麦門冬湯【29番】の効果と副作用

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医3名、精神科医4名で協力して診療をしています。所属医師で協力して、記事を書いています。
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風邪がまん延する季節、さらに空気が乾燥すると、風邪が治っても咳が残ってしまうことがありますね。近ごろでは「咳ぜんそく」といって、空咳だけの症状を持つ人も増えています。

麦門冬湯は、風邪のなかでも咳、とくに喉が乾燥してイガイガし、切れにくい痰を伴う咳の症状によく使われます。

漢方の世界でいう乾燥の症状「乾証」に使われ、のどが渇くドライマウスの症状や、悪性腫瘍の治療に伴う口の乾きに用いられることもあります。

体を潤す効果を持つとともに、滋養をつける働きのある生薬が使われているので、咳と風邪による体力の低下を回復させます。

咳にも、から咳、湿った咳と種類がありますが、麦門冬湯は気管支炎や気管支喘息など、から咳に向いた処方です。

漢方薬にはそれぞれ番号がついていて、麦門冬湯は「ツムラの37番」などとも呼ばれます。ここでは、病院で処方される麦門冬湯の効果と副作用についてお伝えしていきます。

 

1.麦門冬湯【37番】の生薬成分の効能

麦門冬に含まれるステロイドサポニンの一種、オフィオポゴニンがのどを潤して咳を止め、痰を出しやすくします。半夏は吐き気止めの効果があり、咳とともにこみ上げる吐き気を抑えます。人参・粳米・大棗・甘草は、滋養作用や体に潤いを持たせる作用を持ち、体内の乾燥を改善します。

漢方は、何種類かの生薬を合わせて作られています。生薬は自然界にある天然のものが由来です。天然のものといっても、生薬それぞれに作用が認められます。ですから、漢方薬は生薬の合剤といえるのです。

麦門冬湯は、6つの生薬から有効成分を抽出して作られています。まずはそれぞれの生薬成分の作用をみていきましょう。

  • 麦門冬(8.0〜10.0g):鎮咳作用・去痰作用・解熱作用・血糖降下作用
  • 半夏(5.0g):制吐作用・去痰作用
  • 人参(2.0g):強壮作用・抗ストレス作用・賦活作用・補気作用
  • 粳米(5.0〜10.0g):強壮作用・止渇作用・補気作用
  • 大棗(3.0g):健胃作用・強壮作用・利尿作用・鎮静作用
  • 甘草(2.0g):鎮痛作用・抗痙攣作用・鎮咳作用

※カッコ内は、1日量7.5gに含まれる生薬の乾燥エキスの混合割合です。

麦門冬湯の主薬は、麦門冬に含まれるステロイドサポニンです。オフィオポゴニンといい、咳を鎮めてアレルギーの抑制にも効果があるとされています。また、のどを潤す効果もあるので、痰に水分を含ませて切れやすく、出しやすくします。

半夏は吐き気止めによく使われ、つわりの改善にも用いられることがあります。咳をすると、嘔吐神経にも刺激がいき吐き気がする、または吐いてしまうといった症状が出ることがあります。咳に伴う吐き気に対しても、半夏が効果をあらわします。

粳米・大棗・甘草・人参は、乾いた体を潤す効果を持ちます。切れにくく粘りのある痰はのどが乾燥し、体内の「水」のバランスが崩れていることを示すので、生薬によって体の保水と「水」のめぐりをよくします。

また、長引く咳は体力を消耗させます。粳米・大棗・人参は滋養強壮効果もあるので、力をつけることによって症状の回復を助けます。

麦門冬湯の生薬の由来について

 

2.麦門冬湯の証

陰陽(中間症)・虚実(虚~中間症)・寒熱(熱証)・気血水(津虚)

漢方では、患者さん一人ひとりの身体の状態をあらわした「証」を考えながら薬を選んでいきます。証には色々な考え方があり、その奥はとても深いです。

漢方薬を選ぶに当たって、患者さんの体格や体質、身体の抵抗力やバランスの崩れ方などにあわせて「証」をあわせていく必要があります。証を見定めていくには、四診という伝統的な診察方法を行っていくのですが、そこまでは保険診療の病院では行わないことがほとんどです。

このため、患者さんの全体像から「証」を推測して判断していきます。「陰陽(いんよう)」「虚実(きょじつ)」「寒熱(かんねつ)」など、証には様々な捉え方があります。

このうち医者が参考にする薬の本には、たいてい「陰陽」と「虚実」しかのっていません。陰陽は身体全体の反応が活動的かどうかをみて、虚実は身体の抵抗力や病気の勢いをみます。つまり病院では、以下の2点をみています。

  • 体質が強いかどうか
  • 病気への反応が強いかどうか

さらに漢方では、「気血水」という3つの要素にわけて病気の原因を考えていきます。身体のバランスの崩れ方をみていくのです。

漢方の証について詳しく知りたい方は、「漢方の証とは?」をお読みください。

麦門冬湯が合っている方は、以下のような証になります。

  • 陰陽:中間症
  • 虚実:虚証~中間証
  • 寒熱:熱証
  • 気血水:津虚(乾燥)

麦門冬湯は、体力が中等度以下の人に向いている漢方薬になります。

 

3.麦門冬湯の効果と適応

  • 風邪の後に残ったから咳
  • 気管支炎、気管支ぜんそく
  • 百日咳
  • ドライマウス
  • 悪性腫瘍の治療に伴う副作用の口腔内乾燥

麦門冬湯は、漢時代に書かれた「金匱要略」という漢方の古典書をもとに生薬の成分を配合しています。それぞれの生薬成分の効果があわさって、ひとつの漢方薬としての効果がみられます。

麦門冬湯は、咳のなかでも喉や口が乾燥してイガイガし、何度も咳がこみ上げて切れにくい痰が出るといった症状によく使われます。

または、高齢者は唾液の分泌量が減少し、口やのどの粘膜が乾きやすくなります。乾燥すると雑菌やウィルスが口から体内に侵入しやすくなり、風邪などにかかりやすくなるため、麦門冬湯で口やのどの乾きを改善することは、風邪などの予防にもつながるのです。

漢方では、風邪による咳は、風邪が体表から肺へと侵入してきた段階の症状ととらえます。肺が熱を持ち、その熱が喉まで上がってきて、乾燥や咳としてあらわれると考えられているのです。

熱により乾燥が起こるため、粘り気のある痰や切れにくい痰が見られるといった症状が出ます。喉に対処する治療をしないと、そのまま熱や乾燥が残り、咳が長引くことになるのです。

麦門冬湯の使用の目安は、のぼせ気味で、咳き込むと顔が赤くなることです。熱が上半身に溜まっていると水のめぐりも滞るため、炎症を起こして熱を持った喉は乾燥した状態となります。

麦門冬湯は炎症を抑えて熱をとり、水をめぐらすことで、喉の乾燥やイガイガ、切れにくい痰とともに咳をとるのです。

なお、添付文章に記載されている麦門冬湯の適応は以下になります。

痰の切れにくい咳、気管支炎、気管支ぜんそく

[参考] 使用目標:体力中等度もしくはそれ以下の人の激しい咳嗽で、発作性に咳が頻発して顔面紅潮する場合に用いる。

  1. 粘稠で切れにくい痰を伴う場合
  2. 咽喉の乾燥感や違和感のある場合
  3. 上記症状を伴う老人の咳嗽

 

4.麦門冬湯の使い方

1日2~3回に分けて、空腹時(食前・食間)が基本です。飲み忘れが多くなる方は食後でも構いません。

麦門冬湯は、ツムラやコタロー、クラシエなどから発売されています。1日量は、ツムラは9.0g、コタローは15g、クラシエは7.5gになっています。

麦門冬湯は、1日2~3回に分けて服用します。漢方薬は空腹時に服用することを想定して配合されています。ですから、食前(食事の30分前)または食間(食事の2時間後)に服用します。量については、年齢や体重、症状によって適宜調整します。

漢方薬を空腹時に服用するのは、吸収スピードの問題です。麻黄や附子などの効果の強い生薬は、胃酸によって効果が穏やかになります。その他の生薬は、早く腸に到達することで吸収がよくなります。麦門冬湯を食前に服用するのは、吸収をよくするためです。

とはいっても、空腹時はどうしても飲み忘れてしまいますよね。現実的には食後に服用しても問題はありません。ただし、保険適応は用法が食前のみなので、形式上は変更できません。

 

5.麦門冬湯の効き目とは?

麦門冬湯の効果は、飲み始めにやや改善が見られ、その後はゆっくりと症状が改善していくことが多いです。

それでは、麦門冬湯の効き目はどのような形でしょうか。

麦門冬湯は、風邪の後に残った咳であれば、飲み始めて2〜3日目で効果を感じられます。その後は、飲み続けるにつれて、だんだんと治っていく場合が多いです。

強くこみ上げる咳でも、証が合っていれば、比較的早期に効果が得られる場合が多く、飲んでから数時間で咳が収まる場合もあるようです。

咳の出始めから数日間、長い時でも2週間ほどで効果が感じられない場合は、証が合っているかどうか、もう一度確認する必要があるかもしれません。

漢方薬の効果について詳しく知りたい方は、「病院で処方される漢方薬の効果とは?」をお読みください。

 

6.麦門冬湯の副作用

麦門冬湯では、誤治や生薬固有の副作用が中心です。

漢方薬は一般的に安全性が高いと思われています。しかしながら、生薬は自然のものだから副作用は全くないというのは間違いです。

漢方薬の副作用としては、大きくわけて3つのものがあります。

  • 誤治
  • アレルギー反応
  • 生薬固有の副作用

漢方薬の副作用として最も多いのが誤治です。漢方では、その人の状態に対して「漢方薬」が処方されます。ですから状態を見誤って処方してしまうと、調子が悪くなってしまったり、効果が期待できません。このことを誤治といいます。

誤治では、さまざまな症状が認められます。これを副作用といえばそうなるのですが、その原因は証の見定めを間違えたことにあります。あらためて証を見直して、適切な漢方薬をみつけていきます。

ま た、食べ物でもアレルギーがあるように、生薬にもアレルギーがあります。アレルギーはどんな生薬にでも起こりえるもので、体質に合わないとアレルギー反応 が生じることがあります。鼻炎や咳といった上気道症状や薬疹や口内炎といった皮膚症状、下痢などの消化器症状などが見られることがあります。飲み始めに明らかにアレルギー症状が出ていたら、服用を中止してください。

そして、生薬自体の作用による副作用も認められます。生薬の中には、その作用が悪い方に転じて「副作用」となってしまうものもあります。

麦門冬湯の生薬成分には甘草が含まれており、これを大量に服用すると「偽アルドステロン症」と呼ばれるだるさや浮腫(むくみ)、血圧上昇、低カリウム血症が生じたりすることがあります。複数の漢方薬を併用する際には、とくに注意が必要です。

その他では、ごくまれに間質性肺炎と肝障害が起こることがあると報告されています。咳や息切れ、呼吸困難が認められたり、発熱やひどい倦怠感、皮膚や白目が黄色くなるといった症状が出た場合は、すぐ医師に連絡してください。

また、軽い副作用では、胃部不快感、食欲不振、吐き気、発疹、発赤、かゆみなどが見られることがあります。

から咳に適応する漢方なので、水っぽい痰が絡む咳、咳の出ない風邪、むくみがある人は、悪化する可能性があるため使用を避けてください。

漢方薬の副作用について詳しく知りたい方は、「漢方薬で見られる副作用とは?」をお読みください。

 

まとめ

麦門冬湯に含まれるステロイドサポニンの一種、オフィオポゴニンが喉を潤して痰を切れやすくし、咳を止めます。半夏はこみあげる咳とともに吐き気を抑え、その他の生薬は滋養をつけ、体内の乾燥を改善します。

陰陽(中間症)・虚実(虚~中間症)・寒熱(熱証)・気血水(津虚)

麦門冬湯は、以下のような方に使われます。

  • 風邪の後にから咳が残り、何度もこみ上げる
  • 切れにくい痰が出て、口、喉が乾燥する
  • 加齢、悪性腫瘍治療に伴うドライマウスの症状
  • 気管支炎、ぜんそく(小児含む)

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