四君子湯【75番】の効果と副作用

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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身体の中の「気」が足りなくなっている状態を漢方では「気虚」といいますが、こういう時には元気がなくなります。体がだるくて疲れやすく、やる気がおきないといった症状が現れます。

こういった気を足りない状態を「気虚」といったりしますが、四君子湯は気を補って気虚を改善する基本的な漢方薬になります。

四君子湯は胃腸の働きを整え、血流を改善して身体を温める作用が期待できます。このため温裏剤といわれていて、冷えのある患者さんに使われることが多いです。

漢方薬にはそれぞれ番号がついていて、四君子湯は「ツムラの75番」などとも呼ばれます。ここでは、病院で使われる四君子湯の効果と副作用についてみていきたいと思います。

 

1.四君子湯【75番】の生薬成分の効能

四君子湯は、主薬である「人参」を中心に、甘草と合わさって胃腸の働きを整えて気力を補います。蒼朮や茯苓が水分のバランスをととのえ、生姜が身体をあたため血流をよくします。

漢方は、何種類かの生薬を合わせて作られています。生薬は自然界にある天然のものが由来です。天然のものといっても、生薬それぞれに作用が認められます。ですから、漢方薬は生薬の合剤といえるのです。

四君子湯は、4種類の生薬から有効成分を抽出して作られています。まずはそれぞれの生薬成分の作用をみていきましょう。

  • 人参(4.0g):強壮作用・抗ストレス作用・賦活作用・補気作用
  • 甘草(1.0g):鎮痛作用・抗痙攣作用・鎮咳作用・強壮作用
  • 蒼朮(4.0g):健胃作用・利尿作用・発汗作用
  • 茯苓(4.0g):利尿作用・鎮静作用・健胃作用・抗めまい作用
  • 生姜(1.0g):発汗作用・制吐作用・健胃作用・鎮咳作用
  • 大棗(1.0g):健胃作用・強壮作用・利尿作用・鎮静作用

※カッコ内は、ツムラの製剤1日量7.5gに含まれる生薬の乾燥エキスの混合割合です。

四君子湯は「補薬の王」と呼ばれる人参を中心に、人参・甘草・蒼朮・茯苓の4種類の生薬に、生姜と大棗を加えたものです。

人参湯の乾姜のかわりに生姜を加え、大棗と茯苓を加えた配合となっています。

補薬とは体力を補うために用いる薬のことです。人参は消化吸収を高めて体力を補ってくれます。甘草も胃腸の調子を整えてくれる生薬で、筋肉の緊張をゆるめてくれる作用もあります。

そして利尿作用や発汗作用のある蒼朮と茯苓が、体の水分の循環を良くします。生姜は、身体を温めながら血の巡りをよくし、胃腸の働きも整えます。大棗にも胃腸の働きを整える働きがあります。

このように四君子湯では、以下のような生薬の働きが期待できます。

  • 胃腸の消化作用を整えること
  • 水分のバランスを整えること
  • 血行をよくすること

とくに胃腸の働きを整える効果が強い漢方薬になります。

四君子湯の生薬の由来について

 

2.四君子湯の証

陰陽(陰)・虚実(虚)・寒熱(寒)・気血水(気虚)

漢方では、患者さん一人ひとりの身体の状態をあらわした「証」を考えながら薬を選んでいきます。証には色々な考え方があり、その奥はとても深いです。

漢方薬を選ぶに当たって、患者さんの体格や体質、身体の抵抗力やバランスの崩れ方などにあわせて「証」をあわせていく必要があります。証を見定めていくには四診という伝統的な診察方法を行っていくのですが、そこまでは保険診療の病院では行わないことがほとんどです。

病院では、患者さんの全体像から「証」を推測して判断していきます。漢方の代表的な証には、「陰陽」「虚実」「寒熱」「表裏」の4つがあります。

このうち医者が参考にする薬の本には、たいてい「陰陽」と「虚実」しかのっていません。陰陽は身体全体の反応が活動的かどうかをみて、虚実は身体の抵抗力や病気の勢いをみます。つまり病院では、以下の2点をみています。

  • 体質が強いかどうか
  • 病気への反応が強いかどうか

さらに漢方では、「気血水」という3つの要素にわけて病気の原因を考えていきます。身体のバランスの崩れ方をみていくのです。漢方の証について詳しく知りたい方は、「漢方の証とは?」をお読みください。

四君子湯が合っている方は、以下のような証になります。

  • 陰陽:陰証
  • 虚実:虚証
  • 寒熱:寒証
  • 気血水:気虚(易疲労・胃腸虚弱・気力の減退)

六君子湯よりも体力がない患者さんに向いている漢方です。

 

3.四君子湯の効果と適応

  • 慢性胃炎・食欲不振
  • 易疲労感・全身倦怠感

四君子湯は、「和剤局方」という漢方の古典書に紹介されています。6種類それぞれの生薬成分の効果があわさって、ひとつの漢方薬としての効果がみられます。

四君子湯に含まれている6種類の生薬のなかでも主な生薬である人参を中心に、甘草などが合わさって消化機能を整えながら気力を補います。さらには水のバランスを整える働きも期待できます。

このため四君子湯は、慢性胃炎や食欲不振といった胃腸症状を改善します。消化不良となっている状態を脾虚といったりしますが、これを改善してくれます。さらには水分バランスを整えてくれる働きから、胃内に水分がたまっている状態を整えてくれます。

このため身体所見としては、体をゆすると胃の中の水分が音(振水音)がきこえることがあります。また四君子湯は、身体を温めて血流をよくする働きも期待できます。このため、冷えのある患者さんにも使われます。

なお、添付文章に記載されている四君子湯の適応は以下のようになっています。

やせて顔色が悪くて、食欲がなく、つかれやすいものの次の諸症:胃腸虚弱、慢性胃炎、胃のもたれ、嘔吐、下痢

 

4.四君子湯の使い方

1日2~3回に分けて、空腹時(食前・食間)が基本です。飲み忘れが多くなる方は食後でも構いません。

四君子湯は、ツムラやコタロー、クラシエなどから発売されています。生薬成分の含まれる量は同じなのですが、会社によって漢方薬の1日量が異なります。四君子湯では、ツムラは7.5g、コタローは6.0g、クラシエは6.0gとなっています。

四君子湯は、1日2~3回に分けて服用します。漢方薬は空腹時に服用することを想定して配合されています。ですから、食前(食事の30分前)または食間(食事の2時間後)に服用します。量については、年齢や体重、症状によって適宜調整します。

漢方薬を空腹時に服用することで、麻黄や附子などの効果の強い生薬は胃酸によって効果をおだやかにし、その他の生薬は早く腸に到達して吸収がよくなります。四君子湯では、空腹時の方が吸収はよくなります。

とはいっても、空腹時はどうしても飲み忘れてしまいますよね。現実的には食後に服用しても問題はありません。ただし、保険適応は用法が食前のみなので、形式上は変更できません。

 

5.四君子湯の効き目とは?

四君子湯の効果は、少しずつ出てくることが多いです。2週間~1か月ほどかけてゆっくり効果が認められるのが一般的です。

それでは、四君子湯の効き目はどのような形でしょうか。

四君子湯の効果は、人それぞれです。証がぴったりと合う方には、効果テキメンなこともあります。いままで様々な身体の症状で悩まされていた方が、ビックリするくらいに穏やかになることもあります。その一方で、まったく効果の実感がない方もいらっしゃいます。

四君子湯は、比較的すぐに効果が出てくる方もいますが、2週間ほどして効果が少しずつ強まってくることも多いです。1ヶ月ほど使って効果の実感が乏しい方には、他の漢方薬に切り替えていきます。

効果が認められた方でも体質改善を意識していくには、すぐに四君子湯を中止せずに半年ほどは使っていった方がよいです。疲弊していた時期が長い方では、バランスを整えるにも時間がかかります。

このような効き目なので、抗うつ剤や抗不安薬のようにすぐに不安を取り除いてくれるような即効性と確実性はありません。ですから、疲れが出ないからといって栄養ドリンクのように頓服として使っても効果は期待しにくいです。

漢方薬の効果について詳しく知りたい方は、「病院で処方される漢方薬の効果とは?」をお読みください。

 

6.四君子湯の副作用

四君子湯では、生薬固有の副作用として偽アルドステロン症に注意が必要です。

漢方薬は一般的に安全性が高いと思われています。しかしながら、生薬は自然のものだから副作用は全くないというのは間違いです。

漢方薬の副作用としては、大きくわけて3つのものがあります。

  • 誤治
  • アレルギー反応
  • 生薬固有の副作用

漢方薬の副作用として最も多いのが誤治です。漢方では、その人の状態に対して「漢方薬」が処方されます。ですから状態を見誤って処方してしまうと、調子が悪くなってしまったり、効果が期待できません。このことを誤治といいます。

誤治では、さまざまな症状が認められます。これを副作用といえばそうなるのですが、その原因は証の見定めを間違えたことにあります。あらためて証を見直して、適切な漢方薬をみつけていきます。

また、食べ物でもアレルギーがあるように、生薬にもアレルギーがあります。アレルギーはどんな生薬にでも起こりえるもので、体質に合わないとアレル ギー反応が生じることがあります。鼻炎や咳といった上気道症状や薬疹や口内炎といった皮膚症状、下痢などの消化器症状などが見られることがあります。飲み 始めに明らかにアレルギー症状が出ていたら、服用を中止してください。

そして、生薬自体の作用による副作用も認められます。生薬の中には、その作用が悪い方に転じて「副作用」となってしまうものもあります。

四君子湯の生薬成分の甘草は、大量に服用すると生薬としての副作用が懸念されます。「偽アルドステロン症」と呼ばれる機能異常によって、高血圧やむくみ、低カリウム血症などが認められることがあります。

低カリウム血症によって、筋肉のけいれんや麻痺が起こることがあります。甘草の入っている他の製剤やグリチルリチンとの飲み合わせには十分な注意が必要です。また、長期間にわたって複数の漢方薬を服用するときは念のために注意してください。

漢方薬の副作用について詳しく知りたい方は、「漢方薬で見られる副作用とは?」をお読みください。

 

まとめ

四君子湯は、主薬である「人参」を中心に、甘草と合わさって胃腸の働きを整えて気力を補います。蒼朮や茯苓が水分のバランスをととのえ、生姜が身体をあたため血流をよくします。

陰陽(陰)・虚実(虚)・寒熱(寒)・気血水(気虚)

四君子湯は、以下のような方に使われます。

  • 慢性胃炎・食欲不振
  • 易疲労感・全身倦怠感

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