電気けいれん療法(電気ショック療法)とは?

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医3名、精神科医4名で協力して診療をしています。所属医師で協力して、記事を書いています。
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電気けいれん療法は、頭皮の上から電流を流して痙攣を起こす治療法です。世間では、電気ショック療法とも呼ばれている治療法です。

精神科の薬が開発される以前に試行錯誤の中で見つけられた方法ですが、現在でも切り札として使われている治療法です。怖いイメージがあるかもしれませんが、非常に有効な治療であることは間違いありません。

ここでは、電気けいれん療法について考えていきたいと思います。

 

1.電気けいれん療法とは(ECT)

電流を流して、人工的にけいれんを起こす治療です。

電気けいれん療法は、1940年ごろからはじまって治療です。当時は、人工的にショックを起こすことで精神症状がよくなることがわかっていましたが、危険性も高いものでした。その中で、脳に電流を流して、てんかん発作(けいれん)を人工的に引き起こすことで、統合失調症がよくなることが発見されました。これまでのショック療法よりも安全性が高く、統合失調症をはじめとした精神科の薬が開発されるまでは、もっとも一般的な治療となっていました。

その後、薬物療法の発達とともに少しずつ主役の座から降りていきました。そんな中で、一部の病院で行っていた懲罰的な電気けいれん療法などが社会的に問題となり、悪いイメージがつくようになってしまいました。

ですが、電気けいれん療法の効果は、薬物療法をはるかにしのぐものがあります。少しずつその効果が再評価されるようになり、方法も改良されてきていきました。このため、現在でも薬物療法が上手くいかない場合の最後の手段として、電気けいれん療法は行われています。

けいれんを起こすので怖いかも知れませんが、通電中の痛みなどはあまり感じません。意識が戻った後に、頭痛や寝違えたような身体の痛みなどが残ることがあります。

 

2.修正型電気けいれん療法とパルス波への改良

副作用を軽減するために、麻酔や筋弛緩薬を用いた修正型電気けいれん療法や、通電方法をパルス波にするなど改良がされています。

電気けいれん療法は、電極を頭皮にあてて脳に電流を流すことで効果を発揮します。なぜ効果があるのかは、今でもはっきりはわかっていません。電流を流すことで筋肉のけいれんが起こります。患者さんの状態によっては、血圧を上昇させるなどの循環状態への影響、骨折の危険を伴うことがあります。

このため、脳に刺激を加えてもけいれんを起こさないようにと、筋弛緩薬を使います。恐怖心を与えないために、短時間の全身麻酔をしていきます。身体のけいれんを抑えるこの方法を、修正型電気けいれん療法(m-ECT)といいます。

血圧の上昇や骨折などを防ぐことができますので、心臓に病気を抱える方や高齢の方などはこの方法で行います。できるならば、すべての方が修正型の方がよいのかもしれません。現状としては、麻酔科医がいる精神科が少ないことや金銭的な面があり、麻酔なしで行うことも多いです。

 

また、通電の方法も改良されています。以前はコンセントからの電流を変圧しただけのサイン波を使っていました。ですが、サイン波はけいれんを起こすには効率がよくありません。パルス波の方が無駄は少なく効率よくけいれんを起こせるので、副作用が少ないと報告されています。ただ、けいれんを起こす力はサイン波の方が確実とされています。

現在でもサイン波を使っている施設が多いですが、サイン波の発生装置は日本では生産中止となっていますので、今後はパルス波に移行していくと思われます。

 

3.電気けいれん療法の効果と適応

薬物療法をしのぐ効果があり、切り札として使われます。

電気けいれん療法は、うつ病や躁うつ病、統合失調症などの精神疾患に対して使われています。電気けいれん療法の効果は、薬の効果をしのぐものがあります。薬でうまく治療ができなかった方の切り札となります。

  • 自殺企図の可能性が高い
  • 混迷状態が強く服薬が難しい
  • 躁状態が強くて危険性が高い
  • 薬物療法で効果がない
  • 薬を使った治療ができない

このような時に行われます。早くから電気けいれん療法を行っていくべき症例があるかどうかは、まだ議論がなされています。アメリカのガイドラインでは、幻覚や妄想などを伴うような深刻な抑うつ状態では、早くから電気けいれん療法を行うべきとしています。

日本では、原則は薬での治療を優先させるようになっていて、電気けいれん療法は上記のようにやむを得ない場合となっています。

 

4.電気けいれん療法の副作用

血圧変化・不整脈・頭痛・吐き気・健忘・せん妄・躁転などが副作用としてみられます。

重度の副作用は5万件に1回程度と、出産よりもリスクは少ないといわれています。ごくまれにみられる死亡事故は、心血管系によるものです。

主な副作用としては、

  • 血圧変化(上がることも下がることもある)
  • 不整脈
  • 頭痛(前頭部のドクドクしたものが多い)
  • 吐き気
  • 徐々に改善する健忘
  • 急に意識障害を起こして混乱するせん妄
  • うつ状態から躁状態にかわる躁転

健忘がでてくると、治療効果も並行してでてくることが多いです。この健忘の副作用は高齢者で多く、大抵は数日から数週間で治まりますが、まれに続くこともあります。

 

5.電気けいれん療法の実際

けいれんを起こりにくくする薬を中止してから、複数回の通電をしていきます。

有効なけいれんを起こすために、事前に薬物の調整をする必要があります。抗てんかん薬は中止、抗不安薬もできる限り減量します。また、リチウムや抗うつ剤は副作用を高める可能性があり中止が推奨されていますが、抗うつ剤はやめられないケースも多いです。抗うつ剤を使用していても副作用のリスクはかわらないとする報告もあります。

通電は週に2~3回、合計8~12回程度行います。最低5回は行った方が良いといわれています。繰り返し通電をすると、けいれんが起こりにくくなって強い電流を加える必要がでてくることもあります。

電気けいれん療法は効果が大きいです。薬では治療が難しかった方も、電気けいれん療法でよくなることがあります。ですが、効果が長続きしないことが多いのが難点です。電気けいれん療法を行った後に、うまく薬での治療ができればよいのですが、難しい場合は定期的な電気けいれん療法で維持していくこともあります。

 

まとめ

電気痙攣療法とは(ECT)、電流を流して、人工的にけいれんを起こす治療です。

副作用を軽減するために、麻酔や筋弛緩薬を用いた修正型電気けいれん療法や、通電方法をパルス波にするなど改良がされています。

薬物療法をしのぐ効果があり、切り札として使われます。

副作用としては、血圧変化・不整脈・頭痛・健忘・躁転などがみられます。

けいれんを起こりにくくする薬を中止してから、複数回の通電をしていきます。

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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医3名、精神科医4名で協力して診療をしています。所属医師で協力して、記事を書いています。
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