六君子湯【43番】の効果と副作用

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医3名、精神科医4名で協力して診療をしています。所属医師で協力して、記事を書いています。
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食欲不振や胃炎、消化不良といった胃腸のトラブルによく使われる漢方薬として、六君子湯があげられます。

六君子湯は、四君子湯と二陳湯という2つの漢方薬を合わせた処方です。胃腸の働きを高めながら気力を補う基本的な補気剤である四君子湯と、水分の代謝を整えてくれる二陳湯を組み合わせたものです。

このため胃腸の働きを改善する効果が期待でき、全身倦怠感や易疲労感などの改善も期待できます。

六君子湯は多くの胃腸のトラブルで処方されていて、機能性ディスペプシアとよばれる消化管機能障害のガイドラインでも推奨されています。

漢方薬にはそれぞれ番号がついていて、六君子湯は「ツムラの43番」などとも呼ばれます。ここでは、病院で使われる六君子湯の効果と副作用についてみていきたいと思います。

 

1.六君子湯【43番】の生薬成分の効能

六君子湯は、主薬である「人参」を中心とした補気剤の四君子湯に、陳皮や半夏といった胃腸の働きを整える生薬が加わっています。

漢方は、何種類かの生薬を合わせて作られています。生薬は自然界にある天然のものが由来です。天然のものといっても、生薬それぞれに作用が認められます。ですから、漢方薬は生薬の合剤といえるのです。

六君子湯は、8種類の生薬から有効成分を抽出して作られています。まずはそれぞれの生薬成分の作用をみていきましょう。

  • 人参(4.0g):強壮作用・抗ストレス作用・賦活作用・補気作用
  • 甘草(1.0g):鎮痛作用・抗痙攣作用・鎮咳作用・強壮作用
  • 蒼朮(4.0g):健胃作用・利尿作用・発汗作用
  • 茯苓(4.0g):利尿作用・鎮静作用・健胃作用・抗めまい作用
  • 生姜(0.5g):発汗作用・制吐作用・健胃作用・鎮咳作用
  • 大棗(2.0g):健胃作用・強壮作用・利尿作用・鎮静作用
  • 陳皮(2.0g):健胃作用・鎮咳作用・理気作用
  • 半夏(4.0g):制吐作用・健胃作用

※カッコ内は、ツムラの製剤1日量7.5gに含まれる生薬の乾燥エキスの混合割合です。コタロー・クラシエでは蒼朮ではなく、白朮となっています。

六君子湯は、「補薬の王」と呼ばれる人参を中心として漢方薬である四君子湯と、二陳湯をあわせたものです。

四君子湯の人参・甘草・蒼朮・茯苓という4種類の君薬(中心となる生薬)に、二陳湯の陳皮と半夏という2種類の君薬が加わっているため、六君子湯と名付けられています。

補薬とは体力を補うために用いる薬のことです。人参は消化吸収を高めて体力を補ってくれます。甘草も胃腸の調子を整えてくれる生薬で、筋肉の緊張をゆるめてくれる作用もあります。

そして利尿作用や発汗作用のある蒼朮と茯苓が、体の水分の循環を良くします。生姜は、身体を温めながら血の巡りをよくし、胃腸の働きも整えます。大棗にも胃腸の働きを整える働きがあります。

これらの生薬で構成される四君子湯に、胃腸の働きを整え、吐き気を抑えて期の巡りをよくする陳皮と半夏が加わっています。四君子湯よりもさらに胃腸を保護する生薬が含まれています。

このように六君子湯は胃腸の働きを整える効果が強く、食欲不振や消化不良、慢性胃炎や胃痛、吐き気などの胃腸のトラブルを改善する漢方薬としてよく使われます。

最近は漢方も、科学的に調べられるようになってきています。六君子湯は消化管運動が亢進したり、グレリンという胃から分泌される摂食ホルモンの働きが高まることが確認されています。

六君子湯の生薬の由来

 

2.六君子湯の証

陰陽(陰)・虚実(虚)・寒熱(寒)・気血水(気虚・水滞)

漢方では、患者さん一人ひとりの身体の状態をあらわした「証」を考えながら薬を選んでいきます。証には色々な考え方があり、その奥はとても深いです。

漢方薬を選ぶに当たって、患者さんの体格や体質、身体の抵抗力やバランスの崩れ方などにあわせて「証」をあわせていく必要があります。証を見定めていくには四診という伝統的な診察方法を行っていくのですが、そこまでは保険診療の病院では行わないことがほとんどです。

病院では、患者さんの全体像から「証」を推測して判断していきます。漢方の代表的な証には、「陰陽」「虚実」「寒熱」「表裏」の4つがあります。

このうち医者が参考にする薬の本には、たいてい「陰陽」と「虚実」しかのっていません。陰陽は身体全体の反応が活動的かどうかをみて、虚実は身体の抵抗力や病気の勢いをみます。つまり病院では、以下の2点をみています。

  • 体質が強いかどうか
  • 病気への反応が強いかどうか

さらに漢方では、「気血水」という3つの要素にわけて病気の原因を考えていきます。身体のバランスの崩れ方をみていくのです。漢方の証について詳しく知りたい方は、「漢方の証とは?」をお読みください。

六君子湯が合っている方は、以下のような証になります。

  • 陰陽:陰証
  • 虚実:虚証
  • 寒熱:寒証
  • 気血水:気虚・水滞

体力がなく手足が冷えて、胃腸の調子が良くない患者さんに向いています。

 

3.六君子湯の効果と適応

  • 慢性胃炎・食欲不振
  • 機能性ディスペプシア
  • 易疲労感・全身倦怠感
  • 抗うつ剤の副作用による胃腸症状

六君子湯は、明代の漢方の古典「万病回春」という漢方の古典書に紹介されています。8種類それぞれの生薬成分の効果があわさって、ひとつの漢方薬としての効果がみられます。

漢方の五行の捉え方では、消化については「脾」が司っていると考えられます。「脾」は、解剖学でいうところの脾臓ではなく、いわゆる消化器官を指しています。食べ物を消化し、全身に栄気を運びます。この「脾」が、なんらかの原因で気が不足すると「脾気虚」という病態を呈します。

六君子湯は、脾の「気虚」に対し、気を補う「補気剤」として効果をあらわします。補気剤の基本は四君子湯で、主に体を温めて消化器の動きを活発化させる効果がありますが、そこに半夏、陳皮を加えると、さらに吐き気を抑え、余分な水分を排出させ、食欲の増進、消化の促進をはかります。その結果、体をめぐるべき「気」が充実し、体力の回復となるのです。

このため六君子湯は、慢性胃炎や食欲不振といった胃腸症状を改善します。さらには水分バランスを整えてくれる働きから、胃内に水分がたまっている状態を整えてくれます。

このため身体所見としては、体をゆすると胃の中の水分が音(振水音)がきこえることがあります。また六君子湯は、身体を温めて血流をよくする働きも期待できます。このため、冷えのある患者さんにも使われます。

機能性ディスペプシアとは、胃腸の機能異常により上腹部症状や食欲低下などが認められる病気です。六君子湯はこの機能性ディスペプシアの治療ガイドラインで、エビデンスレベルA・推奨の強さ2となっています。

また、抗うつ剤では副作用として、セロトニンが腸で働いてしまうことで胃腸症状や食欲低下などをもたらすことがあります。六君子湯箱の原因となっているセロトニンの働きをブロックして、副作用を軽減すると考えられています。

なお、添付文章に記載されている六君子湯の適応は以下のようになっています。

胃腸の弱いもので、食欲がなく、みぞおちがつかえ、疲れやすく、貧血性で手足が冷えやすいものの次の諸症:胃炎、胃アトニー、胃下垂、消化不良、食欲不振、胃痛、嘔吐

 

4.六君子湯の使い方

1日2~3回に分けて、空腹時(食前・食間)が基本です。飲み忘れが多くなる方は食後でも構いません。

六君子湯は、ツムラやコタロー、クラシエなどから発売されています。生薬成分の含まれる量は同じなのですが、会社によって漢方薬の1日量が異なります。六君子湯では、ツムラは7.5g、コタローは9.0g、クラシエは6.0gとなっています。

六君子湯は、1日2~3回に分けて服用します。漢方薬は空腹時に服用することを想定して配合されています。ですから、食前(食事の30分前)または食間(食事の2時間後)に服用します。量については、年齢や体重、症状によって適宜調整します。

漢方薬を空腹時に服用することで、麻黄や附子などの効果の強い生薬は胃酸によって効果をおだやかにし、その他の生薬は早く腸に到達して吸収がよくなります。六君子湯では、空腹時の方が吸収はよくなります。

とはいっても、空腹時はどうしても飲み忘れてしまいますよね。現実的には食後に服用しても問題はありません。ただし、保険適応は用法が食前のみなので、形式上は変更できません。

 

5.六君子湯の効き目とは?

六君子湯の効果はすぐに出ることもあれば、少しずつ出てくることも多いです。2週間~1か月ほどかけてゆっくり効果が認められるのが一般的です。

それでは、六君子湯の効き目はどのような形でしょうか。

六君子湯の効果は、人それぞれです。証がぴったりと合う方には、効果テキメンなこともあります。いままで様々な身体の症状で悩まされていた方が、ビックリするくらいに穏やかになることもあります。その一方で、まったく効果の実感がない方もいらっしゃいます。

六君子湯は、比較的すぐに効果が出てくる方もいますが、2週間ほどして効果が少しずつ強まってくることも多いです。1ヶ月ほど使って効果の実感が乏しい方には、他の漢方薬に切り替えていきます。

効果が認められた方でも体質改善を意識していくには、すぐに六君子湯を中止せずに半年ほどは使っていった方がよいです。疲弊していた時期が長い方では、バランスを整えるにも時間がかかります。

このような効き目なので、抗うつ剤や抗不安薬のようにすぐに不安を取り除いてくれるような即効性と確実性はありません。ですから、疲れが出ないからといって栄養ドリンクのように頓服として使っても効果は期待しにくいです。

漢方薬の効果について詳しく知りたい方は、「病院で処方される漢方薬の効果とは?」をお読みください。

 

6.六君子湯の副作用

六君子湯では、生薬固有の副作用として偽アルドステロン症に注意が必要です。

漢方薬は一般的に安全性が高いと思われています。しかしながら、生薬は自然のものだから副作用は全くないというのは間違いです。

漢方薬の副作用としては、大きくわけて3つのものがあります。

  • 誤治
  • アレルギー反応
  • 生薬固有の副作用

漢方薬の副作用として最も多いのが誤治です。漢方では、その人の状態に対して「漢方薬」が処方されます。ですから状態を見誤って処方してしまうと、調子が悪くなってしまったり、効果が期待できません。このことを誤治といいます。

誤治では、さまざまな症状が認められます。これを副作用といえばそうなるのですが、その原因は証の見定めを間違えたことにあります。あらためて証を見直して、適切な漢方薬をみつけていきます。

また、食べ物でもアレルギーがあるように、生薬にもアレルギーがあります。アレルギーはどんな生薬にでも起こりえるもので、体質に合わないとアレル ギー反応が生じることがあります。鼻炎や咳といった上気道症状や薬疹や口内炎といった皮膚症状、下痢などの消化器症状などが見られることがあります。飲み 始めに明らかにアレルギー症状が出ていたら、服用を中止してください。

そして、生薬自体の作用による副作用も認められます。生薬の中には、その作用が悪い方に転じて「副作用」となってしまうものもあります。

六君子湯の生薬成分の甘草は、大量に服用すると生薬としての副作用が懸念されます。「偽アルドステロン症」と呼ばれる機能異常によって、高血圧やむくみ、低カリウム血症などが認められることがあります。

低カリウム血症によって、筋肉のけいれんや麻痺が起こることがあります。甘草の入っている他の製剤やグリチルリチンとの飲み合わせには十分な注意が必要です。また、長期間にわたって複数の漢方薬を服用するときは念のために注意してください。

漢方薬の副作用について詳しく知りたい方は、「漢方薬で見られる副作用とは?」をお読みください。

 

まとめ

六君子湯は、主薬である「人参」を中心とした補気剤の四君子湯に、陳皮や半夏といった胃腸の働きを整える生薬が加わっています。

陰陽(陰)・虚実(虚)・寒熱(寒)・気血水(気虚・水滞)

六君子湯は、以下のような方に使われます。

  • 慢性胃炎・食欲不振
  • 機能性ディスペプシア
  • 易疲労感・全身倦怠感
  • 抗うつ剤の副作用による胃腸症状

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