リザベンカプセルの効果と副作用
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
リザベン錠は、キッセイ薬品工業株式会社が1982年に発売した非常に古い抗アレルギー薬です。
アレルギー誘発物質(ケミカルメディエーター)を抑えることで花粉症や喘息、アトピー性皮膚炎を抑えるメカニズムで効果が発揮し、リザベンは遊離抑制薬と呼ばれているお薬です。
一部のケミカルメディエーターには、傷跡が肥厚するのを促す作用があります。リザベンはそれらの効果も抑制するので、ケロイド・肥厚性瘢痕といった皮膚科疾患にも使われます。
ここでは、リザベン錠の効果と副作用について詳しくお伝えしていきます。
1.リザベンが向いてる人は?
- 気管支喘息・アレルギー性鼻炎・アトピー性皮膚炎の症状が軽い人
- ケロイド・肥厚性瘢痕の傷跡を内服で治す人
リザベンは、アレルギー誘発物質(ケミカルメディエーター)を抑えることで、花粉症や喘息、アトピー性皮膚炎を抑えるお薬です。しかしその効果は比較的マイルドです。発売された1982年から数十年の時を経た現在は、それぞれの疾患に対して多くのお薬があります。
そのため、リザベンが第一選択肢という状況は少なくなりました。昔からリザベンでコントロールできている人や他の薬の副作用で悩んでる人はリザベンで良いと思いますが、登場する機会は非常に少ないです。
一方でケロイド・肥厚性瘢痕の傷跡を内服で治す場合は、リザベンが大活躍します。これらの第一選択肢は、外科的に切除です。切除するほどではない軽症な場合は、リザベン等の内服も考慮できるかと思います。実際ケロイドや肥厚性瘢痕の傷跡を治せる内服薬はほとんどありません。
このように、現在ではケロイドや肥厚性瘢痕で使う場合がリザベンは多いかもしれません。
2.リザベンの使用方法は?
通常、成人には1回リザベン100mgを1日3回経口投与します。
リザベンは気管支喘息,アレルギー性鼻炎,アトピー性皮膚炎,ケロイド・肥厚性瘢痕に適応があります。
リザベンは最高血中濃度が2時間、半減期が5時間のお薬です。このため、リザベンを服用して2時間で効果がピークとなり、そこから5時間で半分の量まで減少します。このためリザベンは、1日3回に分けて服用となっています。
リザベンの剤形は、
- リザベンカプセル 100mg
- リザベン細粒 10%
- リザベンドライシロップ 5%
の3剤形があります。成人の場合は通常、1回リザベン100mgカプセルを1日3回服用します。もしくはリザベン細粒10%を、1g3回服用します。
一方で小児には、リザベンドライシロップ5%があります。この場合はリザベンドライシロップを1日量5mg/kgを3回に分け、溶かして服用します。例えば小児が20kgであれば、リザベンドライシロップ100mgを3回に分けて溶かして使用します。
3.リザベンの副作用の特徴
リザベンは、副作用がほとんどない薬です。
リザベンの臨床試験では、24,788例のうち副作用が報告されたのは645例(2.60%)でした。その主なものは、
- 嘔気61件(0.25%)
- 腹痛48件(0.19%)
- 胃部不快感43件(0.17%)
- 食欲不振31件(0.13%)
- 下痢27件(0.11%)
- 肝機能異常95件(0.38%)
となっています。最も多い嘔気でも0.25%と、非常に副作用の頻度は少ないです。
4.リザベンが使えない人は?
妊婦の方は使用できません。その他ワーファリンを内服中の方は注意が必要です。
リザベンの添付文章を読むと、以下の記載があります。
妊婦(特に約3カ月以内)又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと。
[マウスに大量投与した実験で、骨格異常例の増加が認められている。]
このためリザベンは妊婦では禁忌となっています。妊娠希望の方や可能性がある方も、初期の3か月以内の胎児に影響があることから控えた方が良いです。リザベンは若い女性には使いにくいお薬です。
また授乳中の方は、
授乳中の婦人に投与する場合には授乳を避けさせること。
[動物実験(ラット)で乳汁中に移行することが報告されている。]
と記載されています。リザベンを絶対に飲まなければならないケースはほとんどないと思います。そのため授乳中の場合は、あえてリザベンを内服する必要はないかもしれません。
他にワーファリンを内服中の方は、注意が必要です。リザベンと一緒に内服することで、ワーファリンの効果が不安定になることがあります。ワーファリンは血をサラサラにするお薬で、主に脳梗塞後や不整脈の方が飲まれているお薬です。ワーファリンの効果が強いと出血のリスクも強いです。
そのためリザベンを処方した医師とワーファリンを処方した医師が違う場合は、必ずリザベンを内服した旨を伝えましょう。
5.リザベンの薬価は?
リザベン100mgカプセルの薬価は、47円です。トフラニストとしてジェネリック医薬品が登場し、1カプセル7.7円の薬価で購入できます。
リザベンは発売から年月がたっていますので、ジェネリックとしてトラニラストが発売されているのです。実際にリザベンの薬価をみていきましょう。
<先発品>
商品名 | 剤形 | 薬価 | 3割負担 |
リザベンカプセル | 100mg | 47.0 | 14.1円 |
リザベンドライシロップ | 5% | 50.8円/g | 15.2円/g |
リザベン細粒 | 10% | 50.4円/g | 15.1円/g |
<後発品(ジェネリック)>
商品名 | 剤形 | 薬価 | 3割負担 |
トラニストカプセル | 100mg | 7.7円 | 2.3円 |
トラニストドライシロップ | 5% | 8.6円/g | 2.6円/g |
ブレクルス細粒 | 10% | 7.5円/g | 2.3円/g |
ブレクルスカプセル | 100mg | 7.7円 | 2.3円 |
フスチゲンカプセル | 100mg | 7.7円 | 2.3円 |
このように、リザベンではジェネリック医薬品が発売されています。多くの会社が一般名のトフラニストとして発売していますが、いまなおブレクスルとフスチゲンは昔の商品名のまま発売されています。
リザベンはそこまで高いお薬ではないですが、ジェネリックにすることでかなり安価になることがお分かりいただけるかと思います。
6.リザベンの効果はどれくらい期待できるのか
リザベンはアレルギー誘発物質を抑制しますが、その効果はマイルドです。
リザベンの臨床試験では、
- 気管支喘息に対する有効率(有効以上)は43.6%
- アレルギー性鼻炎に対する有効率(有効以上)は45.9%
- アトピー性皮膚炎に対する有効率(有効以上)は48.5%
- ケロイド・肥厚性瘢痕に対する有効率(有効以上)は59.7%
となっています。アレルギー誘発物質(ケミカルメディエーター)を完全に抑えることができれば、実はアレルギー疾患は理論上は起きないのです。
しかし喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎のガイドラインでは、リザベンは第一選択肢の治療としては推奨されていません。アレルギー誘発物質は後述しますが、複数存在します。リザベンはそれらを、マイルドに効果を発揮するお薬と考えた方が良いと思います。
一方でケロイド・肥厚性瘢痕は、6割で有効となっています。これらの病気の内服治療薬は数少ないので、リザベンは存在感を放ってます。
7.リザベンの作用メカニズム(作用機序)は?
リザベンは、アレルギー誘発物質(ケミカルメディエーター)を抑えることで効果を発揮します。
喘息や花粉症のアレルギーの機序としては、
- アレルゲンによる刺激あり
- 肥満細胞が反応し活性化
- 好酸球やIgEが刺激される
- アレルギー誘発物質が産生される
大まかにいうとこのような流れになります。つまりリザベンはアレルギーの下流の4の産生を抑えることになります。ちなみにアレルギー誘発物質の主なものは、
- ヒスタミン
- ロイコトリエン
- PAF(血小板活性化因子)
- プロスタグランジン
があげられます。特に花粉症や喘息などのアレルギー疾患は、ヒスタミンやロイコトリエンの産生を抑えることで効果を発揮します。なお、抗ヒスタミン薬(アレグラなど)や抗ロイコトリエン薬(オノン・シングレア)はそれぞれの物質の産生を抑えるのではなく、それらの物質が受容体にくっつくのを邪魔する作用になります。
リザベンの方が色々な物質の産生を抑えるので効果がありそうな気がしますが、実際の効果はマイルドです。これはリザベンがどの物質も軽度抑制しますが、完全には抑制できないことを示しているかと思います。
なお、ケロイド・肥厚性瘢痕にリザベンが効く作用機序は、リザベンがTGF-β1を抑制し、活性酸素の産生・遊離を抑制するためです。TGF-β1活性酸素は、傷跡を治そうとする本来では良い作用を示します。しかし傷跡でこれらの物質の活性化が過剰になりすぎると、傷跡が太く盛り上がってしまうのです。
リザベンはTGF-β1活性酸素の働きを抑えることによって、コラーゲンの合成を抑制する作用があります。これによってリザベンは、ケロイド・肥厚性瘢痕に効果を示します。
具体的には、
- かゆみ・痛みといった自覚症状
- 傷跡が赤くなる・硬くなるといった症状
を改善させられます。
まとめ
- リザベンは、気管支喘息・アトピー性皮膚炎・アレルギー性鼻炎のアレルギー性疾患に加えて、ケロイド・肥厚性瘢痕にも効果があります。
- リザベンは通常、成人には1回リザベン100mgを1日3回経口投与します。
- リザベンは、副作用がほとんどないお薬です。
- リザベンは、アレルギー誘発物質(ケミカルメディエーター)を抑えることで効果を発揮します。
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