リーマスは太るの?体重増加と5つの対処法

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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精神科のお薬(向精神薬)は、どうしても太る薬が多いです。抗うつ剤や抗精神病薬は確かに「太る」ことの多いお薬なのですが、リーマスをはじめとした気分安定薬は特別に太りやすい薬ではありません。

ですが精神科の患者さんは、生活習慣が乱れていたり、活動性が落ちてしまうこともあります。このため、「リーマスは太る薬だ」と思い込んでしまう方もいらっしゃいます。

とはいっても、リーマスにも「太る」という副作用報告が全くないわけではありません。ときに体重増加の原因はリーマス以外には考えられないということもあります。

ここでは、リーマスと体重増加について詳しくみていきましょう。他の精神科のお薬とも比較しながら、どのような対策があるのかを詳しくお伝えしていきます。

 

1.リーマスは太るのか?

添付文章をみても、リーマスの直接的な副作用による体重への影響は少ないです。

精神科のお薬(向精神薬)では、太る副作用のあるものが多いです。これらのお薬では2つの側面があります。

  • 食欲増加による摂取カロリー増加
  • 代謝抑制による消費カロリーの減少

食欲増加には、抗ヒスタミン作用やセロトニン2C作用などが関係しています。代謝抑制には、はっきりとわかっていない部分が多いです。

抗うつ剤や抗精神病薬では、食欲増加にも代謝抑制にも働いてしまうお薬が多いです。一方でリーマスをはじめとした気分安定薬では、このような作用がほとんど認められません。

リーマスの副作用報告をみても、承認時および承認後副作用調査に置いて、4993例中体重増加・減少は14件となっています。リーマスの体重関係の副作用報告は、0.28%ということになります。副作用で吐き気が認められる方(1.8%)もいるので、むしろ食欲不振(0.98%)となって体重減少してしまう方もいます。リーマスは痩せることもあり、太りにくい薬といえるでしょう。

 

2.リーマスのせいで太るのはどんな時?

リーマスの効果が不十分であったり、過食症状が認められるとき、腎性尿崩症や甲状腺機能低下症のときに太ることがあります。

リーマス自体は太りやすいお薬ではないのですが、いろいろな原因で間接的に体重増加が認められることがあります。

もっとも多いのは、病状に薬があっていないことでしょう。リーマスは主に双極性障害で使われるお薬です。リーマスがどうして効果があるのかは分かっていない部分が多いですが、リーマスには気分の高まりや衝動性を抑える抗躁効果が認められます。リーマスの効果が不十分だと、これらをうまくコントロールできないことがあります。

双極性障害の患者さんでは、躁症状として食欲が低下することもあれば亢進することもあります。活動性が高まってエネルギーを消費することもあれば、暴飲・暴食などが目立つこともあります。リーマスは抗躁効果を期待して使われることも多いですが、これらの躁症状への効果が不十分なこともあるのです。

うつ症状のときも、過食傾向になる方がいらっしゃいます。それでいて意欲低下や倦怠感が強くなり、活動量が落ちてしまうので、体重増加してしまいます。リーマスの抗うつ効果が不十分なこともあります。

 

また、リーマスによって過食症状が出現することが稀にあります。双極性障害の患者さんでは、むちゃ食いの摂食異常が認められることが多いです。気分安定薬としてのリーマスは時にバランスを崩してしまうことがあり、このような潜在的な摂食異常が目立つようになります。

反対に、リーマスが過食に効果的なこともあります。このように、摂食障害が合併してくると治療は複雑になります。リーマスがプラスにもマイナスにも働きます。摂食障害の薬物療法にはこれといった決まりが無く、患者さんの状態にあわせて使い分けていくのです。

 

さらにリーマスでは、腎臓の抗利尿ホルモンのバソプレシンの働きを弱めて、多尿の副作用が認められることが多いです。身体から水分が失われるのでのどが渇きます。

この時に水を飲めばよいのですが、ソフトドリンクなどの糖分が多いものをとってしまうと、必然的に体重増加につながってしまいます。

リーマスの副作用として、甲状腺機能低下症を合併することも多いです。甲状腺ホルモンは代謝を高める働きがあります。この機能が低下してしまうので、身体がむくみ、食欲がないのに体重も増加してしまいます。

 

リーマスの副作用について詳しく知りたい方は、
リーマスの副作用(対策と比較)
をお読みください。

 

3.リーマスと他の向精神薬の太りやすさの比較

向精神薬の中では、リーマスは太りにくいお薬です。気分安定薬の中で比較すると、リーマス>デパケン>テグレトール≧ラミクタールとなります。

精神科で使われるお薬は、太りやすい薬が多いです。その代表的なものが抗うつ剤や抗精神病薬です。

<抗うつ剤>

抗うつ剤の太る副作用を比較しました。

<抗精神病薬>

抗精神病薬の体重増加を比較しました。

これらのお薬は、抗ヒスタミン作用やセロトニン2C作用による食欲増加、代謝抑制作用などが認められます。

双極性障害の患者さんでは、ときに抗うつ剤が使われることもあります。抗精神病薬では、気分安定薬として使われることもあります。この中でもジプレキサやセロクエル、エビリファイやリスパダールなどはよく使われます。

それに対してリーマスなどの気分安定薬では、食欲増加や代謝抑制作用は目立たず、体重増加は少ないといえます。気分安定薬の中で太りやすさを比較すると、以下のようになります。

リーマス>デパケン>テグレトール≧ラミクタール

 

4.リーマス以外にも太る原因はあります

体重のせいでお薬を飲みたくなくなったら、主治医にちゃんと伝えてください。原因と対策を一緒に考えていきましょう。

リーマスは太りにくいお薬です。ですが、お薬とは関係がなくて太ってしまうこともあります。

ですが、「リーマスのせいで太ってしまった・・・」と思いこんでしまって、「こんなお薬嫌だからもうやめよう」と自己判断でお薬を止めてしまう方もいます。このようにしてお薬を止めてしまうと、しばらくして病気が再発してしまい、周りの人との人間関係や社会的な立場を損なってしまうことがあります。リーマスなどの気分安定薬は、病気の再発予防や病状の維持に重要であることも多いです。

ですから、リーマスを自己中断することだけはやめてください。太ってしまったことがつらければ、主治医に相談してください。

  • 太ってしまった原因が本当にお薬にあるのか?
  • どのような対策がとれるのか?

一緒に考えていきましょう。リーマスの場合は、原因がお薬以外にあることがほとんどです。シンプルに考えれば、摂取カロリーが消費カロリーを上回っているから太ってしまうのです。

  • ちゃんと外出して身体を動かしていますか?
  • やけ食いしてませんか?
  • 満腹になるまで食べていませんか?

動物はもともと飢えに苦しみながら命をつないできました。ですから、本能である食欲のままに食べると、身体にエネルギーを蓄えるべく太るようになっています。運動不足や食事が原因ならば、そこから変えていかなければいけませんね。

 

5.リーマスでの体重増加の対策

繰り返しますが、体重増加が気になったら主治医にしっかりと相談しましょう。体重増加のとらえ方は、患者さんによっても個人差があります。体型に気をつけている女性では、男性の私よりもはるかに体重増加がつらいと感じるでしょう。医者も気を付けてはいるのですが、患者さんが思うほどに深刻に捉えていないこともあります。

ちゃんと伝えてくだされば、一緒に対策を考えていくことができます。リーマスの体重増加の原因は、お薬でないことが多いです。体重増加の対策をみていきましょう。

 

4-1.体重測定をする

まずは、自分自身の体重を定期的に測定し、体重変化に気を付けていきましょう。

体重を定期的に測っていますか?体重測定といえば、年に1回の健康診断の時だけという方も多いのではないでしょうか。

「なんだか最近太ってきたなぁ・・・」と思って体重を測ってみたら、その数字にビックリしてしまうこともあります。その衝撃が大きすぎて、お薬を急にやめてしまうことにもなりかねません。

早めに体重増加に気づけた方が、すぐに対策をとって戻しやすいです。体重が大きく増えてしまったら、元に戻さなきゃという気持ちもくじけてしまいますね。

ですから精神科のお薬を服用している時は、できるだけ体重測定をするようにしましょう。

 

4-2.食事を見直す

間食をひかえ、炭水化物を控えるマイルールをつくりましょう。

リーマスによる体重増加は、ちゃんとカロリーをコントロールすれば改善されていきます。リーマスは代謝への影響が少ないので、食べたカロリー以上に太ってしまうわけではありません。

食欲に任せていると、必要以上に食事をとってしまいます。動物の本能として、エネルギーは蓄えられるときにできるだけ蓄えるためです。

このため、食生活を見直しましょう。

  • カロリーを意識して食事を選ぶ
  • 間食を控える
  • 朝食は抜かずに3食食べる
  • よく噛んで食べる
  • タンパク質を多くして、炭水化物を少なくする

いくつか補足したいと思います。

食事をとると身体があったかくなります。これは食事誘発性熱産生と呼ばれていますが、栄養素が分解されて熱が産生されるのです。消化活動によって胃腸が動くので、代謝がよくなるのです。このため、食事は3食きっちりととった方がやせます。食事の回数を3食以上に増やしてしまうと、よほどきっちりした方でないと自分の摂取カロリーがわからなくなるのでやめましょう。

この食後の代謝増加を大きくするには2つの方法があります。「よく噛んで食べること」と「タンパク質を多くすること」です。タンパク質では、摂取カロリーの30%あまりが熱産生につかわれると報告されています。よく噛んで食べると、熱産生が増えることもわかっています。

炭水化物抜きダイエットが流行っていましたが、おすすめできる方法ではありません。少なくとも朝食の糖質はなくすべきではないと考えています。すぐにエネルギーに変換できる栄養素は糖質です。脳の活動が低下している朝には、糖質でスイッチを入れる必要があります。糖質抜きダイエットが行き過ぎると、タンパク質や脂質が不足してしまって筋肉量が落ちてしまうことがあります。すると基礎代謝が落ちるので、痩せにくい身体になってしまいます。

ですから、炭水化物を減らすマイルールを作る程度がちょうどよいです。例えば、ご飯は半盛りにする、夜のラーメンは封印するなどです。ダイエットの目標が達成しても続けられるものにしていきましょう。

 

4-3.運動習慣をつくる

運動習慣によって筋肉量が増えると基礎代謝が増加するので、痩せやすい身体になります。

運動をすると、筋肉量が増えるために基礎代謝が上がります。このため、何もしないでも消費カロリーが増えていきますので、太りにくくなります。

できるならば、筋トレと有酸素運動を組み合わせた方が効率よく痩せられます。筋トレをすると少しずつ筋肉量が増えていくだけでなく、筋トレ直後から代謝があがります。この状態で有酸素運動を行うと、脂肪が効率よく燃焼されるのです。筋トレをするならば、大きい筋肉から鍛えていくのが効率がよいです。胸や背中やお尻の筋トレをしていきます。

 

リーマスでは代謝抑制作用はほとんどないので、運動をすることで代謝がよくなりやすいです。また、運動は精神的にもよい影響があります。運動するとスッキリしますよね。軽症のうつ病の方では、治療として運動が勧められることもあるのです。運動習慣により病状がよくなれば、薬も減らしやすくなります。

 

4-4.リーマスの量を調整する

必ず主治医に相談してください。

リーマスは太りにくいお薬ではありますが、リーマスで絶対に体重が増えないわけではありません。リーマスの効果がしっかりと出ているならば、少し減らして様子をみるのもひとつの方法です。リーマスを減らしてみて、効果はそのままで食欲が軽減できれば、それに越したことはありません。

ですが、必ず主治医に相談してください。薬を減量しても大丈夫かどうかは、これまでの経過をみて判断しなくてはいけません。

場合によってはリーマスを増量した方がよいこともあります。リーマスは有効血中濃度を測りながら使っていくお薬です。抗躁効果を期待するときには高用量をしっかりと使っていく必要があります。症状をうまくコントロールできていない時は、むしろ薬の量を上げていく必要があるのです。

自己判断で薬を減量したり中止したりは絶対にしないでください。

 

4-5.他の気分安定薬に変える

どうしても合わない場合、他の気分安定薬に変えるのも方法です。過食発作では、抗てんかん薬のトピナを追加することもあります。

リーマスは体重増加の少ないお薬です。ですがどうしても薬が合わない場合は、他の気分安定薬に変更するのも方法です。効果も含めて総合的に考えていきましょう。

気分安定薬としては、

などがあげられます。抗精神病薬の中で気分安定薬としても使われるお薬としては、

では体重増加の副作用が少ないです。

厳密には気分安定薬には分類されていませんが、抗てんかん薬のトピナを併用することもあります。発作的に過食してしまうような時には、衝動性を抑えてくれるトピナを追加することで改善することもあります。トピナは、副作用として体重減少があげられているお薬でもあります。

 

まとめ

添付文章をみても、リーマスの直接的な副作用による体重への影響は少ないです。

リーマスの効果が不十分であったり、過食症状が認められるとき、腎性尿崩症や甲状腺機能低下症のときに太ることがあります。

抗うつ剤や抗精神病薬などと比較すると、リーマスなどの気分安定薬は太りにくいです。気分安定薬の中で比較すると、リーマス>デパケン>テグレトール≧ラミクタールとなります。

体重増加のせいでお薬を飲みたくなくなったら、主治医にちゃんと伝えてください。原因と対策を一緒に考えていきましょう。

リーマスでの体重増加の対策としては、以下の5つがあります。

  • 体重測定をする
  • 食事を見直す
  • 運動習慣をつくる
  • リーマスの量を調整する
  • 他の気分安定薬にかえる

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