パニック障害の患者さんへの家族や友人の接し方

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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パニック障害の患者さんは、繰り返すパニック発作がみられます。急激に不安感や恐怖感が強まり、過呼吸を起こしてしまったりすることもあります。

そしてパニック発作を恐れて、「逃げ出せない状況」が苦手になってしまう方が多いです。バスや電車などの公共機関、美容院や歯医者などもいけなくなってしまう方も少なくありません。

患者さんがパニックになると、そのまわりの家族や友人も慌ててしまうのも無理はありません。とくに家族は、パニック障害の患者さんと同じ生活を営んでいますので、一緒にできないことが増えてしまいます。

そんな中で、家族や友人はパニック障害の患者さんにどのように接したらよいのかわからなくなってしまいます。家族から、「良い接し方と悪い接し方はありますか?」といったことを聞かれることも少なくありません。

パニック障害の患者さんにはどのように接したらよいのでしょうか?ここでは、パニック障害の患者さんに対してどのように接したらよいのか、お伝えしていきたいと思います。

 

1.パニック障害の家族や友人の基本的な接し方

パニック障害だからと構えずに、普段とかわりなく接してください。

パニック障害に限らず精神疾患に対しては、どのように接したらよいかわからないという方が多いです。身体の病気だったら治るまでは休んでいる方がよいことが明確です。しかしながら心の病気は、経験したことがない人にはなかなか想像することができません。

それでは、あなたがパニック障害の患者さんだったら想像して、以下の3つの対応を考えてみてください。

  • パニック障害が治るまで出来るだけ無理させない接し方
  • パニック障害ということを気にしない普通の接し方
  • パニック障害を治すために叱咤激励する接し方

あなただったらどの接し方を望みますか?

ストレスを与えてしまったら病気が悪化してしまうのではないかと、腫れものを扱うかのようにびくびく接せられたら、どのように感じますか?

「自分のせいで迷惑をかけている」「自分のことはみんな扱いづらいんだ」「これからも気を使われるのかもしれない」といった感じを受けるかと思います。これでは安心感もえられませんし、ますます気分が塞いで不安になってしまいます。

反対に、「パニック障害は気持ちの問題だ」「積極的に外出してやることをやりなさい」といった具合に、叱咤激励をしたらどのように感じますか?

「何も私のことを理解してくれない」「自分のつらい気持ちなんて分かってもらえない」といった感じを受けるでしょう。これも安心感とは反対の方向に行ってしまいますね。

 

このように考えると、「いつもと変わらずに普通に接してくれること」が何より気持ちが楽になることを分かっていただけるかと思います。自分のことをあまり気遣われたくないというのが、多くの心の病気の患者さんの気持ちです。

ですからパニック障害の患者さんに対しては、「いつもと同じ家族や友人」として接してくれることがもっとも基本的な接し方です。

 

2.パニック障害の接し方で注意すること

パニック障害の患者さんの衝動性に気をつける必要があり、特に運転には注意しましょう。パニック障害によって性格変化がみられることがありますが、症状がコントロールされてくると本来の性格が戻ってくることが多いです。

パニック障害の患者さんへの接し方は、基本的には普段通り接することになります。これは多くの病気に共通することではありますが、病気によって家族や友人が気をつけるべきことは少しずつ異なります。

ここでは、パニック障害の患者さんの接し方で注意すべきことをみていきましょう。

パニック障害は、突発的に激しい不安感や恐怖感に襲われます。「このまま死んでしまうのではないか」というほどの恐怖なので、衝動性が非常に強い病気です。パニック発作に襲われている時は現実を正しく認識することができなくなってしまいます。

パニック発作の時の接し方は後ほどお伝えしていきますが、そんな時に突然に事故をおこしてしまったり、まれですが自殺をしてしまうこともあります。このような衝動性には気をつけていく必要があります。

パニック発作になっても死ぬことはありませんので、家族や友人が冷静に対応することが大切です。本人が苦手にしている状況に対しては、本人が望めば付き添ってあげていただけるとよいでしょう。

運転にも気をつける必要があります。渋滞にはまったり、道が複雑な首都高などでは不安が高まることがあります。お薬を服用しながらの運転自体が危険性もあるため、注意しましょう。

 

パニック障害で注意していただきたいのが、病気によって性格が変わってしまうこともあることです。不安にとりつかれていると、色々なことに敏感になってしまいます。ささいなことに感情的になってしまったり、人間関係に猜疑心をもってしまうこともあります。

ちょっとしたことで自分が攻撃されたと感じてしまい、相手に対して怒りの感情をぶちまけてしまうこともあります。このようにパニック障害によって、性格が変わってしまったかのように感じてしまうこともあります。

これはあくまで病気のせいです。しっかりと症状がコントロールされてパニック障害がよくなってくると、本来の性格が戻ってくることが多いです。病気のときの本人に対して、ぜひ温かく見守ってください。

 

3.パニック障害の治療のために家族が協力できること

パニック障害の治療について理解を深めて、お薬に対する抵抗感を過度に持たないようにしてください。患者さんの行動療法の手助けをし、長い目で治療をすすめていきましょう。

それではパニック障害の患者さんに対して、どのような協力ができるでしょうか?治療に協力するまで踏み込めるのは、友人というよりも家族になるかと思いますので、ここでは一緒に生活する家族をイメージしてお伝えしていきたいと思います。

まず、どの精神疾患にも共通することからみていきましょう。

  • 生活リズムを整えること
  • アルコールやタバコを控えること

この2つはとても大切です。

いつもと変わりなく接していく中で、生活リズムだけは乱れないように意識させてください。薬の眠気があることもあれば、症状がひどくて消耗が激しいこともあります。ですからガミガミいう必要はありませんが、一緒に生活している家族の生活リズムに本人ができるだけ合わせてもらう感覚で接していただけるとよいです。

アルコールやタバコなどの嗜好品にも注意してください。病気によるストレスがかかると、ついついアルコールやタバコに頼ってしまいます。量が少しずつ増えてしまわないように、少なくとも現状維持にとどめるようにしてください。パニック発作が起こりやすくなりますし、薬へも影響が出てしまうことがあります。

 

つぎに、パニック障害での接し方についてみていきましょう。そのためには、パニック障害という病気に対して家族も理解する必要があります。詳しくは、「パニック障害を完治させるには?パニック障害が治るための考え方」をお読みください。

パニック障害を完治させるために大切なことは、

  • お薬を十分に使うこと
  • 落ち着いてきたら苦手なことにチャレンジすること
  • 治療を十分な期間行うこと

この3点になります。

家族のなかには、お薬に対して抵抗が強い方も少なくありません。ですがパニック障害は、お薬が他の病気と比べても効果があることが多いです。現在のお薬は、安全性も高いです。お薬も適切に使えば止められなくなるものでもありませんし、後遺症が残るというものでもありません。ぜひ患者さんに、お薬での治療をすすめてください。

パニック障害の治療では、症状が落ち着くまでは無理をしないことが鉄則になります。しかしながら落ち着いてくると、苦手なことにもチャレンジしていくことが大切になります。「家族と一緒にいる」「何かあったら助けてもらえる」という安心感から、不安感や恐怖感が軽減されます。本人が希望したら、一緒に付き添ってあげてくださると治療がすすんでいきます。

そしてパニック障害の治療は、中途半端でやめてしまうと再発してしまうリスクが高まります。パニック障害は、十分に治療を行っていくことが大切です。お薬に関しても、焦らずじっくりと使っていくことが大切です。ご家族の方も、パニック障害を完治するためにも焦らず長い目で治療をしていくことが大切です。

 

4.パニック発作が起きた時の家族や友人の接し方

安心感を与えることが大切で、そばにいて声かけをし、呼吸を整えさせてください。頓服がある方は飲ませてあげて、できれば圧迫感がある場所から開放的な場所にうつしましょう。

最後に、パニック発作が起きてしまった時の接し方についてみていきましょう。

パニック障害では、「逃げ出せない状況」や「助けが得られない状況」に対して恐怖感があります。このため、バスや電車などの公共機関、映画館やレストラン、美容院や歯医者さん、渋滞や人込みなどを苦手とします。

このような状況になると、突然に不安が強くなります。パニック発作では、動悸や息切れを本人が訴えて、周りから見ているとても苦しそうに見えます。ときには「気が狂ってしまいそう」「死んでしまいそう」と本人が感じてしまうほどの恐怖感にとらわれるので、文字通り「パニック」になることもあります。

周りで見ている家族や友人もとてもビックリしてしまうかもしれません。慌てて救急車を呼ぶ方もいらっしゃるほどです。

そんなときは、周りの方には冷静さが必要になります。パニック発作は不安がエスカレートした結果ですので、不安が落ち着けば自然と落ち着きます。パニック発作で死んでしまうこともなければ、後遺症が残るようなこともありません。

周りが慌ててしまうと、患者さんは自分はまずい状態なんだと不安がどんどん増してしまいます。周りの家族や友人が大事にしてほしいのは、本人に以下に安心してもらえるかです。

ですからパニック発作がおきたら、以下のことを意識してください。

  • そばにいて声掛けをする
  • 呼吸を整えるようにする
  • 頓服薬をのませる
  • 圧迫感のない落ち着いたところに移動する

患者さんのそばについて手を添えて、「私がそばにいるから大丈夫だよ」「大丈夫だから安心して」と声をかけてあげてください。

パニック発作になると呼吸が早くなることが多いです。エスカレートすると過呼吸になって、手足がしびれてしまうことがあります。呼吸をゆっくりするためには、息を吐くことを意識させることが重要です。「ゆっくり息を吐いて」と言っても難しければ、「吸って・吐いて・吐いて」と1:2で呼吸するように促してみてください。

パニック発作に備えて、頓服薬が処方されていることもあります。患者さんに確認して、お薬を飲ませてあげてください。水がなくても、口で噛み砕いて服用してしまっても問題ありません。

もしもパニック発作が電車やバスなどで起きたのなら下車し、レストランや映画館では広外に出ましょう。人が少なくて圧迫感のない落ち着いたところに移動しておさまるのを待ちましょう。

 

まとめ

パニック障害だからと構えずに、普段とかわりなく接してください。

パニック障害の患者さんでは衝動性に気をつける必要があり、特に運転には注意しましょう。パニック障害によって性格変化がみられることがありますが、症状がコントロールされてくると本来の性格が戻ってくることが多いです。

パニック障害の治療について理解を深めて、お薬に対する抵抗感を過度に持たないようにしてください。患者さんの行動療法の手助けをし、長い目で治療をすすめていきましょう。

パニック発作時の接し方としては安心感を与えることが大切で、そばにいて声かけをし、呼吸を整えさせてください。頓服がある方は飲ませてあげて、できれば圧迫感がある場所から開放的な場所にうつしましょう。

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