ラミクタールの副作用(対策と比較)

元住吉 こころみクリニック
元住吉 こころみクリニック
2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック

ラミクタールは、2008年に発売された気分安定薬・抗てんかん薬です。双極性障害やてんかん、三叉神経痛の治療薬として適応がみとめられています。

その他の気分安定薬や抗てんかん薬と比較しても、ラミクタールは副作用が全体的に少ないです。妊娠への影響もわずかであり、比較的安全性が高いお薬です。

ただ、薬疹には注意が必要です。重症薬疹に発展してしまうことがあり、亡くなった方もいたのでブルーレター(安全性速報)が出されました。用法・用量を守って適切に使えば、重症薬疹のリスクは非常に下がります。

ここでは、ラミクタールの副作用について、対策も含めて考えていきましょう。

 

1.ラミクタールの副作用とは?

  • 副作用が全体的に少ない
  • 重症薬疹のリスクがある
  • 妊娠への影響がわずか

ラミクタールは、抗てんかん薬や気分安定薬に分類されます。これらのタイプのお薬は副作用が多く、薬の血中濃度を測ることで中毒にならないようにチェックが必要です。しかしながらラミクタールは、全体的に副作用が少ないです。ですから、血中濃度を測ることも少ないです。

ですが、薬疹には気をつける必要があります。ラミクタールの皮疹の発生率は他剤と大きく変わりはないのですが、ときにSteavens-Johnson症候群や中毒性表皮壊死症、薬剤性過敏症症候群といった重症薬疹に発展することがあります。用法を守らずに重症化して亡くなってしまった方が続いたため、2015年2月にブルーレター(安全性速報)という警告が出されました。

それ以外の副作用としては、眠気、めまい、頭痛、吐き気などがあります。これらの副作用は、

  • 高用量
  • テグレトールとの併用

で増加します。これらの副作用が認められたときは、できるだけ減量していきましょう。

副作用とは少し違うかもしれませんが、ラミクタールは妊娠への影響の少なさが特徴的です。催奇形性は非常に少なく、妊娠中でも比較的安心して使えるお薬です。

 

ラミクタールの効果について詳しく知りたい方は、
ラミクタール錠の効果と特徴
をお読みください。

 

2.ラミクタールと他の気分安定薬の副作用比較

ラミクタールは、気分安定薬の中で副作用が多めです。重症薬疹や顆粒球減少症に注意しましょう。

ラミクタールをはじめとした気分安定薬の副作用を比較してみましょう。

気分安定薬には4つのお薬が分類されています。

  • リーマス(炭酸リチウム)
  • デパケン(バルプロ酸)
  • テグレトール(カルバマゼピン)
  • ラミクタール(ラモトリギン)

副作用の頻度や安全性について比較すると、以下のようになります。

テグレトール>リーマス>デパケン>ラミクタール

テグレトールは副作用の頻度も高く、安全性も低いです。重症薬疹や無顆粒球症などの重篤な副作用に注意が必要です。リーマスも副作用が全体的に多く、治療域と中毒域が近いので注意が必要です。

デパケンやラミクタールは比較的に副作用が少なく、安全性が高いです。そうはいってもデパケンでは、肝機能や高アンモニア血症に注意が必要です。ラミクタールでは、重症薬疹に注意が必要です。

気分安定薬の副作用を比較して一覧にしました。

3.ラミクタールの副作用

ラミクタールの特徴をふまえて、具体的な副作用についてみていきましょう。他剤とも比較しながら、それぞれの副作用への対策もお伝えしていきます。

 

3-1.重症薬疹

ラミクタールでは、薬疹が重症化するリスクがあるので注意が必要です。

詳しく知りたい方は、「ラミクタールの薬疹(特徴と3つの対策)」をお読みください。

ラミクタールの副作用で注意しなければいけないものとして、薬疹があげられます。

薬疹はどのようなお薬でも認められることがあります。ラミクタールで薬疹が認められても、その大部分は問題のないものです。しかしながらラミクタールでの薬疹は、ときに重症化することがあります。万が一の場合は死に至ることもあるので、注意が必要です。

ラミクタールで生じる重症薬疹としては、以下の3つがあります。

  • 皮膚粘膜眼症候群(Steevens-Johnson症候群)
  • 中毒性表皮壊死融解症(TEN)
  • 薬剤性過敏症症候群(DIHS)

皮膚粘膜眼症候群(SJS)は、眼、口、陰部などの皮膚だけでなく粘膜がやられる薬疹です。発熱が認められて、表皮がはがれて水疱ができます。表皮全体の10%以下のときにSJSといいます。

中毒性表皮壊死融解症(TEN)は、SJSがさらに重症化したものです。まるでヤケドのように表皮がずるむけてしまいます。表皮全体の10%以上のときにTENと診断され、死亡率は20~30%にも及びます。

薬剤性過敏症症候群(DIHS)は、発疹とともに全身に赤い皮疹や紅斑が認められます。それと同時に全身のリンパ節腫脹や肝臓などの臓器障害、血液検査の異常が認められます。

 

これらの薬疹の多くは飲み始めの8週間以内に出現します。DIHSでは服薬後2週間以上たってから認められることが多いので注意が必要です。以下のような症状が認められたら、すぐに主治医に伝えてください。

  • 発疹
  • 唇や口内のただれ
  • 38℃以上の発熱
  • 眼の充血
  • のどの痛み
  • リンパ節の腫れ
  • 全身倦怠感

これらの症状が認められた場合、それがラミクタールの副作用かどうかを総合的に判断します。少しでも重症薬疹が疑われるときには、ただちに原因薬剤を中止します。その上で、直ちに皮膚科に受診をしていただきます。

 

3-2.眠気・ふらつき

ラミクタールでは、眠気が認められることは少ないです。

詳しく知りたい方は、「ラミクタールの眠気と5つの対策」をお読みください。

ラミクタールは神経細胞膜を安定させることで、脳の活動を抑える作用があります。このため少ないものの、眠気の副作用が認められることもあります。

添付文章によれば、双極性患者さんでの眠気の副作用は215例中8例(3.7%)に認められています。ラミクタールの眠気は、飲み始めに認められることが多いですが、少しずつ慣れていくことも多いです。

眠気の対策としては以下の6つがあげられます。

  1. 睡眠環境や習慣を見直す
  2. しばらく様子を見る
  3. ラミクタールの飲み方を工夫する
  4. テグレトールを併用している場合は減量する
  5. ラミクタールを減量する
  6. 他の気分安定薬に変更

まずは睡眠環境や習慣に関して、改善できることは見直していきます。詳しくは、「不眠を解消する9つの方法」「アルコール・タバコ・コーヒーと睡眠の関係」をお読みください。

ラミクタールの血中濃度が高くなり過ぎると、中毒症状として眠気が認められることがあります。ですから、しばらく使っていて眠気がみられる方は、血中濃度を測りましょう。

ラミクタールの飲み始めの眠気では少しずつ慣れていくことも多く、しばらく様子を見てみましょう。効果を見ながら、就寝前や夕食後などにお薬を服用するなど、飲み方を工夫していくとうまくいくこともあります。

効果との兼ね合いを見ながらでラミクタールを減量すると、眠気が軽減することもあります。テグレトールを併用している時は、こちらを減量していくのも方法です。テグレトールと併用すると、眠気の副作用が強くなることが報告されています。

それでも改善がなければ、他の気分安定薬に変更していきます。

 

3-3.体重増加

ラミクタールは太りにくいお薬です。ときに過食発作が認められることがあります。

詳しく知りたい方は、「ラミクタールは太るの?体重増加と5つの対策」をお読みください。

ラミクタールは食欲増加も代謝抑制も少ないです。このため、ラミクタールの薬効としての体重への影響は少ないです。ですがラミクタールでは、体重増加が認められることがあります。

ラミクタールの間接的な原因によって、体重増加をきたしてしまうことがあるのです。

  • 双極性障害の症状コントロール不良
  • 過食症状

ラミクタールで体重増加してしまった場合は、その原因がはっきりすれば個々の対策をとっていきます。それ以外の一般的な対策としては、4つあります。

  1. 体重測定・食事管理
  2. 運動
  3. ラミクタールの減量
  4. 他の気分安定薬に変更

まずは食生活を整えましょう。カロリーを意識しながら食事をとるようにして、3食をバランスよくとることが必要です。そして、定期的に体重を測るようにしましょう。ちゃんと自分の体重を管理する習慣をつけましょう。また、運動習慣をつくりましょう。消費カロリーが増えれば体重が減少しますし、運動自体が精神的によい効果をもたらします。

このような努力によって体重増加傾向が改善できない場合は、ラミクタールの減量を検討します。場合によっては、他の気分安定薬に変更することもあります。

 

3-4.吐き気

ラミクタールでの吐き気や下痢は、薬の飲み始めに認められることが多いです。

ラミクタールを服用していると、吐き気や胃部不快感などの胃腸障害が認められることがあります。添付文章をみると、胃腸障害は3.7%(8例/215例)となっています。

ラミクタールの吐き気や胃部不快感は、飲み始めに認められることが多いです。その原因は、はっきりとわかっていません。対策としては、以下の5つがあげられます。

  1. しばらく様子を見る
  2. 増量ペースをゆっくりにする
  3. 吐き気止めを一時的に使う
  4. テグレトールを併用している時は減量する
  5. 他の気分安定薬に変更する

薬を飲み続けていくと、次第に慣れていくことが多いです。増量のペースをゆっくりにしたり、吐き気止めを使うことで、ラミクタールが身体に慣れる時間をかせぐこともあります。

テグレトールと併用すると副作用が増加することが多いので、できるだけ減量します。どうしてもデパケンが身体に合わない時には、他の気分安定薬に変更します。

 

まとめ

  • 副作用が全体的に少ない
  • 重症薬疹のリスクがある
  • 妊娠への影響がわずか

投稿者プロフィール

元住吉 こころみクリニック
元住吉 こころみクリニック
2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック