慢性疲労症候群に使われる漢方薬とは?

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慢性疲労症候群とは、これまで健康に普通に生活していた方が、急に強い倦怠感におそわれてしまう病気です。

頭痛や微熱といった自律神経症状と共に、疲労感や脱力感などが長きにわたって続きます。このような慢性疲労症候群は、その背景には様々な身体の機能的異常があることがわかってきています。

しかしながら、根本的に改善する治療法は今のところありません。慢性疲労症候群は、対症療法によって治療をすすめていきます。

このような慢性疲労症候群の治療に、漢方が有効なことがあります。ここでは、慢性疲労症候群にはどのような漢方が向いているのか、詳しくお伝えしていきたいと思います。

 

1.慢性疲労症候群の漢方での考え方

エネルギーや栄養が足りなくなってしまう気虚・血虚が原因と考え、消化機能が低下する脾虚も原因となります。

漢方では、身体に必要なエネルギーや栄養が体の隅々まで回らないことが慢性疲労の原因と考えます。エネルギーを「気」、栄養を「血」と いいます。

このため、なぜ気血が回らないのかを考えていきます。慢性疲労症候群の原因としては、気血そのものが不足した「虚」を考えます。

また、疲労を考えるときには「脾」の機能低下も考慮します。漢方で脾は胃とともに消化に重要な働きをしていると考えます。この脾や胃の機能が低下すると、エネルギーにする栄養が不足して全身に運べなくなり、スタミナ不足から疲労となります。

それでは慢性疲労症候群でよく使われる漢方についてみていきましょう。

 

2.慢性疲労症候群で使われる漢方薬

漢方薬 適応症例
補中益気湯(陰・虚) 気を補う場合の基本
四物湯(陰・虚) 血を補う場合
加味帰脾湯(陰・虚) 消化不良があり不安や不眠が強い場合
十全大補湯(陰・虚) 貧血気味で気血を補う場合
人参養栄湯(陰・虚) 十全大補湯でも不十分な場合

 

慢性疲労症候群では、気虚や血虚を補う必要があります。このため、補気剤や補血剤と呼ばれる漢方薬を使っていきます。

補気剤からみていきましょう。効果が強く、気虚の基本的な処方といわれているのが補中益気湯です。「中」は漢方では腹部=胃腸のことを意味して、消化機能を丈夫にして気を補います。血の不足が少ない若い人で使うことが多いです。

栄養が不足していて疲れがたまっている場合、補血剤の基本的な処方である四物湯を用います。疲れて動悸がする場合などは、よい適応です。高齢者で栄養状態があまりよくない方に使うことが多いです。

不眠や抑うつ気分などが強く消化不良を認める場合は、加味帰脾湯を用います。心脾両虚に有効といわれています。気力や体力の源が足りなくなってしまい、心と脾が活動できなくなっている状態です。

消耗が著しく、補気と補血の両方が必要になる場合は、十全大補湯を用います。十全とは完璧という意味で、失われた気も血も完璧に補うことを意味します。全身機能を高めて代謝を促進し、疲労感を軽減します。これでも効果がなかった場合、十全大補湯に生薬を加えた人参養栄湯を用います。

 

3.漢方の証

漢方を使っていく時は、証のあったものを選ぶ必要があります。

漢方では、患者さん一人ひとりの身体の状態をあらわした「証」を考えながら薬を選んでいきます。証には色々な考え方があり、その奥はとても深いです。

証とは、患者さんの体格や体質、身体の抵抗力やバランスの崩れ方などになります。これらの証と、漢方薬の特徴を合わせていく必要があります。証を見定めていくには四診という伝統的な診察方法を行っていくのですが、そこまでは保険診療の病院では行わないことがほとんどです。

病院では、患者さんの全体像から「証」を推測して判断していきます。漢方の代表的な証には、「陰陽」「虚実」「寒熱」「表裏」の4つがあります。

このうち医者が参考にする薬の本には、たいてい「陰陽」と「虚実」しかのっていません。陰陽は身体全体の反応が活動的かどうかをみて、虚実は身体の抵抗力や病気の勢いをみます。つまり病院では、以下の2点をみています。

  • 体質が強いかどうか
  • 病気への反応が強いかどうか

慢性疲労症候群で使う漢方は、疲労感やさまざまな自律神経症状で長く苦しんでいます。「陰」「虚」となることが多く、使われる漢方薬もそれに合ったものになります。

さらに漢方では、「気血水」という3つの要素にわけて病気の原因を考えていきます。身体のバランスの崩れ方をみていくのです。慢性疲労症候群では、気虚・血虚と考えます。

漢方の証について詳しく知りたい方は、「漢方の証とは?」をお読みください。

 

まとめ

エネルギーや栄養が足りなくなってしまう気虚・血虚が原因と考え、消化機能が低下する脾虚も原因となります。

このため、補気剤や補血剤を中心に使っていきます。

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