大承気湯【133番】の効果と副作用

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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大承気湯は、強い下剤として使われることが多いです。下剤には漢方薬がよく使われていて、その効果は大きいです。

大承気湯に含まれる大黄は、その主成分にセンノシドがあります。センノシドは緩下剤(大腸を刺激して動かす下剤)として、プルゼニドやセンノサイドなどとして医薬品にもなっています。

大承気湯の「承気」とは「順気」、すなわち「気を身体に受け入れる」「身体に気を巡らせる」という意味で、消化管の機能を回復して便通を正常にすることを意味しています。

本来排泄されるはずの便が停滞してしまい、消化管の蠕動運動の調和が乱れてしまうと、精神の安定も損なわれてしまいます。

漢方薬にはそれぞれ番号がついていて、大承気湯は「ツムラの133番」などとも呼ばれます。ここでは、病院で処方される大承気湯の効果と副作用についてお伝えしていきます。

 

1.大承気湯【133番】の生薬成分の効能

大承気湯は、大腸を動かす下剤作用のある大黄と芒硝に、小腸を動かす厚朴と枳実を加えて、さらに下剤作用を強めた漢方薬です。

漢方は、何種類かの生薬を合わせて作られています。生薬は自然界にある天然のものが由来です。天然のものといっても、生薬それぞれに作用が認められます。ですから、漢方薬は生薬の合剤といえるのです。

大承気湯は、4種類の生薬から有効成分を抽出して作られています。まずはそれぞれの生薬成分の作用をみていきましょう。

  • 大黄(2.0g):下剤作用・利胆作用・健胃作用
  • 芒硝(1.3g):下剤作用
  • 厚朴(5.0g):制吐作用・健胃作用
  • 枳実(3.0g):下剤作用・健胃作用

※カッコ内は、ツムラの製剤1日量7.5gに含まれる生薬の乾燥エキスの混合割合です。

大承気湯は4種類の生薬からできており、大腸を動かす大黄と芒硝に加えて、小腸を動かす枳実と厚朴を加えて、下剤に特化した漢方薬になります。

名前に「承気」と付く漢方薬は、大承気湯の他にも小承気湯や調胃承気湯、桃核承気湯があります。これらは「承気湯類」とも呼ばれ、「気」を「承」る、すなわち身体に気を巡らせて胃腸の働きをよくします。大承気湯は、これらの承気湯類の基本処方であり、もっとも下剤作用の強い処方になります。

大黄は別名「将軍」とも呼ばれ、他の生薬とあわさって強い薬効を奏します。身体に溜まっている毒素を排出する働きがあるとされ、腸の運動を活発にします。お腹や胸の膨満感や腹痛、便秘の改善に効果があります。ただし子宮収縮作用があるので、妊婦の服用は控えたほうがよいとされています。

芒硝は天然の硫酸ナトリウムのことです。硫酸ナトリウムは水に溶けますが、腸管からほとんど吸収されません。腸管内に水分が溜まって腸の蠕動運動を促進し、下剤作用が起きます。ただし大黄と同様に子宮収縮作用があり、流産の可能性があるため妊娠している人は服用しない方がよいとされています。

厚朴には健胃作用があり、胃の運動を促進したり腸管の運動を抑制したりする働きがあります。胃がもたれて食欲がないときや、お腹が張って便秘をしているときなどの症状改善に効果があります。また、高血圧の改善にも効果があり、イライラを落ち着ける作用が期待されます。

枳実は橙の果実です。身体に停滞している「気」を巡らせる働きがあり、胃腸の蠕動運動を強める作用や健胃作用があるので、便秘の改善や胸やお腹の痛み、膨満感を和らげてくれます。

このようにみると大承気湯は、比較的体力があり、肥満で便秘がちな方に処方され、便通をよくすると同時に不安やイライラといった気分を和らげてくれる漢方薬と言えます。

大承気湯の生薬の由来についてまとめました。

 

2.大承気湯の証

陰陽(陽)・虚実(実)・寒熱(熱)・気血水(気逆)

漢方では、患者さん一人ひとりの身体の状態をあらわした「証」を考えながら薬を選んでいきます。証には色々な考え方があり、その奥はとても深いです。

漢方薬を選ぶに当たって、患者さんの体格や体質、身体の抵抗力やバランスの崩れ方などにあわせて「証」をあわせていく必要があります。証を見定めていくには四診という伝統的な診察方法を行っていくのですが、そこまでは保険診療の病院では行わないことがほとんどです。

病院では、患者さんの全体像から「証」を推測して判断していきます。漢方の代表的な証には、「陰陽」「虚実」「寒熱」「表裏」の4つがあります。

このうち医者が参考にする薬の本には、たいてい「陰陽」と「虚実」しかのっていません。陰陽は身体全体の反応が活動的かどうかをみて、虚実は身体の抵抗力や病気の勢いをみます。つまり病院では、以下の2点をみています。

  • 体質が強いかどうか
  • 病気への反応が強いかどうか

さらに漢方では、「気血水」という3つの要素にわけて病気の原因を考えていきます。身体のバランスの崩れ方をみていくのです。漢方の証について詳しく知りたい方は、「漢方の証とは?」をお読みください。

大承気湯が合っている方は、以下のような証になります。

  • 陰陽:陽証
  • 虚実:実証(体力があってがっちりした体格)
  • 寒熱:熱証(暑がり)
  • 気血水:気逆(のぼせ・イライラ・緊張・不安)

 

3.大承気湯の効果と適応

  • 不眠・不安・興奮といった精神状態を伴った便秘症状
  • 肥満や高血圧による便秘症状

大承気湯は、「傷寒論」および「金匱要略」という漢時代の古典書に紹介されています。4種類それぞれの生薬成分の効果があわさって、ひとつの漢方薬としての効果がみられます。

本来は排泄されるべき便がうまく排泄されずに停滞してしまうと、大腸などの消化管の運動のバランスが乱れてしまいます。脳と腸は自律神経で強く結ばれているため、腸に不調があらわれると精神症状も乱れてしまいます。

大承気湯は身体に「気」を巡らせる作用があり、消化管の蠕動運動を促進することで精神の安定ももたらしてくれます。とはいえ、精神症状をメインで期待するというよりは、便秘薬として使われることがほとんどでしょう。

大承気湯は、体力があって体格のいい方に適した漢方です。腹部が硬く張って緊張し、便秘で困っている方に処方される漢方薬です。体力が著しく衰えている虚弱体質の方には向きません。

なお、添付文章に記載されている大承気湯の適応は以下のようになります。

腹部がかたくつかえて、便秘するもの。あるいは肥満体質で便秘するもの。
常習便秘、急性便秘、高血圧、神経症、食当り
使用目標:体力の充実した人で、腹部特に臍を中心に充実して膨満感が強く、便秘する場合に用いる。不安、不眠、興奮など精神症状を伴う場合に用いる。

 

4.大承気湯の使い方

1日2~3回に分けて、空腹時(食前・食間)が基本です。就寝前に服用することもあります。飲み忘れが多くなる方は食後でも構いません。

大承気湯は、ツムラとコタローから発売されています。生薬成分の含まれる量は同じなのですが、会社によって漢方薬の1日量が異なります。大承気湯では、ツムラは7.5g、コタローは6.0gになっています。

大承気湯は、1日2~3回に分けて服用するのが一般的ですが、就寝前に服用してもよいでしょう。大黄の成分であるセンノシドは、医薬品として使うときは就寝前に服用するためです。就寝前に服用すると8時間後に効果がみられるので、ちょうど朝に効果が発揮されます。

漢方薬は空腹時に服用することを想定して配合されています。大承気湯では、空腹時の方が吸収はよくなります。ですから、食前(食事の30分前)または食間(食事の2時間後)に服用します。量については、年齢や体重、症状によって適宜調整します。

とはいっても、空腹時はどうしても飲み忘れてしまいますよね。現実的には食後に服用しても問題はありません。ただし、保険適応は用法が食前のみなので、形式上は変更できません。

 

5.大承気湯の効き目とは?

効果は比較的すぐに認められることが多いです。便秘がよくなったら漫然と使わず、大承気湯を減量するようにしましょう。

それでは、大承気湯の効き目はどのような形でしょうか。

大承気湯の効果は、比較的すぐに期待できます。生薬成分ですが下剤としての作用はとても強く、大腸を動かすことで効果が発揮されます。繰り返しお伝えしていますが、医薬品として使われている成分なのです。

下剤には大きく2つのタイプがあります。軟下剤と緩下剤です。軟下剤は便をやわらかくすることで便通を改善します。それに対して緩下剤は、大腸を直接刺激して動かすことで便通を改善します。

大承気湯は、後者の緩下剤に分類されます。便秘の治療は、便が硬い場合はまずは軟下剤から使っていきます。便が硬くないのに便秘となっている場合は、緩下剤を使っていきます。ですから大承気湯は、便がそこまで固くないのに便秘となっている時に使います。

効果はしっかりと期待できますが、便秘が解消された後も大承気湯を漫然と使っていると、大腸が薬に慣れてしまいます。再び便秘となってしまい、さらに漢方薬を増量しなければ効果が出なくなってしまいます。便秘がよくなったら、大承気湯を減量するようにしましょう。

 

6.大承気湯の副作用

大承気湯には重い副作用はないとされていますが、吐き気や腹痛、効きすぎによる下痢などを起こすことがあります。

漢方薬は一般的に安全性が高いと思われています。しかしながら、生薬は自然のものだから副作用は全くないというのは間違いです。

漢方薬の副作用としては、大きくわけて3つのものがあります。

  • 誤治
  • アレルギー反応
  • 生薬固有の副作用

漢方薬の副作用として最も多いのが誤治です。漢方では、その人の状態に対して「漢方薬」が処方されます。ですから状態を見誤って処方してしまうと、調子が悪くなってしまったり、効果が期待できません。このことを誤治といいます。

大承気湯であれば体力が強い人に適しているのに、虚弱な方に使ってしまうと効果が強く出すぎてしまいます。それによる症状を副作用といえばそうなりますが、漢方では誤治といいます。

また、食べ物でもアレルギーがあるように、生薬にもアレルギーがあります。アレルギーはどんな生薬にでも起こりえるもので、体質に合わないとアレル ギー反応が生じることがあります。鼻炎や咳といった上気道症状や薬疹や口内炎といった皮膚症状、下痢などの消化器症状などが見られることがあります。飲み始めに明らかにアレルギー症状が出ていたら、服用を中止してください。

そして、生薬自体の作用による副作用も認められます。生薬の中には、その作用が悪い方に転じて「副作用」となってしまうものもあります。

大承気湯の主な副作用としては、大腸を刺激すぎることによる下痢や腹痛、吐き気や食欲不振などです。下痢の症状がひどくなった場合は脱水に気を付けましょう。その倍は、大承気湯を減量してもよいでしょう。

また、大承気湯の生薬成分の大黄は、子宮収縮作用や骨盤内臓器の充血作用があるので早産や流産の危険性があります。したがって妊娠中の方は服用を避けたほうがよいでしょう。母乳に大黄の成分が入り、赤ちゃんが下痢をしてしまう場合があるので、授乳中の方も服用を避けたほうがよさそうです。

漢方薬の副作用について詳しく知りたい方は、「漢方薬で見られる副作用とは?」をお読みください。

 

まとめ

大承気湯は、便秘の症状改善が中心と言えます。「気」の停滞からくる精神不安を改善してくれる効果も期待できます。

陰陽(陽)・虚実(実)・寒熱(熱)・気血水(気逆)

大承気湯は、以下のような方に使われます。

  • 不眠・不安・興奮といった精神状態を伴った便秘症状
  • 肥満や高血圧による便秘症状

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