黄連解毒湯【15番】の効果と副作用

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医3名、精神科医4名で協力して診療をしています。所属医師で協力して、記事を書いています。
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身体の機能が活発になりすぎているとき、身体がほてったりイライラしたりすることがあります。このような状態のとき、不眠やめまい、高血圧などの症状が出る場合があります。これらの症状をおさえる漢方薬が「黄連解毒湯」になります。

黄連解毒湯には、身体にこもっている熱や炎症を取ったり、活発になりすぎている身体の機能を鎮めたりする働きがあります。これにより、イライラが目立つ精神的に不安定な方に使われることが多いです。

それ以外にも多汗症や二日酔いなどに使われたり、炎症を抑える働きがあるのでにきびや口内炎、アトピー性皮膚炎などに使われることもあります。

黄連解毒湯は比較的体力が充実している人に向いている漢方薬で、虚弱体質で冷え症の人には向きません。

漢方薬にはそれぞれ番号がついていて、黄連解毒湯は「ツムラの15番」などとも呼ばれます。ここでは、病院で処方される黄連解毒湯の効果と副作用についてお伝えしていきます。

 

1.黄連解毒湯【15番】の生薬成分の効能

黄連・黄芩・黄柏の3つの成分のいずれも熱を取り、炎症をしずめる作用があります。山梔子にも熱を冷まして水分を取り除く作用があり、これらが合わさって鎮静作用が認められます。

漢方は、何種類かの生薬を合わせて作られています。生薬は自然界にある天然のものが由来です。天然のものといっても、生薬それぞれに作用が認められます。ですから、漢方薬は生薬の合剤といえるのです。

黄連解毒湯は、4つの生薬から有効成分を抽出して作られています。まずはそれぞれの生薬成分の作用をみていきましょう。

  • 黄連(2.0g):解熱作用・消炎作用・健胃作用
  • 黄芩(3.0g):解熱作用・消炎作用・止血作用
  • 黄柏(1.5g):解熱作用・消炎作用・健胃作用
  • 山梔子(2.0g):解熱作用・消炎作用・利胆(胆汁排出促進)作用・止血作用

※カッコ内は、製剤1日量に含まれる生薬の乾燥エキスの混合割合です。

黄連解毒湯は熱を冷ます作用のある「清熱燥湿薬」とよばれる生薬が中心となってできています。清熱燥湿薬とは「乾燥させながら熱を取る薬」という意味で、黄芩と黄連がその中心で芩連剤とも呼ばれます。

黄芩・黄連のほかに黄柏と山梔子が加わって、黄連解毒湯ができています。黄柏にも清熱と消炎作用があり、山梔子にも熱を冷ます作用と水分を取り除く作用があります。これらの4つの生薬合わせて、広く全身に作用します。これらの作用は、精神的には鎮静作用として働きます。

黄連解毒湯の長期間にわたる服用は、乾燥をまねくので注意が必要です。このような生薬なので、体力が中程度以上の人に向いています。虚弱体質の人には向いていません。

黄連解毒湯の生薬の由来を一覧にしました。

 

2.黄連解毒湯の証

陰陽(陽証)・虚実(実証)・寒熱(熱証)・気血水(水毒・気逆)

漢方では、患者さん一人ひとりの身体の状態をあらわした「証」を考えながら薬を選んでいきます。証には色々な考え方があり、その奥はとても深いです。

漢方薬を選ぶに当たって、患者さんの体格や体質、身体の抵抗力やバランスの崩れ方などを見極めて「証」をあわせていく必要があります。証を見定めていくには、四診という伝統的な診察方法を行っていくのですが、そこまでは保険診療の病院では行わないことがほとんどです。

このため、患者さんの全体像から「証」を推測して判断していきます。「陰陽」「虚実」「寒熱」など、証には様々な捉え方があります。

このうち医者が参考にする薬の本には、たいてい「陰陽」と「虚実」しかのっていません。陰陽は身体全体の反応が活動的かどうかをみて、虚実は身体の抵抗力や病気の勢いをみます。つまり病院では、以下の2点をみています。

  • 体質が強いかどうか
  • 病気への反応が強いかどうか

さらに漢方では、「気血水」という3つの要素にわけて病気の原因を考えていきます。身体のバランスの崩れ方をみていくのです。

漢方の証について詳しく知りたい方は、「漢方の証とは?」をお読みください。

黄連解毒湯が合っている方は、以下のような証になります。

  • 陰陽:陽証
  • 虚実:実証
  • 寒熱:熱証
  • 気血水:水毒・気逆(のぼせ・イライラ・緊張・不安)

 

3.黄連解毒湯の効果と適応

  • 比較的体力のある人で、イライラ感や不安が強い不安障害
  • 頭がさえてしまって眠れない不眠症
  • イライラやほてりがみられる更年期障害
  • 胃炎や口内炎、湿疹やじんましん、アトピー性皮膚炎などの炎症性疾患
  • 二日酔い
  • 多汗症

黄連解毒湯は、唐時代に書かれた「外台秘要方」という漢方の古典書に紹介されています。4つのそれぞれの生薬成分の効果があわさって、ひとつの漢方薬としての効果がみられます。

黄連解毒湯が向いているのは、体力が中程度、もしくはそれ以上の人です。よく使われるのは、のぼせ気味で顔面が紅潮している方で、不安やイライラ感、不眠などの精神症状が出ている場合です。

黄連解毒湯は、その成分である黄芩・黄連・黄柏といった清熱燥湿薬がのぼせなどの熱を取り除き、身体の機能の亢進状態を鎮める働きをするので、

  • のぼせ気味でイライラ感が強い不安障害
  • 頭がさえてしまって眠れない不眠症
  • イライラや神経の高ぶりの強い更年期障害(血の道症)

などに効果が期待できます。このように黄連解毒湯が向いているのは、身体に熱がこもりイライラが目立つような方です。また、炎症を抑える作用が認められるので、

  • 湿疹やじんましん、アトピー性皮膚炎
  • 口内炎や胃炎、にきび

などにもよく使われます。それ以外にも黄連解毒湯が使われる特徴的な病気としては、

  • 二日酔い
  • 多汗症

があげられます。二日酔いには、黄連や黄柏に健胃作用があり、黄芩には肝機能保護作用があります。このため、二日酔いに使われることもあります。

多汗症の方は、緊張すると上半身に熱を持ってきます。熱を冷まして水分をとりのぞく黄連解毒湯が効果を発揮することがあります。

なお、添付文章に記載されている黄連解毒湯の適応は以下のようになっています。

比較的体力があり、のぼせぎみで顔色赤く、いらいらする傾向のある次の諸症:鼻出血、高血圧、不眠症、ノイローゼ、胃炎、二日酔、血の道症、めまい、動悸、湿疹・皮膚炎、皮膚瘙痒症

4.黄連解毒湯の使い方

1日2~3回に分けて、空腹時(食前・食間)が基本です。飲み忘れが多くなる方は食後でも構いません。

黄連解毒湯は、ツムラ、クラシエ、コタローなどから発売されています。1日量は、ツムラでは7.5g、コタローとクラシエでは6gとなっています。コタローではカプセルが、クラシエでは錠剤が発売されています。カプセルでは6カプセル、錠剤では18錠の服用が必要になります。

黄連解毒湯は、1日2~3回に分けて服用します。漢方薬は空腹時に服用することを想定して配合されています。ですから、食前(食事の30分前)または食間(食事の2時間後)に服用します。量については、年齢や体重、症状によって適宜調整します。

漢方薬を空腹時に服用するのは、吸収スピードの問題です。麻黄や附子などの効果の強い生薬は、胃酸によって効果が穏やかになります。その他の生薬は、早く腸に到達することで吸収がよくなります。黄連解毒湯を食前に服用するのは、吸収をよくするためです。

とはいっても、空腹時はどうしても飲み忘れてしまいますよね。現実的には食後に服用しても問題はありません。ただし、保険適応は用法が食前のみなので、形式上は変更できません。

 

5.黄連解毒湯の効き目とは?

黄連解毒湯の効果は、2週間以上かけてゆっくりと認められることが多いです。

それでは、黄連解毒湯の効き目はどのような形でしょうか。

黄連解毒湯の効果は人それぞれです。証がぴったりと合う方には、効果テキメンなこともあります。いままで落ち着かなかった方が、ビックリするくらいに穏やかになることもありました。その一方で、まったく効果の実感がない方もいらっしゃいます。

黄連解毒湯は、一般的には効き目はゆっくりです。とくに病気で悩まされていた期間が長い患者さんほど、そのバランスを整えるには時間がかかります。 効果は2週間くらいで認められることがあります。じっくりと1~2か月かけて効果が認められることもあるので、焦らず使い続けていくことが大切です。

このような効き目なので、抗不安薬のようにすぐに不安を取り除いてくれるような即効性はありません。ですから、頓服として使っても効果は期待しにくいです。

漢方薬の効果について詳しく知りたい方は、「病院で処方される漢方薬の効果とは?」をお読みください。

 

6.黄連解毒湯の副作用

黄連解毒湯では、誤治や生薬固有の副作用が中心です。

漢方薬は一般的に安全性が高いと思われています。しかしながら、生薬は自然のものだから副作用は全くないというのは間違いです。漢方薬の副作用としては、大きくわけて3つのものがあります。

  • 誤治
  • アレルギー反応
  • 生薬固有の副作用

漢方薬の副作用として最も多いのが誤治です。漢方では、その人の状態に対して「漢方薬」が処方されます。ですから状態を見誤って処方してしまうと、調子が悪くなってしまったり、効果が期待できません。このことを誤治といいます。

誤治では、さまざまな症状が認められます。これを副作用といえばそうなるのですが、その原因は証の見定めを間違えたことにあります。あらためて証を見直して、適切な漢方薬をみつけていきます。

黄連解毒湯は比較的体力のある人に用いるので、決して虚弱体質の人が服用してはいけません。身体を冷ます漢方薬なので、冷えのある方には向きません。

 

また、食べ物でもアレルギーがあるように、生薬にもアレルギーがあります。アレルギーはどんな生薬にでも起こりえるもので、体質に合わないとアレルギー反応 が生じることがあります。鼻炎や咳といった上気道症状や薬疹や口内炎といった皮膚症状、下痢などの消化器症状などが見られることがあります。飲み始めに明らかにアレルギー症状が出ていたら、服用を中止してください。

そして、生薬自体の作用による副作用も認められます。生薬の中には、その作用が悪い方に転じて「副作用」となってしまうものもあります。

 

黄連解毒湯の生薬としての副作用としては、ごくまれではありますが間質性肺炎と肝障害に注意が必要です。咳や息切れ、呼吸困難、発熱やひどい倦怠感、皮膚や白目が黄色くなるといった症状が出た場合は、すぐ医師に連絡してください。

また、長期間服用することで腸間膜静脈硬化症があらわれることがあります。腹痛や下痢、便秘、腹部膨満感などが繰り返し現れた場合には服用を中止するようにしてください。

漢方薬の副作用について詳しく知りたい方は、「漢方薬で見られる副作用とは?」をお読みください。

 

7.黄連解毒湯の効果が期待できる人とは?

黄連解毒湯は、効果があると信じ込める人の方が効果が期待できます。

昔から「良薬は口に苦し」といわれてきたように、独特の苦みが漢方の効能を引き立たせてくれることがあります。このような思い込みの効果ともいえるプラセボ効果(偽薬効果)は、心の病気では非常に大きいです。

一般的に精神科のお薬は、30%ほどのプラセボ効果があるといわれています。臨床試験などを行うと、ダミーの薬でも3割くらいの人には効果が認められるのです。漢方薬のプラセボ効果は、西洋薬よりも大きいという報告もあります。

ですから、黄連解毒湯は効くと思い込んで服用した方がよいのです。そういう意味では、信じ込める人の方が効きやすいのです。黄連解毒湯は苦味性健胃薬といわれるほど、非常に苦い漢方薬です。せっかく服用するのですから、「こんなに苦いんだから黄連解毒湯は効くんだ!」を思いながら服用してください。

黄連解毒湯を使う時は、現実的には以下のケースがあります。

  • 黄連解毒湯自体の効果を本当に期待する場合
  • 副作用で抗うつ剤や抗不安薬が使えない場合
  • 抗うつ剤や抗不安薬を使うことに対する不安が大きい場合
  • 薬の量を減らしていく時に不安が強い場合

病気や症状という面で見れば、黄連解毒湯は上述してきたような方に向いているといえます。しかしながら、黄連解毒湯の効果だけを本当に期待して使うケースばかりではありません。

実際の現場では、さまざまなケースで黄連解毒湯が使われています。せっかく服用されるのでしたら、しっかり効くと言い聞かせながら服用してください。

 

まとめ

黄連・黄芩・黄柏の3つの成分のいずれも熱を取り、炎症をしずめる作用があります。山梔子にも熱を冷まして水分を取り除く作用があり、これらが合わさって鎮静作用が認められます。

陰陽(陽証)・虚実(実証)・寒熱(熱証)・気血水(水毒・気逆)

黄連解毒湯は、以下のような方に使われます。

  • 比較的体力のある人で、イライラ感や不安が強い不安障害
  • 頭がさえてしまって眠れない不眠症
  • イライラやほてりがみられる更年期障害
  • 胃炎や口内炎、湿疹やじんましん、アトピー性皮膚炎などの炎症性疾患
  • 二日酔い
  • 多汗症

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