エンクラッセ(ウメクリジニウム)の効果と特徴
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
エンクラッセ(一般名:ウメクリジニウム)エリプタは、2015年にグラクソスミスクライン(GSK)製薬会社より発売された新しい抗コリン薬の吸入薬になります。
「コリン」とはアセチルコリンのことを意味していますが、アセチルコリンは身体の様々なところで副交感神経を興奮させます。副交感神経が気管支で興奮すると、気道が狭くなるという作用が生じます。
エンクラッセはこの反応を抑制することで気道を広げ、主にCOPD(肺気腫)の第一選択薬として活躍しています。エンクラッセは、エリプタという吸入器の中にお薬が入ってます。
ここでは、エンクラッセエリプタの効果と特徴についてまとめていきましょう。
1.エンクラッセエリプタのメリットとデメリット
<メリット>
- ドライパウダーのお薬を自分のタイミングで吸える
- 1日1回の吸入で対応できる
- カプセルなどをセットする必要がない
- 同じエリプタのデバイスでβ2刺激薬の合剤であるアノーロがある。
<デメリット>
- 前立腺肥大、緑内障の人には使用できない
- 吸入力がないとうまく吸えない
エンクラッセエリプタは、1日1回主に朝に1回だけ吸入する長期作用型抗コリン薬になります。コリンとはアセチルコリンのことです。このアセチルコリンの作用を阻害することで、エンクラッセは気管支を広げる作用があります。主にCOPD(肺気腫)に対して使用するお薬になります。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは、慢性の咳、痰、呼吸困難を主訴とし、日常生活が制限されるだけでなく、長期の経過をたどる進行性疾患です。
抗コリン薬の禁忌(処方してはいけない患者)として、
- 閉塞隅角緑内障の患者
- 前立腺肥大症による排尿障害のある患者
これらがあげられています。緑内障は閉塞隅角のパターンのみ禁忌ですが、ご自身が緑内障のどのパターンか認識している人は少ないです。緑内障が悪化すると失明につながることから、一般的には緑内障の方にはエンクラッセは使用しないことが多いです。
また前立腺肥大は、高齢男性の多くに認められる疾患です。病院で診断されていなくても、
- 残尿感がある
- トイレが近い
- 尿がスムーズに出せない
などの症状が高齢の男性にあれば前立腺肥大の可能性があるため、エンクラッセは処方しない方が無難かもしれません。
エンクラッセエリプタの最大の特徴は、1日1回の吸入で、しかも1回の吸入で投与ができることです。他の抗コリン薬と比較してみると、
- スピリーバレスピマットは、1回に2度吸入しなければならない
- スピリーバハンディヘラー・シーブリは、カプセルを毎回セットしなければならない
- エクリラは、朝と夕方2回吸わなければならない
エンクラッセエリプタは吸入方法や回数という点では、1歩リードしているお薬です。
ゆっくり深く自分の力で薬を吸うのがエンクラッセエリプタのお薬の特徴です。そのため自分のタイミングで吸えるというメリットがありますが、吸入力が弱いとうまく薬が吸いきれません。その場合は、スピリーバレスピマットなどスプレー式のお薬を使用します。
またCOPDは、タバコで肺がボロボロになることで思いっきり息が吸えなくなる病気です。さらに恐ろしいことは、COPDに一度なると、禁煙しても肺機能はもとに戻らない特徴です。そのためCOPDと診断されたら、基本的には治療は一生する必要があります。
さらにCOPDと診断された多くの方は、タバコを吸い続けて
- 咳が止まらない
- 痰が出続ける
- 動くと苦しい
など、症状がかなり進行している患者さんが多いです。COPDの治療薬は、エンクラッセはじめとした抗コリン薬か、長期作用型のβ2刺激薬であるオンブレスやオーキシスが選択肢に上がります
しかし病院を受診するくらい症状が強いのであれば、どちらか単剤ではコントロールが難しいことも多いです。COPDは、タバコで肺がボロボロになってしまった病気です。肺がボロボロになることで気管支が狭まり、息が思いっきり吐けなくなります。こうなると痰も詰まりやすく、かなり苦しい症状が出現します。
こういった場合には、抗コリン薬とβ2刺激薬の両方を使うことになります。
こういった流れを受けて、抗コリン薬とβ2刺激薬の様々な合剤が発売されています。合剤の一つとして、エンクラッセに長期作用型β2刺激薬であるビランカテロールを加えたアノーロがあります。このアノーロは、エンクラッセと同じエリプタの吸入器になります。(エリプタが使用されている他のお薬としては、吸入ステロイドとβ2刺激薬合剤のレルベアがあります。)
そのためエンクラッセで加療しても症状が取れなければ、アノーロに移行しやすくなります。抗コリン薬とβ2刺激薬で吸入器が別々ですと、混乱のもとになります。また同じエクリラのお吸入器ですと、使い方も同じなためスムーズに使用できることが多いです。
2.エンクラッセの剤形の種類・用法・薬価とは?
エンクラッセエリプタは、COPDに適応があるドライパウダー式の吸入薬です。1日1回吸入することで効果を発揮します。
エンクラッセエリプタは、ウメク リジニウムとして62.5μgを1日1回吸入することでCOPDに対して効果があるお薬です。
具体的にエンクラッセエリプタの適応は、
慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎、肺気腫)の気道閉塞性障害 に基づく諸症状の緩解
となっています。
COPD急性増悪に対して効果があるわけではなく、毎日吸入することでCOPDの進行を抑えるのです。COPDはそもそも、タバコで肺がボロボロになった病気です。この病気は実は治すことができません。むしろ年を取るにつれて、徐々に弱ってくる病気です。エンクラッセエリプタは、この低下するのを抑えるお薬です。
そのため1回や2回のエンクラッセ吸入だけでは、なかなか効果が実感できないので注意しましょう。
エンクラッセの薬価ですが、エンクラッセエリプタは、
商品名 | 回数 | 薬価 | 1日薬価 |
エンクラッセエリプタ | 7 | 1479.5円 | 211.3円 |
エンクラッセエリプタ | 30 | 6166.6円 | 203.4円 |
※2016年8月24日時点での薬価です。
エンクラッセは現在長期処方が可能になっているので、ほとんどの方は吸入回数が30回のエンクラッセを使用していると思います。エンクラッセは1日1回1吸入のお薬のため、30吸入回数は1か月分となります。
3.エンクラッセエリプタが向いてる人は?
- 前立腺肥大や緑内障がない方
- 若年者で呼吸機能が十分ある方
現在では肺気腫や慢性気管支炎などCOPDの患者さんに、第一選択肢としてエンクラッセが処方されています。
エンクラッセなどの抗コリン薬を使用する時に気を付けなければいけないのが、前立腺肥大や緑内障がある人です。この場合は、エンクラッセは避けた方が無難かもしれません。
一方で抗コリン薬で最も処方されているお薬は、スピリーバレスピマットというスプレー式のお薬です。COPDは、年を取るにつれて吸入力が低下していく病気です。そのため、どうしてもエンクラッセなどの粉薬だと正しい吸入方法で吸っていたとしても、
- そもそもエンクラッセが吸えない
- 最初はエンクラッセが吸えていたけど、年齢とともに吸入力が落ちていつの間にか吸えなくなっていた
などの問題が生じます。このことから高齢者では、スピリーバレスピマットに分があるといわざるをえません。
一方でバリバリ働いているような若年者では、エンクラッセは非常に向いているお薬です。スピリーバレスピマットは1度に2回吸入しなければならないのに対して、エンクラッセは1回吸入するだけで済むからです。
ただしCOPDは、高齢者で発見されることが多い病気です。若年者でCOPDが発見された場合、予後は非常に悪いことが多いです。
そのため若年者でエンクラッセを処方された方は、即刻禁煙を目指すようにしましょう。
4.エンクラッセの作用メカニズム
抗コリンとして副交感神経の働きを遮断することで、気管支を広げます。
私たちが運動を行っているとき、よりたくさん空気を取り入れるために気管支が拡張します。この時に働く神経系を交感神経と呼びます。「交感神経は運動時に働く神経系である」と認識できれば良いです。
そして、この交感神経の反対の働きをする神経系として副交感神経があります。運動時とは異なり、「体を休めている時に働く神経系」が副交感神経になります。
先ほど、「交感神経が活発になると、空気を取り入れるために気管支を拡張させる」とお伝えしました。それでは、この反対の作用をする副交感神経が働けば気管支は収縮します。つまり、気道が狭くなっていきます。
副交感神経が興奮すると、気道が狭くなるという作用が起こります。そしてこの副交感神経の興奮に関与している物質として、アセチルコリンがあります。アセチルコリンが作用することによって副交感神経が活発となり、結果として気管支が収縮します。
ですからアセチルコリンの働きを抑えてしまえば、「気管支収縮の逆」として気管支を拡張できることが分かります。より正確に言えば、「気管支収縮の抑制」となります。
「アセチルコリンが受容体に作用する過程を抑制する薬」を、総称して抗コリン薬と呼びます。抗コリン薬によってアセチルコリンの働きを抑え、気管支を拡張させることができるようになります。
このようにアセチルコリンの働きを抑えることによってCOPDを治療する薬として、エンクラッセ(一般名:チオトロピウム)があるのです。
抗コリンの働きついて詳しく知りたい方は、「抗コリン作用とは?抗コリン薬・コリン作動薬のすべて」をお読みください。
まとめ
- エンクラッセレエリプタは1日1回吸入する長時間作用型の抗コリン薬になります。
- エンクラッセエリプターはカプセルなどのセットが不要なドライパウダーのお薬になります。
- エンクラッセエリプタはCOPDに適応があります。
- エンクラッセエリプタは前立腺肥大と緑内障がある方には使用することができません。
投稿者プロフィール
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
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