「先延ばし癖」をなくし、やるべきことを後回しにしない方法とは?

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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自分の思い通りに物事が運べばいいと誰もが思うでしょう。

やるべきことがあるのに、全然やる気にならない。
やった方がいいとわかっているのに、後でやろうと見てみぬふり。

やっかいなことほど、気が進まずついつい先延ばしにしてしまいますよね。物事を先延ばしにするのは、人がもつストレス回避のための方法です。人は大きなストレスを感じた時、とっさにストレスに対処しようとします。その結果として、先延ばしするのです。

「先延ばし」は、ただ単に嫌なことから逃げているだけではないことが最近の研究でわかってきています。もし先にやるべきことを行うことができたら、気持ちよく日常を過ごせると思いませんか?

ここでは、先延ばし癖を直す方法について考えていきたいと思います。

 

1.先延ばし癖とは?その背景にある衝動性の高さ

先延ばし癖とは、良くない結果になるとわかっていても行動を遅らせることが常態化していることです。その背景には衝動性の高さが関係していて、衝動性が高いと恐怖で思考がとまってしまって先延ばしをしてしまいます。

物事を先延ばしをしてしまうと、人間関係がうまくいかなくなってしまったり、仕事での評価が下がってしまったりします。やるべきことは先にやっておいた方が、得をすることの方が多いというのは皆さんもわかっているはず。ですが、なかなかうまくいきませんね。

先延ばし癖のある人は、日常生活で損をしてしまうことも多いです。そして自分自身でも不安をいつも抱えているため、心身の健康にもよくありません。

人によっても程度に差はありますが、先延ばし癖の定義をするならば、「後に良くないことがわかっているにも関わらず、行動を遅らせることが常態化してしまっている状態」という形になるでしょうか。

それではなぜ先延ばしにすると悪いことが起きるとわかっているのに、行動を先延ばしにしてしまうのでしょうか。先延ばし癖のある人は、その人が怠惰でも、だらしのないせいでもありません。

これまでは、「やっかいな物事を避けたい」という恐怖心の表れから回避する行動をとっていると考えられていましたが、最近の研究では「衝動性」が関係していることがわかってきています。先延ばし癖については、原因と行動の意味の解釈がかわってきています。

普段から衝動的に行動する傾向の少ない人は、「恐れ」が行動を始める理由になります。それに対し衝動的な性質の強い人は、「恐れ」を感じることで思考が停止する傾向にあります。

衝動性の高い人は、「恐れ」自体に対処することが下手で、「恐れ」に対する不安が衝動的におそってきます。そして「恐れ」に向き合うことができずに、何か他のことを行ったり、逃避することで嫌な気持ちを取り去ろうとします。

失敗した時の経験を味わいたくないから怖くなったり不安になったりして先延ばしにするのではなく、そういった恐怖心が衝動的に思考停止へ影響を及ぼして先延ばしにしてしまうのです。

ですから本人も、先延ばしにすることでその行為がなくなるわけではないことを自覚しています。それがわかっていても思考が止まり、先延ばしにしてしまうのです。

 

.物事を先延ばししがちな人の特徴

恐怖心が強い人、完璧主義の人、楽観的な人では、物事を先延ばしにしがちです。

先延ばし癖を持っている人は、自分が下した判断や行動が後々の自分にどのような影響を及ぼすかを理解する能力が弱いと言われています。

「一時的に近視眼的」になっており、身近な自分の状況に対して見えづらくなっている状態にあります。先延ばし癖のある人は、自身の未来に対して他人事」のように捉えてしまって実感が持てません。そのため自身の将来に対して、「感情的なつながりを持たない」のが特徴です。

これらの心理の根底にあるものは、心をストレスから守ろうとする防衛機制です。やらない理由を作りだして合理化しようとしたり、やらなければならないことを他のことで置き換えたり、現実から逃避したりすることで先延ばししています。

それでは、もう少し具体的に先延ばし癖のある人をみていきたいと思います。振り返ってみると、そのパターンは大きく3つあるように思います。

  • 恐怖心が強い人
  • 完璧主義の人
  • 楽観的に構える人

①恐怖心が強い人

家庭や友人関係などの身近な場所ではキビキビと動く人でも、職場では物事を先延ばしにして、「だらしがない」「仕事ができない」と言われてしまう人がいます。

なぜ同じ人でも、場所を変えると先延ばし癖が顔を出すようになってしまうのでしょうか。仕事という場所は、その人が評価される場所でもあります。自分が決断したことは、周りにも影響していきます。

恐怖心が強い人は、苦手なことから避けてしまうようになります。とっさに苦手なことが頭を占めるようになり、そこから避けようとしてしまいます。

②完璧主義の人

「完璧主義」的な強迫的な考え方も、先延ばし行動につながることがあります。あらゆることに完璧さを求めてしまうあまり、何も手をつけられずに先延ばしにしてしまうことがあります。

何でも完璧にやらないといけないと考え、頭が「マヒ」してしまい、完璧に出来ないことを恐れて、何かに取りかかることが心配で仕方がなくなってしまうのです。

やるべきことを先延ばしするのに罪悪感を感じるのを避けるために、気分の良くなることを行ったり、ジムに行ったりなどの生産的な活動を行って感情の埋め合わせを行うことも多いです。

③楽観的に構える人

物事を楽観的にとらえて、物事を先延ばしにする場合もあります。その傾向がある方は、大きな失敗をした経験があまりないことが多いです。先延ばしにしながらも、結果的には自分に失敗が返ってきていないことが多いです。

物事を先延ばしにすることが周りからは不真面目に見えても、本人のなかでは違和感がないので直せません。

楽観的に物事を捉えられることは悪いことではなく、本人のストレス耐性は高まります。ですがあまりに行き過ぎると、仕事などでの社会生活になじめないこともあります。

 

3.先延ばし癖をなくすための4つの方法

  • 一番やりたくないことから片づけるルールを作る
  • 細かく目標を決めてやるべきことをする
  • スケジュールに余裕を持たせておく
  • やるべきことの他に何もしない意識をする

先延ばし癖をなくしていくにはどうしたらよいでしょうか。具体的な方法をみていきましょう。

①一番やりたくないことから片づけるルールを作る

自分の中でルールを決めてしまうのも一つの方法です。一番やりたくないことに対しては、衝動的に恐怖がおそってきます。そのため思わず目を背けて、逃げたくなってしまいます。

自分の中でルールを決めることで、衝動的な気持ちを少しコントロールしやすくなります。自分が先延ばしにしようとしてしまっていることに気づいて立ち止まれるように、少しずつ練習していきましょう。

恐怖心が強いタイプの人には、この方法が向いているかもしれません。

②細かく目標を決めてやるべきことをする

あなたは部屋の掃除をするときに、どのように片づけていきますか?いろいろなところを気が向くままに片づけていきますか?それとも、ひとつの場所を徹底的に片づけてから次の場所に行きますか?

どちらの方が掃除が早くすむかというと、後者の方です。行動をしていくには達成感が大切で、ひとつのところを片付けたという達成感が次につながっていきます。

先延ばし癖がある方は、目標を細かく決めて積み上げていく意識をしていくのも方法です。達成感を大切にして、ひとつずつ片づけていきましょう。

③スケジュールに余裕を持たせておく

多少遅れても間に合うようにゆとりのあるスケジュールを設定する方法です。特に完璧主義で先延ばしにしてしまうことがある人は、スケジュールがタイトになると余裕がなくなります。

スケジュールに余白を入れるように意識していくことで余裕がでてきます。完璧主義の人は余白を嫌うのですが、自分自身の管理のためにもあえて余白の予定をいれるように意識してみましょう。

④やるべきことの他に何もしない意識をする

先延ばし癖を治していくのに大切なのは、強い不安や恐怖といった衝動的な感情を抱いていることを自覚していくことです。その感情が視野を狭くしてしまって、今やるべきことを先延ばしにしてしまいます。

その瞬間に立ち止まって、目の前のことのそのまま受け止められるようになることが大切になります。衝動性をコントロールできるようになることを目指すのです。

なかなか立ち止まれない人は、「やるべきことの他に何もしないこと」ことを意識してみてください。先送り癖がある人は、そのかわりに何か他の行動で埋め合わせをします。そういった行動をしていることを自覚することから始めましょう。

 

あとがき

人は目の前のことをそのまま見つめることが苦手です。事実は事実なのに、それをそのまま受け止められません。

何事も早く片づける方が得をすることが多いですし、一つずつ目の前のことをやっていくしかありません。ですがなかなかそれができず、つい先延ばしにしてしまいます。

先延ばし癖といっても程度はそれぞれで、誰でも多かれ少なかれあります。本当は早く片づけなければいけないのに、やる気が起きなくて他のことをしてしまったりします。

ですがときに、それが行き過ぎて仕事や学業、家庭などで支障になることがあります。そうでなくても、やるべきことを後回しにするとぼんやりとした不安が残ります。そんな中で他のことをしていても、心から楽しめません。物事を先延ばしにするのは、回りの人もですが自分自身が一番不快に思っています。

先延ばし癖がひどくて生活に支障がある場合は、何らかの病気が原因のこともあります。専門家に相談するようにしましょう。

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