インタール(クロモグリク酸ナトリウム)細粒の効果と副作用について

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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インタール(クロモグリク酸ナトリウム)細粒は、サノフィ株式会社が1988年に発売された抗アレルギー薬となります。

インタールは、吸入薬として小児喘息で主に使われていました。それに対してインタール細粒は、内服しても消化管から体内にほとんど吸収されません。インタール細粒は気管支には作用せず、喘息には全く効果がないのです。

インタール細粒の適応は食物アレルギーに伴う皮膚炎に対して効果があります。消化管から体内に吸収されないため、消化管内でのアレルギーに対しては非常に効果があります。

食物アレルギーは、小児に多い疾患です。乳児で約5~10%、幼児で約5%、学童期以降が1.5~3%と年齢がたつにつれて、アレルギーの食べ物に対して耐性ができ徐々に少なくなります。

ここでは小児の食物アレルギーに対して使用されるインタール細粒に関して、詳しくお伝えしていきます。

 

1.インタール細粒のメリット・デメリット

<メリット>

  • インタール細粒は消化管に対してのみ効果がある

<デメリット>

  • インタール細粒は喘息に対して適応がない
  • インタール細粒は効果が弱い

インタールの主成分であるクロモグリク酸ナトリウムは、口から内服しても消化管からわずか1%程度しか吸収されず、体外に排出されるお薬です。つまり、口→消化管→便といった流れで排出されるため、効果が作用するとしたら主に消化管になるのです。

そのため、インタール吸入薬で適応がある喘息には適応がありません。適応としては、インタール細粒は食物アレルギーの皮膚炎に対して効果があります。

食物アレルギーは、アレルゲン(食物アレルギーの原因になる食べ物)を食べたことで、肥満細胞からの化学伝達物質(ケミカルメディエーターといいます)の放出が促進されます。この化学伝達物質が全身に回ることで、アレルギー症状が生じます。

インタール細粒は、この肥満細胞からの化学伝達物質が放出されるのを抑えることで、アレルギーの症状が抑えられます。インタール細粒をこの食物アレルギーに対して使用するうえで良い点は、消化管からほとんど吸収されないため、副作用も下痢や腹痛など消化器症状に限定されることです。

一方でインタール細粒の抗アレルギー作用は非常に弱いです。実際に食物アレルギーのガイドラインでも、食物アレルギーによる皮膚症状が出た場合は、抗ヒスタミン薬(アレグラザイザルなど)を第一選択肢として使用するよう指示されています。

アレルゲンが入ってきた場合に関与する細胞は、肥満細胞以外にも好酸球やIgEなどかなり多くの細胞が炎症として働きます。そのため肥満細胞の放出する物質だけブロックしても、重症例の場合はなかなか効力がありません。そのため、インタール細粒はかなり使用が限定されています。

 

2.インタール細粒の剤形と適応

インタール細粒は、1日3~4回を食前に内服することで、食物アレルギーの皮膚炎に対して使用します。

インタールの内服薬の剤形は、インタール細粒10%のみです。

小児に対して使用することが多いため、錠剤やカプセルはありません。味の方も小児に使用するため、甘味がある粉薬となっています。

適応は、食物アレルギーに基づくアトピー性皮膚炎のみです。かなり限定的な使い方をするお薬です。アトピー性皮膚炎でも、食べ物が関与してなければ消化管をターゲットにしても意味はありません。また食物アレルギーとしても、他の症状の場合は使用できません。

内服方法としては、

  • 2歳未満の幼児には1回インタール細粒0.5gを1日3~4回(毎食前ないし毎食前及び就寝前)経口投与
  • 2歳以上の小児には1回インタール細粒1gを1日3~4回(毎食前ないし毎食前及び就寝前)経口投与

となっています。インタール細粒は食物アレルギーに対して用いるため、食べる前にお薬を内服する必要があります。インタール細粒が事前に腸管にあることで、アレルゲンとなる食べ物からしっかりと守ることが出来ます。

 

3.インタール細粒の薬価は?

インタール細粒は古いお薬であるため、ジェネリック医薬品が存在します。

インタール細粒は、1988年に発売された非常に古いお薬です。そのためジェネリック医薬品として後発品も登場しています。まずは先発品の値段を確認してみましょう。

<先発品>

  剤形 薬価 3割薬価
インタール細粒 1g 86.5円 26.0円

※2016年8月13日の薬価です。

インタール細粒は、1日3回~4回内服するお薬です。2歳未満は半分の0.5gで内服します。インタール細粒を2歳以上のお子さんが3回内服した場合、1日薬価は260円になります。

なお後発品の価格は、

<後発品>

  剤形 薬価 3割薬価
クロモグリク酸ナトリウム細粒 1g 28.8 8.6

※2016年8月13日の薬価です。

このようになっています。先発品のインタール細粒と比較して、後発品は3割負担になります。

 

4.インタール細粒の副作用とは?

インタール細粒の副作用は、下痢、食思不振、腹痛などの消化器症状が主です。

インタール細粒の添付文章では、インタール細粒の臨床試験で3,163例中59例(1.87%)に副作用が認められました。、主な副作用は、

  • 消化器症状33例(1.04%)
  • 発疹等の皮膚症状14例(0.44%)

となっています。インタール細粒は、食べ物アレルギーのアトピー性皮膚炎に対して適応があるお薬です。そのため皮膚症状はインタール細粒の副作用というよりも、インタール細粒が効果がなかったとみた方が良いでしょう。

インタールは腸管に対してのみ作用することから、消化器症状が主症状となります。具体的には下痢、食思不振、腹痛などが挙げられます。ただしこれらの症状は食物アレルギー自体でも出現するため、注意が必要です。

 

5.インタール細粒の安全性とは?

インタール細粒は、どんな疾患、どんな内服中の人でも使用できます。

インタールの主成分であるクロモグリク酸ナトリウムは、せり科の植物であるアンミビスナガに含まれている物質です。これを腸管に直接投与することで、腸管にいる肥満細胞が炎症物質を放出することを防いで食物アレルギーの症状が出現するのを抑えます。

このクロモグリク酸ナトリウムは腸管から1%しか吸収されません。そしてせり科の植物が薬や病気に対して影響を与えることがないため、わずかに血中に入ったとしても全く問題になりません。

添付文章でもインタール吸入液が禁忌な人は、インタールに対してアレルギーが出現した方のみです。この一文は全てのお薬に対して記載されています。その他の病気や何か内服してる人が禁忌になることは一切ありません。

その他注意した方が良い場合は慎重投与症例として記載されますが、インタールはその慎重投与ですら記載がありません。そのためどのような疾患な人、どのようなお薬を飲んでる人でも安心してインタール細粒は内服できます。

 

6.インタール細粒が向いてる人は?

<向いてる人>

  • 食物アレルギーで皮膚炎がある小児の方

食物アレルギーは、食べ物がアレルゲンとして異物して認識され、体内の細胞が過度に攻撃することで発現する病気です。症状としては、

  1. 皮膚症状(アトピー、蕁麻疹などの皮疹)
  2. 消化器症状(下痢、嘔吐、腹痛)
  3. 呼吸器症状(喘鳴、息苦しさ)
  4. 循環器症状(動悸、血圧低下)
  5. 神経症状(痺れ、意識消失)

などの症状が挙げられます。この中でインタール細粒は、皮膚症状に対してのみ効果あります。インタール細粒自体が効果が弱いため、それ以外の症状がある場合、もしくはインタール細粒を内服中に症状が新たに出現した場合は適応がなくなりますので注意しましょう。

これら食物アレルギーで、③~⑤の症状が出た場合は命にかかわります。食物アレルギーの皮膚障害以外が出た場合は、すぐに病院を受診するようにしましょう。

また食物アレルギーは、小児に多い疾患です。逆に成人発症、もしくは成人になっても治らない場合は、重篤なアレルギーの場合が多いです。そのため成人の方は、抗ヒスタミンやステロイドなどのもっと強力な治療が必要になります。

インタール細粒を使用するうえで注意点としては、食前に内服したからといってアレルゲンを完全にブロックするわけではないことです。そのためインタール細粒を内服したからといって、アレルギーの食べ物を絶対に食べないようにしましょう。

食物アレルギーの治療の絶対条件が、アレルゲンの食べ物の回避です。アレルゲンになりやすい食べ物としては、

  1. 牛乳
  2. 小麦

が多いです。これらは、調理されても摂取したらアレルギーが起こるため注意が必要です。もちろん上記以外の食べ物でもアレルギーは起こりえますし、複数アレルゲンとしもっている可能性があります。

そのため食物アレルギーと診断された方は必ず採血でどの食べ物がアレルゲンになり得るか調べる必要があります。

 

7.インタール細粒の作用機序は?

インタールは、肥満細胞からの化学伝達物質の放出を抑えることで、アレルギーの症状を和らげる作用があります。

アレルギーって聞いたことはある人多いとは思いますが、具体的に体の中でどのような反応が起こってるか知ってる人は少ないかと思います。簡潔にまとめると、

  1. アレルギーの原因となる異物が体内に入ります。
  2. 体が敵と認識した場合、IgE抗体と呼ばれる免疫物質を作ります。
  3. IgE抗体は肥満細胞に結合し化学伝達物質(ケミカルメディエーター)が放出されます。
  4. 化学伝達物質が全身に回って皮膚、気管支、腸管などで炎症を起こし症状を起こします。

インタール細粒はこの中で、③の肥満細胞が化学伝達物質を放出するのを防ぐ治療になります。しかしアレルギーは実は複雑で、これ以外にも様々な経路から炎症が起こります。そのためインタールで肥満細胞だけ抑えても、好酸球やIgEなど他の細胞が放出する炎症細胞は抑えられません。

このため、インタール細粒はアトピー性皮膚炎といった軽症例のみ適応になります。

 

まとめ

  • インタール細粒は肥満細胞からの化学伝達物質の放出を抑える抗アレルギー薬になります。
  • インタール細粒は腸管からほとんど吸収されないため、食物アレルギーのアトピー性皮膚炎に対してのみ効果があります。
  • インタール細粒は1日3回~4回食前に内服することで効果を発揮するお薬です。
  • インタール細粒の副作用は下痢、食思不振、腹痛などの消化器症状です。
  • インタール細粒はどのような病気の人、内服している人に対しても安全に使用できるお薬です。

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