小青竜湯【19番】の効果と副作用
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
風邪の引きはじめに漢方薬を飲む人は多いと思います。
よく知られているものとしては葛根湯や桂枝湯、麻黄湯などがありますが、小青竜湯も風邪の症状があらわれてきたときに用いられる漢方薬のひとつです。
体力がそれなりにある人で、水っぽい鼻水や痰が出て、くしゃみや咳をするような風邪では小青竜湯が効きやすいといわれています。また、花粉症などのアレルギー性鼻炎、気管支炎や気管支喘息などの際にも効果が期待できる漢方薬です。
このような症状のお薬は眠気の副作用がネックになってしまうものが多いのですが、小青竜湯は眠気をもよおす心配がないので、車を運転する人や受験生などが服用するのにも安心です。
小青竜湯は鼻水や痰といった症状がある時に使われることが多いですが、漢方では水分がたまった状態ととらえています。寒くなってくると毛穴が閉じて汗が出にくくなり、身体の水分代謝が悪くなっていると考えます。
小青竜湯は身体を温め、身体に溜まった水分の代謝を促すことで上記のような症状を改善してくれるのです。
漢方薬にはそれぞれ番号がついていて、小青竜湯は「ツムラの19番」などとも呼ばれます。ここでは、病院で処方される小青竜湯の効果と副作用についてお伝えしていきます。
1.小青竜湯【19番】の生薬成分の効能
小青竜湯はエフェドリン作用のある「麻黄」が効果の中心で、8種類の生薬が組み合わされています。それに発汗作用のある「桂皮」、「芍薬」や「甘草」による鎮痛作用、「半夏」や「五味子」、「細辛」や「乾姜」が胃腸症状や咳症状を抑えてくれます。
漢方は、何種類かの生薬を合わせて作られています。生薬は自然界にある天然のものが由来です。天然のものといっても、生薬それぞれに作用が認められます。ですから、漢方薬は生薬の合剤といえるのです。
小青竜湯は、8種類の生薬から有効成分を抽出して作られています。まずはそれぞれの生薬成分の作用をみていきましょう。
- 麻黄(3.0g):発汗作用・鎮咳作用
- 桂皮(3.0g):発汗作用・解熱作用・鎮静作用・健胃作用・理気作用
- 芍薬(3.0g):鎮痛作用・抗痙攣作用・血管拡張作用
- 半夏(6.0g):制吐作用・健胃作用
- 五味子(3.0g):鎮咳作用・滋養強壮作用・止瀉作用
- 細辛(3.0g):鎮痛作用・麻酔作用・鎮痛作用・鎮静作用
- 乾姜(3.0g):強壮作用・健胃作用
- 甘草(3.0g):鎮痛作用・抗痙攣作用・鎮咳作用
※カッコ内は、ツムラの製剤1日量9.0gに含まれる生薬の乾燥エキスの混合割合です。
小青竜湯の中心となる生薬は、麻黄になります。
麻黄には、エフェドリンという交感神経を刺激させる成分が含まれています。このため麻黄は身体をあたためて、発汗させる作用があります。それ以外にも、気管支拡張作用や抗炎症作用、鼻粘膜の血管収縮作用があるため、喘息や気管支炎、鼻炎などの症状を和らげてくれます。
桂皮は「ニッキ」や「シナモン」としてよく知られている植物です。麻黄ほどではありませんが、桂皮にも穏やかな発汗作用があります。また、身体を温める作用やのぼせを治す作用、鎮痛作用もあります。
芍薬は血のめぐりをよくし、身体の痛みをやわらげてくれます。半夏や五味子、細辛や乾姜は、胃腸症状や咳症状をおさえてくれます。甘草には筋弛緩作用が認められ、身体や筋肉の痛みを和らげる作用が期待できます。
このように小青竜湯は、新陳代謝を高めることで免疫を高め、多くの生薬によって気管支炎症状や鼻炎症状を和らげてくれる漢方薬と言えます。
2.小青竜湯の証
陰陽(陽)・虚実(中間)・寒熱(寒)・湿証(水滞)
漢方では、患者さん一人ひとりの身体の状態をあらわした「証」を考えながら薬を選んでいきます。証には色々な考え方があり、その奥はとても深いです。
漢方薬を選ぶに当たって、患者さんの体格や体質、身体の抵抗力やバランスの崩れ方などにあわせて「証」をあわせていく必要があります。証を見定めていくには四診という伝統的な診察方法を行っていくのですが、そこまでは保険診療の病院では行わないことがほとんどです。
病院では、患者さんの全体像から「証」を推測して判断していきます。漢方の代表的な証には、「陰陽」「虚実」「寒熱」「表裏」の4つがあります。
このうち医者が参考にする薬の本には、たいてい「陰陽」と「虚実」しかのっていません。陰陽は身体全体の反応が活動的かどうかをみて、虚実は身体の抵抗力や病気の勢いをみます。つまり病院では、以下の2点をみています。
- 体質が強いかどうか
- 病気への反応が強いかどうか
さらに漢方では、「気血水」という3つの要素にわけて病気の原因を考えていきます。身体のバランスの崩れ方をみていくのです。漢方の証について詳しく知りたい方は、「漢方の証とは?」をお読みください。
小青竜湯が合っている方は、以下のような証になります。
- 陰陽:陽証
- 虚実:中間
- 寒熱:寒証
- 気血水:湿証(水滞)
3.小青竜湯の効果と適応
- 鼻炎症状が中心の風邪のひきはじめ(ウイルス性)
- アレルギー性鼻炎や花粉症
- 気管支炎や気管支喘息
小青竜湯は、漢時代の「傷寒論」および「金匱要略」という古典書に紹介されています。8種類それぞれの生薬成分の効果があわさって、ひとつの漢方薬としての効果がみられます。体力が中程度の人に使われる薬です。
小青竜湯は、おもに鼻炎症状に対して使われることが多いです。主な生薬である麻黄には、エフェドリンという交感神経を刺激する成分が含まれています。これによって鼻粘膜の血管が収縮し、鼻炎が収まると考えられます。
このため鼻炎症状が中心の風邪や花粉症などのアレルギー性鼻炎に使われることが多いです。花粉症の漢方薬といえば小青竜湯というイメージが出来上がっていて、このこともあり小青竜湯は鼻炎によく使われる印象です。
それ以外にも気管支を拡張させる作用も期待できるため、咳や痰が目立つときにも効果が期待できます。このため、気管支炎や気管支喘息にも使われることがあります。
なお、添付文章に記載されている小青竜湯の適応は以下のようになっています。
下記疾患における水様の痰、水様鼻汁、鼻閉、くしゃみ、喘鳴、咳嗽、流涙:気管支炎、気管支喘息、鼻炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、感冒
4.小青竜湯の使い方
1日2~3回に分けて、空腹時(食前・食間)が基本です。飲み忘れが多くなる方は食後でも構いません。
小青竜湯は、ツムラ・テイコク・コタロー・クラシエ・オースギなどから発売されています。生薬成分の含まれる量は同じなのですが、会社によって漢方薬の1日量が異なります。小青竜湯では、ツムラ、テイコクは9.0g、コタロー、オースギは7.5g、クラシエは6.0gとなっています。
小青竜湯は、1日2~3回に分けて服用します。漢方薬は空腹時に服用することを想定して配合されています。ですから、食前(食事の30分前)または食間(食事の2時間後)に服用します。量については、年齢や体重、症状によって適宜調整します。
漢方薬を空腹時に服用することで、麻黄や附子などの効果の強い生薬は胃酸によって効果をおだやかにし、その他の生薬は早く腸に到達して吸収がよくなります。小青竜湯では麻黄が含まれるため、効果を穏やかにしてくれます。
とはいっても、空腹時はどうしても飲み忘れてしまいますよね。現実的には食後に服用しても問題はありません。ただし、保険適応は用法が食前のみなので、形式上は変更できません。
小青竜湯を風邪で使っていく時は、発汗を目安にして使ってください。十分に発汗がみられて風邪がよくなってきたら、体力を消耗してしまうので小青竜湯は続けて服用しなくて大丈夫です。
5.小青竜湯の効き目とは?
小青竜湯の効果は、風邪や鼻炎症状に対しては即効性が期待できます。
それでは、小青竜湯の効き目はどのような形でしょうか。
小青竜湯は、有効成分のエフェドリンによるところが大きいです。このため即効性が期待でき、風邪や鼻炎症状を和らげる効果が期待できます。
風邪で使う漢方薬の中では、効果は中程度といったところでしょうか。身体をあたため発汗させることで、新陳代謝と免疫を高めます。発汗するということは体力を奪われますので、比較的体力がある人に使われます。
このような漢方薬なので、風邪がひどくなってから使ってもあまり意味がありません。「風邪かな?」と思ったら早めに使っていきます。
小青竜湯の効果は、身体本来の免疫力を高めることによって風邪を早く治してくれます。風邪には細菌が原因のものと、ウイルスが原因のものがあります。細菌が原因ですと抗生物質を使う方が早く良くなりますので、小青竜湯はウイルス性の風邪に有効です。
細菌性とウイルス性の違いについて詳しく知りたい方は、「風邪を早く治す方法とは?」をお読みください。
鼻水やくしゃみといった鼻炎症状や、咳や痰といった気管支炎症状に対しても、小青竜湯は効果が出てくるのは早いです。いずれも麻黄に含まれるエフェドリンの効果が大きく、その他の生薬の効果によって効果が少しずつ強まっていきます。
6.小青竜湯の副作用
小青竜湯には重い副作用はまずありませんが、著しく体力が衰えている人が服用すると副作用が大きく表れることがあります。また、麻黄による交感神経刺激症状、甘草による偽アルドステロン症に注意が必要です。妊婦さんには避けた方がよい漢方薬です。
漢方薬は一般的に安全性が高いと思われています。しかしながら、生薬は自然のものだから副作用は全くないというのは間違いです。
漢方薬の副作用としては、大きくわけて3つのものがあります。
- 誤治
- アレルギー反応
- 生薬固有の副作用
漢方薬の副作用として最も多いのが誤治です。漢方では、その人の状態に対して「漢方薬」が処方されます。ですから状態を見誤って処方してしまうと、調子が悪くなってしまったり、効果が期待できません。このことを誤治といいます。
誤治では、さまざまな症状が認められます。これを副作用といえばそうなるのですが、その原因は証の見定めを間違えたことにあります。あらためて証を見直して、適切な漢方薬をみつけていきます。
小青竜湯は体力が中程度の人に用いられる薬です。したがって病後で著しく体力が衰えていたり、極端に胃腸が弱い人、体力が弱い患者さんには向いていません。
また、食べ物でもアレルギーがあるように、生薬にもアレルギーがあります。アレルギーはどんな生薬にでも起こりえるもので、体質に合わないとアレル ギー反応が生じることがあります。鼻炎や咳といった上気道症状や薬疹や口内炎といった皮膚症状、下痢などの消化器症状などが見られることがあります。飲み始めに明らかにアレルギー症状が出ていたら、服用を中止してください。
そして、生薬自体の作用による副作用も認められます。生薬の中には、その作用が悪い方に転じて「副作用」となってしまうものもあります。
麻黄にも注意が必要です。麻黄はエフェドリンという交感神経を刺激する成分です。心臓に負担をかけ、また妊娠中の女性では子宮の収縮を促してしまう可能性があります。ですから、心疾患があったり妊娠中の女性では葛根湯は使わない方がよいです。
甘草は、大量に服用すると生薬としての副作用が懸念されます。「偽アルドステロン症」と呼ばれる機能異常によって、高血圧やむくみ、低カリウム血症などが認められることがあります。
低カリウム血症によって、筋肉のけいれんや麻痺が起こることがあります。甘草の入っている他の製剤やグリチルリチンとの飲み合わせには注意が必要です。また、長期間にわたって複数の漢方薬を服用するときは念のために注意してください。
漢方薬の副作用について詳しく知りたい方は、「漢方薬で見られる副作用とは?」をお読みください。
まとめ
小青竜湯はエフェドリン作用のある「麻黄」が効果の中心で、8種類の生薬が組み合わされています。それに発汗作用のある「桂皮」、「芍薬」や「甘草」による鎮痛作用、「半夏」や「五味子」、「細辛」や「乾姜」が胃腸症状や咳症状を抑えてくれます。
陰陽(陽)・虚実(中間)・寒熱(寒)・湿証(水滞)
小青竜湯は、以下のような方に使われます。
- 鼻炎症状が中心の風邪のひきはじめ(ウイルス性)
- アレルギー性鼻炎や花粉症
- 気管支炎や気管支喘息
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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