リーマスの眠気と対策

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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精神科のお薬は眠くなるものが多いです。気持ちを落ち着かせるお薬が多いので、どうしてもリラックスして眠気につながってしまいます。日常生活を過ごしていかなければならない中で、眠気が強く出てしまうと困ってしまいますね。

リーマスは、気分安定薬に分類されています。気分安定薬は脳の興奮を抑える作用がありますので、薬によっては眠気が認められます。リーマスでは眠気が少ないのですが、リーマスの量が多すぎるとリチウム中毒に注意が必要です。

ここでは、リーマスの副作用による眠気とその対策について、他剤とも比較しながら詳しくみていきましょう。

 

1.リーマスで眠気が生じるのか?

リーマスでは、眠気があまり認められません。

どのようにしてリーマスが作用するのかは、正確にはわかっていません。リーマスは金属イオンのリチウムですので、イオンの通り道(イオンチャネル)を通って細胞内に直接入って作用します。

リーマスは細胞内の情報伝達を邪魔することで、脳の神経細胞の活動を抑えていると考えられています。このように興奮を鎮める効果があるので、リーマスには抗躁効果が期待できます。脳の活動を抑えるのでしたら眠くなりそうなものですが、リーマスではそれほどに眠気は認められません。

添付文章によれば、眠気の副作用は4993件中38件(0.76%)に認められています。

リーマスの飲み始めの眠気は、少しずつ慣れていくことが多いです。リーマスを暫く使っていて少しずつ眠気がみられたら、リチウム中毒に注意が必要です。リーマスは脱水や腎機能障害の影響を大きく受けるので、何らかの形でリーマスの血中濃度が高まってしまうこともあります。

 

リーマスの副作用について詳しく知りたい方は、
リーマスの副作用(対策と比較)
をお読みください。

 

2.リーマスと他剤での眠気の比較

他の気分安定薬と比較しても、リーマスは眠気の少ないお薬です。

眠気の副作用について、他の気分安定薬と比較してみましょう。

気分安定薬として使われるお薬には、大きく3種類があります。

  • 炭酸リチウム(リーマス)
  • 抗てんかん薬(デパケン・テグレトール・ラミクタール)
  • 抗精神病薬(ジプレキサ・セロクエル・エビリファイ・リスパダールなど)

これらのお薬のうち、もっとも眠気が強いのは抗精神病薬になります。

抗精神病薬の眠気の副作用比較

炭酸リチウムや抗てんかん薬の中で比較すると、

テグレトール>デパケン>ラミクタール≧リーマス

といった印象になります。

 

3.薬だけでない眠気が起きる理由

薬以外の眠気の原因としては、精神症状・不十分な睡眠・生活リズムの乱れ・女性ホルモンが考えられます。

眠気がでてくる原因は薬以外にも4つほど考える必要があります。

  • 精神症状
  • 睡眠
  • 生活リズム
  • 女性ホルモン

薬によって変化が明らかでしたら、薬が原因といえます。ですがそれ以外のことが原因となることもあるので、注意が必要です。

精神症状で眠気や倦怠感がでてくる場合もあります。症状としての眠気の場合は、これまでの経緯や症状の変化などから総合的に判断していきます。双極性障害の方では、調子が悪くなると過眠がみられる方も多いです。

夜間の睡眠を十分にとれていなくて、日中に眠気が出てきている場合もあります。睡眠時間はとれていますか?朝に眠気はないですか?夜間にイビキなどはないですか?

また、生活リズムが崩れてしまっていることが原因のこともあります。体内時計のリズムが崩れると、睡眠時間は十分であっても睡眠の質が低下し、日中の眠気や倦怠感となることがあります。いわゆる時差ぼけは、この状態です。昼過ぎまで寝てしまって身体がだるい経験をされた方も多いと思います。起きる時間は大きくずれていませんか?

女性の場合は、女性ホルモンが自律神経に影響します。生理周期と関係して眠気が認められる場合や、女性ホルモンが減少していく更年期にあたる場合は、女性ホルモンの影響も考慮する必要があります。

 

4.リーマスの飲み始めでの眠気対策

リーマスはそこまで眠気の強いお薬ではありません。ですが、お薬の効き方には個人差も大きく、眠気が強く出てきてしまう方もいらっしゃいます。

まずは、リーマスの飲み始めでの眠気がみられたときには、どのように対処すればよいのでしょうか?対策をみていきましょう。

 

4-1.様子をみる

生活に支障がでなければ、少しがまんしてみてください。

薬の副作用は、飲みはじめに強くなる傾向があります。リーマスによる眠気も飲み始めにみられることが多いですが、時間と共に慣れていくことが多いです。

何とかなる範囲でしたら、少し様子を見てみるのも方法です。1~2週間ほど様子を見て、少しずつ眠気が薄れていくか待ちましょう。生活への支障が大きかったり、危険性がある時は無理をしてはいけません。主治医と相談しながら、他の対策を考えていきましょう。

 

4-2.薬を分割して飲む回数を増やす

薬を飲んで暫くすると眠気が強くなる方には行うことがあります。

薬の服薬回数を増やすのも方法のひとつです。

薬の副作用は、血中濃度のピークで一番強くでます。薬を分割して飲む回数を増やせば、血中濃度が安定します。このため、副作用は一般的に軽減されます。

これは眠気に関しても同じことがいえるので、薬をこまめに服用することで眠気が軽減することがあります。リーマスは半減期が18時間と比較的長いので、そこまでの効果は期待できません。

薬を飲んで暫くすると眠気が強くなる方は、試してみてもよいでしょう。1日2回での服用としているならば、1日3回にしてみます。ただ、回数を増やすと飲み忘れてしまうリスクが高まります。薬を飲み忘れてしまった場合、多少ずれても結構ですので服用するようにしましょう。

 

4-3.夕食後や就寝前に服用する

夕食後や夜に飲み方を変更するのも方法です。

睡眠をとる夜でしたら、眠気は出てきてくれた方が好都合ですね。リーマスを服用して眠気がある場合は、夕食後や就寝前を中心に服用するという方法もあります。

リーマスを日中に服用するには、理由があることもあります。ご自身で判断せず、主治医の先生と相談しましょう。

リーマスは半減期が比較的長いお薬なので、1日1回の服用でも効果は持続します。しかしながら、血中濃度が高まり過ぎてしまって中毒症状が認められるリスクがあります。このため、添付文章では1日2~3回の服用となっています。夕食後と就寝前に服用するのも方法です。

 

4-4.他の気分安定薬に変える

リーマスでどうしても眠気が改善できないのなら、ラミクタールやデパケンなどを試してみましょう。

リーマスは眠気の少ないお薬です。ですが、どうしても眠気が改善できないのでしたら、他のお薬に変えていくしかありません。効果も含めて総合的に判断して薬を選んでいきましょう。

リーマスと同じように眠気が少ないお薬としては、ラミクタールになります。ただ、ラミクタールは抗躁効果は乏しいので、抗うつ効果や再発予防効果を期待したいときにはよいでしょう。

抗躁効果を期待したいときには、デパケンやテグレトールになります。いずれもリーマスよりも眠気は強くみられますが、薬の効き方は個人差があるので試してみてもよいかもしれません。

どのお薬に変更していくのかは、眠気だけでなく総合的な判断が必要です。眠気が少し認められていても、総合的にみたらリーマスが一番よいということもあります。主治医としっかりと相談してお薬を考えていきましょう。

 

5.リーマスの長期服用中の眠気対策

リーマスを長期にわたって服用している患者さんで眠気が認められたときには、リチウム中毒も含めて考えていく必要があります。このような時の対処法をみていきましょう。

 

5-1.血中濃度を測定する

少しでも疑ったら、リチウム血中濃度を測定しましょう。

慢性リチウム中毒では、初期症状として傾眠が認められることがあります。リーマスをしばらく服用していて眠気が強くなっている方は、血中濃度が高くなりすぎていないか確認が必要です。慢性リチウム中毒では、血中濃度と症状に関連性があります。

  • 1.5mEq/L~:下痢・嘔吐・振戦・筋力低下・傾眠
  • 2.0mEq/L~:心電図変化・構音障害
  • 2.5mEq~:小脳失調・ミオクローヌス・昏迷・興奮
  • 3.0mEq~:けいれん・昏睡・失神

 

5-2.減量する

必ず主治医に相談してください。

明らかにリチウム中毒症状が起きている時には、血中濃度を測定してすぐに減薬をします。血中濃度が中毒域でない場合でも、リーマスの効果がしっかりと出ているならば、少し減らして様子をみるのもひとつの方法です。リーマスを減らしてみて、効果はそのままで眠気が軽減できれば、それに越したことはありません。

ですが、必ず主治医に相談してください。薬を減量しても大丈夫かどうかは、これまでの経過や症状をみて判断しなくてはいけません。

 

まとめ

リーマスでは、眠気があまり認められません。

他の気分安定薬と比較しても、リーマスは眠気の少ないお薬です。

薬以外の眠気の原因としては、精神症状・不十分な睡眠・生活リズムの乱れ・女性ホルモンが考えられます。

眠気の対策としては、飲み始めと長期服用後で分けて考えます。

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