精神疾患の患者さんが金銭管理を高めていく方法とは?

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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精神疾患の患者さんとお金の問題は、切っても切れない関係にあります。

精神疾患を抱えていると社会的なハンデとなってしまうことも多く、収入が低くなってしまうことが多いです。そして病状によっては、お金を管理していくことが難しいこともあります。

心の健康のためには、お金のことから目を背けるわけにはいけません。生活が安定していればストレスも軽減しますし、現実的な不安が薄れるのです。精神疾患の患者さんが収入を確保するためとしては、「制度のカテゴリー」をお読みください。

精神疾患の患者さんは、生活保護を受給せざるを得ない方も少なくありません。精神疾患をかかえている生活保護の方に対して批判が集まることも多いですが、その実態としては「「月29万円の生活保護の母」は本当に苦しんでいる」をお読みください。

ここでは、精神疾患が金銭管理を高めていくためにはどのような方法があるのか、お伝えしていきたいと思います。

 

1.金銭管理のstep1 お金を「見える化」する

出来る範囲から家計簿をつけていくことで、自分のお金の使い方を見える化しましょう。

自分が1ヶ月(あるいは1週間)、どれだけのお金を使っているかわかりますか?これが分からないと、何をどう節約した方が良いのかも分かりません。

お金の流れを把握していないと使いすぎていることに気付かず、残金が少なくなるまで危機感が出ない…といったこともあると思います。

金銭管理を高めていく方法のまず第一歩として、「見える化」することはとても大切です。これは精神疾患を持っているかどうかに限ったことではありません。

レシートを基に毎日の家計簿をつけられれば理想的ではありますが、負担が増えると長続きしないこともあります。最近は簡単な操作で家計簿をつけることができ、数値をグラフ等にまとめてくれる携帯電話アプリもあったりします。

私自身も無料携帯アプリで家計簿をつけています。家計簿をつけていくと自分がどれくらい何にお金を使ったかが分かるので、少しずつ楽しくなっていきます。最初はザックリつけていただけなのに、気づいたら自動販売機でジュースを買っただけで家計簿をつけるようになっています。

家計簿をつけていくときに大切なのは、「無理なく続けること」です。毎日の家計簿が負担になるならば、まずは「毎日のレシートを残しておく」だけでも良いので、自分で出来る範囲のことを実践していくことが訓練となります。

 

2.金銭管理のstep2 お金の使用計画を立てる

使用用途に分けて、期間を決めて目標を設定しましょう。1週間単位など、短めに設定するのがお勧めです。

お金が「見える化」できて、自分は何にいくら使っているということが分かるようになれば、お金の使用計画を立てやすくなります。お金の使用計画を適切に立てることができれば、決まった金額内で安定して生活していくことが出来るので、お金の使い方を迷うことも減ります。

使用計画は、1ヶ月や1週間など自分がやりやすい区切りをつけて立てていきましょう。最初は1週間単位など、短めに設定するのがお勧めです。短く目標を設定する方が気持ちがくじけず、計画をやりきった達成感が次のモチベーションにつながるからです。

計画例としては、「食費」「雑費」「水道光熱、通信費」「お小遣い」など使用用途をいくつかのカテゴリに分けて、それに1週間(1か月)でいくら使うかを決めてみましょう。その範囲で生活ができたら、自分を褒めてあげてください。

 

3.金銭管理のstep3 家族への相談

家族に相談しながら金銭管理の練習をしていけるのが理想です。とくに1人で立て直しがきかない時は、家族に相談するようにしましょう。

頼れる家族がいる場合は、経済状況をしっかりと伝えて今後のことを共に話し合うことが大切です。

経済状況が悪くなればなるほど、家族には相談しづらくなってしまいます。しかしながら1人でとても解決できないほどの状況になれば、家族にしっかりと相談して立て直しをしていかなければいけません。何事も悪いことほど、ちゃんと伝えることが大切です。

精神疾患の患者さんでは病状もありますので、家計簿をつけることや使用計画を立てることが1人では難しい方もいます。自分1人だとモチベーションが続かない方でも、家族に相談することで気持ちも折れにくいです。もし上手く計画通りにいかなければ、家族と相談することでアドバイスがもらえるかもしれません。

1人で金銭管理を行っていく前に、家族にお金を預けてしまうのも方法です。使用計画に基づいて、月や週の頭に分割したお金を受け取り、その中でやりくりしていきます。このように、より強制力を持つ方法も金銭管理の練習としては効果的です。

 

4.金銭管理のstep4 地域機関への相談や制度利用

デイケアや地域活動支援センターなどに通所したり、日常生活自立支援事業や成年後見制度を利用することもできます。病院や公的機関でソーシャルワーカーに相談してみましょう。

近くに頼れる家族がいない場合でも日常生活においての金銭管理について相談できるところはあります。

かかりつけの医療機関や通所中のデイケア、地域活動支援センターなどにソーシャルワーカーがいる場合は、金銭管理について相談してみる事をお勧めします。

一緒に金銭管理について相談してくれることもあります。もし日中に活動予定がない方は、デイケアや地域活動支援センターなどに通うこともよい方法です。そのスタッフに相談できることに加えて、本人の居場所ができることで1人の空いた時間が減ります。時間を持て余したり、寂しさから浪費をしてしまう人にとっては、日中の活動が金銭管理の助けになる場合もあります。

また、「日常生活自立支援事業」や「成年後見制度」といった制度の利用をするのが一助になる場合もあります。

制度の詳細は後述で説明しますが、日常生活自立支援事業は「日常の金銭管理の支援」、成年後見制度は「大きな財産等の管理の支援」の側面が強いです。

 

5.日常生活自立支援事業とは?

病気をかかえた方が自立した生活を送れるように支援していく事業です。金銭管理に関しても、自宅に訪問してサポートしてくれます。

認知症高齢者、知的障害者、精神障害者などで判断能力が不十分な方が、地域での自立した生活を送れるように支援していく事業です。

この事業は利用者との契約に基づいたもので、福祉サービスなどの利用援助を行っていきます。社会福祉協議会の生活支援員や専門員がご自宅に訪問して、必要な援助をしてくれます。金銭管理も自立した生活に大切なので、しっかりとサポートしてくれます。

 

5-1.日常生活自立支援事業の対象者

日常生活支援事業の対象者についてみていきましょう。対象者は以下のようになっています。

  • 判断能力が不自由な方(認知症高齢者・知的障害者・精神障害者であって、日常生活を営むのに必要なサービスを利用するための情報の入手・理解・判断・意思表示を本人のみでは適切に行うことが困難な方)
  • 事業の契約の内容について判断し得る能力を有していると認められる方

自立した生活を送ることが困難な病気をかかえている方で、それを何とか変えたいという意志が続く方が対象となります。

 

5-2.日常生活自立支援事業では、どんな援助があるのか

日常生活自立支援事業にはさまざまな形での自立に向けたサポートがあります。金銭管理を高められるものとしては、

  • 通帳からの金銭の引き出しや預け入れの援助
  • 税金、医療費、公共料金等の支払い手続き援助
  • 実印や預貯金通帳などの財産を預かってくれる財産管理援助

などの援助があり、その他には福祉サービスの利用援助等の生活サポートも行っています。窓口は、お住まいの市町村の社会福祉協議会となっています。

更に詳細が知りたい方や実際に利用を考えたい方は、まずは相談してみる事をお勧めします。相談料は無料ですが、サービスの利用は有料です(1回の訪問につき平均1200円程の利用料がかかります。生活保護の方は無料です)。

 

6.成年後見制度とは?

成年後見制度は、法定後見制度と任意後見制度の2つに分けられます。本人の権利の代行をします。本人が何かをする時に、代理人の同意が必要になることがあります。

認知症・知的障害・精神障害等の理由で判断能力が不十分な方は、不動産や預貯金等の管理や、遺産分割の協議を自分で行うことが難しい場合があります。また、自分に不利益な契約であっても、よく判断ができずに契約をしてしまう事もあります。

このような方に対して、家庭裁判所が選任する本人の親族や法律・福祉の専門家その他の第3者等が代理人となり、本人の利益を守る制度が成年後見制度です。

成年後見制度は、法定後見制度と任意後見制度の2つに分けられます。

法定後見制度とは、判断能力が低下してから代理人を立てる制度です。それに対して任意後見制度とは、本人が充分な判断能力があるうちに、将来的に判断能力が低下してしまった時に備えるための制度です。あらかじめ本人が選んだ代理人に、自分の生活や療養看護、財産管理に関することについて代理権を与える契約を、公正証書で結んでおきます。

 

6-1.成年後見制度対象者

法定後見制度は、本人の判断能力により、「後見」「保佐」「補助」の3つに分かれます。それぞれが対象になる判断能力の基準は以下のようになっています。

  • 後見…判断能力が欠けているのが通常の状態の方
  • 保佐…判断能力が著しく不十分な方
  • 補助…判断能力が不十分な方

自分がどの基準になるかどうかは、家庭裁判所が指定した鑑定人が行う鑑定や、かかりつけ医の診断書などによって決まります。

 

6-2.成年後見制度では、どんな援助があるのか

後見人(保佐人・補助人)には、定められた法律行為の代理や取り消しの権利が与えられます。(代理権・取消権)

さらに本人が定められた行為をする際には、後見人(保佐人・補助人)の同意が必要になります。(同意権)

その裁量は後見人が一番大きく、補助人が一番小さくなっています。どこまでの権限が与えられるかは家庭裁判所が審判して定めるので、状況によって異なります。もちろん何でも制限が入るという訳ではなく、本人の権利の尊重の為に日用品の購入といった日常生活に関する行動は権限から除かれています。

このような代理権、取消権、同意権で本人の利益や生活を守っていきます。

利用の申し立ての窓口は最寄りの家庭裁判所になりますが、県や法テラスなどで制度についての利用相談を受けてくれますので、利用をお考えの方はまずはそういった所に相談をしてみることをお勧めします。

 

まとめ

このように、1人でも実行できる方法から周囲への相談、制度を利用するなど、精神疾患を持つ患者様が金銭管理を高めていく手段はたくさんあります。

続けていくことが大切なので全てをいきなりやろうとせずに、できそうなこと、やってみたいと思うことから少しずつはじめていくことが大切です。

1人で難しい場合は抱え込まず、できる限り周囲の家族や関係機関に相談していくようにしましょう。

  • お金を「見える化」する
  • お金の使用計画を立てる
  • 家族や地域の関係機関への相談(日中活動の利用なども)
  • 制度の利用(日常生活自立支援事業や成年後見制度)

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