桂枝湯【45番】の効果と副作用
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
桂枝湯は、風邪の初期症状に使われることの多い漢方薬になります。
風邪の時の漢方薬として有名なのが葛根湯になりますが、桂枝湯に葛根と麻黄を加えたものが葛根湯になります。
桂枝湯では体力が弱っていて、汗をじっとりと書いているような風邪の方に使われる漢方薬です。穏やかに発汗を促し、免疫を高めて風邪の治りを早くします。
細菌性の風邪であれば抗生物質が効果的なので、ウイルス性の風邪に使うと良いでしょう。患者さんの体質をみながら使っていきます。身体の弱い方の風邪の初期症状に向いている漢方薬と言えます。
漢方薬にはそれぞれ番号がついていて、桂枝湯は「ツムラの45番」などとも呼ばれます。ここでは、病院で処方される桂枝湯の効果と副作用について、詳しくみていきたいと思います。
1.桂枝湯【45番】の生薬成分の効能
桂枝湯は、穏やかに身体をあたためて発汗を促す漢方薬です。体力が落ちていて汗をじんわりとかいている方に向いていて、新陳代謝と免疫を高めて風邪を早く治します。
漢方は、何種類かの生薬を合わせて作られています。生薬は自然界にある天然のものが由来です。天然のものといっても、生薬それぞれに作用が認められます。ですから、漢方薬は生薬の合剤といえるのです。
桂枝湯は、5種類の生薬から有効成分を抽出して作られています。まずはそれぞれの生薬成分の作用をみていきましょう。
- 桂皮(4.0g):発汗作用・解熱作用・鎮静作用・健胃作用・理気作用
- 芍薬(4.0g):鎮痛作用・抗痙攣作用・血管拡張作用
- 生姜(1.5g):発汗作用・制吐作用・健胃作用・鎮咳作用
- 大棗(4.0g):健胃作用・強壮作用・利尿作用・鎮静作用
- 甘草(2.0g):鎮痛作用・抗痙攣作用・鎮咳作用
※カッコ内は、ツムラの製剤1日量7.5gに含まれる生薬の乾燥エキスの混合割合です。
桂枝湯は5種類の生薬からできています。
桂皮はニッキやシナモンとしてよく知られています。身体をあたためながら発汗させ、気をめぐらせる作用があります。このため穏やかに発汗させ、新陳代謝をよくしてくれます。
生姜は冷えた身体を温め、消化機能を整える作用があります。大棗は料理にもつかわれているナツメのことですが、胃腸の機能を整えたり、精神を安定させたり筋肉の緊張による痛みを取り除いたりしてくれます。
芍薬は血管を拡張させて血のめぐりを改善させます。甘草は、痛みを取り除いたり筋肉の緊張を緩める作用があり、他の4つの生薬を調和させる働きがあります。
桂枝湯はこのような生薬成分でできていて、消化機能が低下していて体力が落ちている方に使われます。身体を温めて穏やかに発汗させることで、身体の表面にある病気を改善させます。
桂枝湯は葛根湯をはじめ、様々な漢方のもとになっており、桂枝湯類の基本処方とされています。
2.桂枝湯の証
陰陽(陰)・虚実(虚)・寒熱(中)・気血水(気虚)
漢方では、患者さん一人ひとりの身体の状態をあらわした「証」を考えながら薬を選んでいきます。証には色々な考え方があり、その奥はとても深いです。
漢方薬を選ぶに当たって、患者さんの体格や体質、身体の抵抗力やバランスの崩れ方などにあわせて「証」をあわせていく必要があります。証を見定めていくには四診という伝統的な診察方法を行っていくのですが、そこまでは保険診療の病院では行わないことがほとんどです。
病院では、患者さんの全体像から「証」を推測して判断していきます。漢方の代表的な証には、「陰陽」「虚実」「寒熱」「表裏」の4つがあります。
このうち医者が参考にする薬の本には、たいてい「陰陽」と「虚実」しかのっていません。陰陽は身体全体の反応が活動的かどうかをみて、虚実は身体の抵抗力や病気の勢いをみます。つまり病院では、以下の2点をみています。
- 体質が強いかどうか
- 病気への反応が強いかどうか
さらに漢方では、「気血水」という3つの要素にわけて病気の原因を考えていきます。身体のバランスの崩れ方をみていくのです。漢方の証について詳しく知りたい方は、「漢方の証とは?」をお読みください。
桂枝湯が合っている方は、以下のような証になります。
- 陰陽:陰症
- 虚実:虚証
- 寒熱:中等症
- 気血水:気虚
3.桂枝湯の効果と適応
- ウイルス性の風邪の初期症状
桂枝湯は、「傷寒論」や「金匱要略」という漢方の古典書に紹介されています。最も古い漢方の古典である傷寒論でも最初に取り上げられているため、衆方の祖とも呼ばれています。
5種類それぞれの生薬成分の効果があわさって、ひとつの漢方薬としての効果がみられます。
桂枝湯は、風邪の初期に使われる漢方薬です。体力のない虚弱な方に適しています。汗がじんわりとでていて、脈が浮いていて、それでいて寒気がある時に使っていきます。
桂枝湯は身体をあたためながら発汗させるため、穏やかに新陳代謝と免疫を高めてくれるのです。ですから抵抗力が下がっている患者さんの風邪の初期に使われるのです。
風邪のときによくつかわれる漢方薬をみていきましょう。もっとも強く作用するのが麻黄湯です。麻黄湯は発汗作用が最も強く、インフルエンザなどで関節の節々が痛く、悪寒がしていて汗が出ていない時に使われます。
有名な葛根湯は、桂枝湯と麻黄湯の間の位置づけになります。比較的体力があって、筋肉に痛みやこわばりがある時に使います。さらさらした鼻水があって脈が浮いている時は小青竜湯、軽い風邪で微熱の時には香蘇散を使っていきます。
なお、添付文章に記載されている桂枝湯の適応は以下のようになっています。
体力が衰えたときの風邪の初期
4.桂枝湯の使い方
1日2~3回に分けて、空腹時(食前・食間)が基本です。飲み忘れが多くなる方は食後でも構いません。
桂枝湯は、ツムラ・コタロー・テイコク・オオスギなどから発売されています。生薬成分の含まれる量は同じなのですが、会社によって漢方薬の1日量が異なります。桂枝湯では、ツムラでは7.5g、コタローでは6.0gになっています。
桂枝湯は、1日2~3回に分けて服用します。漢方薬は空腹時に服用することを想定して配合されています。ですから、食前(食事の30分前)または食間(食事の2時間後)に服用します。量については、年齢や体重、症状によって適宜調整します。
漢方薬を空腹時に服用することで、麻黄や附子などの効果の強い生薬は胃酸によって効果をおだやかになり、その他の生薬は早く腸に到達して吸収がよくなります。桂枝湯では、空腹時の方が吸収はよくなります。
とはいっても、空腹時はどうしても飲み忘れてしまいますよね。現実的には食後に服用しても問題はありません。ただし、保険適応は用法が食前のみなので、形式上は変更できません。
桂枝湯は発汗させることで風邪を早く治してくれる漢方薬です。このため桂枝湯を服用したら、身体をできるだけあたためる方がよいです。そして発汗して風邪がよくなって来たら、桂枝湯は続けて服用しないようにしましょう。
5.桂枝湯の効き目とは?
効果は風邪の初期に使われて、風邪の治りを早くしてくれる漢方薬です。
それでは、桂枝湯の効き目はどのような形でしょうか。
桂枝湯の効果は、風邪で使う漢方薬の中では効果がマイルドです。穏やかに身体をあたため、発汗させることで新陳代謝と免疫を高めます。
このため、風邪がひどくなってから使ってもあまり意味がありません。「風邪かな?」と思ったら早めに使っていきます。
桂枝湯の効果は、身体本来の免疫力を高めることによって風邪を早く治してくれます。風邪には細菌が原因のものと、ウイルスが原因のものがあります。細菌が原因ですと抗生物質を使う方が早く良くなりますので、桂枝湯はウイルス性の風邪に有効です。
細菌性とウイルス性の違いについて詳しく知りたい方は、「風邪を早く治す方法とは?」をお読みください。
6.桂枝湯の副作用
桂枝湯では、生薬固有の副作用として偽アルドステロン症に注意が必要です。
漢方薬は一般的に安全性が高いと思われています。しかしながら、生薬は自然のものだから副作用は全くないというのは間違いです。
漢方薬の副作用としては、大きくわけて3つのものがあります。
- 誤治
- アレルギー反応
- 生薬固有の副作用
漢方薬の副作用として最も多いのが誤治です。漢方では、その人の状態に対して「漢方薬」が処方されます。ですから状態を見誤って処方してしまうと、調子が悪くなってしまったり、効果が期待できません。このことを誤治といいます。
誤治では、さまざまな症状が認められます。これを副作用といえばそうなるのですが、その原因は証の見定めを間違えたことにあります。あらためて証を見直して、適切な漢方薬をみつけていきます。桂枝湯は穏やかな漢方なので誤治によって副作用がでることは少ないですが、効果が不十分になってしまいます。
また、食べ物でもアレルギーがあるように、生薬にもアレルギーがあります。アレルギーはどんな生薬にでも起こりえるもので、体質に合わないとアレル ギー反応が生じることがあります。鼻炎や咳といった上気道症状や薬疹や口内炎といった皮膚症状、下痢などの消化器症状などが見られることがあります。飲み始めに明らかにアレルギー症状が出ていたら、服用を中止してください。
そして、生薬自体の作用による副作用も認められます。生薬の中には、その作用が悪い方に転じて「副作用」となってしまうものもあります。
桂枝湯の生薬成分の甘草は、大量に服用すると生薬としての副作用が懸念されます。「偽アルドステロン症」と呼ばれ、高血圧やむくみ、低カリウム血症などが認められることがあります。
低カリウム血症になると、筋肉のけいれんや麻痺が起こることがあります。甘草の入っている他の製剤やグリチルリチンとの飲み合わせには、十分な注意が必要です。また、長期間にわたって複数の漢方薬を服用するときは念のために注意してください。
漢方薬の副作用について詳しく知りたい方は、「漢方薬で見られる副作用とは?」をお読みください。
まとめ
桂枝湯は、穏やかに身体をあたためて発汗を促す漢方薬です。体力が落ちていて汗をじんわりとかいている方に向いていて、新陳代謝と免疫を高めて風邪を早く治します。
陰陽(陰)・虚実(虚)・寒熱(中)・気血水(気虚)
桂枝湯は、以下のような方に使われます。
- ウイルス性の風邪の初期症状
投稿者プロフィール
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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