慢性疲労症候群の原因と治療とは?
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
慢性疲労症候群は、何かをきっかけにして急に強い倦怠感におそわれてしまう病気です。
慢性疲労症候群という病名のため、「誰にでもあるような疲労を強く訴える病気」のように誤解されてしまいがちです。しかしながらその背景には、様々な身体の機能異常があることが分かってきています。
慢性疲労症候群の原因にはどのようなものがあるのでしょうか?
その治療はどのように行っていくのでしょうか?
ここでは、慢性疲労症候群の原因と治療についてお伝えしていきたいと思います。
1.慢性疲労症候群は何科を受診すればいいの?
まずは内科を受診して身体の病気を探しましょう。原因がみつからなければ、精神科や心療内科を受診しましょう。
慢性疲労症候群(CFS)は、慢性的な疲労感により日常生活にも大きな影響をおよぼす病気です。疲労感は誰しも感じることのあるので、ただ大げさにいっているにすぎないと思われがちです。
しかしながら慢性疲労症候群は、ただの疲労感が強いこととは異なります。さまざまな複合的な理由で、脳の機能的な異常が認められるのです。このため慢性疲労症候群は、しっかりと診断して治療を意識していく必要があります。
慢性疲労症候群は、まずは内科を受診して身体の検査を行う必要があります。血液検査や心電図をはじめとした必要な検査をして、疲労感や倦怠感を引き起こす病気を除外する必要があります。
原因がハッキリしなければ、心療内科や精神科を受診しましょう。もしかすると何らかの精神疾患が隠れていることもあります。本当に慢性疲労症候群だったとしても、治療は心療内科や精神科の方が強いと思います。疲労感や倦怠感は、心の病気でよく問題となる症状だからです。
慢性疲労症候群の治療は、結局のところ対処療法しかないのが現実です。サプリメントや高額な自由診療をすすめるクリニックなどもありますが、まずは保険診療でできることがあります。
2.慢性疲労症候群の原因とメカニズム
ストレスで免疫が低下すると、過去に潜伏していたウイルスが再活性化します。これによってサイトカインという免疫物質が過剰に作られ、慢性疲労症候群を引き起こすと考えられています。
慢性疲労症候群の症状が出現する原因は、近年少しずつわかってきました。
- ストレス
- ウイルス感染
この2つが大きく関係して免疫異常がひき起こされ、全身に影響すると考えられています。
ストレスを受けると一時的にダメージを受けて身体の機能がおちますが、コルチゾールという抗ストレスホルモンが分泌されて身体の機能を活発にします。ストレスが続くと抵抗力を増して、心身を守ります。
さらに長期にわたってストレスを受け続けると、この抵抗が破綻してしまいます。こうなると身体の抵抗力がさがって疲労困憊となり、身体機能が低下して睡眠や食事などの生活リズムも乱れていきます。
このような状態になってくると、免疫力も低下してしまいます。すると、幼少期に感染してひっそりと身体に潜伏していたEBウイルスなどが悪さをしはじめます。ウイルスが再活性化すると免疫が作動し、サイトカインとよばれる免疫物質が一気に作られます。
このサイトカインはウイルスと戦うのに必要なのですが、過剰につくられてしまうと脳などにダメージをあたえてしまいます。脳の機能を低下させ、倦怠感や疲労感を引き起こすと考えられています。
3.慢性疲労症候群の治療の方針
漢方薬やビタミン剤、抗不安薬などでサポートしながら、環境や生活習慣、考え方を整理していきます。
慢性疲労症候群では原因は少しずつわかってきましたが、まだまだわからない部分が多い病気です。
ウイルスが関係していることがわかってきましたが、EBウイルスは誰もが感染しているウイルスです。このウイルスをやっつけたところで、すぐに再感染してしまいます。過剰なサイトカインが原因と考えられていますが、現在の医学ではサイトカインを調整するようなお薬はありません。
このため慢性疲労症候群では、基本的に対症療法となります。そして少しでも心身にストレスがかからないように、環境や生活習慣、考え方を整理していきます。
お薬としては、漢方薬やビタミン剤などを使っていきます。身体の緊張が強い場合は、抗不安薬などを使っていきます。精神症状と感じられる時には、抗うつ剤や抗精神病薬を使うこともあります。
漢方は、補気剤や補血剤を用います。ビタミン剤は、ビタミンB・Cなどで代謝効率を改善することで疲労の改善を図ります。
4.慢性疲労症候群の治療―漢方薬
エネルギーや栄養が足りなくなってしまう気虚・血虚が原因と考え、消化機能が低下する脾虚も原因となります。
漢方では、身体に必要なエネルギーや栄養が体の隅々まで回らないことが慢性疲労の原因と考えます。エネルギーを「気」、栄養を「血」と いいます。
このため、なぜ気血が回らないのかを考えていきます。慢性疲労症候群の原因としては、気血そのものが不足した「虚」を考えます。
また、疲労を考えるときには「脾」の機能低下も考慮します。漢方で脾は胃とともに消化に重要な働きをしていると考えます。この脾や胃の機能が低下すると、エネルギーにする栄養が不足して全身に運べなくなり、スタミナ不足から疲労となります。
漢方薬 | 適応症例 |
補中益気湯(陰・虚) | 気を補う場合の基本 |
四物湯(陰・虚) | 血を補う場合 |
加味帰脾湯(陰・虚) | 消化不良があり不安や不眠が強い場合 |
十全大補湯(陰・虚) | 貧血気味で気血を補う場合 |
人参養栄湯(陰・虚) | 十全大補湯でも不十分な場合 |
さらに詳しく知りたい方は、「慢性疲労症候群に使われる漢方薬とは?」をお読みください。
5.慢性疲労症候群の治療―ビタミン剤・食事
食事の偏りや食欲不振が続く場合は、ビタミンB・Cを補います。普通に食べられている場合は、とくにサプリメントは必要ないでしょう。
慢性疲労に対しては、ビタミンB・C群が一定の効果があります。ビタミンは、身体の中で補酵素として働きます。様々な身体の機能の手助けをしていて、エネルギーを作り出す代謝においても重要な働きをします。
特にビタミンB1やB2は、脂質や糖のエネルギー代謝に関係します。ビタミンCは、抗ストレスホルモンであるコルチゾール産生に必要といわれています。このためビタミンCが枯渇すると、抗ストレスホルモンが十分に分泌されずにストレスに負けてしまいます。
栄養に偏りがなければ不足することは少ないのですが、食欲不振が続いていたり食事のバランスが乱れている時には、ビタミンB・Cを補充します。
筋肉疲労が蓄積されている場合は、クエン酸や酢酸をとります。これらは、蓄積された乳酸の分解を促進してくれます。食べ物としては、レモン、梅干し、米酢、かんきつ類など、すっぱいものです。
その他に疲労感や倦怠感を改善する食べ物としては、鶏もも肉を1日に100g摂取すると効果があるといわれています。渡り鳥の胸肉や回遊魚の尾の肉に多く含まれる成分のイミダゾールペプチドという物質が、倦怠感を改善するという報告があります。鶏むね肉は少しパサパサしてしまいますが、できるだけとる意識をしてみてもよいかも知れません。
6.慢性疲労症候群の治療―抗不安薬・抗うつ剤
不安や緊張が強い場合や自律神経症状がみられる場合、抗不安薬を使うことがあります。抑うつ気分や意欲・興味低下の要素がある時は、抗うつ剤も使うことがあります。
慢性疲労症候群では倦怠感や疲労感が中心ですが、精神症状が関係していることがあります。倦怠感や疲労感が精神症状の一部の可能性であることもあれば、これらのせいで精神症状が認められることもあります。
精神症状につかわれるお薬としては、大きく以下の2つになります。
慢性疲労によって学校や仕事にいけないことが続くと、不安や緊張が強まって身体が緊張状態になることも多いです。その結果として自律神経症状がみられることがあります。
このような患者さんには、抗不安薬を使うことがあります。抗不安薬はGABAの働きを強めることで、脳の機能を落として緊張を和らげます。
うつ症状がみられたり、意欲低下や興味の低下という要素がみられるときは、抗うつ剤を使っていくこともあります。倦怠感や疲労感のせいで意欲や興味が低下するならば抗うつ剤は効果が期待しにくいです。
7.慢性疲労症候群の治療―生活習慣
生活リズムをできるだけ一定にして、日々に小さな目標をたてるようにしましょう。
慢性疲労症候群では、生活習慣を整えていくことが必要です。そのためには、具体的な目標をつくっていくことが大切です。
- 毎朝〇時に起きる
- 3食を規則正しく、決まった時間にたべる
- 間食をしない
- 毎日〇分散歩やジョギングをする
- 夜は〇時までに就寝する
このように具体的な目標をたてて、できるだけそれにあわせるようにしましょう。生活リズムを整えるだけで、疲労感が薄れていく方もいらっしゃいます。
生活習慣を整えていくことは、なかなか持続していくのが難しいです。継続していくために、簡単な生活の日記をつけていくことをお勧めします。シンプルなものを作成しましたので、よかったらご活用ください。
まとめ
まずは内科を受診して身体の病気を探しましょう。原因がみつからなければ、精神科や心療内科を受診しましょう。
ストレスで免疫が低下すると、過去に潜伏していたウイルスが再活性化します。これによってサイトカインという免疫物質が過剰に作られ、慢性疲労症候群を引き起こすと考えられています。
慢性疲労症候群では、漢方薬やビタミン剤、抗不安薬などでサポートしながら、環境や生活習慣、考え方を整理していきます。
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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