プラバスタチンNa錠の効果と副作用
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
プラバスタチンNa錠は、脂質異常症に対して発売されているメバロチンのジェネリック医薬品です。「スタチン系(HMG-CoA還元酵素阻害薬)」という種類に分類される、コレステロールを下げるお薬です。メバロチンは、スタチン系として最初に発売されたお薬です。
プラバスタチンNaは、おもに悪玉(LDL)コレステロールを下げるお薬です。悪玉コレステロールは直接動脈硬化を引き起こす原因になるため、LDLが高い場合はプラバスタチンNaなどのスタチン系を選択します。
しかしながら脂質異常症の治療の基本は、食事制限と運動療法です。どんなにプラバスタチンNaを内服し続けていても、日常生活を見直さないと脂質異常症は改善しないため注意しましょう。
ここでは、プラバスタチンNaの効果と特徴についてまとめていきます。
1.プラバスタチンNaのメリット・デメリットについて
<メリット>
- LDL(悪玉)コレステロールを中等度に下げられる
- HDL(善玉)コレステロールを増やす
- TG(中性脂肪)も下げる
- 腎臓で代謝される
<デメリット>
- 食事・運動療法なしでは脂質異常症は改善しない
- 肝障害・筋肉痛などの副作用が起こるケースがある
プラバスタチンNaは、脂質異常症に対して使用されるお薬です。2012年度の動脈硬化性疾患予防ガイドラインに、脂質異常症の診断基準が示されています。
※2012年動脈硬化性疾患予防ガイドライン参照
このように脂質異常症は、3つの項目のうち一つでも当てはまれば診断されます。善玉コレステロールが低くても異常と診断されるため、高脂血症から脂質異常症に名前が変更になりました。脂質異常症の詳しい診断基準ついて知りたい方は、「健康診断で脂質異常症と診断された!!脂質異常症の診断基準は?」を参照してみてください。
この中でスタチン系のプラバスタチンNaは、高LDL血症に対して適応があります。スタチン系には、
- スタンダードスタチン(LDLを中等度下げるお薬)
- ストロングスタチン(LDLを強力に下げるお薬)
があります。プラバスタチンNaはこの中でスタンダードスタチンに属します。具体的には、
- リポバス
- メバロチン
- ローコール
の3種類があり、どれも中等度にLDLを下げることになります。しかし「そもそもなぜ高LDLを改善しなければいけないのか?」と思う人もいるかと思います。
高LDL血症をはじめとした脂質異常症は、動脈が固くなる動脈硬化の原因になります。動脈が固くなり、さらにプラークというコブができると、動脈が閉塞しやすくなります。動脈が閉塞した部位が心臓や脳などですと、
- 心筋梗塞などの虚血心疾患
- 脳梗塞・脳出血などの脳血管障害
などの病気が起きやすくなります。これらの病気は予兆もなく、突然発症します。死亡率も非常に高いですし、一命をとりとめたとしても激しい痛みなどの症状、およびその後の後遺症に悩まされる恐ろしい病気です。
これらの病気になってから脂質異常症を慌てて治療しても、時すでに遅しです。脂質異常症をなぜ治療しなければならないのか知りたい方は、「脂質異常症はどうして治療が必要?脂質異常症が引き起こす怖い病気とは?」 を一読してみてください。
特に悪玉コレステロールは、動脈の壁を破壊してコブになるプラークの原因物質になります。そのため脂質異常症の中でも、最も最優先で治療をするべきなのが高LDL血症になります。一方で、高LDL血症をはじめとした脂質異常症の治療は、
- 食事療法
- 運動療法
が柱となります。プラバスタチンNaは、コレステロールの合成を阻害することでLDLの上昇を抑えるお薬ですが、
- 食事を過剰に摂取している
- 運動でコレステロール自体を消費しない
上記の状態では、プラバスタチンNaの効果にも限界があります。
- 食事療法について詳しく知りたい方は、「脂質異常症の方はまず食事を制限!脂質異常症の食事療法について」を一読してみてください。
- 運動療法について詳しく知りたい方は、「脂質異常症の人は毎日の運動を!脂質異常症の運動療法について 」を一読してみてください。
プラバスタチンNaは、食事療法・運動療法をしっかり行ったうえで使っていきます。プラバスタチンNaだけで脂質異常症を治療しようと考えないようにしましょう。プラバスタチンNaはLDLを下げる薬ですが、
- 善玉(HDL)コレステロールをあげる効果
- 中性脂肪(TG)を下げる効果
もあります。そのため、LDLが高い上にHDLが低い、TGが高いなど合併している場合でも、プラバスタチンNaは治療適応になります。またプラバスタチンNaの特徴として腎臓で薬が代謝される特徴があります。他のスタチン系5剤は肝臓で代謝されるため、
- 重篤な肝障害がある方
- 肝臓に負担がかかる薬との併用
は原則禁忌です。一方でプラバスタチンNaは腎臓で排泄されるため、肝臓への負担が少ないです。スタチン自体が肝臓に作用されるため全く問題ないわけではないですが、他のスタチン系に比べるとプラバスタチンNaは肝機能障害の人に使いやすいお薬です。(重篤な肝障害の方は慎重投与になっています)
一方でプラバスタチンNaは、副作用に注意が必要です。プラバスタチンNaの重大の副作用として特に注意が必要なものは、横紋筋融解症です。横紋筋融解症は、筋肉をつくっている骨格筋細胞に融解や壊死が起こり、筋肉の成分が血液中に流出してしまう病気です。
筋成分であるミオグロビンが大量に流出し、腎臓に負担がかかる結果、尿が出にくくなるなどの腎障害を起こしてしまうことがあります。プラバスタチンNaを内服中に筋肉痛や疲れやすさが出現した場合は注意しましょう。
またプラバスタチンNaは肝臓に主に作用する薬です。そのため肝機能障害が起こることがあります。横紋筋融解症も肝機能障害も採血で診断できます。プラバスタチンNaの効果判定も含めて、定期的に採血を心がけましょう。
2.プラバスタチンNaの適応・投与量・効果は?
プラバスタチンNaは、高LDL血症を中心とした脂質異常症に適応があります。プラバスタチンNaの投与量は、5mgから20mgと幅があります。
プラバスタチンNaは、
- プラバスタチンNa 5mg
- プラバスタチンNa 10mg
の2種類が発売されています。先発品のメバロチンは細粒も発売されていますが、ジェネリックのプラバスタチンNaは細粒はないため注意が必要です。
適応症ですが、
高コレステロール血症・家族性高コレステロール血症
となっています。高LDL血症を中心とした脂質異常症に対して使用されるお薬です。
プラバスタチンNaの用法・用量は、成人には1日10mgを1回又は2回に分けて服用となっています。なお、年齢・症状により適宜増減できますが、重症の場合は1日20mgまでです。
ちなみに効果ですが、先発品のメバロチンを参考にすると、メバロチンを12週間(約3か月)投与した際の、高コレステロール血症に対する有効率は80.0%と報告されています。逆にいえば、2割程度の人は効果がないため注意が必要です。
ではどのくらいコレステロール値が下がったのかというと、1日メバロチン2回の服用を4週間継続した調査では、
- メバロチン1日に5mgだと総コレステロールが11%(悪玉コレステロールは17%)低下
- メバロチン1日に20mgだと総コレステロールが19%(悪玉コレステロールは29%)低下
- メバロチン1日に40mgだと総コレステロールが25%(悪玉コレステロールは39%)低下
と報告されています。量が多ければ多いほど効果がありますが、日本ではプラバスタチンNaは20mgまでしか認められていないため注意が必要です。また悪玉コレステロールであるLDL以外も
- メバロチン10mgの投与を12週間続けた結果、善玉コレステロール(HDL)コレステロールが6%増加
- メバロチン10mgの投与を12週間続けた結果、中性脂肪(TG)が6.1%低下
した事が報告されています。このように主な作用は総コレステロール、LDLですが、中性脂肪の低下や善玉コレステロールの増加にも多少効果があります。
空腹時、食後でも効果に大きな差は認めなかったことから、プラバスタチンNaはいつでも内服して良いと考えられています。
プラバスタチンNaは、1時間程度で最高血中濃度に到達します。また、プラバスタチンNaの半減期は2.7時間のため、体内に蓄積されづらいおくすりとなっています。
3.プラバスタチンNaの薬価は?
プラバスタチンNaはメバロチンのジェネリック医薬品です。先発品のメバロチン錠に比べると、ジェネリックのプラバスタチンナトリウム錠は50%程度となりますが、製薬会社によってばらつきが大きいため注意が必要です。
次にプラバスタチンNaの薬価です。プラバスタチンNaはメバロチンのジェネリック医薬品です。まず先発品のメバロチンの薬価は、
商品名 | 薬価 | 3割負担 |
メバロチン錠 5mg | 45.5 | 13.7 |
メバロチン錠 10mg | 84.8 | 25.4 |
メバロチン細粒0.5% | 53.0 | 15.9 |
メバロチン細粒1% | 97.6 | 29.3 |
※2017年2月2日の薬価です。
なお、後発品のプラバスタチンナトリウムの薬価ですが、
商品名 | 薬価 | 3割負担 |
プラバスタチンナトリウム錠 5mg | 17.4 | 5.2 |
プラバスタチンナトリウム錠 10mg | 33.7 | 10.1 |
※2017年2月2日の薬価です。
このようにジェネリックのプラバスタチンナトリウムは、メバロチンの半分程度の薬価になります。ただし、プラバスタチンナトリウムは多くの製薬会社が発売しており、価格にかなりの開きがあります。ここで示したのは大部分の製薬会社の薬価ですが、この薬価よりも値段が安いor高いことがありますので注意してください。
またプラバスタチンナトリウムは、錠剤のみが発売されています。細粒が良い人は、先発品のプラバスタチンNaでの対応になるため注意が必要です。
4.プラバスタチンNaの副作用について
プラバスタチンNaの副作用で最も注意が必要なのは、横紋筋融解症です。
プラバスタチンNaの添付文章ではジェネリック医薬品のため詳細なデータがないとされています。そのため先発品のメバロチンを参考にしてみましょう。メバロチンの添付文章では総症例11,137例中344例(3.09%)に副作用が認められました。その主なものは、
- 発疹(0.11%)
- 胃不快感 (0.10%)
- 下痢(0.07%)
となっています。最も多い副作用である発疹ですら0.11%であるため、メバロチンの副作用自体は非常に少ないお薬と言えます。プラバスタチンNaもメバロチン同様に非常に副作用が少ないと考えて良いと思います。
ただしプラバスタチンNa含めてスタチン系の副作用として最も怖い副作用が、筋肉を溶かす横紋筋融解症です。筋肉が溶かされると、クレアチンキナーゼ(CK)という筋肉を構成する物質が血液内に増えます。その副作用がプラバスタチンNaでも認めます。横紋筋融解症の症状として、
- 筋肉痛
- 筋疲労
- 褐色尿
- 倦怠感
などが挙げられます。なお、横紋筋融解症は、プラバスタチンNaの投与初期にみられることが多く、その多くは投与をやめることで回復します。そのため脂質異常症の改善の確認も含めてプラバスタチンNa内服中は採血で経過観察することが望まれます。
少なくともプラバスタチンNaを投与開始してから1か月~3か月の間に、一度は採血することが推奨されています。プラバスタチンNaなどのスタチン系の副作用の対策についてさらに詳しく知りたい方は、「クレストールで筋肉痛が出たら要注意?クレストールの副作用について」を一読してみてください。
プラバスタチンNaの横紋融解症が起こる頻度は0.1%と決して多くはありません。ただし多くはないとはいえ、どのような症状が出たら病院を受診した方が良いか知っておく必要はあると思います。
5.プラバスタチンNaが使用できない疾患は?
プラバスタチンNaは、他のスタチン系と違い肝臓が悪い人にも慎重投与で投与できるお薬です。
プラバスタチンNa以外のスタチン系は肝臓が悪い人は禁忌です。理由としては他のスタチン系は肝臓で代謝されるため、肝臓が悪いと薬が代謝されずに急激に血中濃度が上がるため、副作用が起きやすいためです。
一方でプラバスタチンNaはスタチン系の中では唯一腎代謝のお薬です。実際に肝臓が悪い人に対しても慎重投与止まりで禁忌ではありません。
肝臓ではなく腎臓で代謝されるため、腎機能障害がある人は逆に使えないのか?と思う人がいるかもしれませんが、添付文章では腎機能障害でも慎重投与であって禁忌ではありません。(他のスタチン系も含めてほぼ全ての薬が腎機能が悪い人は慎重投与になります。)
そのため肝臓が悪い人ももちろん、腎臓が悪い人も絶対に使ってはいけないお薬ではありません。特に、スタチン系を内服する脂質異常症の方の中には、
- アルコール性肝炎
- アルコール性肝硬変
- 脂肪肝
などの人がいます。このような方は脂質異常症も合併しやすいので、プラバスタチンNaは良い適応です。ただしプラバスタチンNaも肝機能障害がないわけではありません。慎重投与の文章でも、
重篤な肝障害又はその既往歴のある患者、アルコール中毒の患者[本剤は主に肝臓において代謝され、作用するので 肝障害を悪化させるおそれがある。また、アルコール中毒の患者は、横紋筋融解症があらわれやすいとの報告がある。]
と記載されているため注意は必要です。特に上記のアルコールや脂質で肝機能障害が出ている方はプラバスタチンNa任せではなく
を徹底して肝機能を改善する必要があります。肝臓の病気が指摘された方は、プラバスタチンNaが処方されても肝機能が悪化した場合は中止になってしまいます。
そもそも脂質異常症の治療自体がお薬だけではなく、食事療法や運動療法が第一の柱になります。プラバスタチンNaを処方された方は肝臓が悪くなくても、一度生活習慣を見直してみることからはじめましょう。
6.プラバスタチンNaで飲み合わせが悪い薬は?
中性脂肪を下げるフィブラート系の薬を併用しないように注意しましょう。
リポバス、リピトールなどのスタチン系のお薬はCYP3A4という酵素で代謝されるため、使用するお薬に制限があります。一方でプラバスタチンNaは腎排泄のため制限が少ないです。
プラバスタチンNaを使用する時に気を付けなければいけないのが、フィブラート系のお薬です。フィブラート系は、中性脂肪(TG)が高い時に使用される脂質異常症のお薬です。悪玉コレステロールも低下させますが、中性脂肪に対する効果がより強いとされています。代表的なお薬は、
- リピディル
- トライコア
- ベザトール
です。脂質異常症の人は、LDL・TG両方高い人も多いです。
そういった人は、プラバスタチンNaなどのスタチン系とフィブラート系両方を使えば良いのでは?と安易に考えがちです。しかし、フィブラート系との併用に関しては、プラバスタチンNaの添付文章では、両方を同時に使用すると急激な腎機能悪化を伴う横紋筋融解症があらわれやすいことから、原則禁忌となっています。特に腎機能が最初から悪い人には、ほぼ使用できません。
治療上やむを得ないと判断される場合にのみ、慎重に併用することと記載はされています。しかしプラバスタチンNaにも、フィブラート系ほどではないにしろ中性脂肪を低下する効果があります。またフィブラート系も、わずかながら悪玉コレステロールを低下する作用があります。
そのためLDL・TGの実際の値で、より重症な方を一つの薬で治療することからはじめることがほとんどです。両方の値が非常に高い場合は、まず悪玉コレステロール(LDL)を下げるためにプラバスタチンNaの方から処方します。
LDLは動脈硬化の原因となるプラークの元になるため、LDL高値は非常に危険なためです。動脈硬化について詳しく知りたい方は、「脂質異常症はどうして治療が必要?脂質異常症が引き起こす怖い病気とは?」を一読してみてください。
いずれにしろプラバスタチンNaを処方された方は、ダメなら次の薬があると安易に考えず、運動や食事療法をしっかりとしようという心構えが大切になります。
7.プラバスタチンNaは妊婦や授乳中の方に投与してよいの?
プラバスタチンNaは、妊婦・授乳中の方は禁忌になっています。
プラバスタチンNaは、妊婦の方には禁忌になっています。理由としては、添付文章ではラットに他のスタチン系のお薬を大量投与した場合に、胎児の骨格奇形が報告されています。さらにヒトでは、他のスタチン系のお薬で、妊娠3ヵ月までの間に服用したとき、胎児に先天性奇形があらわれたとの報告があるためです。
また授乳中の方も、
授乳中の婦人には投与しないこと。[ラットで乳汁中への移行が報告されている。]
という一文が記載されています。基本的にこの一文は他のお薬にもほとんど記載されていますが、プラバスタチンNaは妊婦で禁忌になっている経過からお勧めできません。
このことからも、プラバスタチンNaは妊婦や授乳中の方は内服しないようにしましょう。また妊娠を考えている方も、プラバスタチンNaは控えた方が安全でしょう。妊娠3か月までの間にスタチン系を内服したときに、胎児の骨格奇形が報告されているためです。
脂質異常症は、プラバスタチンNaを内服中止したら一気に悪くなって何か症状が出るものではありません。脂質異常症が悪くなって、徐々に動脈硬化が進行することで心筋梗塞や脳梗塞などの怖い病気につながります。これらを予防するために、プラバスタチンNaを内服します。
むしろ妊娠可能年齢に、プラバスタチンNaを内服していることが大問題です。20~40代から脂質異常症を指摘されている方は、食生活がかなり乱れており、暴飲暴食で肥満の方が多いです。妊娠するしないに関わらず、食事療法や運動を心がけるようにしましょう。
8.メバロチン錠とプラバスタチンNa錠の効果と副作用の比較
先発品・ジェネリックの効果と副作用は、大きな違いはないと考えられます。
多くの方が気になるのは、先発品のメバロチン錠とジェネリック医薬品のプラバスタチンNa錠で、効果と副作用が同じかどうかだと思います。特にジェネリック医薬品のプラバスタチンNa錠がメバロチン錠の半分程度の薬価で手に入るため、不安に感じる方もいるかもしれません。
ジェネリック医薬品では、有効成分は先発品とまったく同じものを使っています。ですから、効果や副作用の大まかな特徴は同じになります。先発品とジェネリック医薬品の違いは、薬を作るときの製造技術です。ジェネリック医薬品を作る時に求められるのは、薬の吸収・排泄と安定性の2つが先発品と同等であることです。
実際に先発品のメバロチン錠とプラバスタチンNa錠は主成分および投与量は全く同じです。
ジェネリック医薬品について詳しく知りたい方は、「ジェネリック医薬品の問題点とは?ジェネリックの効果と副作用」をお読みください。
9.プラバスタチンNaが向いてる人は?
<向いてる人>
- LDLコレステロールが軽度に高い方
- LDLコレステロールが高い高齢者
- 肝臓が悪い方
- 薬価を気にされる方
健康診断等でLDLの高値を指摘され、食事や運動などの生活習慣を改善してもLDLコレステロールが下がらない方は、薬物療法の適応となります。
LDLが高ければ、まずプラバスタチンNaなどのスタチン系が第一選択肢になります。現在では、
などのストロングスタチンを好む医師が多いです。ストロングスタチンがLDLが平均40%低下できるのに対して、スタンダードスタチンはLDLが平均20~30%下げることができます。そのため、LDLを大幅に下げた方が良いのかと患者さんは考えてしまうかと思います。実際にそのように考えている医師も少なくありません。
ですがコレステロールは、私たちの体にとって大切な物質です。LDLの別名は「悪玉コレステロール」とよばれますが、下げれば下げるほど良いというわけではありません。
詳しいことは後述しますが、LDLはコレステロールを体に配る役割があります。コレステロールは、我々30兆の細胞を司る原料になります。コレステロールが体内になくなるということは、我々の30兆の細胞を維持できなくなるということです。さらに、ホルモンや胆汁を作る原料にもなります。そのためLDLやコレステロールは、低すぎても問題になります。
低コレステロールの定義は、
- 総コレステロール(TC)が120mg/dL未満
- LDLが50mg/dL未満
です。この値を大幅に下回ってコントロールすることは好ましくないと考えられています。ただし低コレステロールに関しては、実際に症状として感じられることは少ないのです。ホルモンバランスが崩れることで、
- だるさ
- 疲れやすい
- 気持ちが落ち込みやすい
などの症状が出ることがあります。また、コレステロールを下げすぎた場合、細胞を作る原料が無くなるため、むしろ脳出血が起こりやすくなるといったデータもあります。
つまりコレステロールは、ちょうど良い値が一番ということです。高すぎは論外ですが、決して下げれば下げるほど良いというわけではありません。以上の特徴を踏まえると、LDLが軽度高値の人は大幅に下げる必要がないため、プラバスタチンNaは良い適応です。特に高齢者は良い適応です。
高齢者の場合は、
- 薬の効果が大幅に出やすい
- 元々食べる量が徐々に少なくなる
- 病気になると重篤化しやすく余力がない
などから、LDLを大幅に下げる場合には危険になる可能性もあります。
さらにプラバスタチンNaのみの特徴として肝臓ではなく腎臓で代謝されるといった特徴があります。他の5剤のスタチン系のお薬は肝臓で代謝されるため、重篤な肝機能障害がある人には注意になっています。一方でプラバスタチンNaは重篤な肝機能障害がある人でも禁忌にならず、慎重投与になります。
そのため肝機能障害がある方はプラバスタチンNaが最も使いやすいスタチン系のお薬となります。ただしプラバスタチンNa含めてスタチン系自体が、後述するように肝臓に作用して効果を発揮するお薬です。実際の副作用でも、プラバスタチンNa内服で肝機能障害の悪化が認められます。
そのためプラバスタチンNaが腎臓で排泄されるからといって、肝臓が悪くならないわけではないことに注意してください。特に脂質異常症で肝機能障害がある人は、アルコール性肝炎や脂肪肝のことが多いです。このような方はプラバスタチンNaを内服しても油断せず、しっかりと肝臓の治療も頑張るようにしましょう。
上記の条件に合致した方で薬価を気にされる方は、プラバスタチンNaの良い適応です。ジェネリック医薬品であるプラバスタチンNaはメバロチンの半分の薬価です。特に脂質異常症のお薬は2~3日飲んで終わりということはなく、ほとんどの場合が長期間付き合っていくお薬になります。
「月、年単位で考えるとすごい額になるから辞めておこう」と自己中断される前にぜひジェネリック医薬品含めて医師に相談してみると良いかもしれません。
10.プラバスタチンNaの作用機序は?
プラバスタチンNaは、HMG-CoA還元酵素を阻害してコレステロールの合成を阻害します。
プラバスタチンNaの働きを説明する前に、脂質がどのように代謝されているのかを知ってみると良いかもしれません。
脂質を取り込まれた後の代謝の順序ですが、
- 食事をとることで脂質が取り込まれます。
- 脂質が分解されTG(トリグリセリド)が上昇します。
- TGが肝臓に取り込まれます。
- 肝臓でLDL(悪玉コレストロール)が作られます。
- LDLがコレステロールを体中に回します。
- LDLがHDL(善玉コレステロール)に変化します。
- HDLが余分なコレステロールを回収してまわります。
となります。大切なことは、コレステロールのおおもとである脂質は、体にとって大切な物質であるということです。そのため、⑤でLDLが体中にコレステロールを回しているのです。コレステロールの働きを具体的にあげると、
- 細胞膜の構成
- ホルモンの原料
- 胆汁酸の原料
などが挙げられます。脂質異常症は、余分にコレステロールがあることが問題になります。
プラバスタチンNaは、④の部分で肝臓においてTGがLDLに変換されるのを防ぐお薬です。具体的には、HMG-CoA還元酵素という酵素をプラバスタチンNaは阻害します。このHMG-COA還元酵素は、肝臓内でLDLを作る働きがある酵素です。この酵素を阻害することにより、LDLが作られるのをプラバスタチンNaは邪魔するのです。
④でLDLが作られなくなると、⑤以降も変化が生じます。
- LDLが体内に回る量が減ります。
- LDLが少ないことを体が察知して、体内に栄養がないと勘違いします。
- LDLを肝臓に取り込んで、低栄養状態に備えます。
このようにして、LDLはさらに血中から減ります。また体内に栄養がないと勘違いすることで、HDLを沢山作って③の肝臓に取り込むように働きかけるのです。
また肝臓では、中性脂肪からVLDL(超低密度リポタンパク質)も作成されます。VLDLには、中性脂肪を運ぶ働きがあります。
そのため、HMG-COA還元酵素を阻害してVLDLが減ると、中性脂肪を運ぶ物質も減ります。このため、中性脂肪も低下します。大切なのは、食事療法で脂質を制限したり、運動療法で血管内の脂質を減らすといったことが重要であるということです。
HMG-COA還元酵素を阻害したからといって、100%肝臓でLDLが作られないわけではありません。つまり沢山食べてしまえば、肝臓でLDLは作られてしまいます。
また血管内に栄養がたくさん漂っていれば、体も勘違いしないためLDLを肝臓に取り込もうとしないし、HDLを増やしてコレステロールを回収しようともしません。そのため、しっかりと食事療法と運動療法をやったうえで、プラバスタチンNaは効果を発揮するお薬だということを認識しましょう。
まとめ
<メリット>
- LDL(悪玉)コレステロールを中等度に下げられる
- HDL(善玉)コレステロールを増やす
- TG(中性脂肪)も下げる
- 腎排泄である
<デメリット>
- 食事・運動療法なしでは脂質異常症は改善しない
- 肝障害・筋肉痛などの副作用が起こるケースがある
<向いてる人>
- LDLコレステロールが非常に高い方
- 高齢者の方
- 肝臓に病気がある方
- 薬価が気になる方
投稿者プロフィール
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
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