ゼチーア錠(エゼチミブ)の効果と特徴

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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ゼチーア錠(一般名:エゼチミブ)は、2007年からMSD製薬会社より発売されたお薬になります。「小腸コレステロールトランスポーター阻害剤 」という種類に分類される、コレステロールを下げるお薬です。

ゼチーアは、食事摂取したコレステロールの吸収を阻害することで、おもに悪玉(LDL)コレステロールを下げるお薬です。悪玉コレステロールは直接動脈硬化を引き起こす原因になるため、LDLが高い場合はまずスタチン系を選択します。

ゼチーアは、スタチン系でも効果不十分な場合に追加投与する第二選択薬としての位置づけです。

しかしながら脂質異常症の治療の基本は、食事制限と運動療法です。スタチン系が効かなくてゼチーアを追加しても、日常生活を見直さないと脂質異常症は改善しないため注意しましょう。

ここでは、ゼチーアの効果と特徴についてまとめていきます。

 

1.ゼチーアのメリット・デメリットについて

<メリット>

  • 小腸からコレステロールの吸入を阻害する(スタチン系と違う機序でコレステロールを下げる)
  • スタチン系のお薬と併用することで相乗効果がある
  • HDL(善玉)コレステロールを増やす
  • TG(中性脂肪)も下げる

<デメリット>

  • 食事・運動療法なしでは、脂質異常症は改善しない
  • ゼチーア単独では、スタチン系より効果が弱い

ゼチーアは、脂質異常症に対して使用されるお薬です。2012年度の動脈硬化性疾患予防ガイドラインに、脂質異常症の診断基準が示されています。

脂質異常症の診断基準について

※2012年動脈硬化性疾患予防ガイドライン参照

このように脂質異常症は、3つの項目のうち一つでも当てはまれば診断されます。善玉コレステロールが低くても異常と診断されるため、高脂血症から脂質異常症に名前が変更になりました。脂質異常症の詳しい診断基準ついて知りたい方は、「健康診断で脂質異常症と診断された!!脂質異常症の診断基準は?」を参照してみてください。

この中でゼチーアは、高LDL血症に対して適応があります。ただし現在LDLの治療の第一選択肢はスタチン系です。スタチン系は、

  • スタンダードスタチン(LDLを中等度下げるお薬)
  • ストロングスタチン(LDLを強力に下げるお薬)

があります。スタンダードスタチンは

の3種類があり、ストロングスタチンは

とこちらも3種類あるため計6種類のスタチンがあります。ゼチーアは、スタチン系単独と比較すると効果が弱いため、第二選択薬という位置づけです。

ただし

  • スタチン系がコレステロールがLDLに合成するのを阻害するお薬
  • ゼチーアが小腸から吸収するのを阻害するお薬

とそれぞれ違う作用のお薬になります。そのため、スタチン系が効果が不十分な人がスタチン系のお薬を増量するより、ゼチーアを組み合わせた方がより効果が高いということが示されています。

しかし、「そもそもなぜ高LDLを改善しなければいけないのか?」と思う人もいるかと思います。

高LDL血症をはじめとした脂質異常症は、動脈が固くなる動脈硬化の原因になります。動脈が固くなり、さらにプラークというコブができると、動脈が閉塞しやすくなります。動脈が閉塞した部位が心臓や脳などですと、

  • 心筋梗塞などの虚血心疾患
  • 脳梗塞・脳出血などの脳血管障害

などの病気が起きやすくなります。これらの病気は予兆もなく、突然発症します。死亡率も非常に高いですし、一命をとりとめたとしても激しい痛みなどの症状、およびその後の後遺症に悩まされる恐ろしい病気です。

これらの病気になってから脂質異常症を慌てて治療しても、時すでに遅しです。脂質異常症をなぜ治療しなければならないのか知りたい方は、「脂質異常症はどうして治療が必要?脂質異常症が引き起こす怖い病気とは?」 を一読してみてください。

特に悪玉コレステロールは、動脈の壁を破壊してコブになるプラークの原因物質になります。そのため脂質異常症の中でも、最も最優先で治療をするべきなのが高LDL血症になります。一方で、高LDL血症をはじめとした脂質異常症の治療は、

  • 食事療法
  • 運動療法

が柱となります。ゼチーアは、コレステロールの合成を阻害することでLDLの上昇を抑えるお薬ですが、

  • 食事を過剰に摂取している
  • 運動でコレステロール自体を消費しない

上記の状態では、ゼチーアの効果にも限界があります。

ゼチーアは、食事療法・運動療法をしっかり行ったうえで使っていきます。ゼチーアだけで脂質異常症を治療しようと考えないようにしましょう。またゼチーアはLDLを下げる薬ですが、

  • 善玉(HDL)コレステロールをあげる効果
  • 中性脂肪(TG)を下げる効果

もあります。そのためLDLが高い上に、HDLが低い、TGが高いなどが合併している場合でも、ゼチーアは治療適応になります。

 

2.ゼチーアの適応・投与量・効果は?

ゼチーアは、高LDL血症を中心とした脂質異常症に適応があります。ゼチーアの投与量は、10mgを1日1回内服します。

ゼチーアは、

  • ゼチーア錠10mg

の1種類のみが発売されています。

適応症ですが、

  • 高コレステロール血症
  • 家族性高コレステロール血症
  • ホモ接合体性シトステロール血症

となっています。ゼチーアは、高LDL血症を中心とした脂質異常症に対して使用されるお薬です。シトステロール血症は世界でも非常に稀な疾患であるため、一般の脂質異常症とは違うので大きく気にしないで良いでしょう。

成人の場合のゼチーアの用法・用量は、

ゼチーアを1回10mgを1日1回食後経口 投与します。なお,年齢,症状により適宜減量する

と記載されています。

ゼチーアは2.1時間で最高血中濃度で到達して、1回内服すると48時間以上体内に残るお薬です。そのため1日1回の内服でゼチーアは効果が持続します。

 

3.ゼチーアの実際の効果は?

ゼチーアは使用より、スタチン系と併用することで効果を発揮するお薬です。

食事療法で効果不十分な患者さんに対してゼチーアの単独療法での効果は,

  • 値が約20%低下
  • TG値が約17%低下
  • HDL値で1%増加

することが国内の臨床試験で示されています。スタチン系のリピトールは、

  • 総コレステロールが28%低下
  • LDLコレステロールが40%低下
  • TGが26%低下
  • HDLコレステロールが5mg/dl増加

となっています。つまり一番減らしたい悪玉コレステロール(LDL)は、ゼチーア単独ですとスタチン系の約半分しか減らせないことになります。

ただし、一般にスタチンを最大まで増量したときに得られるLDL-コレステロール低下の上乗せ効果は、約6%と考えられています。一方、スタチンにゼチーアを併用すると、スタチンの種類や用量を問わず、血清LDLコレステロール値は約25%低下することが分かっています。

スタチン治療を受けている患者さんでは、コレステロールの合成は抑制されるものの、代償的に小腸からのコレステロール吸収が亢進することが示されています。ここで小腸の吸収阻害のゼチーアを加えることで相乗効果が得られるのです。

したがって、スタチンを投与していても効果が不十分な場合には、吸収系を制御するゼチーアの併用が効率的であると考えられます。海外データでは、リピトール10mg+ゼチーア10mg=リピトール80mgのLDL コレステロールのコントロール能力が実証されています。

ZESTA-J試験では、リピトールによる治療を行ってもLDLコレステロール値120mg/dl未満を達成できなかった患者さんにゼチーアを追加投与すると、145.3mg/dlから4か月で106.9mg/dlまで血清LDLを低下させることができたと報告されています。

LDLコレステロール管理目標値への達成率は、ゼチーア10mg+リピトール10mgで78.7%となっています。つまりリピトール単独で治療できなかった人に、ゼチーアを加えてることで約8割の人が効果を示したことになるのです。

さらにゼチーアとスタチンの併用では、血清LDL-Cの値だけでなく、スタチン単剤の時に比べて

  • small dense LDLを30.6%
  • PLP-Cを28.2%
  • MDA-LDL(酸化LDL)を22.0%

体かさせています。つまり悪玉コレステロール以外の他のコレステロールも低下させているのです。

とくに近年、参加LDLに注目が集まっています。コレステロールや保存により酸化変性を受けます。

  • 焼き鳥の皮の部分
  • インスタントラーメンの麺
  • 揚げ物の2度揚げ
  • マーガリンの表面の溶けたように濃い黄色になった部分
  • 魚卵で保存(漬込み)されたもの
  • レトルトや加工された肉食品やするめ
  • ビーフジャーキーなど照射を受けているもの

などが酸化コレステロールを豊富に含む食品や調理法です。ゼチーアは、酸化コレステロールの吸収も抑制する働きがあります。

マウスの実験ですが、高脂肪食群に比べ酸化コレステロール含有高脂肪食群では、動脈硬化病変が有意に増加したという報告があります。しかし、同時にゼチーアを投与すると、酸化コレステロールによる動脈硬化病変の進展が抑制されたと報告されています。

このようにゼチーアは、ただ単にLDLを相乗効果で低下するだけでなく、他の悪玉コレステロールも低下することで、動脈硬化の進行を抑制します。

 

4.ゼチーアの薬価は?

ゼチーアは新しいお薬のため、ジェネリック医薬品が現時点では発売されていません。

次にゼチーアの薬価をみていきましょう。ゼチーアは2007年に登場した新しいお薬です。そのため、ジェネリック医薬品は現時点では発売されていません。

ゼチーアの薬価ですが

商品名 薬価 3割負担
ゼチーア錠 10mg 185.30円 55.5円

※2017年3月16日の薬価です。

ゼチーアは1錠を1日1回内服します。つまり3割負担の人は1日約55.5円かかる計算になります。

 

5.ゼチーアが向いてる人は?

  • LDLコレステロールがスタチン系内服でも高値の方
  • LDLコレステロールが非常に高値の方

健康診断等でLDLの高値を指摘され、食事や運動などの生活習慣を改善してもLDLコレステロールが下がらない方は、薬物療法の適応となります。

LDLが高ければ、まずスタチン系が第一選択肢になります。ゼチーアはこのスタチン系の効果が不十分な時に追加する薬剤と位置づけられています。実際にガイドラインでも、スタチン単独で目標数値に到達できない場合はゼチーアを追加する(グレードB)と記載されています。このグレードは

  • グレードA : 行うよう強く勧められる
  • グレードB : 行うよう勧められる
  • グレードC1: 行うことを考慮してもよいが,十分な科学的根拠がない
  • グレードC2: 科学的根拠がないので,勧められない
  • グレードD : 行わないよう勧められる

となっています。つまりガイドラインでもスタチンにゼチーアを追加投与することは十分なデータがあって勧めている治療になるのです。

スタチン系は約40%ストロングスタチンでLDLを低下するといわれています。逆にいえば非常にLDLが高値で、半分低下しても目標値に達成できないような方は最初からスタチン系とゼチーアを組み合わせて処方することもあります。

ただしゼチーアまで処方されている方は非常に重篤な脂質異常症の方です。第三選択肢となる薬はゼチーアほどの有効なお薬はありません。そのためゼチーアをスタチン系に併用してもコントロール不良な人は薬物療法だけでのコントロールは困難になります。

ゼチーアが処方された方は改めて運動療法と食事療法を見直してみてください。

 

6.ゼチーアの作用機序は?

ゼチーアは、HMG-CoA還元酵素を阻害してコレステロールの合成を阻害します。

ゼチーアの働きを説明する前に、コレステロールの働きについてまとめましょう。コレステロールのおおもとである脂質は、体にとって大切な物質です。脂質の働きを具体的にあげると、

  1. 細胞膜の構成
  2. ホルモンの原料
  3. 胆汁酸の原料

などが挙げられます。そのため悪玉コレステロール(LDL)と不名誉な名前がついてますが実は大切なコレステロールを体に配ってる重要な役割があります。脂質異常症は、余分にコレステロールがあることが問題になります。このコレステロールですが以下のように2種類の経路から血管内に入っていきます

  1. 左側のピンクの矢印は脂質から肝臓がコレステロールを合成することで血管内に送ります
  2. 右側の黄色の矢印は食事や肝臓から排泄された胆汁から小腸が吸収してコレステロールが送り込まれます。

このうちスタチン系は①の肝臓からコレステロールを合成するのを阻害する作用になります。一方のゼチーアは右側の小腸から吸収されるコレステロールを阻害します。

ここでは具体的にゼチーアの小腸の吸収阻害の機序をみていきます。コレステロールは小腸にある刷子縁膜で吸収されます。この刷子縁膜上には、NPC1L1(Niemann-Pick C1 Like 1)があり、この物質によって腸管から体内にコレステロールが吸収されます。

ゼチーアはこのNPC1L1を阻害することでコレステロールが小腸から吸収されるのを防ぎます。さらにNPC1L1を阻害することで、

  • 善玉コレステロール(HDL)が増える
  • 中性脂肪(TG)が下がる

作用も確認されています。ただしゼチーアのこの二つの効果はLDLが低下する作用に比べると弱いため、やはりメインとなる機序はコレステロールが小腸からの吸収を阻害されることです。

 

まとめ

  • ゼチーアは小腸からコレステロールを吸収するのを阻害することで主にLDLを低下する脂質異常症のお薬です。

<メリット>

  • 小腸からコレステロールの吸入を阻害する(スタチン系と違う機序でコレステロールを下げる)
  • スタチン系のお薬と併用することで相乗効果がある
  • HDL(善玉)コレステロールを増やす
  • TG(中性脂肪)も下げる

<デメリット>

  • 食事・運動療法なしでは、脂質異常症は改善しない
  • ゼチーア単独では、スタチン系より効果が弱い

<向いてる人>

  • LDLコレステロールがスタチン系内服でも高値の方
  • LDLコレステロールが非常に高値の方

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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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