アノーロの効果と特徴

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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アノーロ(一般名:ウメクリジニウム‐ビランテロール)は、2014年にグラクソスミスクライン社より発売された抗コリン薬とβ2刺激薬の合剤の吸入薬になります。

エンクラッセが抗コリン薬単剤として発売されていますが、それにβ刺激薬であるビランテロールが加わって効果が増強された吸入薬となっています。

ビランテロールは単剤では発売されていませんが、ビランテロールにステロイドを加えた合剤がレルベアとして登場しています。

抗コリンとβ2刺激薬、それぞれ違ったメカニズムで気管支を広げることで、COPD(肺気腫)の治療薬して効果を発揮します。

抗コリン薬とβ2刺激薬の合剤として、ウルティブロが2013年に初めて発売となりました。アノーロは、それに次ぐ2番目の合剤です。

ここでは、アノーロの効果と特徴についてまとめていきましょう。

 

1.アノーロのメリットとデメリット

<メリット>

  • 1つの吸入器で抗コリンとβ2刺激薬二つの効果が得られる
  • ドライパウダーのため自分のタイミングで吸入できる
  • カプセルを毎回セットする必要がない
  • 1日1回の吸入で対応できる

<デメリット>

  • 前立腺肥大・緑内障の人には使用できない
  • ドライパウダー式のため吸入力が必要である

アノーロは、1日1回吸入する長期作用型抗コリン薬とβ2刺激薬の合剤になります。それぞれ違うメカニズムで、気管支を広げる効果があります。

アノーロは、慢性気管支炎や肺気腫などのCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の治療薬として使われます。

COPDは喫煙習慣が主な原因となる肺の生活習慣病で、高齢者の罹患割合が高いことが知られています。息切れや咳、痰などによって日常生活に支障を来し、喫煙をやめても治らない病気になります。それどころか年を取るにつれて、徐々に呼吸状態が弱っていくことが多いです。

COPDの一番最初の治療薬は、

  • β2刺激薬
  • 抗コリン薬

のどちらかになっています。そしてそれぞれ単独で治療できない場合は、両方を使用するようになっています。一方でCOPDは、一度発症するともう二度ともとに戻らない病気です。抗コリン薬とβ2刺激薬、どちらのお薬も効果は同じくらいなのですが、症状が軽度改善される程度で完治まではいきません。

そのため、それぞれのお薬単剤では症状が取れないことも多いです。病院を受診するくらい症状が強いのであれば、最初から両方を出し惜しみなく治療した方が良いことが多いです。片方で治療していて呼吸状態が悪化してからもう一つを加えても、COPDは治ることはないからです。

こうした現状を受け、抗コリンとβ2刺激薬の合剤であるアノーロが発売されたのです。

アノーロは、抗コリン薬と成分とβ2刺激薬成分両方が含まれています。そのため、抗コリン薬の禁忌(処方してはいけない患者)として、

  1. 閉塞隅角緑内障の患者
  2. 前立腺肥大症による排尿障害のある患者

の2つの病気がある人は使用できません。

アノーロの特徴としては、ドライパウダー式のためゆっくり深く自分の力で薬を吸うのが特徴です。そのため自分のタイミングで吸えるというメリットがありますが、吸入力が弱いとうまく薬が吸いきれません。

またアノーロは、エリプタという吸入器を使用します。エリプタは吸う回数分のお薬がセットされているため、同じドライパウダーのウルティブロと違い、毎回使用する度にカプセルをセットする必要がありません。またこのエリプタは、

  • 抗コリン薬単剤のエンクラッセ
  • β2刺激薬とステロイドの合剤のレルベア

の2種類を含めて、現時点では3種類の吸入薬で使用されています。

 

2.アノーロの剤形の種類・用法・薬価とは?

アノーロは、COPDに適応があるドライパウダー式の吸入薬です。1日1回の吸入で毎日アノーロを吸入します。

アノーロは、ドライパウダーのお薬です。エリプタの吸入器を使用して吸入します。

アノーロは、毎日1回吸入することでCOPDに対して効果を発揮するお薬です。COPDは、症状が劇的に改善するのが難しい病気です。吸入を毎日続けることで、呼吸状態の悪化を和らげるのが主な目的となります。

吸入してても効果が感じられないからといって、自己判断でアノーロを中止しないようにしましょう。なお、アノーロの薬価は以下の通りです。

商品名 吸入回数 薬価 1日薬価 3割薬価
アノーロ 7 1997.2円 285.2円 85.6円
アノーロ 28 8324.2円 297.2円 89.2円

※2016年8月26日時点の薬価です。

アノーロを1日1度に1回吸入するため、

  • 抗コリンであるウメクリジニウムとして62.5μg
  • β2刺激薬であるビランテロールとして25μg

を吸入することになります。そのためアノーロレ28吸入は、28日分(1か月)の量になります。

 

3.アノーロが向いてる人は?

  • 前立腺肥大や緑内障がない方
  • 抗コリン薬・β2刺激薬単剤でコントロールが悪い方
  • 抗コリン薬としてエンクラッセで治療していた方

アノーロなどの抗コリン薬が含まれている薬剤を使用する時に気をつけなければならないのが、前立腺肥大や緑内障がある人です。該当する場合は、オンブレスなどのβ2刺激薬で治療します。

COPDの治療のガイドラインをみると、

copdの治療ガイドライン

このようになっています。

  • 抗コリン薬
  • β2刺激薬

どちらを初めに使用して、ダメなら両方を追加するようにするのがCOPDの現在の治療です。

ですが吸入薬を吸ったからといって、COPDは完全に治すことができる病気ではありません。むしろ吸入薬を吸っても、年齢をとるごとに呼吸状態は悪くなっていきます。

そのためCOPDで呼吸状態が悪ければ、出し惜しみせずに最初からアノーロで抗コリン薬とβ2刺激薬を投与した方が良いという考え方もあります。

実はどの程度の状態であれば単剤で、どの程度であれば合剤から使っていくかという基準は、現時点ではないのが実情です。ただし一つ言えるのは、合剤で治療して症状の改善が悪い場合は、それ以上の治療薬がないということです。

ガイドラインをみて欲しいのですが、他の治療薬として(テオフィリン製剤の投与)がありますが、いずれもカッコつきになっています。テオフィリン製剤としては、テオドールが有名です。

しかしテオドールは、テオフィリンの血中濃度を定期的に測る必要があります。血中濃度が高いと副作用が様々出るお薬だからです。さらに効果は、抗コリン薬とβ2刺激薬に比べるとはるかに落ちるため、ガイドラインでもカッコつきとなっています。

吸入ステロイドも、COPDの急性増悪を繰り返す時のみ適応になります。つまり合剤が効かないようなCOPDが重篤な人は、なかなか現状では突破口がありません。

そのためアノーロが処方される必須条件として、禁煙は絶対にしなければなりません。アノーロ吸入しながらタバコを吸ってしまうと、症状の悪化を防ぐことができません。

また抗コリン薬とβ2刺激薬は、現時点では3剤発売されています。

  • ウルティブロ:2013年11月発売、抗コリン薬であるグリコピロニウム(商品名:シーブリ)とβ2刺激薬であるインダカテロール(商品名:オンブレス)を配合
  • アノーロ:2014年9月発売、抗コリン薬であるウメクリジニウム(商品名:エンクラッセ)とβ2刺激薬であるビランテロールを配合
  • スピオルト:2015年9月発売、抗コリン薬であるチオトロピウム(商品名スピリーバ)とβ2刺激薬であるオロダテロールとを配合

この3剤のうちどれが効果が良いというデータは、現時点では示されていません。それぞれの特徴として、

  • ウルティブロはカプセルを毎回セットするドライパウダー式の吸入薬です。
  • アノーロはエリプタに吸入薬がセットされているドライパウダー式の吸入薬です。
  • スピオルトはスプレー式の吸入薬です。

ドライパウダー式が希望であれば、ウルティブロかアノーロが適応になります。この中でカプセルを毎回セットするのが嫌な人は、アノーロの方が良いかもしれません。

また抗コリン薬であるエンクラッセを使用していて方も、アノーロは良い適応です。同じエリプタを使用していたため、使い方を新たに覚える必要がないからです。

 

まとめ

  • アノーロは1日1回する抗コリン薬(エンクラッセ)にβ2刺激薬が加わったものになります。
  • アノーロはCOPDに適応があります。
  • アノーロは前立腺肥大と緑内障がある方には使用することができません。

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