SSRIの副作用(対策と比較)

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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2000年ごろから、SSRIが日本でも発売されるようになりました。従来の三環系・四環系抗うつ薬と比べると、明らかに副作用は軽減されています。

しかしながら、新しい抗うつ剤特有の副作用もみられます。SSRIの副作用について、どのように考えていけばよいでしょうか?

ここでは、SSRIの副作用の考え方とその対処法を考えていきたいと思います。また、日本で発売されている抗うつ剤の副作用を比較していきたいと思います。

 

1.抗うつ剤の副作用の考え方

5つの物質に分けて考えます。よくある副作用としては、便秘・口渇・ふらつき・眠気・体重増加・吐気・下痢・性機能障害・不眠がみられます。

抗うつ剤は、セロトニン・ノルアドレナリンなどの脳内物質を増加させることで作用します。ですが、これらが過剰に作用してしまうと、副作用として身体に症状が出てきてしまいます。また、抗うつ剤はこれらの2つ以外にも3つの物質に作用してしまいます。

ですから、抗うつ薬の副作用を考える時は5つの物質をみていきます。実際に出てきた副作用と、それぞれの薬の作用の特徴を考えて、どの物質が原因かを考えていきます。よくある副作用の症状を、5つの物質にわけてまとめます。

  • セロトニン:嘔吐・下痢・不眠・性機能障害
  • ノルアドレナリン:動悸・尿閉
  • 抗コリン:口渇・便秘・尿閉
  • 抗アドレナリン(α1):眠気・立ちくらみ
  • 抗ヒスタミン:眠気・体重増加

ノルアドレナリン・セロトニンは症状の改善につながりますが、過剰に働きすぎて副作用となることがあります。抗コリン作用・抗α1作用・抗ヒスタミン作用などが副作用としてでてきます。

その他に、まれではありますが命に関わるものとして不整脈があります。心臓の電気活動に影響して、1回の心臓収縮にかかる電気活動時間が延長します。これが心電図のQT時間の延長という形であらわれます。それによって致死的な不整脈が出現しやすくなるので、心電図をチェックしていく必要があります。

 

2.副作用への対応方法

慣れていきますので、まずはがまんしてください。生活上での支障が大きくなるようなら対策を考えます。
①薬を減薬する②他の薬にかえる③副作用を和らげる薬を使う

抗うつ薬にはさまざまな副作用があります。多くの副作用が多少なりとも「慣れる」ことが多く、なんとかなる範囲でしたら我慢してください。生活習慣などの薬を使わない対策がある場合は、積極的にためしてください。
薬の服用方法を工夫することで副作用が軽減することもあるので、主治医に相談してみましょう。

これらを踏まえても生活上での支障が大きくなるようでしたら、対策を考えていきます。対策としては、

①減薬する
②他の薬にかえる
③副作用を和らげる薬を使う

の3つがあります。①~③は、効果と副作用の兼ね合いで考えていきます。効果が十分ならば①、増やしても効果の期待が少ない時は②、薬を続けるメリットがあるならば③になります。

さて、③としてよく用いるものや生活習慣を簡単にまとめたいと思います。

副作用 薬を使わない対策 副作用を和らげる薬
便秘 排便習慣・食物繊維・水分・運動習慣 センノサイド・マグミット・大黄甘草湯など
口渇 唾液腺マッサージ・口呼吸 白虎加人参湯
ふらつき 朝食をしっかり・ゆっくり立つ メトリジン・リズミックなど
眠気 睡眠をしっかり・昼寝習慣
体重増加 食事管理・運動習慣
吐き気 食事を控えめにする 胃薬・ガスモチン・ナウゼリン・プリンペランなど
下痢 セレキノン
性機能障害
不眠 睡眠に良い生活習慣・自律訓練法 鎮静系の抗うつ薬・睡眠導入剤など
不整脈

 

3.SSRIの副作用の特徴

SSRIでは、吐き気・下痢・不眠・性機能障害などの副作用が目立ちます。

SSRIは、セロトニンだけを増やすように作られた抗うつ剤です。このため、副作用の中心も「セロトニン」によるものです。セロトニンを増やすことでお薬の効果を期待しているのですが、セロトニンは他にもいろいろな働きをしています。脳だけでなく、胃腸にも作用しています。ですから、セロトニンが過剰に作用してしまって、副作用となるのです。

セロトニンは嘔吐中枢に作用して吐き気をひきおこします。また、胃腸にも働いて腸の動きを活発にして下痢になることがあります。これはよくある副作用ですので、SSRIを飲まれる方は心づもりをもってください。胃腸の副作用は薬が身体になれてくると落ち着いていきます。一時的に薬で胃腸薬でサポートしていくのもありです。

また、セロトニンの刺激が強くなりすぎると睡眠が浅くなることがわかっています。このため途中で目が覚めてしまったりと、不眠の原因となることがあります。反対に眠気を感じる方もいらっしゃいます。作用機序だけをみると眠気はおこりにくいのですが、薬を飲むと眠くなってしまう方が時々います。この場合は、飲み方の工夫や薬の調整を行っていきます。

SSRIでは性機能障害が非常に多いです。性欲自体が低下する方も多いです。とくにSSRIのジェイゾロフトとパキシルでは70~80%とも報告されているので、必発といってもよいでしょう。これもセロトニンが関係しているといわれていて、気分が落ち着くことで性的な興奮も起こりづらくなるのかもしれません。性機能低下が問題になる場合は、薬の変更なども考慮していきます。

 

4.SSRIと他剤での副作用の比較

昔からある三環系抗うつ薬は、効果は強いですが副作用も多いです。新しい抗うつ剤のSSRI・SNRIは、全体的に副作用は少ないです。NaSSAは、眠気や食欲増加が多いですが効果は強いです。

昔からある三環系抗うつ薬は、いろいろな受容体に作用してしまいます。このため、全体的に副作用が強くでてしまいます。便秘・口渇・ふらつき・眠気・体重増加などの副作用は、新しい抗うつ剤と比較すると多い傾向にあります。

四環系抗うつ剤は、三環系抗うつ剤の副作用をマイルドにしたものです。その分効果が不十分であることが多いので、抗うつ剤としてはあまり使われていません。眠気の副作用が強いものが多いので、睡眠薬代わりに使われたりすることもあります。

 

新しい抗うつ剤は、作用がしぼられているので全体的に副作用は少ないです。ただ、特定の物質だけを増やすために、特有の副作用やデメリットもみられます。副作用としては、性機能障害・吐き気・下痢・不眠がみられます。デメリットとしては、離脱症状が多くなってしまうことがあります。SSRIはセロトニンを、SNRIはセロトニンとノルアドレナリンを増やすお薬です。どちらもセロトニンが過剰に増加してしまって、これらの副作用がみられます。また、身体に薬がなれてしまって、急に薬が抜けてしまうと離脱症状が出てくることがあります。これは、明らかに昔の抗うつ剤よりも多いです。

新しい抗うつ剤の中でも、NaSSAは独特なお薬です。四環系抗うつ剤のテトラミドを改良したものですが、副作用として眠気や食欲上昇が強くみられます。効果はしっかりとしていて、新しい抗うつ剤で比較すると、一番しっかりと効果が期待できるお薬です。

 

以下の表では、代表的な抗うつ薬の副作用を比較しました。

代表的な抗うつ薬について、副作用を比較して表にまとめています。

5.症状ごとのSSRIと他剤での副作用の比較

代表的な副作用について、抗うつ薬を比較しながら見ていきたいと思います。

 

5-1.便秘・口渇

三環系・四環系抗うつ剤で多いです。

抗コリン系の副作用として、便秘や口渇があります。抗コリン作用が働くと、一般的に消化活動が抑えられます。このため、唾液の分泌が低下し、腸の動きも悪くなります。

この副作用が強くみられるのは、昔からある三環系抗うつ薬です。三環系抗うつ薬の中ではアモキサンが少ないです。新しい抗うつ剤は、むしろ下痢気味になることが多いので、副作用としては少ないです。SSRIの中では、抗コリン作用がみられるパキシルでやや多いでしょうか。ルボックス/デプロメールでもみられることがあります。

代表的な抗うつ薬の副作用のうち、便秘・口渇を比較して表にしまとめました。

5-2.ふらつき

三環系・四環系抗うつ剤でよくみられます。NaSSAでは眠気と合わさって、ふらつきがみられることがあります。

抗α1作用の副作用として、立ちくらみやふらつきがよくみられます。これには血管の調整が関係しています。アドレナリンがα1受容体に作用すると、血管が収縮します。その結果として血圧を上げ、血のめぐりをよくします。抗α1作用とはこの作用をブロックしますので、結果として血圧が十分にあがらず、頭に血がまわらなくなります。このようになると、立ちくらみやふらつきとなって症状が現れてきます。

三環系の抗うつ剤ではよく起きる副作用です。新しい抗うつ薬ですとリフレックス/レメロンのNaSSAでは、眠気と合わさって、ふらつきがみられることがあります。

代表的な抗うつ薬の副作用のうち、ふらつきを比較して表にしまとめました。

5-3.眠気

三環系・四環系抗うつ剤・NaSSA・デジレル/レスリンで見られることが多いです。

詳しくは、「抗うつ剤の眠気と7つの対策」をお読みください。

眠気に関しては、複数の要素が関係するので複雑です。大きくは3つの働きが関係しています。抗ヒスタミン作用、抗α1作用、セロトニン5HT2受容体阻害作用です。これらのバランスで眠気が決まります。

眠気が強い効果をもつ抗うつ薬を鎮静系抗うつ薬と呼びます。NaSSAや四環系抗うつ薬、デジレル/レスリンなどが分類されます。この次に位置づけられるのが三環系抗うつ薬です。三環系抗うつ薬よりもSSRIは眠気が少ないです。

 

SSRIの中では、パキシル・ルボックス/デプロメールがやや多い印象です。SNRIはノルアドレナリンに覚醒作用があるため、さらに眠気が少ないです。

本来はあまり眠気が強くならないお薬なのに、眠気の副作用がみられるときもあります。この場合、夜の睡眠が浅くなっていることが原因であることもあります。このような時は、睡眠が深くなるような抗うつ薬を追加すると改善することもあります。

代表的な抗うつ薬の副作用のうち、眠気を比較して表にしまとめました。

5-4.体重増加

三環系・四環系抗うつ剤でよくみられます。新しい抗うつ剤のうちNaSSAでよくみられます。

詳しくは、「抗うつ剤は太るの?4つの対策」をお読みください。

体重増加には、2つの作用が関係しています。抗ヒスタミン作用による食欲増加と、セロトニンによる代謝抑制作用です。

ヒスタミンは視床下部という部分にある満腹中枢を刺激する物質です。ですから、ヒスタミンは食欲を抑える働きがあります。これをブロックする効果が強いと食欲が増加します。また、ヒスタミンがブロックされると、グレリンというホルモン増加をひきおこします。これが摂食中枢を刺激して、食欲を増進させるともいわれています。ですから、抗ヒスタミン作用は食欲増加につながります。

セロトニンは精神を安定させ、リラックス状態をつくっていきます。すると、身体のエネルギーとしては、消費が抑えられるようになります。このように、セロトニンには代謝抑制効果があります。

 

三環系抗うつ薬は、抗ヒスタミン作用もセロトニン作用も強いものが多いです。このため太りやすい薬が多いです。新しい抗うつ薬のリフレックス/レメロンも抗ヒスタミン作用が強いので太りやすいです。反対にSNRIは、ノルアドレナリンにより活動的にする効果もあるので太りにくいです。

SSRIの中では、パキシルが太りやすい傾向にあります。パキシルは発作的に過食になる方が多いです

抗うつ剤の太りやすさを比較してみました。

5-5.吐き気・下痢

新しい抗うつ剤のSSRIやSNRIでよくみられます。

詳しくは、「抗うつ剤の吐き気・下痢と5つの対策」をお読みください。

抗うつ薬は脳内のセロトニンに作用します。抗うつ剤で吐き気がでてきしてしまうのには、このセロトニンが大きく関係しています。

セロトニンの受容体は脳には10%もありません。90%以上の大部分は胃腸に存在していて胃腸の働きの調節をしています。セロトニンが分泌されると きは、胃腸が中身を出したいときです。ですから、吐き気や下痢といった形で、中身を外に出そうとする働きをします。もう少し詳しくみてみましょう。

胃腸にはセロトニン5HT受容体が分布していて、これが刺激されると迷走神経という神経が刺激されます。この神経が脳の延髄にある嘔吐中枢を刺激してしまいます。同時に、このセロトニン5HT受容体は腸の動きを活性化する働きがあります。このため、腸の動きが活発となり下痢が生じるのです。

しかしながら、徐々に体が慣れてきますので、徐々に副作用が薄れていく方がほとんどです。このため、一時的に胃腸薬を使うことでしのげることが多いです。

 

抗うつ薬の中では、SSRIやSNRIに多くみられます。SSRIの中では、ルボックス/デプロメールに多い印象で、サインバルタは他のSSRIと同じような印象です。また、新しい抗うつ薬のうちリフレックス・レメロンは、ほとんど吐き気などは認められません。これはセロトニン5HT受容体をブロックする作用があるためです。三環系抗うつ薬は、新しい薬と比較して少ないです。

代表的な抗うつ薬の副作用のうち、吐き気・下痢を比較して表にしまとめました。

5-6.性機能障害

SSRIでよくみられる副作用です。他の抗うつ剤でも全般的に認められます。

詳しくは、「抗うつ剤の性欲低下・性機能障害と5つの対策」をお読みください。

性機能障害は、抗うつ薬全般でよくみられます。性欲自体が低下する形になることが多いです。これにはセロトニンが関係しています。セロトニンは、気分を落ち着かせリラックスさせる薬になります。このため、性欲も必然的におちてしまいます。

さらに、抗α1作用は性機能にも影響があります。勃起をする時には、血液が陰茎に集中することが大事ですが、この時に、血管の調整をになうα1作用が必要になります。これがブロックされますので、勃起不全や射精障害になることがあります。

 

抗うつ薬としては、パキシルとジェイゾロフトが多いです。なかなか恥ずかしくて表にでてこない副作用ですが、およそ70~80%の方に副作用としてあらわれるといわれています。新しい抗うつ薬のうちリフレックス/レメロンは、性機能障害が少ないといわれていますが、20%程度で認められます。少ない理由としては、セロトニン5HT受容体をブロックする作用があるためと考えられています。SNRIのサインバルタはその間くらいといわれていて、40%程度の方に認められます。SSRIの中では、ルボックス/デプロメールが少ないといわれていますが、30%程度に認められます。

三環系抗うつ薬や四環系抗うつ薬では、ジェイゾロフトやパキシルよりは性機能障害が少ないですが、比較的よくみられる副作用です。

代表的な抗うつ薬の副作用のうち、性機能障害を比較して表にしまとめました。

5-7.不眠

SSRIやSNRIでよく認められる副作用です。

不眠になる原因としては、セロトニンとノルアドレナリンが関係しています。セロトニン5HT受容体が刺激されると、深い睡眠が妨げられ、睡眠が浅くなります。また、ノルアドレナリンは交感神経に働く物質ですので、覚醒作用があります。このため、セロトニンとノルアドレナリンに働く薬は、睡眠が浅くなるという形で不眠につながります。

 

昔からある三環系抗うつ薬では、SSRIやSNRIと比べると不眠の副作用は少ないです。いろいろな受容体に作用するために、抗ヒスタミン作用や抗α1作用などによって眠気が強くなります。ですが、SSRIやSNRIといった新しい薬は、セロトニンやノルアドレナリンだけに作用するようにできています。ですから、不眠の副作用は出やすいのです。

鎮静系の抗うつ薬といわれているテトラミド・リフレックス/レメロン・デジレン/レスリンでは、セロトニン5HT受容体をブロックする作用があります。このため、睡眠が深くなり不眠となることは基本的にありません。

抗うつ薬の副作用である不眠を比較しました。

 

まとめ

5つの物質に分けて考えます。よくある副作用としては、便秘・口渇・ふらつき・眠気・体重増加・吐気・下痢・性機能障害・不眠がみられます。

これらの副作用が見られた場合、まずはがまんしてください。生活上での支障が大きくなるようなら対策を考えます。
①薬を減薬する②他の薬にかえる③副作用を和らげる薬を使う
から考えていきます。

SSRIでは、吐き気・下痢・不眠・性機能障害などの副作用が目立ちます。

昔からある三環系抗うつ薬は、効果は強いですが副作用も多いです。新しい抗うつ剤のSSRI・SNRIは、全体的に副作用は少ないです。NaSSAは、眠気や食欲増加が多いですが効果は強いです。

投稿者プロフィール

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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