統合失調症の4つの分類(破瓜型・緊張型・妄想型・単純型)
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
統合失調症は、妄想や幻聴がみられる病気というイメージが強いかと思います。これは「妄想型統合失調症」とよばれるタイプになります。
統合失調症には、「妄想型統合失調症」以外にも異なる特徴をもったものがあります。
若くして発症して人格が解体していく「破瓜型統合失調症」、意欲がぱったりなくなってしまったり、興奮が強まってしまう「緊張型統合失調症」、少しずつ喜怒哀楽がなくなったり無気力になっていく「単純型統合失調症」があります。
ここでは、大きく4つの種類の統合失調症をみていきたいと思います。統合失調症のタイプによってどのような違いがあるのか、考えていきましょう。
1.統合失調症の4つの種類
統合失調症は陽性症状のあらわれ方により、破瓜型・緊張型・妄想型・単純型の4種類に分類することができます。
破瓜型統合失調症は、思春期に発症することが多いです。思考や行動が解体してしまって、自発的な感情や行動が失われていきます。人格が荒廃してしまうこともすくなくありません。薬の効果もあまりなく、社会に適用できずに引きこもってしまうことが多く、予後がよくありません。
緊張型統合失調症は、20歳前後で急激に発症する方が多いです。意欲がなくなってしまうことで、感情がコントロールできずに興奮状態となったり、ぱったりとも意味のあることができなくなったりします。症状は目立ちますが薬が効果的で、予後は良好といえます。
妄想型統合失調症は、幅広く発症される方がいらっしゃいます。妄想や幻覚が特徴的で、一般的な統合失調症のイメージとなっている病型です。予後は様々ですが、薬の効果があることが多いです。
単純型統合失調症は、陰性症状だけがゆっくりとすすんでいきます。このため目立った陽性症状が見当たらず、社会機能が少しずつ落ちていきます。
2.統合失調症の種類①-破瓜型
思春期に発症し、思考や行動がバラバラになってしまいます。薬はあまり効果がなく、予後はよくありません。
「破瓜」とはもともと女性の思春期を表す言葉です。だからといって性差はなく、思春期(15~25歳)頃に発症することが多いため、破瓜型統合失調症といわれています。若いうちに発症するケースが多い統合失調症ですが、破瓜型統合失調症はとくに早い時期によく見られます。
初めのうちはあらゆることに対する意欲が低下し、やがては関心すらも持てなくなります。妄想や幻覚といった症状は、この段階ではあまり顕著に見られることはありません。
破瓜型統合失調症が進行すると妄想や幻覚が症状として加わり、ここでようやく統合失調症の診断が下されることが多いです。それまでは周りの人からは、「元気がない」とか、「いつも疲れているように見える」といった印象を受けるだけのことが多く、これが原因で病気の発見が遅れ、病状も悪化の一途をたどってしまいます。
破瓜型統合失調症を判断するポイントとしては、性格が急に変わったり、生活がだらしなくなったりといった、乱れが明らかにひどくなっていくことです。穏やかに笑顔を見せているかと思えば、突然狂ったように怒りはじめるなど、感情の極端な揺れも特徴の一つです。
破瓜型統合失調症の予後はよくはありません。思考と行動が噛み合わないもどかしさに悩まされ、感情をもち自らの意思で行動していくことがだんだんできなくなってしまいます。そして次第に、自分の部屋に引きこもってしまうようになります。
破瓜型統合失調症の患者さんの治療で大切になるのは、適切な生活教育を根気よく続けることです。興奮して手に負えないときには薬を使うことも必要でしょう。ですが、薬はあくまで対症療法となることが多いです。完全に引きこもってしまわないように、少しずつでも社会にふれる機会を与えてあげることが必要になります。
3.統合失調症の種類②-緊張型
意欲がなくなってしまうことで、感情がコントロールできずに興奮状態となったり、ぱったりとも意味のあることができなくなったりします。薬が効果的で、予後はよいです。
統合失調症の陽性症状として明らかな精神運動の異常が見られるタイプを、緊張型統合失調症といいます。ときに過度の興奮状態になるかと思えば、反対に全く意欲がなくなってしまう混迷状態に陥ることもあります。
緊張型も比較的若いうちに発症するタイプで、それまではごく普通の生活を送ってきたのに、20歳前後で急に症状が現れることも少なくありません。
このタイプの症状の特徴は、意欲が極端に低下してしまうことにあります。興奮状態になることもありますが、これは意欲が低下してしまったため、意志によって感情がコントロールできなくなってしまった状態です。このため、行動の振れ幅がとても大きいです。
緊張型統合失調症に特徴的な症状としては、
- 精神運動興奮
- 反響動作・反響言語(エコラリア):他人の動作・声を繰り返す
- 常同症:同じ行為を繰り返す
- 蝋屈症(カタレプシー):同じ姿勢を取り続ける
- 昏迷・亜昏迷:意識はあるものの外部刺激に反応しない
- 拒絶症:他人に従わずに、逆のことをしようとする
などの症状があります。
興奮状態にあるときは、とくに理由もなく落ち着きを失くし、大声で叫び、一度話し始めると止めどなく言葉を発し続けます。一方で意欲が極端に低い状態にあるときは、奇妙な行動をとってしまいます。
同じ動作をひたすら繰り返す、他人の言葉や動きを真似する、目的のない無意味なことを繰り返す、長時間同じポーズのまま動かない、朝から晩まで横になり呼びかけにも応じない、あらゆることに拒絶する、といった行動は周りの目には明らかに奇怪に映ります。
緊張型統合失調症は、ある日突然発症します。派手な症状ではありますが、薬による治療で比較的早く快方へ向かいます。症状が改善したかと思えば悪化を繰り返すこともありますが、完全に回復することも珍しくなく、予後は良好といえます。
4.統合失調症の種類③-妄想型
妄想や幻聴がみられます。薬は効果があることが多いです。
妄想型統合失調症は、世間一般に抱かれているイメージにもっとも近いと言えるでしょう。実際、世界中に存在する統合失調症の患者さんの中でも最も多いタイプであるといわれています。
30代から、いわゆる中年以降に発症することもあり、平均すると破瓜型や緊張型に比べて年をとってからの発症が多いと言えます。妄想や幻覚といった陽性症状が多く見られます。
よく見られるのは被害妄想です。周りの人が皆、自分の悪口を言っているように感じられ、自分がいないところでも陰口を叩かれているのではないかという考えが頭の中をめぐります。その結果、家族や友人などの身近な人たちの言動に対し過敏になり、ときにそのような人たちとの関係を壊してしまうこともあります。
被害妄想が拡大すると誇大妄想へと発展することもあります。妬まれ、悪口を言われるのは、自分が周りに比べて特別な存在だからと関連付けがされていくのです。
幻覚としては、幻聴が多いです。実際には何もないのに、頭の中で人の声が聞こえるといったもので、内容としては本人を苦しめるものが多いです。統合失調症の幻聴は、何人かで話し合っているような「対話式」や、自分を批評するような「注釈性」であることが多いです。
症状が軽いときにはたいてい、少し変わった性格の人だとみなされるだけで、この段階での発見は難しいです。被害妄想や誇大妄想がひどくなり、「誰かに狙われている」などと言って警察に駆け込むなど、異常な行動をとってようやく精神病を疑われ、治療につながることも多いです。
妄想型統合失調症の中心症状である幻覚や妄想には抗精神病薬が効きやすく、治療は比較的進めやすいタイプであるといえます。ただし、人によって治療効果は異なり、少量の薬で症状が劇的に改善する人もいれば、長期間服用してもなかなか良くならない人もいます。
このように、妄想型統合失調症の予後は人によっても様々です。ただ、高年齢で発症した方が予後は良いという事実があり、とくに中年女性の場合は治療がうまくいくことが多いようです。
5.統合失調症の種類④-単純型
目立った陽性症状はみられず、少しずつ陰性症状がすすんでいきます。
「単純型」と呼ばれるタイプの特徴は、陰性症状が静かに進んでいくという点です。喜怒哀楽の波がなくなっていくため、表情の変化が乏しくなり、周囲で起きる出来事に対して無関心・無気力になってしまうといった症状が目立ちます。幻覚や妄想などの、他のタイプでみられたような目立つ陽性症状は見られません。
病状の進行にしたがって、徐々に自らの世界に閉じこもりがちになり、社会生活を送る能力を失っていきます。症状が同じような不安障害や気分障害との区別がつきにくく、診察を繰り返す中で判明するというケースが多いです。
ですが、経過中に陽性症状がなかったかを断定することは難しく、純粋に単純型統合失調症かどうかを見分けるのは非常に難しいです。
診断基準としては、WHOのICDー10で統合失調症の亜型とされています。ですが、アメリカのDSM‐Ⅳ‐TRでは、統合失調症型パーソナリティ障害などと概念があいまいとなっていました。DSM‐Ⅴになって統合失調症スペクトラムという考え方にかわり、統合失調症のひとつの症状のあらわれ方とされています。
まとめ
統合失調症は陽性症状のあらわれ方により、破瓜型・緊張型・妄想型・単純型の4つのタイプに分類することができます。
破瓜型統合失調症は、思春期に発症して思考や行動がバラバラになってしまいます。薬はあまり効果がなく、予後はよくありません。
緊張型統合失調症は、意欲がなくなってしまうことで、感情がコントロールできずに興奮状態となったり、ぱったりとも意味のあることができなくなったりします。薬が効果的で、予後はよいです。
妄想型統合失調症は、妄想や幻聴がみられます。薬は効果があることが多いです。
単純型統合失調症は、目立った陽性症状はみられず、少しずつ陰性症状がすすんでいきます。
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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