リーマスの副作用(対策と比較)
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
リーマスは、1980年に発売された気分安定薬です。主に双極性障害の治療で、第一選択薬として使われています。
リーマスは、金属元素であるリチウムをお薬にしたものです。リチウムは通常、ごく微量にしか体内には存在しません。このためリチウムは身体に様々な影響があり、副作用も全体的には多めです。また、治療域と中毒域がとても近く、リチウム中毒にも注意が必要です。
ここでは、リーマスの副作用について、対策も含めて考えていきましょう。
1.リーマスの副作用とは?
- 副作用が全体的に多い
- 慢性リチウム中毒に注意が必要
- 振戦(ふるえ)や頻尿が多い
- 甲状腺機能低下症・副甲状腺機能亢進症になることがある
リーマスは、気分安定薬に分類されます。リーマスの成分のリチウムは、身体にほとんど存在しない微量金属元素になります。このリチウムが増えることで、身体には様々な影響が出てきます。リーマスは副作用が全体的に多い薬です。
リーマスで気を付けなければいけないのが、リチウム中毒です。リチウムは治療濃度と中毒濃度が近いお薬です。ですから、定期的に血中濃度を測定して確認しなければいけません。後述しますが、慢性リチウム中毒に注意が必要です。
リーマスの副作用として多いのは、振戦と頻尿の2つです。
振戦は、手や指のふるえという形でよく認められます。治療域では程度はそこまでひどくないことが多いですが、血中濃度が中毒域に達すると粗大なものに変わります。
頻尿は、ひどくなると腎性尿崩症という病名がつけられます。リチウムは、抗利尿ホルモンのバソプレシンの働きをブロックしてしまいます。このため多尿になり、水分が失われることで喉が渇いて多飲になります。
リーマスを長期で使っている場合は、内分泌異常に注意が必要です。甲状腺機能低下症や副甲状腺機能亢進症を合併するリスクがあります。長期で使っている方は、これらを確認する血液検査を少なくとも年に1回、行っていく必要があります。腎機能、甲状腺ホルモン(TSH)、血清カルシウムを測定していきます。
リーマスの効果について詳しく知りたい方は、
リーマス錠の効果と特徴
をお読みください。
2.慢性リチウム中毒とは?
リーマスの増量や脱水・腎機能の低下などで、リチウム血中濃度が高まってしまうことで生じる中毒症状です。
リチウム中毒にも、原因によって急性と慢性の2つに分けることができます。リチウムの副作用として認められるのは、慢性リチウム中毒です。
慢性リチウム中毒では、リチウムの血中濃度がジワジワと増えてしまうことで中毒症状が認められます。リチウムは腎臓で排泄されるお薬なので、脱水や腎機能の影響を大きく受けます。以下のようなケースでは注意が必要です。
- 解熱鎮痛剤のロキソニンなどのNSAIDs(腎機能への影響)
- 利尿剤や降圧剤(脱水のリスク)
- 感染症(脱水のリスク)
- 高齢者(腎機能が低下しやすい)
慢性リチウム中毒では、血中濃度と症状に関連性があります。
- 1.5mEq/L~:下痢・嘔吐・振戦・筋力低下・傾眠
- 2.0mEq/L~:心電図変化・構音障害
- 2.5mEq/L~:小脳失調・ミオクローヌス・昏迷・興奮
- 3.0mEq/L~:けいれん・昏睡・失神
3.リーマスと他の気分安定薬の副作用比較
リーマスは副作用が全体的に多めです。中毒症状にも注意が必要です。
リーマスをはじめとした気分安定薬の副作用を比較してみましょう。
気分安定薬には4つのお薬が分類されています。
- リーマス(炭酸リチウム)
- デパケン(バルプロ酸)
- テグレトール(カルバマゼピン)
- ラミクタール(ラモトリギン)
副作用の頻度や安全性について比較すると、以下のようになります。
テグレトール>リーマス>デパケン>ラミクタール
テグレトールは副作用の頻度も高く、安全性も低いです。重症薬疹や無顆粒球症などの重篤な副作用に注意が必要です。リーマスも副作用が全体的に多く、治療域と中毒域が近いので注意が必要です。
デパケンやラミクタールは比較的に副作用が少なく、安全性も高いです。そうはいってもデパケンでは、肝機能や高アンモニア血症に注意が必要です。ラミクタールでは、重症薬疹に注意が必要です。
4.リーマスの副作用
リーマスの特徴をふまえて、具体的な副作用についてみていきましょう。他剤とも比較しながら、それぞれの副作用への対策もお伝えしていきます。
4-1.振戦(ふるえ)
リーマスでは、振戦が多いです。
リーマスの副作用として、振戦はよくみられます。飲みはじめから手や指のふるえが認められることがあります。両手を前に出して指を広げると、ふるえがわかりやすいです。
血中濃度が治療域であれば、そこまで振戦は目立ちません。手を広げると確かに振えているものの、生活に支障が来るほどにはならないことが多いです。リチウム血中濃度が1.5mEq/Lを超えて中毒域になってくると、大きな振戦に変わっていきます。
ですから、リーマスをしばらく服用していて振戦がみられた場合は、血中濃度を測定する必要があります。中毒域にはいっていれば、リーマスの減量が必要です。
中毒域に入っていない場合やリーマスの飲み始めでは、振戦の対策としては以下の4つがあげられます。
- 気にしない
- βブロッカーを追加
- 抗不安薬を追加
- 他の気分安定薬に変更
生活に大きな支障がないのでしたら、気にしないのも方法です。慣れることは少ないですが、特に後遺症として残ることはありません。症状を軽減したい場合は、βブロッカー(インデラルなど)や抗不安薬(リボトリールなど)が有効です。パーキンソン病の症状を軽減させる抗コリン薬(アキネトンやアーテンなど)は効果が期待できません。
それでも改善がない場合は、他の気分安定薬に変更します。
4-2.多尿(腎性尿崩症)・口渇(多飲)
リーマスでは、多飲多尿がよく認められます。
リーマスは腎臓に2つの大きな影響のあるお薬です。
- 腎機能低下
- 腎性尿崩症
リーマスは腎臓だけで代謝されるお薬なので、腎臓に負担がかかってしまうのは避けられません。腎機能低下に関しては、患者さんによって程度に差があります。まったく問題ない方もいれば、どんどん腎機能が低下してしまう方もいます。定期的に腎機能を確認していく必要があります。
リーマスの腎臓への影響としては、もうひとつ大きなものがあります。抗利尿ホルモンのバソプレシンの働きを弱めてしまうのです。バソプレシンは、一度腎臓で濾過された尿のうち、必要な水分を身体に再吸収する働きがあります。この働きがブロックされるので、水分を再吸収できなくなって利尿(尿を出す)してしま うのです。
ひどくなると腎性尿崩症という病名がつけられます。長期にリーマスを服用している患者さんの20~40%に認められるという報告もあります。このような状態になると多尿はもちろんのこと、身体から水分が失われるのでのどが渇きます。水をたくさん飲んでしまうのです。
多尿・多飲の対策としては、以下の2つがあげられます。
- リーマスの減量・中止
- サイアザイド系利尿薬を使う
症状がひどい場合は、脱水になってしまってリーマスの血中濃度も不安定になってしまいます。リーマスは血中濃度をきっちりと測定して維持していく必要があるので、腎性尿崩症にまでなってしまった場合は、リーマスから他の気分安定薬に変更した方がよいです。
リーマスを中止しても続く場合は、サイアザイド系利尿薬(フルイトランなど)を使います。多尿になっているのに利尿薬を使うのは変に感じるかもしれません。
サイアザイド系利尿薬は遠位尿細管という終わりの方で働きます。終りの方で利尿作用が働くと、反対に近位尿細管では水分の吸収をしようと頑張ります。結果として遠位尿細管では水分量が少なくなり、全体で見ると尿が減少します。
4-3.内分泌異常
リーマスでは、甲状腺機能低下症や副甲状腺機能亢進症が認められます。
リーマスを長期で服用していると、ホルモンの分泌を行っている内分泌異常が生じることがあります。具体的には、甲状腺機能低下症や副甲状腺機能低下症が認められます。
甲状腺機能低下症は、リーマスを使っている方では頻度が6倍ほどにもなります。甲状腺ホルモンは代謝を高める働きがあるので、この機能が低下することで全身に症状が認められます。むくみ、食欲低下、体重増加、徐脈、寒がり、うつなどの症状が認められます。
副甲状腺機能亢進症では、カルシウム代謝のバランスをとっている副甲状腺ホルモンが増加します。副甲状腺ホルモンは血中のカルシウム濃度を高める働きがあります。骨を壊してカルシウムを作るので、骨がもろくなって骨折しやすくなります。また、カルシウムがいろいろなところに沈着してしまい、動脈硬化や関節炎、心臓弁膜症などにつながります。
これらの内分泌異常が見つかった場合、対策の基本はリーマスの減量・中止になります。甲状腺機能低下症では、甲状腺ホルモン(チラージン)を補充することもあります。
4-4.眠気
リーマスでは、眠気は少ないです。長期にわたって服用している場合は、リチウム血中濃度に注意しましょう。
詳しく知りたい方は、「リーマスの眠気と対策」をお読みください。
リーマスは脳の活動を抑える作用があります。ですから眠くなりそうなものですが、リーマスでは眠気は少ないです。リーマスを飲みはじめたばかりの眠気でしたら、少しずつ慣れていくことが多いです。
長期間にわたってリーマスを服用している場合、リチウム中毒に注意が必要です。リーマスは脱水や腎機能障害の影響を大きく受けるので、何らかの形でリーマスの血中濃度が高まってしまうこともあります。
ですから、しばらくリーマスを服用していて眠気が認められた場合は、血中濃度を測定する必要があります。中毒域にはいっていれば、リーマスの減量が必要です。
中毒域に入っていない場合やリーマスの飲み始めでは、眠気の対策としては以下の4つがあげられます。
- 睡眠環境や習慣を見直す
- 様子を見る
- リーマスの飲み方を工夫する
- 他の気分安定薬に変更
まずは睡眠環境や習慣に関して、改善できることは見直していきます。詳しくは、「不眠を解消する9つの方法」「アルコール・タバコ・コーヒーと睡眠の関係」をお読みください。
効果を見ながら、就寝前や夕食後などにお薬を服用するなど、飲み方を工夫していくとうまくいくこともあります。それでも改善がなければ、他の気分安定薬に変更していきます。
4-5.体重増加
リーマスは太りにくいお薬ですが、体重増加することもあります。
詳しく知りたい方は、「リーマスは太るの?体重増加と5つの対策」をお読みください。
リーマスの薬としての直接的な副作用としては、食欲増加も代謝抑制も少ないです。このため、リーマスの薬効としての体重への影響は少ないです。ですがリーマスでは、体重増加が認められることがあります。
リーマスの間接的な原因によって、体重増加をきたしてしまうことがあるのです。
- 双極性障害の症状コントロール不良
- 過食症状
- 腎性尿崩症によるソフトドリンクの多飲
- 甲状腺機能低下症による代謝低下
リーマスで体重増加してしまった場合は、その原因がわかれば個々の対策をとっていきます。それ以外の一般的な対策としては、4つあります。
- 体重測定・食事管理
- 運動
- リーマスの減量
- 他の気分安定薬に変更
まずは食生活を整えましょう。カロリーを意識しながら食事をとるようにして、3食をバランスよくとることが必要です。そして、定期的に体重を測るようにしましょう。ちゃんと自分の体重を管理する習慣をつけましょう。また、運動習慣をつくりましょう。消費カロリーが増えれば体重が減少しますし、運動自体が精神的によい効果をもたらします。
このような努力によって体重増加傾向が改善できない場合は、リーマスの減量を検討します。場合によっては、他の気分安定薬に変更することもあります。
4-6.吐き気・下痢
リーマスでの吐き気や下痢は、薬の飲み始めとリチウム中毒症状として認められることがあります。
リーマスを服用していると、吐き気や下痢の副作用が認められることがあります。添付文章をみると、吐き気は1.80%、下痢は1.18%となっています。吐き気や下痢の対策を考える時には、2つのケースに分けていく必要があります。
- リーマスの飲み始め
- リーマスをしばらく服用後
リーマスの飲み始めでの吐き気や下痢では、微量金属元素のリチウムが胃腸に何らかの影響を及ぼしていることが考えられます。ですがその原因は、はっきりとわかっていません。対策としては、以下の4つがあげられます。
- しばらく我慢する
- 増量ペースをゆっくりにする
- 吐き気止めを一時的に使う
- 他の気分安定薬に変更する
リーマスを飲み続けていくと、次第に慣れていくことが多いです。ですから、可能であればしばらく我慢しましょう。増量のペースをゆっくりにしたり、吐き気止めを使うことで、リーマスが身体に慣れる時間をかせぐこともあります。
どうしてもリーマスが身体に合わない時には、他の気分安定薬に変更します。
まとめ
- 副作用が全体的に多い
- 慢性リチウム中毒に注意が必要
- 振戦(ふるえ)や頻尿が多い
- 甲状腺機能低下症・副甲状腺機能亢進症になることがある
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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