喘息発作を予防するためには?喘息予防の5つの対策
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
喘息は、気管支に慢性的な炎症が起きる病気です。そのため喘息は一時的なものではなく、いつでも症状が悪化する可能性があると考えるのが大切です。
喘息は慢性的に咳や痰が続く場合と、急に咳や息苦しさが出現する場合があります。この急に症状が出現することを「喘息発作」といいます。この喘息発作が起きないように、毎日治療が必要になります。
「症状がないのに何で薬が必要なんだ?」と思う方もいるかもしれませんが、喘息は治ることがない病気です。火事にならないまでも、炎症の火が気管支でくすぶりつづけています。そのためそれらが燃え広がらないように、喘息発作が起きてなくても治療することが大切です。
医師もあなたの体を守るために一生懸命治療しますが、一番大切なのはあなた自身です。ぜひ喘息の方は治療を自己中断せず、しっかり毎日治療しましょう。
ただし治療していても、喘息発作は残念ながら完全には防げません。喘息発作が起きないようにするためにどうすればよいのでしょうか。ここでは、喘息が悪化しないための予防法を考えてみましょう。
1.喘息発作の最大の予防は長期管理薬
喘息は発作が起きていない状態でも、治療を続けることが大切な病気です。
喘息発作の最大の予防は、継続してお薬で治療し続けることです。これを長期管理薬と呼びます。長期管理薬は、
- 吸入ステロイド
- β2刺激薬
- 抗ロイコトリエン
- テオフィリン
の4つでコントロールします。
この中で最も大切なのが、吸入ステロイドになります。気管支を広げるよりも、喘息の原因となる炎症をとらないと喘息はコントロールできません。そのため喘息の治療はステロイド吸入薬が柱となり、それでも症状がコントロールできない時に他のお薬を足していくのが主流となっています。
吸入ステロイドの次に多いのが、β2刺激薬です。なぜなら吸入ステロイドとβ2刺激薬の合剤としてアドエアやシムビコートといったお薬があるため、ステロイドと一緒に吸入できるからです。
喘息発作がおきるということは、気道の炎症が燃えあがっていることを意味します。落ち着いてきても、1回炎症が起こってしまうとくすぶり続けてしまうのが喘息の怖いところです。
喘息発作の予防のためにも、必ず長期治療を行うようにしましょう。安定していれば徐々に投与量や一部のお薬はやめられますが、完全にお薬を中止できる人はほとんどいません。
お薬がなくても大丈夫な人は、そもそも本当に喘息かどうかを疑う必要が出てきます。自分が本当に喘息かどうか心配な方は、「私って本当に喘息?成人喘息の診断基準とは?」で確認してみましょう。
喘息のガイドラインでは、「喘息の人でも健常な方と全く同じ生活ができるところを目指す」と記載されています。しかし医師がいくら目指そうと思って頑張っても、最終的には患者さんが治療に協力してくれるかどうかがポイントになります。
2.喘息予防対策①-アレルゲンに近づかない
喘息は、特定の食べ物や動物に対して反応を示す人がいます。
喘息は、Ⅰ型アレルギーに属する疾患です。自分自身の免疫が過剰に働いてしまうことによる病気です。
Ⅰ型アレルギーは、アレルゲンという抗原が体内に入ることでIgEが産生され、それによって作られる好酸球などによって症状が出現します。I型アレルギーは他に、
- アレルギー性鼻炎
- アトピー性皮膚炎
が有名です。これらアレルギー疾患は、こまかに問診することでどのアレルゲンが悪さをしているのか調べます。そのため喘息が疑われた場合に、まずアレルギー性かどうか確認することが大切になります。
喘息は、原因となるアレルゲンから徹底的に避けることが大切になります。アレルゲンで多いものをみていきましょう。
- 花粉症(スギ・ヒノキ・カモガヤ)などがないか?
- 動物(猫や犬、ハムスター)に近づくことで発作は出現するか?
- 古い建物に入ると発作は出現するか?(ダニやカビ、ゴキブリ)
- 特定の食べ物で咳は誘発されるか?(卵・小麦・牛乳・甲殻類)
- 特定の薬で咳は誘発されるか?(特にロキソニンなどの痛み止めで発作が出現するか)
この辺りで思い当たることがある人は、要注意です。詳しく知りたい方は、「喘息を正しく診断してもらうために!喘息の問診ポイントをチェック」で、具体的にどういったことを気を付けるかを確認してください。
しかし問診では疑い止まりになります。本当にアレルゲンかどうかは、採血を行い特定のIgEが上昇しているか確認する必要があります。敵が分かれば対策も取りやすいでしょう。そのため喘息と診断がついた方は、アレルギー検査はほぼ必須になります。
アレルゲンが分かった場合のそれぞれの対策ですが、一番はアレルゲンに近づかないことです。
- 花粉がアレルギーの人は空気洗浄機など室内に配置してなるべく吸わないようにしましょう。特に喘息は寝てる間に発作が起きやすい病気です。外出は避けられなくても、室内は防御することが大切です。
- 動物がアレルゲンの人は、その動物に近づかないことが大切です。動物の毛でも発作が起きることがあります。犬アレルギーの人が、犬を飼ってる人に会っただけで発作が起きたなんてことも時々経験します。
- ダニやハウスダストが陽性の人は、徹底的に清掃、布団干し、細かい洗濯などの清潔にこだわる必要があります。また古いお寺なども注意が必要です。
- 食べ物の場合は、喘息以外に発疹などの他の症状が出現することが多いです。食べ物の場合は重度の喘息発作になりやすいため、注意が必要です。
- お薬で喘息発作が誘発される場合は、必ず医師にその旨を伝えましょう。特にロキソニンなどの疼痛薬で発作が起きる人は、誤って内服してしまうと非常に重篤な喘息発作が起きることもあります。
以上のように、敵が何かが分かれば徹底的にそれを避けるように意識することが大切です。
3.喘息予防対策②-タバコの煙には近づかない
タバコの煙自体でCOPDとい病気にもなります。これは喘息と病態が近く、喘息と合わさると非常に症状が重たくなります。
タバコを吸っている人は、喘息ではなく肺気腫(COPD)という病気も考えていかなければなりません。COPDは、タバコで肺がボロボロになってしまう病気です。このCOPDも喘鳴や咳が続く病気です。
詳しく知りたい方は、「肺気腫とはどんな病気?寿命を縮めるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の怖さ」をお読みください。
自分は吸ってなくても、周りの人が吸っていてもCOPDには注意が必要です。タバコは、吸っている本人にはフィルターを通った煙がいきます。しかし外にモクモク出ている煙は、フィルターを通らないタバコの煙です。周りの人はそれを吸うことになるため、非常に毒素が強いです。この煙を副流煙と呼びます。
- 主人がタバコを吸ってて…
- 職場のみんながタバコを吸ってて…
こういった環境因子が、喘息発作の要因になります。自分自身が吸ってる人はもちろん、いますぐタバコはやめましょう。また自分自身が吸ってなくても、徹底的にタバコの煙から避けることは必須になります。
喘息は、発作が重篤になると命にもかかわる病気です。ご自身だけではなく大切な人にそれを伝え、最低限ご自身の目の前には吸わないようにコントロールしましょう。
ただし飲食業などでは、お客さんがタバコを吸っていて避けられない場合もあります。職場環境を変えるのが一番ですが、なかなかそうもいきませんね。そのような場合は、
- 室内の換気
- マスク着用
- うがい・手洗い
など工夫をして、なるべく煙を浴びないように徹底することが大切になります。
4.喘息予防対策③-風邪対策を徹底する
うがい・手洗いなどの基本的な感染対策に加え、ワクチンが推奨されます。
喘息発作の最も多いのが、風邪をきっかけにしたものになります。そのため、そもそも風邪をひかないようにすることがとても大切です。
- 人込みに出ない
- 正しい手洗い・うがい
- マスクを着用
- 適度な湿度
- 口呼吸を改善
特に喘息は気道が慢性的に炎症が起きているため、普通の人よりも風邪をひきやすいことが多いです。完全に防ぐことはできませんが、日頃から予防を意識しましょう。
「風邪の予防に有効な5つの方法」
「正しい知識で手洗い・うがいを効果的に」
このように、風邪の対策をしっかりと立てましょう。
また、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンをうつことも大切です。ワクチンをうつことはその病気にかかりづらくなるだけでなく、もしかかったとしても症状が軽くなります。実際に日本の研究でも、インフルエンザワクチンンが喘息発作の増悪の予防効果があることを示した論文があります。
インフルエンザによって喘息発作が起きた場合、入院するにしても個室管理が必要になります。インフルエンザは他の人に移る病気なためです。そうなった場合、個室が満床で入院できないことも少なくありません。普段喘息で診てもらってる病院以外のところで入院することもしばしばあります。
また肺炎球菌ワクチンは、65歳以上の5の倍数であれば(65歳、70歳、75歳…)無料で受けることができます。肺炎球菌は、感染すると非常に進行が早いばい菌です。ですが肺炎球菌と喘息の関係については、確固たるデータはまだ存在しません。しかしガイドラインでは、肺炎球菌での肺炎の重篤さを考慮して、喘息患者さんに推奨されているワクチンになります。
5.喘息予防対策④-職場環境やストレスを見直す
有害物質を使っていないか、職場環境を見直す必要があります。特に夜働く人は注意が必要です。
なかなか自分の病気で仕事をセーブすることは難しいかもしれません。しかしながら喘息発作の三大原因は、
- 風邪
- 過労
- ストレス
になります。つまり仕事での過労やストレスは、喘息発作の大きな誘因になります。自分のストレスとしっかり向き合う必要があります。
それ以外にも工場では、
- 窒素化合物
- 硫黄酸化物
- ホルムアルデヒド
- エンドトキシン
- 二酸化硫黄
- オゾン
などの煙が喘息発作の誘因として証明されています。工場の煙でこれらの物質を浴びるようであれば、職場の配置転換が必要かもしれません。一方で、職場を変えるといってもなかなか難しいのも現状です。そのためタバコのところでもお伝えしたように、
- 室内の換気
- マスク着用
- うがい・手洗い
に注意してみてください。
また、天然ゴムのラテックスアレルギーの方も最近増えてきてます。この天然ゴムを避けることで、喘息発作が予防できたことも報告されております。仕事でゴム手袋を使う人は、一回調べてみても良いかもしれません。
夜勤の仕事にも注意が必要です。喘息は、夜から明け方の副交感神経が優位になった時に発作が起こりやすい病気です。そのため本来であれば体を休める時に、無理に働いてしまうとそれだけで喘息発作の引き金になります。
このように仕事の過労やストレスを感じたら無理せず、職場の上司に相談しましょう。仕事上休めないのはよくわかりますが、軽度の喘息発作のまま無理をしてしまうと重篤な状態になってしまいます。
喘息発作で救急外来を受診した場合は、ステロイドの点滴とβ2刺激薬の吸入で加療を開始します。もしそれでも効果が全然ない場合は、入院になってしまう病気です。
少しの無理で長期間仕事を離脱してしまうのであれば、少しの休憩で長期の離脱を避けた方が良いのではないでしょうか?
調子が悪ければ、すぐにまず上司と相談してみましょう。
6.喘息予防対策⑤-自分の喘息の状態を理解する
どの時に、どういったことをしたら起きるか?それを理解していれば予防にもつながります。
喘息の方は、「自分でも何となく発作が来る」といったようにわかる人も多いです。状態が悪くなった時はどんな時なのか、ぜひ一度メモしてみましょう。多いのが、
- 試験前や試合前などストレスがかかる時
- 生理前
- 台風や雨など天候の変化
- 運動したとき
- アルコールを飲んだ時
- 風邪をひき始めたとき
このような時に喘息が起きやすいと分かれば、事前に予防策が講じやすいと思います。花粉症の季節に喘息が悪化しやすいと分かっていれば、医師に相談して治療を強化することもできます。
生理前に喘息が起きやすい人は、シングレアやオノンなどの抗ロイコトリエンが著効することが示されています。運動で起きる人は過換気になると生じやすいので、過度な運動を避けたり指導できます。どうしても運動が必要な場合は、事前に短期作用型β2刺激薬を吸入しておくことで喘息発作が予防できるといわれています。
このように、どのようなタイミングで何をしたら喘息発作が起きたか振り返ってみてください。
またピークフローモニタリングといって、毎日息を思いっきり吹いて呼吸状態を確認する方法があります。実際に感じてなくても、呼吸状態が悪くなっていることがあります。心配性な人は常に喘息発作が起きるんじゃないか、もしかしたら起きてるんじゃないか心配になると思います。
そんな時にピークフローを吹いていれば、いつもと同じ呼吸状態かいつもより調子が悪いか数字で確認することができます。ピークフローに興味がある人はぜひ一度医師に相談してみましょう。
最後に最近太った人は要注意です。肥満は喘息の大敵といわれています。脂肪細胞は、炎症細胞によって燃えやすいのです。喘息は気道の慢性炎症の病気です。そのためワーッと炎症で燃え広がっていく可能性があります。
「太った」とわかった場合はなるべく食事制限、運動療法でダイエットを心がけましょう。その時に咳や息苦しさで運動があまりできない人は水泳がお勧めです。水泳は比較的喘息発作が起きづらいといわれています。
このように、自分自身の喘息の状態や体の状態を一度振り返ってみましょう。
まとめ
- 喘息発作の最大の予防は長期管理薬です。必ず医師の服薬指示を守るようにしましょう。
- 喘息はアレルギー疾患です。どの物質でアレルギーが起きるか理解し、避けるようにしましょう。
- タバコの煙は喘息の天敵です。吸わないのはもちろんのこと吸う人にも近づかないようにするのが大切です。
- 風邪は喘息発作の一番の誘因です。風邪の予防を徹底しましょう。
- 職場の過労やストレスも誘因になります。喘息発作の予兆があればまず上司に相談しましょう。
- 自分の喘息がどのような時に起きるか理解しておくことで対応しやすくなります。
投稿者プロフィール
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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