茵蔯蒿湯【135番】の効果と副作用

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医3名、精神科医4名で協力して診療をしています。所属医師で協力して、記事を書いています。
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漢方の世界で、「表」は体の表面、「裏」を体の内側と表現します。体の内側、つまり内臓に熱を持つことを「裏熱」というのですが、茵蔯蒿湯は、この「裏熱」を抑え、裏熱によって生じた症状を改善します。

裏熱の代表的な症状は、口の渇き、尿量の減少、便秘、体のかゆみ、口内炎などで、これらが内臓の炎症に伴って、起こると考えられます。

分かりやすい例で言うと、口内炎などは食べ過ぎや飲み過ぎのときに、胃が荒れることが原因で起こることがありますね。内臓が炎症を起こして熱をもち、舌の粘膜に症状が出たと考えるのです。同様に肝臓に炎症が起こると、黄疸や体のかゆみとして、皮膚に症状があらわれることがあります。

茵蔯蒿湯は、裏熱をとることによって炎症を抑え、皮膚の症状を治していきます。原因不明の急性じんましんや、急性肝炎や黄疸に使用される漢方薬です。

漢方薬にはそれぞれ番号がついていて、茵蔯蒿湯は「ツムラの135番」などとも呼ばれます。ここでは、病院で処方される茵蔯蒿湯の効果と副作用についてお伝えしていきます。

 

1.茵蔯蒿湯【135番】の生薬成分の効能

3つの生薬すべてが肝機能障害にはたらき、茵蔯蒿・山梔子が胆汁中のビリルビンを増加させ、胆汁の分泌を促進します。大黄は胆汁の流量を増加させて、茵蔯蒿と山梔子の効果を高めます。

漢方は、何種類かの生薬を合わせて作られています。生薬は自然界にある天然のものが由来です。天然のものといっても、生薬それぞれに作用が認められます。ですから、漢方薬は生薬の合剤といえるのです。

茵蔯蒿湯は、3つの生薬から有効成分を抽出して作られています。まずはそれぞれの生薬成分の作用をみていきましょう。

  • 茵蔯蒿(4.0g):利胆作用・利尿作用・消炎作用
  • 山梔子(3.0g):解熱作用・消炎作用・利胆作用・止血作用
  • 大黄(1.0g):下剤作用・利胆作用・健胃作用

※カッコ内は、製剤1日量に含まれる生薬の乾燥エキスの混合割合です。

茵蔯蒿・山梔子・大黄は、組成すべてが肝障害改善作用をもち、内臓の炎症を抑える効果があります。そして、茵蔯蒿と山梔子は強い利胆作用もち、胆汁と胆のうの状態を正常にします。大黄が胆管と腸管の通りをよくし、胆汁の流れを正常な状態にすることで、黄疸を改善します。

また、炎症を抑えるとともに、茵蔯蒿と山梔子の利尿作用や大黄の瀉下作用によって、水分と便の排泄を促すことでも熱をとることにつながります。

裏熱が腎臓にあると尿を作ることができなくなり、尿量が減ってしまいます。体にこもった水分が水毒となって、体内に熱をもち、毒素は皮膚にも影響を及ぼしてしまいます。このため排泄を促して、老廃物とともに熱を外に出すことが大事なのです。

実際に茵蔯蒿湯には、大きく3つの薬理作用が確認されています。

  • 胆汁排泄を促進する「減黄・利胆作用」
  • 炎症やアポトーシスを抑えて肝細胞を保護する「肝細胞保護作用」
  • 間組織の線維化を防ぐ「抗線維化作用」

このような作用により、肝機能を保護して胆汁の排泄を促す効果を認められます。

茵蔯蒿湯の生薬の由来についてまとめました。

 

2.茵蔯蒿湯の証

陰陽(陽証)・虚実(実証)・寒熱(熱)・気血水(水毒)

漢方では、患者さん一人ひとりの身体の状態をあらわした「証」を考えながら薬を選んでいきます。証には色々な考え方があり、その奥はとても深いです。

漢方薬を選ぶに当たって、患者さんの体格や体質、身体の抵抗力やバランスの崩れ方などにあわせて「証」をあわせていく必要があります。証を見定めていくには、四診という伝統的な診察方法を行っていくのですが、そこまでは保険診療の病院では行わないことがほとんどです。

このため、患者さんの全体像から「証」を推測して判断していきます。「陰陽(いんよう)」「虚実(きょじつ)」「寒熱(かんねつ)」など、証には様々な捉え方があります。

このうち医者が参考にする薬の本には、たいてい「陰陽」と「虚実」しかのっていません。陰陽は身体全体の反応が活動的かどうかをみて、虚実は身体の抵抗力や病気の勢いをみます。つまり病院では、以下の2点をみています。

  • 体質が強いかどうか
  • 病気への反応が強いかどうか

さらに漢方では、「気血水」という3つの要素にわけて病気の原因を考えていきます。身体のバランスの崩れ方をみていくのです。

漢方の証について詳しく知りたい方は、「漢方の証とは?」をお読みください。

茵蔯蒿湯が合っている方は、以下のような証になります。

  • 陰陽:陽証
  • 虚実:実証
  • 寒熱:熱証
  • 気血水:水毒(肝胆湿熱・脾胃湿熱)

茵蔯蒿湯は、体力が中等度以上の人に向いている漢方薬になります。

 

3.茵蔯蒿湯の効果と適応

  • 肝障害・肝硬変が原因で起こる黄疸・体のかゆみ
  • 急性・慢性のじんましん
  • 胃の荒れが原因で起こる口内炎

茵蔯蒿湯は、漢時代に書かれた「金匱要略」「傷寒論」という漢方の古典書をもとに生薬の成分を配合しています。それぞれの生薬成分の効果があわさって、ひとつの漢方薬としての効果がみられます。

茵蔯蒿湯は、内臓に炎症が起き、じんましんや体のかゆみ、黄疸などの皮膚症状があらわれたときにもっともよく使われます。

肝臓に障害が起きたとき、もっともわかりやすい症状が黄疸ですが、しばしば皮膚のかゆみも起こります。これは、通常であれば肝臓で処理をされるビリルビンという物質が、血液中で濃度を上げることで起こります。

ビリルビンは刺激物質で、血液や組織中で増加すると皮膚の末梢神経を刺激し、かゆみとして知覚されるのです。また、ビリルビンは黄色なので、身体中の血管に運ばれると皮膚の色が黄色に見え、黄疸となるのです。

肝臓は、体に取り入れられた毒素を分解する働きで知られていますね。肝臓に炎症が起きて機能が低下すると、肝臓で分解されるはずの物質がそのまま血中をめぐり、じんましんが起こることがあります。

このため肝臓機能の正常化を促す茵蔯蒿湯が、じんましんを抑えるはたらきをするのです。

また、腎臓や消化器官においても、消炎作用と利尿作用、便通作用によって各臓器の機能を正常にするため、口内炎や便秘にも効果が期待できます。

 

4.茵蔯蒿湯の使い方

1日2~3回に分けて、空腹時(食前・食間)が基本です。飲み忘れが多くなる方は食後でも構いません。

茵蔯蒿湯は、ツムラやコタロー、クラシエなどから発売されています。1日量は、ツムラは7.5g、コタローとクラシエは6gになっています。コタローからはカプセルも発売されていて、1日6カプセルになります。

茵蔯蒿湯は、1日2~3回に分けて服用します。漢方薬は空腹時に服用することを想定して配合されています。ですから、食前(食事の30分前)または食間(食事の2時間後)に服用します。量については、年齢や体重、症状によって適宜調整します。

漢方薬を空腹時に服用するのは、吸収スピードの問題です。麻黄や附子などの効果の強い生薬は、胃酸によって効果が穏やかになります。その他の生薬は、早く腸に到達することで吸収がよくなります。茵蔯蒿湯を食前に服用するのは、吸収をよくするためです。

とはいっても、空腹時はどうしても飲み忘れてしまいますよね。現実的には食後に服用しても問題はありません。ただし、保険適応は用法が食前のみなので、形式上は変更できません。

 

5.茵蔯蒿湯の効き目とは?

急性の症状であれば1週間ほど、慢性症状であれば3ヶ月ほどで効果が期待できます。

それでは、茵蔯蒿湯の効き目はどのような形でしょうか。

皮膚症状は、急性のものは1週間ほどで効果が出てくることがあります。疲労が原因の免疫力の低下、物理的な刺激、ストレスやアレルギーなど、皮膚症状が出る原因は多様になります。特定することが困難な場合もありますが、繰り返し発症するじんましんも徐々におさまるとともに、出にくくなっていきます。

また、肝機能の改善については、効果はゆっくりです。肝機能障害は生活習慣によるものもありますから、蓄積されてきた肝臓のダメージが回復したと実感するまでには、生活の改善と茵蔯蒿湯の服用を行い、3ヶ月が目安です。

漢方薬の効果について詳しく知りたい方は、「病院で処方される漢方薬の効果とは?」をお読みください。

 

6.茵蔯蒿湯の副作用

茵蔯蒿湯は、誤治や生薬固有の副作用が中心です。

漢方薬は一般的に安全性が高いと思われています。しかしながら、生薬は自然のものだから副作用は全くないというのは間違いです。

漢方薬の副作用としては、大きくわけて3つのものがあります。

  • 誤治
  • アレルギー反応
  • 生薬固有の副作用

漢方薬の副作用として最も多いのが誤治です。漢方では、その人の状態に対して「漢方薬」が処方されます。ですから状態を見誤って処方してしまうと、調子が悪くなってしまったり、効果が期待できません。このことを誤治といいます。

誤治では、さまざまな症状が認められます。これを副作用といえばそうなるのですが、その原因は証の見定めを間違えたことにあります。あらためて証を見直して、適切な漢方薬をみつけていきます。

ま た、食べ物でもアレルギーがあるように、生薬にもアレルギーがあります。アレルギーはどんな生薬にでも起こりえるもので、体質に合わないとアレルギー反応 が生じることがあります。鼻炎や咳といった上気道症状や薬疹や口内炎といった皮膚症状、下痢などの消化器症状などが見られることがあります。飲み始めに明らかにアレルギー症状が出ていたら、服用を中止してください。

そして、生薬自体の作用による副作用も認められます。生薬の中には、その作用が悪い方に転じて「副作用」となってしまうものもあります。

茵蔯蒿湯は、黄疸の症状がなくても、じんましんや口内炎といった症状に用いられる場合があります。証が合えば効果があり症状が改善しますが、万が一証が合わないと、逆に肝障害が起こることがあります。

服用して、発熱やひどい倦怠感、皮膚や白目が黄色くなるといった症状が出た場合は、すぐ医師に連絡してください。

また、もう一つ重い副作用として、腸間膜静脈硬化症が挙げられます。長期間の服用で起こる可能性があり、腹痛・便秘・下痢・腹部膨満感が繰り返してあらわれ、便潜血陽性となる場合もあります。長く服用する場合は、注意深く様子を観察してください。

実証・熱証の人に用いられる漢方なので、虚証・寒証の人には向きません。大黄の作用も強いので、下痢や軟便の傾向にある人は注意しましょう。

大黄は子宮収縮作用もあるので、妊婦さんは服用を避けた方がよいです。

漢方薬の副作用について詳しく知りたい方は、「漢方薬で見られる副作用とは?」をお読みください。

 

まとめ

肝機能改善作用と老廃物排泄作用をもち、内臓の炎症を鎮めて熱をとります。肝臓機能を正常にすることでじんましんを改善し、胃腸のはたらきをよくすることで口内炎の改善を行うなど、内臓の炎症によって起こる、体表の異常も改善します。

陰陽(陽間)・虚実(実証)・寒熱(熱証)・気血水(水毒)

茵蔯蒿湯は、以下のような方に使われます。

  • 喉が渇き、尿量が少なく、便秘の傾向にある
  • 黄疸・体のかゆみがある
  • じんましん、アトピー・口内炎がある

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