統合失調症はどうして起こるの?統合失調症の4つの原因

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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統合失調症は幻覚や妄想などの陽性症状と、意欲減退や感情鈍麻などの陰性症状を特徴とする病気です。

このような統合失調症は、どのようにしておこるのでしょうか?いろいろな側面から統合失調症の原因を探っていますが、未だにわかっていません。

しかしながら脳の機能異常が分かっていて、それをお薬によって整えることが現在の治療となっています。原因がわかっていないので、現時点では根治的な治療もできないのです。

統合失調症の原因が分かることは、これからの治療の発展にもつながっていきます。ここでは、統合失調症の原因について考えていきたいと思います。

 

1.統合失調症の原因は1つではない

ストレス脆弱性モデルを考えると理解しやすいです。

統合失調症のストレス脆弱性モデルをご紹介します。

統合失調症の原因としては、これまでさまざまな説が報告されています。ですがどれも、まだ仮説の域を出ていません。統合失調症は、生まれつきの先天的な要因のみで発症するわけではなく、生活の中でのストレスが発症のきっかけとなることは少なくありません。

統合失調症の発症した原因は1つではないと考えられています。遺伝や発達といった元々の生物学的な脆弱性がある方が、環境でのストレスにさらされていきます。これによって脳の機能的な異常をひきおこし、統合失調症を発病するという考え方です。

これを「ストレス脆弱性モデル」といい、統合失調症の原因を理解しようとするときに役に立ちます。

生まれながらの素因としては、遺伝や発達の問題が考えられています。環境要因としては、日常生活や生活環境の中での様々なストレスの蓄積です。

これらが相互作用して、脳の機能的な異常をもたらします。脳の機能的な異常としては、視床の機能異常や神経伝達物質の異常がわかっています。

 

2.統合失調症の原因①-遺伝

統合失調症は遺伝要因も大きいですが、環境要因の影響は大きいと考えられています。

これまでの報告によっても差がありますが、統合失調症に生涯発症率は約1%、すなわち100人に1人が罹るといわれています。両親のどちらかが統合失調症の場合、これが約10倍に、両親ともに患者の場合は40~50倍にまで膨れ上がります。

この数字だけをみれば遺伝的な要素が非常に大きいように思われますが、親が統合失調症である場合、家庭環境におけるストレスも小さくないと考えることもでき、遺伝による影響を断言することはできません。実際、近親者の中に統合失調症の人がまったくいないケースの方が数としては多いのです。

統合失調症と遺伝の関係性について、双子についての研究がヒントを与えてくれます。一卵性双生児の一方が統合失調症の場合、もう一方も発症する確率は50%だそうです。一卵性双生児はまったく同じ遺伝子を持っているので、もし遺伝が統合失調症の有無を決めるとすれば、この数字は100%でないといけません。

つまり、遺伝子が全てを決定するわけではなく、まったく同じ遺伝子を持っていてもその後の外的要因によって発症するかどうかは異なるということです。

遺伝的な要素と統合失調症との関連についての研究は現在も進められており、発症に直接的に影響を与える遺伝子の特定などへの試みがなされています。

最近の研究によれば、環境要因の果たす役割はこれまで考えられてきたよりも大きいという見方が強まっています。この環境要因のなかには、家庭環境、胎児期の合併症、神経発達に関わる物質の異常などが含まれ、比較的年齢を重ねてからのものだと、薬物乱用なども統合失調症の発症に影響してしまうことが確認されています。

 

3.統合失調症の原因②-発達(脳構造)

統合失調症の患者さんでは、脳の何らかの構造異常が存在する可能性があります。

統合失調症の原因として、脳構造における問題が関係しているのではないかという報告もあります。患者さんの脳をMRIやCTで解析した結果、通常の人間の脳に比べて前頭葉や側頭葉のサイズが小さい傾向が見られることがわかっています。

しかしながら、統合失調症の発症により脳に異常が生じた可能性もあります。脳構造の異常が先か、発症が先かという問題がまだ解明されていません。

脳構造の異常が統合失調症の原因であるという仮説が正しいと認めるには、一つ問題点があります。脳に大きな異常が見られない統合失調症患者さんも少なからず存在するのです。

ただMRIやCTではミクロレベルまで分析することはできないので、はっきりとしたことは未だ言えません。統合失調症の患者さんに、とても小さな脳構造の異常が認められる可能性はあります。

 

4.統合失調症の原因③-視床の異常

感覚のフィルターである視床が障害されて、うまく調整できなくなってることで症状がでてくるという仮説があります。

いろいろな患者さんのお話しをうかがうと、視床フィルター仮説という考え方が、症状の進み方とよく合うように感じますのでご紹介したいと思います。

視床には身体の感覚が集まってきて、うまく調整するような働きをしています。そして適切な質と量の感覚刺激だけを大脳に届けるようなフィルターの機能があります。統合失調症の方は、このフィルターが障害されて過度の刺激が大脳に伝わってしまいます。

人は体験していることを、あるがままには感じていません。意識が集中していることに関しては強く体験を感じ、記憶にも鮮明に残ります。反対に関心のないことに関しては淡い体験となり、記憶にもあまり残りません。

みなさんも思い返してみると、いろいろな物事に強弱をつけて体験をしていることがわかるかと思います。街を歩いていると様々な体験を同時にしていますが、意識にのぼってくるのは限られた経験です。これが、視床のフィルター機能です。

統合失調症の方は、このフィルター機能が少しずつうまくいかなくなっていきます。はじめは意識していない時には、感覚や思考がよけいに体験されるようになります。普段なら気にならない日常の生活音などが気になるようになっていきます。

悪化していくにつれて、意識している時にも少しずついろいろなことが気になっていきます。いろいろな物事に対して過敏になってしまうので、ストレスがかかっていきます。このため、さらに状態が悪化していくという悪循環が進んでいきます。

こうして症状が進んでいくと、本来は存在しない幻聴や妄想などの病的体験がなされるようになっていきます。

 

5.統合失調症の原因④-脳内神経物質

このように統合失調症では、様々な原因が考えられています。その中で現在の治療と結びつく原因が、脳内神経伝達物質ドパミンの異常です。

統合失調症では、脳内の伝達物質の異常があることがわかっています。もっとも影響が大きいといわれているのがドパミンです。現在の統合失調症の治療は、このドパミンを調整することで効果を発揮します。

その他の伝達物質として、グルタミン酸の異常も統合失調症に関係しているといわれています。

 

5-1.統合失調症とドパミン

中脳辺縁系でドパミンが過剰になり陽性症状が生じ、中脳皮質系でドパミンが欠乏して陰性症状が起こると考えられています。

統合失調症の症状の直接的な原因として考えられているのが、ドパミンの分泌異常になります。中脳辺縁系というところでドパミンが過剰に分泌されることで幻覚や幻聴といった陽性症状が生じ、中脳皮質系で分泌されるドパミンの量が減ると陰性症状が起こると考えられています。

現在治療に用いられる薬は、ドパミンの分泌量を調節する効果のあるものが中心です。しかしドパミンと統合失調症の関係性について、完全にはわかっていません。

実際に治療効果があることで裏付けられてはいますが、効果が遅れて出現することや効果のない患者さんもいます。また、なぜこのようなドパミンの異常がみられるかもよくわかっていません。

 

5-2.統合失調症とグルタミン酸

グルタミン酸の過剰も原因とも考えられています。

ドパミン仮説以外として、新たに登場した「グルタミン酸仮説」が、統合失調症との関連を説明するものとして頭角をあらわしてきました。

グルタミン酸とは神経伝達物質の一種で、幅広くさまざまな精神活動に関与しています。このグルタミン酸の活動が過剰になると、統合失調症に見られるような精神的症状を引き起こしてしまうという考え方が「グルタミン酸仮説」です。

この仮説は、フェンサイクリジン(PCP)という麻酔薬を使用した人に統合失調症と類似した症状が現れた、という事例から打ち出されました。このフェンサイクリジンという麻酔薬には、グルタミン酸受容体の機能を妨害する働きがあり、このことからグルタミン酸の機能低下が統合失調症の発症に影響しているのではないかと考えられるようになったのです。

ある報告によると、グルタミン酸受容体に作用する薬を投与したところ、統合失調症の陰性症状や認知機能障害に対して効果を見せたそうです。ただ、グルタミン酸受容体(NMDA受容体)はとても薬の扱いが難しく、これに作用する薬は現時点では研究段階になります。

 

まとめ

統合失調症の発症を考えるにあたっては、ストレス脆弱性モデルを考えると理解しやすいです。

遺伝要因も大きいですが、環境要因の影響は大きいと考えられています。

また、脳の何らかの構造異常が存在する可能性があります。

これらが生活上のストレスと合わさって、脳の機能的な異常につながります。

感覚のフィルターである視床が障害されて、うまく調整できなくなってることで症状がでてくるという仮説があります。

脳内の神経伝達物質に異常が認められて、中脳辺縁系でドパミンが過剰になり陽性症状が生じ、中脳皮質系でドパミンが欠乏して陰性症状が起こると考えられています。

グルタミン酸の過剰も原因とも考えられています。

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