統合失調質(スキゾイド)パーソナリティの特徴とは?症状・診断・治療

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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統合失調質パーソナリティ障害とは、世間に無関心で孤独を好む性格傾向があり、それによって生活に支障がでてくるときにパーソナリティー診断されます。

スキゾイドパーソナリティ障害やシゾイドパーソナリティ障害と呼ばれることもあります。

外界や他者に関心を示さず、非社交的で感情の起伏も少なく、淡々としたマイペースな態度でいますので、周囲の人は「孤独な人」という印象を持ってしまいがちです。

しかしそうしたパーソナリティの背景には、強い繊細さと傷つきやすさがあると言われており、バランスを保つため、無意識にそういった態度が身についているのです。

こういった性格傾向は、それ自体が問題であるということではありません。芸術や研究の分野に才能を発揮することも多いのです。ただ、統合失調症になりやすい性格傾向といわれていて、生活に支障が出てくるほどになると統合失調質(スキゾイド)パーソナリティ障害という病気と診断されます。

ここでは、統合失調質パーソナリティ障害の症状・診断の特徴と、治療や対応策などをご紹介していきます。

 

1.統合失調質(スキゾイド)パーソナリティの特徴

統合失調質(スキゾイド)パーソナリティは、それ自体が問題ではありません。世間に無関心で孤独をこのむような性格傾向です。

「統合失調質」という言葉は、統合失調症を発症しているわけではないけれど、発症しやすい性質を持っているという意味です。

感情の平板化や外部への無関心などの傾向が、統合失調症の陰性症状と重なる部分があるとされています。

人生の途中から急にその傾向がでてきた場合には、統合失調症の前触れと考えることもできます。ですが元々の性格ということなら、その性格自体が問題だとか病的だということではありません。社会生活や日常生活に支障がない範囲にある限りは、「障害」にもあたらないのです。

まず、統合失調質(スキゾイド)パーソナリティ障害の基礎となっている、パーソナリティそのものの特徴をご紹介します。

他人や世間の流れに関心が薄い

このパーソナリティの人は、第一に他人や世間の出来事に関心が薄いのが特徴です。

孤独を好む

基本的に1人でいることを好み、積極的な外出や社交はせず、家族やごく限られた人との関わりしか持たない傾向があります。

内面世界に没頭しやすい

関心が外に向かない分、読書、芸術、知的分野の探求など、自分の内面世界に没頭していることが多くなりやすくなります。

感情の起伏が少ない

怒り、泣き、笑い、喜びなどの感情が控えめで、見た目にも淡々としています。

欲望が薄い

食欲、性欲、物欲、金銭欲、名誉欲など、全体的に欲望が薄く、そのようなことにあまり関心をしめさない傾向にあります。お酒やタバコなどの嗜好品にも興味がない場合が多いとされています。

 

2.統合失調質(スキゾイド)パーソナリティ障害の特徴

あまりにも外部に関心がなくなってしまったり、それがゆえに社会生活での適応がうまくいかなくなると、統合失調質(スキゾイド)パーソナリティ障害として病気と考えていく必要があります。

上記のような性質は、上手く生かされれば、けっして悪い性質ではありません。実際に、芸術や研究分野で成功している人の中には、このタイプのパーソナリティも多いと言われています。

外部に関心を向けないだけで内面の充実を大切にし、豊かな感性で音楽や芸術、自然、学術探求などに生きがいを見出すことができます。

それでは、どのようになると、障害として問題になるのでしょうか。次に、統合失調質(スキゾイド)パーソナリティ障害の特徴、症状をご紹介します。

周囲や世間への関心の無さが極まり、社会生活を放棄する

社会生活をおくる上では、必要最低限の社会マナーや人との関わりを学ぶ必要があります。

周囲や世間への関心があまりに低く、生きていく上で必要な社会活動すら放棄してしまうと、「性格」では片づけられません。

周囲に誤解され、対人関係上のトラブルや不利益を招く

感情や言葉をほとんど表現せず、マイペースな態度を貫くため、対人関係はごく狭くなります。

統合失調質パーソナリティの人の場合は本人がそれを苦に感じていないのであまり問題にはされませんが、必要最低限の対人スキルがなければ、トラブルや不利益をこうむってしまう恐れもあります。

仕事や恋愛などの大きな変化でストレスがかかりやすい

自分のパーソナリティを生かし、内面世界に没頭するだけで生活ができるような道が開ければいいですが、なかなかそれは難しいものです。

比較的孤独に取り組める仕事につけたとしても、人や社会との関わりは避けられないものです。年齢とともに責任ある立場になり、人前にでなければいけないこともあります。

また、欲求や恋愛感情が薄いとはいえ、恋愛関係が発生する場合もあります。

このパーソナリティの人はそのような大きな変化に対応しにくくストレスがかかり、統合失調症を発症してしまうケースもあります。

生活とパーソナリティのバランスが難しい

このパーソナリティの人は、自分のパーソナリティに沿った生活ができていれば安定し、問題はあまりおこりません。しかし、誰しも自分の性格に逆らった生活を選択しなければいけないときがあります。

社会性が低すぎて生活費が稼げる仕事につけなかったり、大人になっても親からの自立ができないような状態のままだったりしてしまうと、パーソナリティ障害となって改善が必要になります。

 

3.統合失調質(スキゾイド)パーソナリティ障害の原因と症状の関係

統合失調質(スキゾイド)パーソナリティ障害は、孤独を好み世間体を気にせずに淡々としているように見えますが、その背景には強い繊細さと脆さがあると考えられます。自分のペースが乱されると、精神症状としてあらわれやすいです。

統合失調質(スキゾイド)パーソナリティの基本的な特徴としては、他者や世間に関心が薄く1人でいることを好み、孤立を恐れないかのように見えます。

親しい友人もいないか、いてもごく少数なのが普通です。外界との接触に関しては感情の起伏が少なく、いつも淡々としています。金銭欲・名誉欲・性欲などにも淡白で、周りからの評価をあまり気にしません。

世間体を気にせず、超然とした生活をおくるこのタイプの人は、ともすれば図太い性格のようにも見えるかもしれません。

ですが実はその背景に、強い繊細さと脆さがあると言われています。それが危機的状態にならないための防衛反応として、他人や外界と関わるのを避けたり、感情が激しくならないような作用が働いているのではという見方があります。

心が強いからマイペースを貫けるわけではなく、そうしないとバランスが保てない弱さがあるからこそのもの…というわけです。

遺伝的な要因や養育環境の影響などで、社会的交わりに快楽を感じにくいことが原因とする考え方もありますが、はっきりしたことはわかっていません。いずれにせよ、人との関わりが負担になりやすい性質なのです。

 

ですので、自分のペースが乱されるような環境の変化や、強い社会性や活発な交わりを必要とするような場面におかれた時に問題が生じやすいのです。

仕事で責任ある立場に立たされたり、プロジェクトチームなどに入ってたくさんの人と一致団結した行動が求められたりすると、それまでのバランスが崩れ、不安や抑うつなどの精神症状があらわれたり、時には統合失調症の発症を招いたりすることがあります。

また、「人と接したくない、1人でいたい、世間と関わりたくない」という気持ちが強固になりすぎて、社会生活に支障を及ぼしているような場合にも、それは「障害」ということになるのです。

 

4.統合失調質(スキゾイド)パーソナリティ障害の診断基準

統合失調質(スキゾイド)パーソナリティ障害の診断基準は、国際的な2つの診断基準でも内容に大きな違いはありません。

国際的な診断基準として、アメリカ精神医学会(APA)による「DSM-Ⅴ」と、世界保健機関(WHO)による「ICD-10」があります。

統合失調質(スキゾイド)パーソナリティ障害はどのような診断基準となっているのでしょうか?ご紹介していきます。

4-1.DSM-Ⅴ

A.以下のうち4つ以上の特徴が成人期早期までに始まり、広い範囲で見られる。(社会的関係からの離脱・対人関係場面での情動表現の範囲の限定)

  1. 家族も含めた他者全般と、親密な関係をもちたいと思わない、関わりを楽しく感じない。
  2. ほとんどいつも孤立した行動を選ぶ。
  3. 他人との性的行為への興味が無いか、あっても少ない。
  4. 喜びを感じられるような活動が無いか、あっても少ない。
  5. 第一度親族(親・子・兄弟)以外には、親しい友人または信頼できる友人が少ない。
  6. 他人の賞賛や批判に対して無関心に見える。
  7. 情動的な冷たさ、よそよそしさ、または平板な感情を示す。

B.統合失調症、気分障害による精神病症状、自閉症スペクトラム障害の経過中ではなく、ほかの精神病性障害でない。

4-2.ICD-10

少年期か青年期に以下のようなパーソナリティ変化が現れ、成人期に明らかとなって持続し、広い範囲にわたって以下のうち少なくとも3つが持続する。

  1. 喜びをほとんど感じない
  2. 冷淡で無関心で平板化した感情
  3. やさしい感情や怒りの感情が乏しい
  4. 自分の賞賛にも批判にも無関心
  5. 性的関係に興味がない
  6. 孤立した活動を好む
  7. 空想や内省に没頭する
  8. 親密な友人や信頼できる人間関係を求めない
  9. 社会的な規範や習慣に対して著しく鈍感

 

5.統合失調質(スキゾイド)パーソナリティ障害の治療

本人に自覚がないことが多く、生活でうまく適応できないことで精神症状が認められ、受診することが多いです。薬で症状を緩和しながら、少しずつ現実的な生活の仕方を話し合い、必要最小限の社会・対人スキルを身に着ける必要があります。

統合失調質パーソナリティ障害の治療の難しいところは、「本人が苦痛を感じづらい」という点です。

同じく引きこもり傾向のでやすい回避性パーソナリティ障害の人の場合は、本人が自分の社会性や社交力の不足について深く悩んでいるため、自ら治療機関を訪れたり、心理療法の本を読んだりして改善策を求めます。

しかし統合失調質パーソナリティ障害の人の場合、孤立したり引きこもったりしていることが特別苦にはならず、そもそも外への関心が薄いため、自ら状況を変えようとすることがほとんどありません。

もちろん、それで生活が成り立っている場合は問題ありませんが、学校にも行かず仕事もできない状態になってしまっている場合には、家族としては放置しているわけにもいかないでしょう。

そのため、統合失調質パーソナリティ障害の人の治療においては、本人よりも周囲が心配して治療機関に連れてきたり、相談をしたりというケースが多くなっています。それでは統合失調質パーソナリティ障害では、どのような治療法を行っていくのでしょうか。お伝えしていきます。

薬物治療は最低限

統合失調質パーソナリティ障害の患者さんは、そのパーソナリティ自体を困って受診することはまずありません。自分自身の人格や性格を悩んで受診することは、まずないのです。

抑うつや不安を訴えての受診が多いですが、そのきっかけとなった出来事や背景を、患者さん自身が自覚していない場合もあります。前面に出ている症状は薬物療法で緩和されますが、根本にある問題を解決しないままではまた同じことを繰り返してしまいます。

まずは自分自身がどういったことを負担に感じるのか、どのような場面が苦手なのかを知っていく必要があります。

ですから統合失調質パーソナリティ障害の治療では、お薬は症状を緩和するために対症療法として使われることが多いです。このため、必要最小限で使っていきます。

ただ、ストレスが強く統合失調症発症の可能性があるようなケースでは、しっかりとした薬物治療が検討される場合もあります

パーソナリティを生かしつつ生活できる現実的な手段を探す

統合失調質パーソナリティ障害においての一番の治療法は、いかに本人のパーソナリティに合った現実的な道を探すか、という部分です。

統合失調質パーソナリティの人には、無理に大勢の人と関わったり、積極性が必要だったりする職種や生活は元々向いていません。自分のペースでも取り組みやすく、本人に負担がかかりにくいライフスタイルを、医師や家族と相談しながら、模索していく必要があります。

外界に関心が薄い代わりに、内面世界を充実させることにはとても長けています。強く繊細な感性を生かして、読書や芸術鑑賞、自然と触れ合うこと、創作活動などに楽しみを見出し、その方面で秀でた才能を発揮して成功するケースも多く見られます。

また、地道な研究活動などでも高い評価を受けることがあります。コツコツとした地道な仕事も向いているでしょう。上手く折り合いさえすれば、その特性を生かして伸びていくことができるのです。

必要最低限の社会・対人スキルを身に着ける

どのような道に進むにしても、必要最低限の社会・対人スキルは必要です。それを身に着けるために、心理士さんとともに行うソーシャルスキルトレーニング(SST)などがすすめられています。

SSTとは、対人コミュニケーションやものの見方の広げ方など、社会的スキルの訓練を行っていきます。ある程度コミュニケーション能力を身につけた方がいいでしょう。

自分自身が没頭している趣味の仲間との触れ合いなどを通じて、人づきあいにいいイメージを持てるようになると、患者さんなりのペースでそれを楽しめるようになり、社会性も少しずつ培われていきます。このように本人にとって負担の少ない形で、社会生活と関われる場所があると理想です。

 

6.統合失調質パーソナリティ障害に対する周囲の人の接し方

自分の価値観や世間体を、本人に押し付けてはいけません。

統合失調質(スキゾイド)パーソナリティ障害の人においては、本人以上に周囲の家族の人が悩んでいる場合があります。自分の子どもが外にも出ず、人とも話さず自分の世界に没頭しているとしたら、心配になるのも無理はありません。

しかし、まずは本人のパーソナリティを尊重することが重要です。

「友人は多い方がいい」「積極的で明るい性格がいい」という思い込みが親の方にあったとしたらそれを捨てましょう。

外への関心が薄く孤独に強い性格は、ある面では大きな利点となります。義務教育が終わっているなら、とくに学校にこだわる必要もありません。通信学校などの選択肢も視野に入れ、本人が関心を持っている分野を伸ばす方向へ意識を切り替えてみましょう。

また、現在はインターネットを使った在宅の仕事の可能性も広がっています。

とくにこのパーソナリティ障害においては、本人に無理をさせない範囲で、生きる道を現実的に検討していくのが一番と言われています。

また、内面生活を非常に重視する繊細な面が強く、その部分に踏み込まれるのを嫌う傾向があります。心配をしないでいるのは難しいと思いますが、距離を置いて見守り、不安なときには医師と相談しながら対応するようにしましょう。

もし、向こうから何かの相談を持ちかけられたときは、途中で口を挟まずゆっくりと話を聞き、感情的にならずに冷静な姿勢で答えるように心がけましょう。

 

このパーソナリティ障害の人が身内にいる場合、一番に注意したいのは、自分の価値観や世間体を押し付けないことです。

友人が少ない、外部より内面世界に関心が高い、独身主義者も多い、孤独に取り組む仕事が向いているなど、それはどれも悪いことではなく、個性の1つです。

その個性を殺し、積極的な活動や人付き合いを求めたり、無理に結婚をすすめたりすると、本人のストレスや摩擦の原因になりやすくなります。

その人の性格を生かしつつ、最低限の社会スキルや社交術を身につけて、差し障りない生活がおくれるようにすることが、統合失調質パーソナリティ障害の治療目標であり、周囲の対応の面でも重要なポイントとなります。

 

7.思い込み統合失調質(スキゾイド)パーソナリティ障害とは?

潜在的には対人希求があるのにも関わらず、ほかの原因がきっかけで人への無関心に感じてしまうことがあります。

このパーソナリティ障害において注意したいのは、「自分や周囲がそう思い込んでいるだけ」というケースも意外に多いことです。

自分は孤独に強く、人とは関わりたくない、世間には興味がない、感情も欲求も薄い…そんな風に思い込んでいる心の奥に、実は強すぎる欲求が隠れている場合もあります。

本当はとても強く人との関わりを求め、積極的に社会に参加したい、そういう欲望を持ちながら、過去のトラウマや自信の無さが引き金となり、「自分はそういう欲求が薄い人だから」と自分自身に対しても嘘をつき、心を閉じてしまうケースです。

真のスキゾイドパーソナリティの人は、自分から「1人の方が好きだし世間には関心がなくて…」のように、自己アピールをすることがほとんどありません。本人にとってはそれが当たり前のことだからです。

もし、「自分は統合失調質(スキゾイド)パーソナリティ」と思いつつ、やけにそれを強調したり、そのことについて必要以上に強い関心を抱いてしまったりする場合には、心の奥に、それを拒否している自分が隠れている可能性もあります。

人の心や性格は複雑で、本来複数のパーソナリティが混じり合っているのが普通です。「絶対に自分はこう」と決めつけてしまうと、それはそれで、無理がいくことになるのかもしれません。

 

まとめ

統合失調質(スキゾイド)パーソナリティは、それ自体が問題ではありません。世間に無関心で孤独をこのむような性格傾向です。

あまりにも外部に関心がなくなってしまったり、それがゆえに社会生活での適応がうまくいかなくなると、統合失調質(スキゾイド)パーソナリティ障害として病気と考えていく必要があります。

本人に自覚がないことが多く、生活でうまく適応できないことで精神症状が認められ、受診することが多いです。薬で症状を緩和しながら、少しずつ現実的な生活の仕方を話し合い、必要最小限の社会・対人スキルを身に着ける必要があります。

投稿者プロフィール

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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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