抗コリン作用とは?抗コリン薬・コリン作動薬のすべて

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医3名、精神科医4名で協力して診療をしています。所属医師で協力して、記事を書いています。
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薬の作用や副作用を考えていくときに、「抗コリン作用」を理解することは重要です。

「コリン」とはアセチルコリンのことを意味していますが、アセチルコリンは身体の様々なところで活躍しています。神経と神経の橋渡しをし、さまざまな臓器に作用しています。

このように身体に大きな影響を与える作用ですので薬としても利用されていますが、副作用としてデメリットになることもあります。

ここではアセチルコリンの働きについてみていき、コリン作用と抗コリン作用について詳しくみていきたいと思います。それぞれどのように薬として活用され、どのような副作用につながるのかをお伝えしていきます。

 

1.抗コリン作用とは?

身体への抗コリン作用は、リラックスできない時の状態をイメージすると理解しやすいです。脳への抗コリン作用は、覚醒状態を邪魔してしまいます。

抗コリン作用とは、アセチルコリンの働きを抑えることによる作用です。アセチルコリンは、身体だけでなく脳でも働いています。しかもその働きは、身体と脳で異なります。身体と脳に分けてみていきましょう。

身体では、アセチルコリンは副交感神経を刺激する作用があります。アセチルコリンは神経と神経の橋渡しの働きをし、ムスカリン受容体に結合することで副交感神経が刺激されるのです。この結果、副交感神経に関わる様々な器官に影響を及ぼします。

抗コリン作用は、このムスカリン性アセチルコリン受容体を遮断し、副交感神経系の作用をブロックするのです。これにより、さまざまな全身への影響がでてくるのです。

副交感神経はリラックスさせる方向に働く自律神経ですので、抗コリン作用は「リラックスできない時はどういう状態なのか?」をイメージすると理解しやすいです。

リラックしている時に食べ物の消化はすすみます。このため、唾液が分泌され、胃腸は動き、尿や便は排泄されやすくなります。ですから抗コリン作用では、この反対のことがおこります。口がかわいたり、便秘になったり、尿が出にくくなるのです。

交感神経と副交感神経でバランスをとっている「目」も影響をうけます。抗コリン作用が働くと、瞳孔が開いて付け根にある毛様体の筋肉が緩みます。この部分は目の中をめぐっている房水という液体の出口なのですが、筋肉に押されて狭くなってしまいます。このため、うまく水が抜けなくなるので眼圧が高くなります。ですから抗コリン作用は、緑内障の方は注意が必要です。また、涙も出にくくなるのでかすみ目などになります。

 

脳では、アセチルコリンは記憶や注意、集中に関係していると考えられています。まだまだわかっていないことも多いのですが、脳の細胞活動を高める作用があります。このため抗コリン作用が働くと、脳の活動が落ちて眠気が認められます。注意力や集中力が落ちてしまいます。

また、長期的に抗コリン作用が続くと、認知機能に影響を及ぼすと考えられています。認知症の患者さんの脳では、アセチルコリン量が低下していることがわかっています。認知症の治療薬としても、脳のアセチルコリンを増やすお薬が使われているのです。

 

2.「抗コリン作用」による副作用

便秘・口渇・尿閉・眼圧上昇・目のかすみ・眠気・認知機能低下などが認められます。

本来は意図していないものの、薬が働いてしまって抗コリン作用をもたらすことがあります。これがデメリットとなると、副作用になります。抗コリン作用としては、便秘・口渇・尿閉・眼圧上昇・目のかすみ・眠気・認知機能低下(せん妄)などがあげられます。

抗うつ剤では、トリプタノールといった三環系抗うつ薬、新しい抗うつ薬の中ではパキシルでよくみられます。抗精神病薬では、第一世代抗精神病薬(定型抗精神病薬)のコントミンなどのフェノチアジン系と呼ばれる力価が低いもの(=mgが大きいもの)に多いです。第二世代抗精神病薬(非定型抗精神病薬)では、ジプレキサに認められます。

 

3.抗コリン薬

止痢薬・気管支吸入薬・頻尿改善薬・抗パーキンソン薬・多汗症治療薬として使われています。

抗コリン作用を利用した薬もたくさん開発されています。それぞれのターゲットに選択的に働くように工夫がされています。

  • 止痢薬:胃腸の動きを抑える働きを意識して、下痢止めに用います。(ブスコパン)
  • 気管支吸入薬:気管を拡張させる働きから、喘息やCOPDなどで用います。(アトロベント・スピリーバ
  • 頻尿改善薬:膀胱の平滑筋を緩めて尿をためることで、頻尿を改善します。(ベシケア・デトルシトール・バップフォー・ポラキス)
  • 抗パーキンソン薬:アセチルコリンの過剰を改善し、ドパミン作用を強めます。(アキネトン・アーテン)
  • 多汗症治療薬:汗の分泌を抑えます。(プロ-バンサイン)

 

4.コリン作動薬

排尿障害改善薬・緑内障治療薬・シェーグレン症候群治療薬・認知症治療薬として使われています。

コリン作用を利用した薬もたくさん開発されています。ターゲットに選択的に働くように工夫がされています。

アセチルコリンを増やすには2つの方法があります。

1つ目は、アセチルコリンの刺激自体を増やす方法です。アセチルコリンが作用するムスカリン受容体を刺激することで、コリン作用を強めることができます。

2つ目は、アセチルコリンの分解を邪魔する方法です。不要となったアセチルコリンを分解しているコリンエステラーゼの働きを邪魔します。これによってアセチルコリンが分解されずに残り、コリン作用が強まります。

後者のメリットは、アセチルコリンが分泌されているときにだけ働くという点があります。アセチルコリンが分泌されていなければ、分解を邪魔するも何もアセチルコリン自体がありません。

  • 排尿障害改善薬:膀胱の収縮を促して、排尿を改善します。(①ベサコリン②ウブレチド)
  • 緑内障治療薬:縮瞳させて隅角を広げ、房水の排出を促し眼圧を下げます。(①サンピロ②ウブレチド)
  • シェーグレン症候群治療薬:唾液の分泌を促して口渇を改善します。(①サラジェン・サリグレン)
  • 認知症治療薬:脳において不足しているアセチルコリンの分解を抑えます。(②アリセプト・レミニール・リバスタッチ・イクセロン)

※①:ムスカリン受容体刺激薬②:コリンエステラーゼ阻害薬

コリンを刺激するような副作用は、基本的にはありません。まれにコリン作動性クリーゼという状態がみられます。コリン作動薬を使用した時に、アセチルコリンが急激に増加してしまってバランスが崩れた状態です。

アセチルコリンが過剰な症状として、嘔吐、腹痛、下痢、発汗、徐脈、唾液分泌過多などがみられます。発展すると、呼吸困難から死に至ることもあります。

 

5.抗コリン作用による副作用への対応

原則的に、可能であれば薬の減薬や変更を検討します。薬によるメリットが大きくて減量や変更が難しい場合、副作用を抑えるための薬を用いることがあります。

 

5-1.便秘への対処

生活習慣を改善して上手くいかない場合、便秘の状況に応じて薬を使っていきます。

まずは生活習慣です。排便習慣・食事・運動の3つが重要です。朝にトイレに座る習慣を作っていただきます。そして朝食をちゃんととるようにしていただき、水分や食物繊維を摂取していただきます。また、少しずつ運動償還をつくっていきます。

それでも改善が見られない場合、薬を用います。薬には軟下剤と緩下剤の2種類があります。お通じが固い場合、水分を多くするような軟下剤からはじめます。

軟下剤としては、マグラックス・カマなどのマグネシウム製剤が中心です。緩下剤とは、腸を直接動かすような薬です。センノサイド・アローゼンなどを用います。また、便秘には漢方も有効です。大黄甘草湯などを用います。

 

5-2.口渇への対処

生活習慣から改善を図ることが中心です。糖尿病には注意が必要です。

薬の副作用としての抗コリン作用が、口の渇きの原因になることはよくあります。ですが糖尿病が隠れていて、その症状としての口の渇きであることもあり、注意が必要です。

口がかわくことに対する薬は、シェーグレン症候群という自己免疫疾患か、放射線治療後などでの後遺症など、何らかの原因で唾液腺が破壊されているときにしか用いることができません。漢方として白虎加人参湯などを用いることもありますが、効果は人によってまちまちです。

このため、生活習慣に頼ることになります。うがいや水分を多く摂取したり、唾液腺のマッサージをしたりすることなどが有効です。また、歯磨きも唾液分泌を促します。

 

5-3.排尿困難への対処

生活習慣では難しく、薬の調整で改善を図ることが多いです。

特に男性では前立腺がありますので、排尿困難が見られます。排尿困難に関しては、なかなか生活習慣などで改善できる余地が少なく、薬による対処を検討することが多いです。

原因となっている薬の変更が可能である場合、症状を起こしにくいような薬に切り替えをします。改善が難しい場合、コリン作用を強くして膀胱の収縮を促します。コリン作動薬としてベサコリン、コリンエステラーゼ阻害薬としてウブレチドが用いられます。

 

まとめ

身体への抗コリン作用は、リラックスできない時の状態をイメージすると理解しやすいです。脳への抗コリン作用は、覚醒状態を邪魔してしまいます。

抗コリン作用による副作用としては、便秘・口渇・尿閉・眼圧上昇・目のかすみ・眠気・認知機能低下などがあります。

  • 抗コリン薬としては、止痢薬・気管支吸入薬・頻尿改善薬・抗パーキンソン薬・多汗症治療薬として使われています。
  • コリン作動薬としては、排尿障害改善薬・緑内障治療薬・シェーグレン症候群治療薬・認知症治療薬として使われています。

抗コリン作用による副作用の症状ごとの対策をみてみましょう。

  • 便秘への対処は、生活習慣を改善して上手くいかない場合、便秘の状況に応じて薬を使っていきます。
  • 口渇への対処は、生活習慣から改善を図ることが中心です。糖尿病には注意が必要です。
  • 排尿困難への対処は、生活習慣では難しく、薬の調整で改善を図ることが多いです。

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