしていくことも大切です。とくに広場恐怖がある患者さんでは、恐怖を少しずつ克服していくことが大切です。

これまでは苦手なことからは逃げてしまっていたかもしれません。このように回避してしまうことがパニック障害を悪循環させていくことはお伝えしました。この悪循環を断ち切る必要があります。

できることから少しずつ苦手なことにチャレンジしていき、それを克服していきます。積み重ねていくことで恐怖心が次第に薄れていきます。

チャレンジしていく時に大事にしていただきたいのが達成感です。上手くいった時は自分を褒めてあげてください。ご褒美を用意してもよいです。こうして少しずつ積み重ねていくことが大切です。

ときには失敗してしまうこともあります。そのような時は焦らなくても大丈夫です。症状にも波があります。3歩進んで2歩さがる、といった形で1歩1歩進んでいくようなイメージです。

 

6-4.治療を自己判断で止めない

パニック症状がよくなってくると、「できることならお薬はもう飲みたくない」と思ってしまう患者さんも少なくありません。それは当然のことだと思います。

そのような時は、ちゃんと主治医と相談してください。どうしてお薬をやめたいと思うのか、正直に伝えてください。治療を継続する必要がある時は、主治医から説明してくれると思います。

中途半端な時期に治療を中断してしまうと、再発してしまうリスクが高いです。そして再発すると、以前よりも重症となることも少なくありません。

とくに広場恐怖・合併症・不安体質の3つのどれかがある患者さんは、パニック障害が完治しにくいです。焦らずじっくりと治療を行った方がよいです。

 

6-5.不安になりにくい状態を身につける

パニック障害の再発の要因として、不安体質がありましたね。

パニック障害が完治しても、多くの患者さんが不安になりやすい傾向がります。そのような患者さんには、以下の2つをおすすめします。

私たちの日常生活では、いろいろな出来事がおこると、ほぼ自動的に評価したり解釈してしまいます。それと同時に、喜びや怒りなどの感情がやってきます。目の前の出来事をそのまま体験することは、なかなかできません。

日常生活の不安でも、「不安はなくすべきもの」と打ち消そうとしてしまいます。特にパニック障害の治療のあとでは、そのようになりがちです。ですが不安は、消そうとすればするほど心配ごとにとらわれてしまいます。ちょっとしたことに気になってしまいます。

マインドフルネスでは、自分の気持ちや身体の感覚をそのまま受け入れることを目指していきます。不安もそのままにして、それが発展していかないことを身体で感じていきます。

自律訓練法とは、自己暗示によってリラックス状態を作っていく方法です。目を閉じながら、リラックスしている時に感じる身体の感覚をイメージしていきます。

「手足が重い」「身体が温かい」といったように、身体の感覚を心の中で唱えながらイメージしていきます。そしてその感覚をじっくりと味わうことで、リラックス状態を作っていきます。

このようにして自己暗示によってリラックス状態を作れるようにしていくのが自律訓練法です。不安体質を改善していくことができます。

 

6-6.「おかしいな?」と思ったら早めに相談

最後に重要なこととしては、少しでも「おかしいな?」と思ったら早めに相談していただくことです。

パニック障害は再発の多い病気です。完治して普通に生活をしている中で、忘れたころに再発することもあります。少しでも不安が強まっている様子があれば、早めに治療を開始した方がよくなります。

少しぐらい大丈夫だろうと我慢している中で、広場恐怖が少しずつ強まってしまうこともあります。どんな病気にもいえることですが、早めに治療をすれば、回復も早いです。パニック障害では完治したと油断しないことも大切です。

 

まとめ

パニック障害を完治させるためには、パニック障害の経過を知ることが大切です。パニック障害はお薬がしっかりと効くものの、再発率は低くはないことを理解しましょう。

パニック障害は、広場恐怖や合併症があると完治に時間がかかります。また不安体質の患者さんは、再発率が高いです。

そしてパニック障害を完治するために、正しい考え方で治療をすすめていきましょう。

パニック障害の治療について詳しく知りたい方は、「パニック障害を克服するには?パニック障害の治療法と対処法」をお読みください。

投稿者プロフィール

元住吉 こころみクリニック
元住吉 こころみクリニック

2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医3名、精神科医4名で協力して診療をしています。所属医師で協力して、記事を書いています。
元住吉こころみクリニック