PTSDに有効な薬とは?PTSDの薬物療法

元住吉 こころみクリニック
元住吉 こころみクリニック
2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医3名、精神科医4名で協力して診療をしています。所属医師で協力して、記事を書いています。
元住吉こころみクリニック

PTSDは、薬でスッキリよくなる病気ではありません。薬は一定の効果はあると考えられていますが、有効性は心理療法に劣ります。

PTSDを治療していくには、心理療法をじっくりと行いながら、そのサポートとして薬物療法をおこなっていきます。お薬としては、SSRIと呼ばれる新しい抗うつ剤の有効性が確認されています。

先の東日本大震災を受けて、すでに海外でのPTSDへの適応が認められていたパキシルとジェイゾロフトが、日本でも適応拡大されました。

ここでは、PTSDに有効な薬について詳しくお伝えしたいと思います。

 

1.PTSD治療での薬の位置づけ

PTSDにおいて薬物療法は、心理療法を支えていくための治療という位置づけになります。

PTSDの治療法に関しては、多くのガイドラインが示されています。薬のPTSDへの有効性が示されてはいるものの、ガイドラインによってばらつきが大きいです。つまり、薬の有効性が定まっていないのです。

PTSDの治療効果のエビデンスとしては以下の順番になっています。

つまり、PTSDの治療は心理治療が非常に重要で、薬物療法はそれを支える治療になるのです。認知行動療法やEMDRなどの精神療法を行いつつ、薬物療法でサポートしていくのが現実的な治療といえるでしょう。

  • PTSDの中核症状を少しでも緩和する
  • PTSDの周辺症状や合併症を改善する
  • 心理治療を行うために症状を軽減する

PTSDの薬を使っていく目的は、以上の3つになります。PTSDの中核症状として、再体験症状・回避症状・麻痺症状・過覚醒症状があります。抗うつ剤のSSRIは、これらの中核症状を和らげる効果が期待されます。

また、PTSDの患者さんは様々な周辺症状や合併症が認められることがあります。うつ状態、パニック障害、解離性障害、身体化障害、転換性障害、摂食障害、人格障害、アルコール・薬物乱用などです。気分が落ちこむこともあれば、高まることもあります。引きこもってしまうこともあれば、攻撃的になることもあります。不眠が認められたり、不安障害としての症状が認められることもあります。患者さんの症状に応じて、薬で改善を図ります。

PTSDでは心理治療が重要ですが、トラウマと向き合うことに耐えられないことがあります。心理治療をしっかりと行っていくためには、自分自身をコントロールできている感覚をもてることが重要です。あまりに状態が不安定な時は、まずは薬によって落ち着けていく必要があります。

 

2.PTSDの第一選択薬はSSRI

PTSDの治療でファーストチョイスになるのは、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)とよばれる比較的新しい抗うつ剤です。日本では現在4種類が発売されていますが、そのうちパキシルとジェイゾロフトで適応が認められています。

SSRIとは、神経伝達物質のひとつであるセロトニンの回収を邪魔することで、セロトニン作用を増加させるお薬です。セロトニンは気持ちの安定に関係していると考えられていて、不安や落ち込みを改善する効果があります。私自身も試しに服用してみたことがありますが、時間をかけて少しずつ細かなことが気にならなくなっていくような感覚が作られていくお薬です。

PTSDの中核症状を和らげるだけでなく、うつ病や不安障害といった合併症にも効果が期待できます。これによってPTSDそのものの改善にもつながります。

ここでは、PTSDに正式に適応が認められているSSRIについてみていきましょう。

 

2-1.パキシル(成分名:パロキセチン

効果はもっとも強いSSRIです。過食発作、性機能障害などの副作用が多く、離脱症状がよく認められます。

パキシルは、SSRIが日本でも発売されるようになってすぐの2000年に発売されたお薬です。当時は2種類のSSRIしかなく、比較するとパキシルの方が効果がしっかりしていました。このため一気に広まっていき、抗うつ剤では日本で1番処方されるようになりました。

パキシルは、効果がしっかりとしていて切れ味のよい抗うつ剤です。とても良い薬なのですが、やめる時に離脱症状が出てしまってなかなかやめられない方が多いです。

他のSSRIと比較すると、効果という意味では一番強いといえます。日本では海外よりも少なめの用量しか使えないことが多いですが、パキシルは海外用量近くまで使うことができます。このために、しっかりとした効果が期待できます。副作用も他のSSRIよりは多く、過食発作を引き起こすことがあったり、性機能障害は必発といってもよいです。

離脱症状は、すべての抗うつ剤の中でも最も多いです。このためやめる時に苦労するお薬です。この対策として2つの製剤が発売されました。細かい用量で調整できるようにパキシル5mg錠、血中濃度の変化がゆるやかになるようにパキシルCR錠という徐放製剤が発売されています。

 

2-2.ジェイゾロフト(成分名:セルトラリン

効果と副作用のバランスがよいSSRIです。ただし、性機能障害が必発です。

ジェイゾロフトも、海外では1991年から使われていたSSRIです。日本には2006年に発売されましたが、効果と副作用のバランスのよさからよく処方されました。発売から年月もたち、2015年12月にジェネリックのセルトラリン錠が発売されました。ジェネリック対策としてという色は強いですが、ファイザーからジェイゾロフトOD錠(口腔内崩壊錠)が発売されました。ジェネリックに変えないという方は、薬価も同じなので試してみてもよいかも知れません。

レクサプロとは同じような位置づけのSSRIですが、レクサプロよりもセロトニン選択性は低いです。多少のドパミン作用があるので、興味がなくなっている方にはよいかもしれません。副作用は全体的に軽く、バランスのよいSSRIです。

他のSSRIと比較すると、レクサプロと同様に副作用が少ないです。ジェイゾロフトは少しずつ増量しなくてはならず、効果が出てくるのが少し遅い印象があります。また、パキシルと並んで性機能障害の副作用が必発ともいえます。70~80%の方に認められるという報告があります。

 

3.PTSDで使われるその他の薬とは?

SSRI以外の抗うつ剤が使われることがあります。抗精神病薬や気分安定薬を症状にあわせて使っていきます。ベンゾジアゼピン系抗不安薬や睡眠薬はできるだけ使うべきではありません。

PTSDでは、SSRI以外にもさまざまな薬が使われます。PTSDの中核症状には、抗うつ剤が有効と考えられています。新しい抗うつ剤としては、SNRI(サインバルタ・トレドミン・イフェクサー)やNaSSA(リフレックス・レメロン)などがあります。これらの新しい抗うつ剤で効果がハッキリしない場合は、昔からある三環系抗うつ薬が使われることもあります。アナフラニールやトフラニールで有効性が報告されています。

その他にも効果神経系を抑える、アドレナリンα1遮断薬のプラゾシン(ミニプレス)、β遮断薬のプロプラノロール(インデラル)の有効性も報告されています。

 

攻撃性や過覚醒が強い場合は、抗うつ剤からは使いません。抗うつ剤は賦活症候群といって、使い初めに不安や焦燥感、攻撃性や衝動性をあおってしまうことがあります。このような時には、抗精神病薬や気分安定薬によって気持ちを落ち着けることを優先します。抗精神病薬は、抗うつ剤の効果が不十分な時に増強療法として使われることもあります。

不眠や不安に対してよく使われるベンゾジアゼピン系のお薬は、PTSDの治療においては望ましくありません。トラウマをかかえた患者さんは過覚醒状態から不眠になることも多く、安易にベンゾジアゼピン系睡眠薬や抗不安薬を処方しがちになります。はじめは効果が期待できるのですが、すぐに耐性ができて慣れてしまって効かなくなってしまいます。

2014年に発売されたベルソムラという新しい睡眠薬は、オレキシンという覚醒を維持する物質を抑制することで催眠効果を発揮します。副作用も少なく、PTSDの患者さんの不眠には有効ではないかと私は考えています。

 

まとめ

PTSDにおいて薬物療法は、心理療法を支えていくための治療という位置づけになります。

PTSDの第一選択薬は、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)です。パキシルとジェイゾロフトで適応が認められています。

SSRI以外の抗うつ剤が使われることもあります。抗精神病薬や気分安定薬を症状にあわせて使っていきます。ベンゾジアゼピン系抗不安薬や睡眠薬はできるだけ使うべきではありません。

投稿者プロフィール

元住吉 こころみクリニック
元住吉 こころみクリニック
2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医3名、精神科医4名で協力して診療をしています。所属医師で協力して、記事を書いています。
元住吉こころみクリニック