精神疾患によって結婚の悩みがある方に伝えたいこと

元住吉 こころみクリニック
元住吉 こころみクリニック
2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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生涯を共に歩みたいと思うパートナーと巡り合えた時、「結婚したい」という気持ちが強くなることがあると思います。そんな時に精神疾患をかかえる患者さんは、病気の現実との間で苦しむ方が多いのです。

精神疾患を抱えた自分を好きになってくれるパートナーが見つかるのかと、不安になる患者さんもいます。

精神科医として日々診察をしていると、患者さんから結婚に関する相談をうけることが度々あります。結婚は、人生を大きく変化させるイベントです。自分自身はもちろんですが、相手や親族、将来の子供までを考えなくてはいけません。

精神疾患に対してはまだまだ悪いイメージが強く、必要以上に嫌悪感を感じる方もいらっしゃいます。そんな中で、精神疾患をかかえる人は結婚してはいけないのかと悲観的に考えている方もいらっしゃいます。

精神疾患をかかえる患者さんの結婚に関する悩みと向き合っていく中で、患者さんがどのように自分の病気を考え、結婚をどのように考えていくのがよいのかを、私も一緒に考えてきました。ここでは、私の中での現時点での答えをお伝えしていきます。

 

1.結婚相手に自分は何をしてあげられるのか、考えよう

あなたは、結婚について真剣に考えたことがあるでしょうか。

人生を共にするパートナーがほしい…人間なら、誰しもそう思うことがあるはず。病気であったとしても、その気持ちは変わりません。いえ、病気であるからこそ「自分を理解してくれる伴侶がほしい」と感じるものです。結婚したいと願うこと自体は、間違いではありません。その気持ちを大切にしてください。

さて、あなたはどのような結婚生活を送りたいと思っているのでしょうか。「こんな人が伴侶だったらいい」「こんな生活を送りたい」、いろいろな自分の望みが出てくるかと思います。

いろいろな精神疾患をかかえる患者さんの結婚生活にふれさせていただいて大切だと感じることは、「相手に何をしてもらうか」ではなく、「自分は相手に何をしてあげられるか」をちゃんと考えることです。

持病があれば、ついつい人に頼ってしまいがちです。それは仕方がないことで、結婚生活が始まってからは助けてもらうことも多いはずです。だからこそ、「自分は結婚相手に何を与えてあげられるか?」という視点はとても大切です。

夫婦の関係は貸し借りの関係ではありませんが、お互いが補えあえることが大切です。それはどんなことでもいいですし、自分にできることでいいのです。例えば、「毎朝おはようと必ず挨拶する」なんていったことでもいいのです。

病気を支えあっているご夫婦をみていると、小さなことが絆になっていると感じることが度々あるのです。

 

2.病気は「個性」と考えよう

一口に精神疾患といっても、症状はさまざまです。軽い不眠症の患者さんもいれば、重度の双極性障害の患者さんもいらっしゃるでしょう。

「もし結婚するとしたら、自分の病気の何が問題になるのか?」

その点はちゃんと考えておく必要があります。

  • 自分が調子が悪くなるとどんな症状がでてくるのか?
  • 日頃からどのようなことを心がける必要があるのか?
  • 家族にどんなことを理解してもらう必要があるのか?

などを考えてみましょう。各精神疾患での家族の方が知っていただきたいことは、私のサイトでも順次まとめていきますので参考にしてください。(例えば、「双極性障害(躁うつ病)の家族の接し方のポイント」)

 

もともと完全な人間などはこの世の中にいません。みんなどこかが不完全で、その欠落をお互いに埋めているのが、この人間社会なのです。

ですからあなたは、「自分は病気だから不完全だ」などと思う必要はありません。欠点を隠そうとするのではなく、自分の長所に目を向けてください。病気は「個性」と考えてほしいのです。

「自分が相手に何をしてあげられるのか」を考えることは、パートナーを見つけるときにも大切です。

「自分は病気だけど、パートナーにこんなことをしてあげられる」と、自分の長所をアピールするようにしましょう。「自分は病気だけど…」と暗い顔をしている人は、どうしても敬遠されてしまいます。それよりも、自分の病気とうまく付き合っている、明るい笑顔の人にひかれるものです。

誤解を恐れずにいえば、すべての夫婦は「割れ鍋に綴じ蓋」です。欠点も美点も含めて、その人がその人であるからこそ結婚しているのです。ですから、あなたは自分が「精神疾患である」ということに過剰なコンプレックスを抱く必要はありません。それよりも、自分が伴侶に何を与えてあげられるかを考えていきましょう。

 

3 結婚相手に精神疾患のすべてを話した方がいい?

 あなたには、現在交際を考えている相手がいますか?「この人と結婚したい!」と思う人がいるなら、いつかは病気のことを話さなくてはなりません。「今の仲が壊れるのでは…」という不安は、もっともです。

しかし結婚というのは、生活を共にするということなのです。朝起きて、仕事へ行って、たまに通院して…という、あなたの生活リズムを理解してもらう必要があります。無理に隠そうとしてしまったり、治療を無理に止めてしまうと、必ずひずみが生じます。

ですから結婚したいと思う相手だからこそ、ちゃんと向き合って伝えなければいけません。結婚したい相手がいるなら、結婚前に打ち明けておきましょう。

「もし断られたら」…それは、相手と縁がなかったということです。そもそも結婚とは、苦楽を共にして人生を歩んでいく事業のようなものです。「相手は、自分と苦労を共にすることができなかったのだ」と考えなくてはいけません。次のステップへ進むようにしましょう。

実はあなたの病気は、最良のパートナーを見わけるための試金石になります。あなたは、自分の病気を不幸とばかり考えないようにしましょう。自分のことを本当に受け止めてくれるパートナーを見つけて下さい。

 

4.結婚の決断は病状が落ち着いているときに

精神疾患といっても、さまざまな病気があります。どんな病気でも言えることとしては、「病状が落ち着いていない時には重要な決断をするべきではない」ということです。

結婚はもちろん重要な決断です。結婚を決断するときには、自分自身の病状が落ち着いているかを考える必要があります。ですからぜひ、主治医に相談してほしいのです。

病気でなくとも、気分が良い時は物事をポジティブに考えられますが、気分が悪いときはネガティブに考えがちになるかと思います。病状が不安定な時には、本来の自分の判断ができないことがあるのです。

例えば双極性障害(躁うつ病)では、一時的に気分が高揚してしまうことがあります。気持ちが大きくなり、将来のことなどを楽観的にとらえてしまい、勢いで結婚を考えてしまうこともあります。

このように自分の病状も大切ですが、相手のことも忘れてはいけません。相手が精神疾患をかかえている場合は、相手の病状が落ち着いているときに話さなければいけません。

結婚は人生での非常に大きな変化です。結婚によって良いこともあれば、悪いこともあります。病気にどのような影響を与えるかはやってみないと分かりません。いつもの自分が「結婚したい」と思った時、その気持ちは尊重されるべきです。

 

5.周囲の人に結婚を理解してもらうためには?

現在結婚とは、当事者同士のものだという考え方が主流になっています。昔のように、家と家との結びつきを前面に出すことは少なくなりました。

しかし結婚するとなると、さまざまな人と関わらなければなりません。「当事者同士の問題」ですめばいいのですが、そうではないからこそ、いろいろな問題が起こってくるのです。

あなたの周囲にも「精神病は遺伝するから結婚してはダメ」というような考えの人がいるかもしれません。そんな周囲の声にどう対処していけばいいのでしょうか。

まず、医学的知識を理解してもらおうとするのはやめましょう。相手は専門家ではありません。周囲の人たちは理屈ではなく感情で反発しているのです。

(遺伝のことに関しても、「双極性障害(躁うつ病)は遺伝する病気なのか」のように、できるだけ記事をつくっています。)

それより、あなたは自分自身の生活をきちんと送っていきましょう。「私はこういう人間だ。そして、このように生活している。」という態度を見せるのです。口で言うのではなく、あなた自身の行動で証明しましょう。それには、いくらか時間がかかるでしょう。少しずつですが、付け焼刃ではない、信頼が得られてくるのです。

そして、無理に自分をとりつくろわないようにしましょう。「自分は、もう病気が治った。だから無理をしても大丈夫。」と無理をしてはいけません。

頑張りたいという気持ちは大切なものです。だけど、もしそれが真実ではなかったとしたら、どうなるでしょうか。急な体調の変化が起こってしまったら?病気のせいで仕事を休むことになってしまったら?あなたに悪意はなくとも、嘘をついていたのと同じになってしまいます。

あなたは、自分と病気を無理矢理切り離してはいけません。「精神疾患も私の個性だ」と、受けいれることが大切なのです。病気であってもなくても、あなたがあなたであることには変わりがありません。結婚に限らず、すべてのことに胸をはって生活していって下さい。そうすれば、いずれは周囲の人たちも、あなたのことを理解してくれるはずです。

 

まとめ

結婚を考えていく上で、「自分の病気は個性」と受け止めて欲しいというのがこの記事で一番伝えたかったことです。個性をちゃんと認めて、それを知って付き合っていってほしいのです。

「精神疾患だから、いい人と結婚できない…」と卑下しないでほしいのです。もちろん、人との出会いは縁があります。生涯のパートナーと巡り合えるかはわかりません。

ですが、自分の病気を受け止めて前向きに生きている患者さんは、どんな形であれ人生が豊かになっていきます。自然と病気も安定していくのです。

病気は悪いことばかりではありません。健康であった時には気づかなかった幸せが見えるようにもなってきます。結婚について前向きに考えることが、あなたの人生を豊かにする一歩になればと思います。

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