過呼吸・過換気症候群の原因とは?パニック障害との関係

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医3名、精神科医4名で協力して診療をしています。所属医師で協力して、記事を書いています。
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不安が強くなってくると、「何だか息苦しい」と感じることがあるかと思います。

それがエスカレートしてしまうと、息苦しさを自分でコントロールできなくなってしまって、呼吸がドンドンと早くなってしまいます。そして身体の様々な症状が現れます。このように、精神的なストレスがきっかけに過呼吸になってしまう病気を、過換気症候群といいます。

過呼吸は、パニック障害の患者さんでもよく認められます。パニック障害では、突然の恐怖に襲われる病気です。息苦しさが過呼吸に発展していくことも多いのです。

とはいっても、過呼吸は身体の病気でも認められることがあります。はじめて過呼吸になった時は身体の病気がないか、しっかりと診断していく必要があります。

ここでは、過呼吸(過換気症候群)の原因について考えていきたいと思います。

 

1.過呼吸は身体の病気が原因のこともある

はじめて過呼吸がみられたり、何らかの持病がある方では、本当に過換気症候群なのか検査して診断することが必要です。

過呼吸は、とても誤解のされやすい病気です。過呼吸に対する誤解は2つの面があります。過呼吸のことを知らない方は、緊急事態だと焦ってしまいます。過呼吸のことを知っている方は、精神的な問題と軽んじてしまいます。

しかしながらどちらの場合でも、過呼吸の患者さんは、とてつもない不安におそわれています。そして時には、身体の病気が原因で過呼吸になっていることもあるのです。

それではどのような時に身体の病気を考えていく必要があるでしょうか?大きく分けると2つの場合があります。

  • はじめて過呼吸が認められた場合
  • 何らかの持病がある場合(高齢者は特に)

過呼吸が本当に過換気症候群(精神的ストレスが原因)なのかを見極める必要があるのです。何かの病気が原因になって呼吸が苦しくなり、その結果として過呼吸が起こることもあるのです。

  • 呼吸器疾患(肺炎・喘息・COPD・気胸・肺血栓塞栓症・肺水腫など)
  • 心疾患(心不全)
  • 糖尿病(糖尿病ケトアシドーシス)
  • 甲状腺機能亢進症
  • 脳腫瘍

これらの病気が原因となることがあります。これらの身体の病気が原因で、本当に呼吸困難となっている場合があります。息苦しさも本当の息苦しさで、呼吸が頻回になってしまいます。

これらの身体の病気が不安を高めて、過呼吸に発展してしまうこともあります。例えば喘息の患者さんでは、いつ喘息発作が起こるかわからない不安から、パニック障害が合併しやすい(6~38%)ことがわかっています。

喘息発作が起こると気管支が収縮してしまって、息苦しくなります。それが不安を誘発して、過呼吸が合併してしまうこともあるのです。

身体の病気が原因で頻呼吸になっていることもあれば、身体の病気がきっかけで過呼吸が合併していることもあるのです。ですからはじめて過呼吸になった場合や持病がある方は、内科や救急科で診察をうけて検査をする必要があります。

身体の異常が認められなければ、過換気症候群と診断されます。過換気症候群と診断されれば、その後はむしろ冷静な対処が望まれます。救急車を呼んだりして周りも慌てふためくと、本人が心配になってしまい、ますます過呼吸が強くなります。

 

2.過呼吸(過換気症候群)の原因とパニック障害の関係

様々なストレスが原因で一過性に過呼吸になることはあります。パニック障害など精神疾患と関係が深いのは、慢性的な過呼吸です。パニック障害の患者さんでも、「うまく呼吸すること」に対するとらわれが強い方に、過呼吸(過換気症候群)が多いです。

過呼吸の患者さんは、大きく2つに分けることができます。

  • 急性型過呼吸:精神的な緊張によって単発で生じる過呼吸
  • 慢性型過呼吸:日頃から不定愁訴や疲労感が認められ、慢性的に生じる過呼吸

急性型過呼吸は、様々な精神的ストレスが原因となります。ストレスから解放された安心感がきっかけになることもあります。それ以外にも、発熱や入浴、激しい運動や注射などで発症することもあります。

私も急性過呼吸を一度経験したことがありますが、絶対に休めない実習を高熱の中、マスクをつけて無理して出席した時に過呼吸となりました。

それに対して慢性過呼吸は、パニック障害などの精神疾患と関連が深いです。パニック障害以外にも、自分にとって嫌な状況になった時に過呼吸になることもあります。専門的には、転換性障害(ヒステリー)といいます。

過換気症候群による過呼吸は、パニック障害だけに限定された症状ではありません。しかしながらパニック発作と過呼吸発作は、どちらも「このまま死んでしまうのではないか」というほどの強烈な恐怖に襲われるという点で共通しています。

このため、パニック障害の患者さんには過呼吸が認められることが多いのです。パニック障害のおよそ半数の患者さんは、過呼吸を経験したことがある印象です。

ただパニック発作では、過呼吸とまでいかずに、息苦しさ(呼吸困難感)だけのことが多いです。過呼吸になりやすい方は、「息が吸えない」ということにとらわれが強い方が多いです。

パニック障害で過呼吸になりやすい患者さんは、不安になったときに「呼吸」に関するとらわれが強いといえます。

なお、パニック障害と過呼吸で共通していることとして、10~30代の若い女性が多いことです。どちらも女性と男性の比率が、2:1といわれています。

 

3.過呼吸(過換気症候群)の症状が発展していく原因

過呼吸による過換気症状と、不安による交感神経過活動症状が増幅して、過換気症候群の症状が広がっていきます。

過換気症候群による過呼吸では、様々な症状が認められます。息苦しくなるだけでなく、ふらついて立てなくなってしまったり、手足がしびれたりします。このような症状が出てくると、ますます不安になってしまって過呼吸が強まってしまいます。

このような過呼吸の症状の原因は、大きく2つあります。

  • 過呼吸による過換気
  • 不安による交感神経過活動

この2つが増幅して、様々な症状をつくっています。以下に簡単にご説明していきますが、詳しくは「過呼吸・過換気症候群でみられる症状とその原因」をお読みください。

 

①過呼吸による過換気

呼吸の目的は、身体をめぐってきた血液と新鮮な空気の間で、ガス交換を肺ですることになります。おもに酸素と二酸化炭素を交換していて、身体に必要な酸素を血液に取り込み、不要な二酸化炭素を空気に捨てています。

呼吸は、私たちが意識しなくても勝手に行われています。身体の中の酸素と二酸化炭素(とくに二酸化炭素)を呼吸中枢で自動的にモニターして、自律神経が呼吸を調節してくれているのです。

過呼吸では、3つのステップで過換気症状が認められます。

  • 呼吸中枢の働きがうまくいかなくなる
  • 二酸化炭素が血中に過剰となり血管が収縮
  • カルシウムイオンのバランスが崩れて、神経が興奮しやすくなる

精神的ストレスによって、呼吸中枢の働きがうまくいかなくなってしまいます。本来ならば十分に呼吸ができていれば、息苦しさはなくなるはずです。

しかしながら呼吸は、延髄の呼吸中枢だけでなく大脳にも支配されています。大脳は我々の意識にのぼってくる部分で、自分の意識でも呼吸できるのは大脳のおかげです。

過呼吸では、延髄呼吸中枢からの「もう大丈夫」という指令よりも、大脳からの「息が吸えなくなってしまう」という不安がまさってしまいます。これにより息が苦しい感じが続き、呼吸回数がふえてしまうのです。

こうして過換気状態になってしまうと、二酸化炭素が血液からどんどん出ていってしまいます。これが進むと、身体がそれに順応しようとします。酸素が身体にたくさんある時は、血液をたくさん回して配っていく必要がありません。ですから、血管が収縮するのです。

血管が収縮することによって、様々な症状が認められます。

  • 脳血管:めまい・ふらつき
  • 心血管(冠動脈):動悸・胸痛・不整脈
  • 胃腸の欠陥:吐き気・腹痛

二酸化炭素は酸になるので、それが抜けていくと血液はアルカリ性になっていきます。この状態を改善していく中で、カルシウムイオンが減少していきます。カルシウムイオンが減っていくと、神経が興奮しやすくなります。

その結果、手足や口唇といった末梢神経がしびれたり、神経が支配している筋肉が異常に収縮してしまって硬直やけいれんが生じるのです。

②不安による交感神経過活動

過呼吸のときは、不安や緊張が高まっていきます。これによって、交感神経が過活動になります。

交感神経は副交感神経とあわせて、全身の様々な機能を調整している自律神経になります。

交感神経はスイッチを入れる神経で、身体を「戦うモード」に切り替えます。このため、心機能が高まって動悸や頻脈となり、呼吸が早くなり、筋肉は緊張してこわばります。その一方で消化は抑えられ、胃腸の働きや唾液分泌などが悪くなります。

  • 不安が高まることで交感神経症状が認められる
  • 交感神経症状がさらに不安を高める
  • 呼吸が早くなり、息苦しさがまして過呼吸になっていく
  • 過呼吸による過換気症状によってますます不安になり、交感神経症状が強まる

このようにして交感神経症状と過換気症状の2つが増幅していくことが、過呼吸症状が発展していく原因です。

 

4.過呼吸(過換気症候群)の原因は呼吸と不安

過呼吸は呼吸と不安が原因なので、この2つが落ちつけば、後遺症もなく症状は消えます。

このように見ていただくと、過呼吸の原因は以下の2つということがわかりますね。

  • 呼吸の回数が増えてしまうこと
  • 不安が高まっていくこと

その結果として、

  • 身体の二酸化炭素のバランスの崩れ
  • 交感神経の過緊張

この2つが原因となって様々な症状につながっていくのです。ですから、呼吸を整えて、不安を落ちつけることが大切なのです。

具体的な方法については、「過呼吸・過換気症候群の正しい対処法とは?袋は使うべき?」をお読みください。

そうすれば、二酸化炭素のバランスも元に戻り、自律神経のバランスも元に戻ります。ですから、過呼吸による後遺症は一切認められません。

過呼吸発作の時は、「このまま死んでしまうのでは」と思ってしまうほどの恐怖に包まれますが、過呼吸の症状は必ずおさまります。およそ15分くらいをピークにして、30分~1時間で過呼吸はおさまることが多いです。過呼吸が原因で死んでしまった人はいません。

 

5.過呼吸(過換気症候群)の本質的な原因を治療する

過呼吸(過換気症候群)を繰り返す患者さんでは、精神疾患が本質的な原因であることが多いです。

過換気症候群が原因での過呼吸は、あくまで一時的な症状にすぎません。呼吸と不安が落ちついてくれば、自然と症状はよくなっていくのです。

しかしながら、過呼吸になるには本質的な原因が隠れていることが多いです。とくに過呼吸を繰り返す患者さんでは、その背景に何らかの精神的な原因が隠れています。

過呼吸をよくしていくためには、その本質的な原因を治療していく必要があります。さらに過呼吸になると、「また過呼吸になったらどうしよう」という不安が強くなります。このような不安があると、再び過呼吸になりやすくなってしまいます。

 

例えばパニック障害では、広場恐怖症という「逃れられない場所」に対する恐怖心があります。このため、電車やバス、人ごみなどを苦手とします。

人込みの中で過呼吸になってしまったら、「また人込みで過呼吸になったらどうしよう」という不安が強くなります。そうすると、人ごみをできるだけ避けたいという気持ちが働きます。

人ごみを回避してしまって、本来やりたかったことができなくなっていきます。このように回避行動をとるようになると、ますます苦手意識が強くなるという悪循環に陥ってしまうのです。このため過呼吸も起こりやすくなってしまいます。

このため、過呼吸の本質的な原因に目を向ける必要があります。その原因を治療するために、薬物療法や精神療法をしっかりと行っていくことが大切なのです。

 

まとめ

はじめて過呼吸がみられたり、何らかの持病がある方では、本当に過換気症候群なのか検査して診断することが必要です。

様々なストレスが原因で一過性に過呼吸になることはあります。パニック障害など精神疾患と関係が深いのは、慢性的な過呼吸です。パニック障害の患者さんでも、「うまく呼吸すること」に対するとらわれが強い方に、過呼吸(過換気症候群)が多いです。

過呼吸(過換気症候群)を繰り返す患者さんでは、精神疾患が本質的な原因であることが多いです。

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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医3名、精神科医4名で協力して診療をしています。所属医師で協力して、記事を書いています。
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