オーキシス(ホルモテロールフマル酸塩水和物)の効果と副作用

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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オーキシス(一般名:ホルモテロールフマル酸塩水和物)は、2012年にMeiji Seika ファルマ株式会社より発売された長期作用型のβ2刺激薬です。

β2刺激薬であるオーキシスの有効成分に、ステロイド(ブデゾニド)を加えた合剤がアストラゼネカが発売しているシムビコートになります。

1日2回朝と夕方で吸入することで、慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれるCOPDの方の治療薬になります。COPDの方は「動くと苦しい」ため、結果として「外に出るのが嫌になる」ため活動性が低下してしまっています。

オーキシスなどのβ2刺激薬は、気管支を拡張させることで呼吸状態を改善するお薬になります。オーキシスは、吸入して5分後すぐに効果がしっかりと認められるお薬です。さらにシムビコートと同様、オーキシスは吸った感じがしないのが特徴になります。

ここでは、オーキシスの効果と特徴についてまとめてみましょう。

 

1.オーキシスのメリット・デメリットは?

<メリット>

  • 吸った感じがしないお薬である
  • 吸入してから即効性がある
  • 前立腺肥大、緑内障の方にも使用できる

<デメリット>

  • 1日2回吸入しなければならない
  • 喘息には使用できない

オーキシスは1日1回1吸入、主に朝に吸入する長期作用型β2刺激薬になります。オーキシスは、慢性気管支炎や肺気腫などのCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の治療薬として使われています。

現在COPDのガイドラインの第一選択肢は、

  • β2刺激薬
  • 抗コリン薬

のどちらかになっています。重症化した場合や効果がない場合には、お薬を追加していきます。オーキシスはこのβ2刺激薬に分類されるお薬です。

β2刺激薬と抗コリン薬どちらから治療するかは専門家の中でも議論が分かれるところですが、抗コリン薬は前立腺肥大と緑内障があると使用できません。そのためこれらの疾患がある方はβ2刺激薬で治療することが多いです。

ただしβ2刺激薬の中で現在は1日1回の吸入で可能なオンブレスの方が2016年の時点では主流かもしれません。オーキシスの弱点としては朝と夕方2回吸わなければならないことです。症状がなくても毎日吸うことで呼吸状態の悪化を防ぐのが目的のお薬のため、1日2回だと吸い忘れがどうしても散見されます。

そのためまずオンブレスを処方して、オンブレスでむせこんでしまったり、オンブレスの粉っぽさがダメな場合にオーキシスを処方します。オーキシスの方が粒子が小さいため、吸った感じがありません。

現時点では、オーキシスとオンブレスでCOPDに対して効果の差はありません。またオーキシスの利点としては、吸入ステロイドを加える時に、使い慣れた同じ吸入器であるシムビコートにチェンジしやすい特徴があります

一方でオーキシスは、喘息には適応がありません。最近の喘息治療は吸入ステロイドが中心となっており、吸入ステロイド単剤で効果がない場合は、アドエアやシムビコートなどの吸入ステロイドとβ2刺激薬の合剤が勧められています。

そのため吸入ステロイドが含まれないオーキシスは、喘息の適応にはなっていないのです。

 

2.オーキシスの剤形の種類・用法・薬価とは?

オーキシスは、COPDに適応がある吸入薬です。朝と夕方2回の吸入が必要です。

オーキシスは、タービュヘイラーという吸入器に薬剤が入っています。オーキシスを1回吸入すると、主成分であるホルモテロール9μgを吸入することになります。オーキシスは吸入5分後に速やかな効果発現を示し、約12時間効果が持続します。

そのためオーキシスは毎日2回吸入して、COPDに対して効果を発揮するお薬です。ただしCOPDは、症状が劇的に改善するのが難しい病気です。吸入を続けることで呼吸状態の悪化を緩徐にするのが主な目的となります。

吸入してても効果が感じられないからといって、自己判断でオーキシスを中止しないようにしましょう。なおオーキシスの薬価は以下の通りです。

商品名 吸入回数 薬価 薬価1日分 薬価1日分(3割負担)
オーキシス 28 1707.4 122 36.6
オーキシス 60 3596.4 120 36.0

※2016年7月2日時点での薬価です。

オーキシスは比較的新しい薬のため、ジェネリック医薬品は発売されていません。オーキシスは1日2回吸入するため、28回分だと14日(半月分)、60回分だと30日(1か月分)となります。

 

3.オーキシスの副作用は?

オーキシスの臨床試験で最も多かった副作用は、「手の振るえ」となっています。

オーキシスの国内臨床試験におい て、637例中21例(3.3%)に副作用が認められました。この中で多いものとしては、

  • 手の振るえ

が挙げられます。これはβ2刺激薬特有の副作用であり、他のβ2刺激薬でも認められます。手の振え以外の副作用としては、β刺激薬は心臓の動きも強めてしまうため、ドキドキする人がいます。

またオーキシスでは、電解質の一つであるカリウムが低下することが報告されています。普通に食事している分には野菜や果物に多く含まれているため、まず問題になることはありません。しかし食事量が減ってきた高齢者などでは、注意が必要になります。

これらの結果は、オーキシスを毎日2回吸入した場合です。オーキシスを大量に投与してしまうと、β2刺激剤の薬理学的作用による副作用として、

  • 頻脈
  • 振戦
  • 動悸
  • 頭痛
  • 悪心、嘔吐
  • 低カリウム血症及び高血糖等

などが強く生じることがあります。大量に吸入すればするほど病気が良くなるわけではないので、注意しましょう。

 

4.オーキシスの飲み合わせが悪いお薬や病気とは?

オーキシスを使用してはいけないお薬や病気はありません。

オーキシスは使用していけない病気はありません。併用注意としては、

  1. 甲状腺機能亢進症の患者[甲状腺機能亢進症の症状を悪化させるおそれ]
  2. 高血圧の患者[血圧を上昇させるおそれ]
  3. 心疾患のある患者[β1作用により症状を悪化させるおそれ]
  4. 糖尿病の患者[グリコーゲン分解作用により症状を悪化させるおそれ]
  5. 低カリウム血症の患者[低カリウム血症を悪化させるおそれ]
  6. 重度な肝機能障害のある患者[血中濃度が上昇する可能性]

とあります。しかしこれらは、よほど重症じゃない限り悪化することはありません。またこれらの病気が重症な場合は、しっかりとお薬によって症状がコントロールされていることが多いです。このため、これらの病気でオーキシスが使えないということは少ないです。

また、オーキシスが併用できないお薬もありません。注意するお薬としては、

  1. エリスロマイシン
  2. リトナビル
  3. ベラパミル
  4. 交感神経刺激剤
  5. キサンチン誘導体、ステロイド剤、利尿剤(サイアザイド系利尿剤・サイアザイド系類似利尿剤・ループ利尿剤)

となっています。

この中で気を付けるべきお薬は、⑤のキサンチン誘導体・ステロイド剤・利尿剤です。特にキサンチン誘導体とステロイドは、COPDが急性増悪したときに使用することが多いです。

これらのお薬と併用することによって低カリウム血症のリスクが高まりますが、普通に食事を摂取している人では心配はまず必要ありません。食事がとれないような方でこれらの治療を使用する場合は、入院する場合が多いです。

また利尿剤は、尿と一緒にカリウムが一緒に出ていってしまうお薬です。そのため利尿剤を投与している方は、定期的に採血でカリウムを調べていることが多いです。

 

5.オーキシスは高齢者・妊婦でも安全?

オーキシスは、高齢者・妊婦でも使用できるお薬です。

まず高齢者ですが、オーキシスの添付文章では、

一般に高齢者では生理機能が低下しているので、患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。

となっております。しかしCOPDは長年タバコを吸い続けてなる病気です。そのため、オーキシスを使用しているのは多くの方は高齢者だと思います。

また妊婦・授乳中の方ですが、

妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(動物実験(マウス)で催奇形作用が報告されている。)

と記載されています。催奇形と書かれるとぎょっとしてしまうかもしれませんが、これは吸入する何百倍もの量を血液に投与したことで認められたものです。

COPDと妊娠時期に診断される人の方が少ないかもしれないです。しかしCOPDと診断されてオーキシスを処方されている方は、COPDの急性増悪で低酸素血症などを併発するとお腹の赤ちゃんに影響します。オーキシスは中止しない方が無難です。

 

6.オーキシスが向いてる人は?

  • 前立腺肥大、緑内障がある人
  • オンブレスでむせこみがある人

COPDの治療といえば現在抗コリン薬とβ2刺激薬の2つが主流です。どちらから治療した方が良いかは医師の中でも意見が分かれますし、患者さんによっても違うと思います。ひとつ言えるのは、

  • 前立腺肥大
  • 緑内障

この2つがある人は、抗コリン薬は使えません。

緑内障といっても、閉塞隅角緑内障という特別な種類に対して使えないのですが、患者さんで緑内障のどの種類かまで覚えている人は少ないと思います。緑内障にスピリーバを使用すると、眼圧が上昇して緑内障が悪化する可能性があります。そのため緑内障の人には、まずβ2刺激薬を処方することが多いです。

前立腺肥大は、高齢の男性に多い病気です。実際に診断されなくても、

  • 残尿感がある
  • トイレが近い
  • 尿がスムーズに出せない

などの症状が高齢の男性にあれば前立腺肥大の可能性があるため、スピリーバは処方しない方が無難かもしれません。

一方で長期作用型のβ2刺激薬の中でもオンブレスやセレベントといったお薬があります。この中では、1日1回の投与で治療できるオンブレスが最も多く処方されています。

そのためオーキシスが向いてる人は、このオンブレスを処方されて向いてなかった人だと思います。オンブレスはかなり粉っぽくて、吸った瞬間にむせこんだり咳き込む人がいます。オンブレスのむせこみに関しては、

  • 口を湿らす
  • ゆっくり吸ってみる

といったことで対策できますが、それでも無理な人もいらっしゃいます。こういった方にオーキシスは最適です。吸った感じがしないのが特徴のお薬なので、むせこむことはほぼありません。

症状が強い場合は、β2刺激薬と抗コリンを両方を使っていきます。少しでも気管支を広げて、呼吸を楽にしようとします。これらの状況を受けて、ウルティブロ、アノーロ、スピオルトといったβ2刺激薬と抗コリン薬の合剤も発売されています。

 

7.オーキシスとの作用メカニズム

β2刺激薬は、気管に主に存在する交感神経の受容体です。身体が活動的になる時には空気をたくさん必要とするので、β2が刺激されると気管が広がります。

最後に、どうしてβ2刺激薬では気管支が広がるのかについて、そのメカニズムをお伝えしていきたいと思います。

β2とは、交感神経の受容体になります。交感神経にはαとβという2種類の受容体があって、交感神経が活発になった時に命令の受け皿である受容体を通して全身に作用します。

βの中には、おもにβ1とβ2があります。β1は心臓に主に存在していて、β2は気管に主に存在しています。そしてそれぞれの作用は、交感神経が活発になっている状態をイメージすれば理解が出来るかと思います。

交感神経は、身体のスイッチをオンにした時の神経です。運動をした時をイメージしてみましょう。

心臓はバクバクと早くなり、全身に必要な血液を送るべくポンプとして頑張ります。この作用がβ1刺激作用になるのです。気道に関しては、空気をたくさん吸い込むべく気管が拡張します。この作用がβ2刺激作用になるのです。

もう少し詳しく言えば、β2受容体は気管の平滑筋に存在しています。筋肉が弛緩することによって、気管が拡張するのです。

これに対して抗コリン作用は、リラックスする副交感神経に関係しています。副交感神経を優位にするアセチルコリンをブロックするので、結果的には交感神経の働きを強めるのです。

オーキシスは気管におもに存在するβ2だけを刺激するお薬で、心臓への影響をできるだけ避けて気管を広げて呼吸状態を改善するお薬です。

 

まとめ

  • オーキシスは長期作用型のβ2刺激薬としてCOPDに対して治療するお薬です。
  • オーキシスは1日2回吸入することで効果を発揮します。
  • オーキシスは吸った感じがしないお薬のため、オンブレスでむせこみがあった人に向いてるお薬です。
  • オーキシスは手の振るえ、動悸が副作用として主にあります。

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